清水理史の「イニシャルB」
10GBASE-T対応NICを1万5千円台で購入 たまたま安かった? StarTech.com「ST10GSPEXNB」を試す
2017年10月30日 06:00
Amazon.co.jpを眺めていたら、たまたま10GBASE-T対応のNICが1万5000円台で販売されていることに気付き、即購入。玄人志向やアイ・オー・データ機器のNICよりも若干安く入手できたStarTech.comの「ST10GSPEXNB」を実際に試してみた。
10GBASE-T対応NICを1万5千円で購入するも、後にAmazon.co.jpの販売価格が上昇
当初は、「最安の10GbE NICの実力は?」というタイトルにしようと思ったのだが、残念ながら「最安」というのはたまたまだったようだ。
そろそろ10GbE環境を整えておこうかと、普段からNICとスイッチの価格をチェックしていたところ、たまたま見つけたのが、StarTech.comのST10GSPEXNBという製品だった。
10G/5G/2.5G/1G/100Mbpsの各速度に対応するNBASE-T対応の製品で、価格は税込みで1万5657円。
NBASE-T対応のNICは、玄人志向の「GBEX-PCIE(2017年10月23日現在のAmazon.co.jp販売価格1万7367円)」やアイ・オー・データ機器の「ET10G-PCIE(同2万5882円)などが存在するが、実売価格ではこれらを下回る価格となっており、若干迷いながらも2枚を購入。
その後、本コラムを執筆しようと価格をもう一度チェックしてみたところ、残念ながら実売価格が3万4769円と倍以上に変更されていた。これは高い……。
メーカーのウェブページに記載されている価格が税込4万7434円となっているので、何かのキャンペーンか、価格の設定ミスだったのかもしれないが、いずれにせよ個人的に割安で(と言ってもまだまだ十分に高いが)NBASE-T対応NICを入手できたのは幸運だった。
搭載チップは玄人志向やアイ・オーのカードと同じ「TN9510」
それでは、製品をチェックしていこう。ST10GSPEXNBは、RJ45コネクタを採用した一般的なLANケーブルを利用し、最大で10Gbps、このほか5G/2.5G/1G/100Mbpsでの通信が可能となっているLANカード。本誌の新連載「期待のネット新技術」でも取り上げられている通り、2018年にかけての普及が見込まれている技術を採用した製品だ。
接続インターフェースはPCI Express 4xで、デスクトップPCやサーバーに装着して利用するタイプとなる。
最近では、NASも10GbEに対応する製品が増えてきたが、本製品の対応OSは以下の通り。
- Windows 10/8.1/8/7
- Windows Server 2016/2012 R2/2012/2008 R2
- Mac OS 10.10 to 10.12
- Linux 3.x to 4.11 LTS Versions only
試しに、SynologyのNAS「DiskStation DS1517+」のPCI Expressスロットに装着してみたが、OSでは認識されなかった。「NAS用の拡張カードとしても使えれば儲けもの」と考えていたところもあったので、これは少々残念だ。
採用されているチップは、PHYがTehuti Networksの「TN4010」、MACがAquantiaの「AQR105」となっている。
マニアの方なら、玄人志向やアイ・オー・データと同じということは「『TN9510』か?」と、気が付くかもしれないが、ヒートシンクの位置や基板の配線を見比べてみると、どうやら製品としては別モノとなりそうだ。
StarTech.com ST10GSPEXNB | |
実売価格 | 1万5657円※ |
LANポート | RJ45×1 |
カードタイプ | 標準(LP金具付属) |
チップセット | Tehuti Networks TN4010(PHY)/Aquantia AQR105(MAC) |
インターフェース | PCI Express x4 |
対応速度 | 10G/5G/2.5G/1G/100M(bps) |
※筆者購入時(2017年10月17日時点の価格。2017年10月23日時点では3万4769円)
Windows Update経由で最新ドライバーを導入
セットアップは簡単で、基本的にはPCの拡張スロットに装着するだけでいい。
今回はOSにWindows 10 Pro(Fall Creators Update)を利用したこともあり、ドライバーはWindows Update経由で自動的にインストールされ、先に触れた「TN9510」として認識された。
一応、StarTech.comでも同製品用のドライバーを配布しているが、インストールしてみたところ、Windows Update経由での「4.4.405.152」と比べて、どうやらバージョンが「4.4.405.150」と古いようだ。
StarTech.comのドライバーではJumbo Frameを16Kまで設定できる(Windows Updateのドライバーは9Kまで)ようになっているが、基本的には新しいドライバーを使った方がいいだろう。
CAT7/6A/6/5e/5の各ケーブルによる比較
まずは、NBASE-Tならではの機能を評価するため、ケーブルをいろいろ変えて接続してみた。一体、どういう条件で5Gbpsや2.5Gbpsに速度が落ちるのだろうか?
結論から言うと、今回のテストでは、5Gbpsや2.5Gbpsへと自動的に速度が変更されることはなかった。
CAT7、CAT6A、CAT6、CAT5e、CAT5の各ケーブルを用意(基本的にエレコムの10mケーブルで統一したかったのだが、CAT5のみすでにケーブルが入手できず、巻き取り式の2.5mを使用)して、ST10GSPEXNBを装着した2台のPC間を直結してみた。正式にはCAT6A以上を利用する必要があるが、CAT5のみ100Mbpsで接続されたのを除き、ほかのケーブルでもすべて10Gbpsでリンクした。
CAT5では、接続から数秒間はケーブルを認識できなかったが、しばらくすると100Mbpsでリンクし、速度は非常に遅い状況ながらも問題なく通信することはできた。実用的ではないが、緊急時対応などには使える可能性もありそうだ。
一方、ほかのケーブルに関しては、すべて10Gbpsでリンクはした。10m程度の長さであれば、既存のケーブルでも何とか10Gbpsで利用できそうだ。
ただし、実効速度は以下のグラフのように若干の違いが見られた。とは言え、CAT5eが頭ひとつ低い程度で、速度的にはほぼ拮抗している。CAT7でも4.73~5.52Gbpsなので、これがカードとしての転送速度の上限であり、その範囲内なら、ケーブルの品質差も大きくは影響しないのではないかと考えられる。
PC1→PC2 | PC2→PC1 | |
CAT5 | 0.094 | 0.094 |
CAT5e | 5.89 | 3.89 |
CAT6 | 5.4 | 4.66 |
CAT6A | 5.93 | 4.57 |
CAT7 | 5.52 | 4.73 |
※
手動で速度を5/2.5Gbpsに変更
このように、幸いにして、一般的なケーブルを使う限りは10GbpsでリンクしてくれるST10GSPEXNBだが、そうは言っても5Gbpsや2.5Gbpsの実効速度も見てみたいので、NICのプロパティから手動でリンク速度を変更して、同様に速度を計測してみた。ケーブルは実用シーンを考えてCAT6を用いている。
PC1→PC2 | PC2→PC1 | |
10Gbps | 5.4 | 4.66 |
5Gbps | 4.55 | 4.73 |
2.5Gbps | 2.29 | 2.37 |
1Gbps | 0.946 | 0.949 |
※ケーブルはCAT6を使用
こうしてみると、やはり10Gbps接続時の伸びが悪いことに気が付くが、5Gbps接続時でも1Gbpsの5倍の実効速度を実現できており、これで十分という印象を受ける。
以下は、CAT6ケーブルで10Gbpsリンク時に、他方のPCの共有フォルダーに対してCrystalDiskMarkを実行した結果だ。実際、NASなどにアクセスした場合も、HDDの速度がボトルネックになるため、十分に実用的な速度を実現できていると言える。
隠れたお買い得品は価格がこなれてきたIntel X540シリーズ
最後に、参考までに10Gbpsに対応したIntel X540シリーズとの比較を掲載しておく。
CAT6 | CAT7 | |
ST10GSPEXNB(PC2)→X540-T1(PC1) | 4.53 | 4.58 |
X540-T1(PC1)→ST10GSPEXNB(PC2) | 6.35 | 6.18 |
X540-T1(PC1)→X540-T2(PC2) | 9.26 | 9.25 |
X540-T2(PC2)→X540-T1(PC1) | 4.81 | 4.79 |
※ケーブルはCAT6を使用
今回のテストでは、使用したPCのうち1台がCore i5-3570K搭載と古いため、転送方向によって値に大きな違いが出てしまったが、Intel X540シリーズの実力はやはり高い。装着したPC側の性能が十分なら、10Gbpsの実力をきっちり発揮できるようになっている。
Intel X540シリーズは、実売価格がだいぶこなれてきており、1ポートの「X540-T1」で1万9480円、2ポートの「X540-T2」が2万2700円(いずれも2017年10月23日Amazon.co.jp調べ)となっている。
現在のST10GSPEXNBの価格(3万円越え)よりも安く、玄人志向の「GBEX-PCIE(同1万7367円)」と比べても遜色ない価格で入手できる。
上記テストと同様の方法で接続も確認したが、CAT6のケーブルでも10Gbpsでリンクし、実効速度も遜色ない。しかも、X540シリーズは、NASでの対応がサポートされていることが多く、ST10GSPEXNBでは認識されないSynologyのNASでも問題なく利用できる。
ちなみに、Synology DS1517+にX540-T2を、上記テストのPC1にX540-T1を装着した状態で、Jumbo Frameを9Kに設定してCrystalDiskMarkを実行すると、シーケンシャルリードでネットワーク経由とは思えない数値がたたき出される。
というわけで、結論を言えば、安くなってきたNBASE-T対応NICも悪くはないが、現時点の価格帯であれば、素直にX540シリーズを買うのが得策ということになる。
やはりNBASE-T製品の買い時は、NICが1万円を切り、スイッチの実売価格も50%ほど下がったタイミングではないだろうか。