清水理史の「イニシャルB」
10GbE対応NICとスイッチで5万円台! ASUS「XG-C100C」とネットギア「XS505M」で10GbE環境を構築
2018年1月22日 06:00
年末のセールで「何を買おうか?」と迷った結果、10GbE環境に投資することにした。年末のセールも活用し、ASUSの「XG-100C」とネットギアジャパンの4ポートアンマネージドスイッチ「XS505M-100AJS」を入手。しかし、いざ設置してみると、ちょっと困ったことが発生した。
いつまでもPCとNASだけを直結のままというのも……
昨年の夏あたりから、筆者宅ではNASへのアクセスを10GbE化していたのだが、この環境はちょっと中途半端だった。10GbE化されたのは1台のPCとNASだけで、その接続はいわゆる直結となっていた。
ビデオや写真などの大きなデータを扱うのは、ほぼメインのPCだけなので、これでも特に不自由はなかったのだが、「そろそろ……」ということで、年末に10GbE環境を再構築することにした。
というわけで購入したのが、ASUS XG-C100C(10GbE対応NIC)とネットギアジャパンXS505M-100AJS(10GbE対応4ポートアンマネージドスイッチ)だ。ちなみに、筆者が購入したときは、前者が送料込みで126.18ドル(国内発売前で海外から購入)、後者が年末セールで3万9780円だった。
スイッチに関しては、本稿を執筆しているタイミングで、10GbEが2ポート、1GbEが8ポートながら4万円台の「GS110MX」と、同じポート構成でアンマネプラス(VLAN、QoS、LAG対応)ながら5万円台の「GS110EMX」が発売された。選択肢が徐々に増えていることは歓迎したいところだ。
これなら買ってもいいXG-C100C、転送速度はIntel「X540-T1」とほぼ同等
まずは、ASUS XG-C100Cから見ていこう。本製品は10GBASE-Tに対応したPCI-Express 4x対応のNICだ。赤い基盤とヒートシンクが印象的だが、チップには、以前、本コラムで取り上げたStarTech.comの「ST10GSPEXNB」が搭載する「AQC105」とは異なり、「AQC107」を採用している。
ドライバーは、ASUSのウェブサイトからダウンロード可能で、セットアップ自体は特に何も難しいことはない。
デバイスのプロパティで各種設定も変更可能で、ジャンボフレームも最大で16348まで設定できる。
気になる性能だが、なかなか優秀な印象だ。まずは、SynologyのNAS「DS1517+」に装着したIntel「X540-T2」と直結した状態でテストを行ってみた。ジャンボフレームが「無効」(標準)の状態と、両方で「9000」に設定した状態の結果は以下の通りだ。参考までに、PC側を手元にあったStarTechのST10GSPEXNB、およびIntel X540-T1に挿し替えた場合の結果も掲載する。いずれも左がジャンボフレームを無効に、右がジャンボフレームを9000に設定したものだ。
ご覧の通り、StarTech.comよりも高性能で、今回のテストに限って言えばIntel X540-T1とほぼ同等だ。大きなヒートシンクのおかげか、テスト後もカード自体はさほど熱を持たない。一般的な利用シーンなら問題ないと言えそうだ。
NICに1万円というと、一般的な感覚では十分に高いが、仕事で日常的に動画などのギガバイトクラスのデータを扱うようなケースでは、これでファイルコピーの待ち時間が劇的に短くなるので十分に恩恵はある。
なお、Synology DS1517+にも装着してみたが、残念ながらこちらは認識しなかった。こういった低価格なNICが、NASでも気軽に使えるようになるとうれしいところだ。
PC環境によってはジャンボフレーム設定が必須
このように優秀な結果が得られたASUS XG-C100Cだが、1つ気になる点があった。PCによって性能に大きな差が出てしまうことだ。
上記の結果は、下の構成のPC1でのテスト結果となるのだが、より高性能なはずのPC2(下表の右)に接続すると、ジャンボフレーム無効時の速度が低下してしまうのだ。
PC1 | PC2 | |
CPU | Core i7 4770(3.4GHz) | Core i7 7700(3.6GHz) |
マザーボード | ASUS H87I-PLUS | ASUS STRIX Z270G GAMING |
チップセット | Intel H87 | Intel Z270 |
メモリ | DDR3 SDRAM 8GB×2(ノーブランド) | ← |
グラフィックス | オンボード | GIGABYTE GV-N970WF3OC-4GD(GeForce GTX 970) |
HDD | Samsung SSD 840 EVO 500GB | Crucial MX300 CT525MX300SSD4(M.2 SATA) |
OS | Windows 10 Pro 64bit | ← |
いろいろテストしてみると、ほかのNICでも同様にPC2での速度が低下してしまうため、PCの構成に問題がありそうだ。PC1は外部ビデオカードなし、PC2はありなので、これによるノイズか、あるいはストレージ関連が影響を及ぼしている可能性がある。
PCによっては、ジャンボフレームを有効にしないと性能をフルに発揮できない可能性がありそうだ。
10GbE対応の4ポートスイッチ「XS505M」
続いて、スイッチを見ていこう。ネットギアジャパンの「XS505M」は、アンマネージドに分類されるシンプルなスイッチだ。VLANやQoSなどの機能は搭載されておらず、単純に10GbEのネットワークを中継する装置になっている。
本体はラックマウント可能なサイズで、1Gbpsの既存のスイッチで言えば、16ポートクラスあたりの製品と同等と言えそうだ。
LANケーブルを装着するためのポートと各種LEDは前面に、電源ケーブルのみが背面に配置されており、10GBASE-T対応のLANを4本、SFP+を1本のケーブルを接続することができる。
10GBASE-Tポートは、10Gだけでなく、10G/5G/2.5G/1Gのマルチギガ対応となっており、CAT 5eなどのケーブルで接続すると、2.5Gなど下位の速度で接続される仕様となっている。ケーブルの再配線が難しい環境などでも、手軽にネットワークを高速化可能だ。
なお、本体側面にはファンが搭載されているが、電源オンで回転するものの非常に静か。オフィスのフロアはもちろんのこと、一般家庭に設置してもまったく気にならないレベルになっている。
XS505Mを挟むとジャンボフレーム設定で無反応に……
実際の使い心地だが、普通に使う分にはまったく問題ない。アンマネージドなので特に設定もなく、単にケーブルを接続するだけで10GbEのネットワークを構成することができた。
ただし、筆者が購入した機器固有の問題かもしれないが、ジャンボフレームを設定しようとすると問題が発生した。
XS505MにDS1517+(NAS)とPC1(XG-C100C)を接続した後、それぞれでジャンボフレームを「9000」に設定すると、PCからNASを参照することができないのだ。より具体的には、エクスプローラーから「\192.168.10.170」などとしてNAS自体は参照できるものの、共有フォルダーをダブルクリックしてアクセスしようとすると、そのまま反応がなくなってしまう。
調査のために、NASとPCのいずれか、もしくは両方でジャンボフレームを無効にしてみたところ、問題なくPCからNASを参照することができたので、スイッチの影響が疑われる。
また、NASに問題がある可能性も考慮して、NASではなく、PC1とPC2を接続して同様にテストしてみたが、やはりジャンボフレームを有効にするとアクセスできなかった。NICを変えたり、ケーブルを変えたりといろいろ試したが、筆者宅では状況が改善しなかった。
XS505Mのスペックシートを見ると、9Kまでのジャンボフレームに対応しているので、本来は問題ないはずだが、どうもジャンボフレームの転送がうまくできていないようだ。
前述したように、PC環境によってはジャンボフレームを有効にしないと速度が低下するため、できれば有効にして使いたいところだっただけに残念だ。初期不良の可能性もあるのでサポートにも問い合わせているが、現状はジャンボフレームを無効にして運用している。
ちなみに、XS505M経由で、ジャンボフレーム無効にした場合の速度は以下の通りだ。
ファイル転送は非常に高速、そろそろ10GbE導入の準備を
以上、筆者宅の10GbE化について触れた。10GbE環境はファイル転送が非常に早いので、大容量のファイルを扱う機会がある人には、本当にオススメだ。まだまだ機器は高いが、上で触れたように8ポートのスイッチも安くなりはじめており、そろそろ導入を検討してもいいタイミングと言える。そろそろ近づいて来た新年度を前に、ネットワーク環境を見直してみるのもいいだろう。
【記事追記 2月14日15:35】
後日、サポート経由でXS505Mを交換したところ、無事にジャンボフレーム9Kにて通信できることを確認できた。どうやら初期不良だったと考えられる。