清水理史の「イニシャルB」
10GBASE-Tを中継すると遅くなる? CAT6A対応のRJ-45中継アダプターを試す
2019年6月10日 06:00
サンワサプライから、10ギガビットイーサーネットである10GBASE-Tに対応したRJ-45中継アダプター「ADT-EX-6ASTP」が発売された。従来の中継アダプターとも比較しながら、10Gbps環境での速度面への影響をチェックしてみた。
一般家庭はノイズも少なくケーブル長も限られるので、意外に大丈夫
結論から言ってしまえば、ノイズも少なく、ケーブル長も限られる一般家庭であれば、本製品でなくても、10Gbpsでのリンクは維持できるし、実効速度もほぼ同じだ。
もちろん、安定した通信環境が求められるビジネスシーンでは、本製品のようにきちんと10GBASE-Tに対応したケーブルや中継アダプターを利用する必要があるだろうが、一般家庭で使う限りにおいては、そこまで厳密に考えなくても問題はなさそうだ。
サンワサプライから発売された「ADT-EX-6ASTP」は、10ギガビットイーサネットに対応したRJ-45中継アダプターだ。
ケーブルとケーブルの間に挟み込むことで、ケーブルの長さが足りないときなどに延長することができる。CAT6AのSTPケーブル(ノイズ対策で内部がシールドされたケーブル)にも対応する中継アダプターで、10GBASE-T環境でも利用できるのが特徴となっている。
10GBASE-TとLANケーブルについての技術的な詳細については、大原雄介氏の連載「ネット新技術」のこちらの記事が詳しいが、簡単に説明すると、対応する信号周波数が異なる。
そして、こうしたケーブルと同様に、10GBASE-Tで求められる仕様に対応したのが、この中継アダプターというわけだ。
10Gbpsでリンクしない状況が見たい
今回、筆者が本製品を購入したのは、ケーブルの長さが足りなかったから、というわけではない。
個人的な興味として、10GBASE-T環境で中継アダプターを利用したときの速度への影響を検証してみたかったからだ。
本連載でも以前、StarTech.comの10GBASE-T対応LANカード「ST10GSPEXNB」を試した際に検証しているが、10GBASE-TではCAT6A以上のケーブルが必要とされており、CAT5eやCAT5などのケーブルでは、実効速度が落ちたり、リンク速度が自動的に低くなることを確認できた。
これと同じような状況が、中継アダプター利用時に発生するかどうかを確かめておきたかったわけだ。
というわけで、CAT6A対応の中継アダプター「ADT-EX-6ASTP」に加え、エレコムのCAT5e対応中継アダプター「LD-RJ45JJ5Y2」も用意して、違いを比較してみた。ちなみにケーブルには、ミヨシの「TWU-610A/WH」というCAT6Aの薄型ケーブルを利用した。
iPerf3によるテスト結果は、次の通りだ。
UP | DOWN | ||
PC1(Intel X540-T) | 中継なし | 9.69 | 9.67 |
CAT5e用中継アダプター | 9.72 | 9.69 | |
CAT6A用中継アダプター | 9.71 | 9.69 | |
PC2(ASUS XG-100C) | 中継なし | 7.57 | 7.54 |
CAT5e用中継アダプター | 7.42 | 7.39 | |
CAT6A用中継アダプター | 7.6 | 7.56 |
※【サーバー】Synology DS-1517+(Intel X540-T2を装着)、【PC1】CPU:Core i7-7700、メモリ:16GB、ストレージ:512GB SSD(NVMe接続)、【PC2】CPU:Core i7-4770、メモリ:16GB、ストレージ:80GB SSD(SATANVMe接続)、ipref3 -t10 -i1 -P10でテスト
性能の異なる2台のPCを利用し、それぞれで速度を測定してみたが、全てのテスト環境で10Gbpsでリンクし、実行速度も中継アダプターによる違いは現れなかった。
もちろん、厳密に比較すれば、信号レベルでの損失が発生している可能性がある上、エラー訂正の頻度が上がり、負荷が高くなっている可能性もあるが、実行速度に関しては、その差が顕著に現れることはなかった。
2.5Gbps環境は一般化してきそう
以上、中継アダプターによる速度の影響をチェックしてみたが、工場など、外部ノイズの影響を受けそうな環境や、1本のケール部では接続できないような長距離での接続であれば話は別だが、通常の一般家庭であれば、あまり神経質になる必要はなさそうだ。
そしてこの結果からは、ケーブルの長さがどうしても足りないときに、既存の中継アダプターを使っても、実用上はあまり影響がないことがほとんどであることも見えてきた。
市場には、10Gbps対応のNASに加え、2.5Gbpsに対応したWi-FiルーターやPCも姿を見せ始めている。1Gbpsを超える有線LANが本格化する前に、こうしたテストを一通り実施することで、「こういう使い方は避けた方がいい」という事例を集めておきたいものだ。