清水理史の「イニシャルB」

10GbEで7千円切りのノーブランドLANカード「NB-AQC107T1-S」を試す

 PCパーツ販売で知られるオリオスペックから、実売価格6930円の10GbE LANカード「NB-AQC107T1-S」が数量限定の先行販売で発売された。

 ノーブランドと言っても、中身は定番チップが採用されたお買い得な製品だ。その実力を試してみた。

オリオスペックが数量限定で先行販売した「NB-AQC107T1-S」

定番中の定番

 NB-AQC107T1-Sは、もはやこのクラスの製品の定番とも言えるMarvell(旧Aquantia)のチップ「AQC-107」を採用した10Gbps対応のLANカードだ。

 同じくAQC-107を採用した製品は、ASUS「XG-C100C」、TP-Link「TX401」、LR-LINK「LREC6880BT」、バッファロー「LGY-PCIE-MG2」、アイ・オー・データ機器「ET10G-PCIEB」(生産終了)、QNAP「QXG-10G1T」となっており、現状、低価格の10GbE対応ネットワークカードのほとんどが、同じチップを採用していると言っていい状況だ。

 本製品は、そんなAQC-107採用カードの中でも、さらにワンランク価格が安く、実売価格は6930円(2021年10月時点では数量限定の先行販売中)と、現状で最安のTP-Link TX401の実売8280円より、さらに安価となっている。

 AQC-107を採用したLANカードは、筆者の記憶ではASUSのXG-C100Cが最も国内での発売が早く、2017年12月だったと記憶している。そこから4年が経過したことで、価格がさらに低下傾向となってきたと考えられる。

コスト削減が見える作り

 製品的には、PCI Express x4接続で、コネクタはRJ45×1となっていて、ごく一般的な構成だ。しかし、前述した他社製品と比べると基板面積が広い。長さもPCI Express x4コネクタ程度の他社製品より、本製品は3~4cmほど長い。

基盤面
コネクタ

 製品としては、ロープロファイル対応となっている上、実際問題として小型PCに装着する上でもスペース的な部分が問題になることはないが、何と言おうか、無理して小さくしようとしていないあたりは、コスト面が関係しているようにも思える。

 また、ヒートシンクも簡易的だ。他社の製品にはカード全面を覆うような大型のヒートシンクが採用されているが、本製品のヒートシンクは、チップ部分のみに装着される小型のものとなっている。

ヒートシンクも小型

 筆者はATXケースのPCで利用していてエアフローが十分に確保されていることもあり、稼働中にヒートシンクに触れても、ほんのり暖かい程度で、発熱が気になることは全くない。

 そこかしこにコストダウンの跡がみられるが、実用上は全く問題ないと言っていいだろう。

Windows 11では標準ドライバーで認識

 製品には、英語ながらもクイックインストーレーションガイドが付属する。ドライバーCDも付属しており、低価格製品にしては親切な印象だ。

Windows 11では標準ドライバーで認識

 Windows 11であれば、付属のドライバーを使うことなく、OS標準ドライバーで認識されるため、インストールにも手間は掛からない。

 なお、Windows 11では、バージョン2.2.2のドライバーがインストールされたが、Marvellのサイトからはより新しいバージョン2.2.3をダウンロードできるので、最新版を利用したい場合は手動でドライバーをインストールするといいだろう。

Marvellから最新ドライバーをダウンロード可能

スリープからの復帰時に見失うトラブルが発生

 実際に使ってみたところ、通信の動作には問題なかったが、筆者の環境ではスリープからの復帰後に、カードを見失ってしまう現象が発生した。

スリープからの復帰時などに、コード43でカードを見失うことがままある

 調べてみると、どうやらこれは、本製品に限らず、AQC-107を採用した初期のネットワークカードでよく見られた現象のようだ。環境にも依存するが、初期の世代の古いカードで発生することがあった。

 具体的には、スリープから復帰するとデバイスマネージャーでネットワークカードが「コード43」で停止し、カード自体を見失ってしまう。

 解消する方法はファームウェアをアップデートとなるが、本製品の場合、ファームウェアのアップデートが推奨されているわけではないので、自己責任での実施となる。

 MarvellのウェブサイトからAQC-107用のファームウェアアップデートユーティリティをダウンロードし、管理者権限のターミナルからコマンドを実行すれば、ファームウェアを更新できる。

 筆者の手元に届いた製品の場合、出荷時のファームウェアが1.5.58とかなり古いバージョンだった。これを2021年10月28日時点で最新の3.1.121へと更新したところ、スリープからの復帰時にコード43でデバイスが停止する不具合が解消された。

Marvellのウェブサイトからファームウェアをダウンロードして更新すると、スリープ復帰でカードを見失う現象が解消された

 全てのカードで使える方法とは限らないし、自己責任となるが、AQC-107搭載製品で安定性に問題がある場合は、試してみる価値があるだろう。

速度は問題なし

 通信速度については、ほかのAQC-107搭載製品と同様、特に問題ない。本連載で以前掲載した『6G→9Gbpsに! 10GbE NICで遅いならUEFIでPCIeリンク幅を固定しよう』でも触れた通り、PCのUEFIでPCI Expressのレーン数を「x4」固定にした状態で、iPerf3による速度を計測してみたところ、上り9.87Gbps、下り9.82Gbpsと、10Gbpsの実力をフルに発揮できた。

iPerf3の様子
デバイスのプロパティ。設定項目は充実している

 また、ジャンボフレームも16348まで設定可能となっているなど、デバイスのパラメーターもかなり細かく設定できるようになっている。

 低価格なノーブランド品ということで当初は若干の心配もあったが、ファームウェアさえアップグレードしておけば、製品としては全く問題ないお買い得な製品と言える。コストをかけずに10Gbps環境を構築したい場合には、お勧めできる製品だ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。