清水理史の「イニシャルB」
もう「Wi-Fi遅くない?」とは言わせない! TP-Link Deco X60で全方位カバーを目指す自宅Wi-Fi強化計画
2021年11月29日 06:05
先日、とあるラジオ番組を聞いていたら、パーソナリティの人物が後輩のアシスタントにこんな冗談を言っていた。
「なんか、お前んち、Wi-Fi弱そうだよな」
もちろん、双方の信頼関係あって成り立つ笑い話だが、人をからかうのに、そんな切り口があるのかと感心してしまった。
その一方で、この言葉は、なかなか核心を突いており、自宅のWi-Fi環境というのが、その人、本人や家、生活スタイルといった社会的な価値を評価付ける要因の1つになりつつあるのだと考えさせられてしまった。
自宅のWi-Fi環境に課題はないだろうか? 年末年始のタイミングをいい機会として活用し、自宅のWi-Fi環境を見直してみるのもいい。
メッシュ化は、Wi-Fi環境快適化の1つの解
「ピンポイントで使えない場所がある」「人が増えると遅くなる」「たびたび切れる」「移動すると使えない」などの問題を抱えたままだと、できることが限られ、どんどん快適さが失われていく。
すっかり普及したテレワークでのビデオ会議で、「あの人、いっつもフリーズしてんな」と思われているとしたら、それは明らかに社会的な評価を損ねている。
また、これから社会的な状況が落ち着いてくれば、自宅に友人や親類が集まる機会も増えるだろう。そのとき、何気なく「なんかWi-Fi遅くない?」なんて言われたら、なかなかに傷付くだろう。
これから、家電の多くがIoT化され、自動車も電気とオンラインの時代になり、VRやメタバースのような新しい世界ももう未来ではなく、目の前に訪れようとしていることを考えると、Wi-Fiの快適さは、生活レベルに直結してくることも明らかだ。
では、いかにWi-Fi環境を快適なものにすればいいのだろうか? その1つの解となるのがメッシュ化だ。
手軽に自宅をメッシュ化できるTP-Link「Deco X60」
メッシュWi-Fiは、複数のアクセスポイントを使って、自宅に網目状につながれたWi-Fiネットワークを構築できる製品だ。
通常、1台のアクセスポイントでは、そこから放射状に放たれる電波でしか自宅内をWi-Fiエリアとしてカバーできない。しかし、メッシュでは、複数台それぞれが放射状に放つ電波によって、自宅内を隅々までカバーできるのが特徴だ。
TP-Linkから発売されている「Deco X60」は、こうしたメッシュWi-Fiを手軽に構築できる製品だ。はじめから2台または3台のユニットがセットで販売されており、製品の互換性などを気にすることなく利用できる。
対応する規格は、もはや主流となったWi-Fi 6ことIEEE 802.11axで、2402Mbps(5GHz帯、4ストリーム)+574Mbps(2.4GHz帯、2ストリーム)の速度に対応したデュアルバンド対応となっている。
Deco X60 | |
実売価格 | 4万5800円(3パック) |
CPU | 1GHz、クアッドコア |
メモリ | - |
Wi-Fiチップ | - |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 2 |
160MHz対応 | × |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz) | 2402Mbps |
チャネル(2.4GHz) | ※1 |
チャネル(5GHz) | W52 |
新電波法(144ch) | ※1 |
ストリーム数(5GHz) | 4 |
ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
アンテナ | 内蔵(6) |
WPA3 | ○ |
IPv6 | ○ |
DS-Lite | △※2 |
MAP-E | |
WAN | 1000BASE-T×1 |
LAN | 1000BASE-T×1 |
USB | × |
動作モード | RT/BR |
ファーム自動更新 | ○ |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 110×110×114mm |
※1システムによる自動設定のため対応状況は不明
※2同社による接続検証は実施されていないため保障外
メッシュシステムには、同社の「Deco X90」など、より高効率なトライバンドのシステムも存在するが、2.4GHz+5GHzのデュアルバンドのいいところは、価格がリーズナブルな点にある。
もともとTP-Linkの製品はコスパの高さで定評があるが、Deco X60は3ユニットセットで実売4万5800円、2ユニットセットなら実売2万7722円で購入できる(いずれも税込。2021年11月10日Amazon.co.jpの価格)。
後からユニットを追加することもできるので、とりあえず2万円台で初めて、ステップアップしていくこともできるだろう。
ちなみに、一般的なWi-Fiルーター、もしくはWi-Fiルーター+中継機という組み合わせに対してのメッシュのアドバンテージは、以下のような点にある。
- 最初からセットでメッシュ構成が簡単。追加も手間なし
- スマートフォンアプリで複数台まとめてセットアップ&状態把握
- 移動しながらでも途切れないローミング
- 接続先をかしこく使い分けて混雑回避
- ネットワークセキュリティ機能でまとめて保護&子どもの利用も安全
- ゲスト設定も1か所から簡単、かつ快適に設定可能
要するにメッシュの場合、複数台のアクセスポイントを1つのネットワークとして効率的に管理できるため、別々の機器を使ったシステムよりも扱いやすく、ネットワーク全体の管理やセキュリティ機能などの付加機能も活用しやすいことになる。
シンプルなデザインがDecoの美点
それでは、実機を見ていこう。
今回のDeco X60に限らず、TP-Linkの製品の中でもDecoシリーズは、美しく、シンプルで、設置場所に困らない。
前述したように、これから社会的な状況が落ち着けば、友人や親類が自宅を訪れる機会も増えてくる。そうしたときに、いくらWi-Fiの快適にするためとは言え、見栄えの悪い製品が部屋を占拠しているのは好ましくない。
Deco X60は、シンプルな円筒形、ホワイトの清潔感のあるカラーのデザインとなっており、サイズも110×110×114mmとコンパクトなので、インテリアとしても違和感がない。
メッシュシステムの場合、自宅の複数の場所にアクセスポイントを設置するため、デザインやサイズは想像以上に重要だが、本製品であれば、置き場所に関する悩みは無用だ。
インターフェースは背面にLANポート×2が用意される。これもDecoシリーズならではの美点だが、このインターフェースはWAN/LANの区別がない。つないだ機器によって、自動的にWANなのか、LANなのかを認識してくれる。初心者に優しいのも本製品の特徴だ。
初心者に優しいと言えば、セットアップも非常に楽だ。TP-Linkは、海外メーカーながら、国内メーカーに劣らず取扱説明書の完成度が高いメーカーだが、本製品は、その取扱説明書すら不要で、スマートフォンの画面上で接続や初期設定などが全て完了する。
スマートフォンに「Deco」アプリをインストールしてから、画面の指示に従って、電源を入れ、ケーブルをつなぎ、インターネット接続設定やWi-Fiの設定をするだけなので、誰でも簡単にセットアップできる。
ちなみに、インターネット接続は、DS-Liteに対応はしているが、同社による動作確認が取れているわけではないため、IPv6接続サービスで利用する場合は、ブリッジモードでの利用を検討しよう。
ブリッジモードの場合、後述するセキュリティ機能などに制限があるが、メッシュシステムとしてWi-Fi環境を快適化するという目的は問題なく果たせる。
メッシュならではの快適さを体験
メッシュシステムとしての構成も簡単で、アプリの指示に従ってユニットを設定後、そのユニットを自宅内に設置すればいい。
具体的にどこに設置するかは住宅環境にもよるが、分かりやすいのは1階、2階、3階のように、各フロアに1台ずつ設置することだ。筆者宅では、こうして設置することが多い。
マンションであれば、回線が引き込まれているであろうリビングに1台、残りを子ども部屋や寝室など利用したい部屋に設置するといった使い方になるだろう。
いずれにせよ、アクセスポイント同士は、お互いの間になるべく遮へい物がないように設置するのがコツだ。階段や廊下などをうまく活用し、バックホール(アクセスポイント間の中継経路)の帯域を確保しつつ、周囲の部屋に電波が届くようにすることで、快適さは向上する。
こうして最適な配置を見つければ、自宅内で電波が届かない場所をなくすこともできる。寝室だとビデオ会議がイマイチ……、風呂に入りながらだと動画再生が難しい……。このように、今まで電波が届かない状況に悩まされていた場所で、通信の状態を改善できるはずだ。
しかも、筆者宅は、筆者が1階で仕事をしながら、家族が2階のリビングのテレビで動画ストリーミングサービスを使いつつ、3階で娘がゲームをするという機会があるが、こうしたケースでも各フロアのアクセスポイントにうまく負荷を分散できるため、速度低下も発生しにくい。
さらにメッシュの場合、このように複数台のアクセスポイントを自宅内に設置することになるが、どこにつなぐかを利用者は全く意識しなくていい。これはメッシュが重宝されるポイントの1つだ。
前述したように、メッシュは複数台をまとめた1つのネットワークとして構成されるため、自分がいる場所に近いアクセスポイントに自動的に接続され、仮に移動した場合、移動先の近くにあるアクセスポイントに自動的に接続先が切り替わる。
このため、例えば、スマートフォンで動画を見ながらリビングから自分の部屋へと移動したとしても、全力で階段を駆け上がるようなことをしなければ、動画が途切れる心配が少ない。
1つのシステムとして全体を把握できる
個人的にメッシュが美しいと思うのは、複数台のアクセスポイントを1つのネットワークとしてまとめて管理できる点だ。
SSIDやパスワードなどの管理も1つで済むし、ファームウェアのアップデートもアプリから各フロアのアクセスポイントに対してまとめて実行できる。
Deco X60に搭載されているセキュリティ機能(※)やペアレンタルコントロール機能、ゲスト設定も管理が簡単だ。
アプリからアンチウイルス機能をオンにすれば、家中のPCやスマートフォンからIoT機器まで通信が保護されるようになり、悪意のあるコンテンツにアクセスしようとすると自動的に遮断されたり、外部からの不正アクセスを遮断したり、仮に自宅内にマルウェアに感染したデバイスがあった場合にその端末が不正に外部に情報を流出させることを防止できる。
こうしたセキュリティ対策を、デバイスごとに使い分けたり、接続するアクセスポイントや中継機ごとに使い分けたりすることなく、まとめてできるのだから安心だ。
※……セキュリティ機能は、ハードウェアバージョンV1/V2は「HomeCare」、バージョンV3以降は「HomeShield」を搭載
未成年の子どもがいる場合も、プロファイルを作成し、そこに端末を登録することで、まとめてWi-Fiの接続時間やアクセスできるコンテンツを制限できる。プロファイルごとの設定なので、子どもがPC、ゲーム機、スマートフォンなど、複数のデバイスを使っている場合でもまとめて制限できるので重宝する。
いずれにせよ、これらがスマホのアプリから、簡単に、まとめて設定できるのはとてもありがたい。
家中300Mbpsを実現
気になる速度だが、以下が木造3階建ての筆者宅にてiPerf3で速度を測定した結果だ。今回はDeco X60を3ユニット利用したため、1階、2階、3階の各フロアにユニットを1台ずつ配置して計測した。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | |||
Deco X60×3 | PC | 上り | 588 | 337 | 328 | 330 |
下り | 787 | 360 | 371 | 354 | ||
iPhone | 上り | 523 | 247 | 291 | 243 | |
下り | 766 | 305 | 312 | 344 |
※サーバーPC環境 CPU:Ryzen 3900X、メモリ:32GB、ストレージ:1TB NVMe SSD、OS:Windows 10
結果を見ると、1階で下り最大787Mbpsと有線LANに近い速度で通信できていることに加え、2階と3階では、どこでも300Mbps近い速度で通信できていることが分かる。
300Mbpsあれば、ビデオ会議で画質が落ちたり途切れたりする心配がないし、ビデオ会議+動画配信サービスなど複数のサービスを同時に利用したとしても、十分過ぎるほどの速度だ。
もちろん、電波が届かない場所はなく、筆者宅であれば1階の洗面所や風呂場はもちろん、3階のトイレ、2階のベランダ付近など、どこであっても300Mbps前後で通信できる。
このように、全体的にまんべんなくWi-Fiの状況を改善できるのは、メッシュシステムならではのメリットと言えるだろう。
年末年始に向けて仕込むなら2万円台の2ユニットが狙い目
以上、TP-LinkのDeco X60を例に、メッシュシステムのメリットを検証してみた。リーズナブルな価格ながら、高い実力を備えた非常に洗練されたメッシュシステムと言っていいだろう。
冒頭で触れたように、これからは自宅のWi-Fi環境が、間接的に社会的な評価へつながる時代になる可能性がある。また、今後、さまざまなデバイスや新しい世界に触れるためにも快適なWi-Fi環境は必須だ。あれが使えない、それは遅くて実用的でない、あそこでは使えない、などといったことになると話にならない。
今回は、Amazonブラックフライデーで15%オフとなる3ユニットを利用したが、これから導入するのであれば、2万円台で購入できる2ユニットからはじめるのもお勧めだ。年末年始のタイミングで、自宅のWi-Fi環境を整えておくことをお勧めする。
(協力:ティーピーリンクジャパン株式会社)