第94回:050番号を利用した本格テレビ電話
「ドットフォンパーソナル」登場!



 OCNから、加入者向けの新サービス「ドットフォンパーソナル」が登場した。パーソナル番号と呼ばれる050番号をPCごとに割り当て、手軽にIPテレビ電話を楽しめるというサービスだ。どのような使い方ができるのか? 早速、テストしてみた。





IP電話からIPテレビ電話へ

 最近では、ADSLの標準サービスとして位置付けられることも多くなってきたIP電話。依然として、050番号同士の相互接続には大きな壁が存在するのも事実だが、一般的にも次第に認知されはじめ、利用者も徐々に拡大しつつあるようだ。

 しかしながら、IP電話によって生活が変わったか? と言われると、そうとも言いがたい。個人的にも日常的にIP電話を利用しているが、確かに、記載される項目がめっきり少なくなったNTTの明細を見ると、「ああ、IP電話を使ってるんだなあ」と感じることはある。だからと言って、電話の使い方そのものが変わったわけではないし、積極的に電話をかけたくなるほど面白いものでもない。所詮は電話と言われてしまえば、それまでだ。

 そんな中、ひさしぶりにIP電話を活用できそうなサービスが登場した。OCNが会員向けに提供している「ドットフォンパーソナル」というサービスだ。このサービス、早い話がテレビ電話だ。PCに専用のソフトをインストールすることで、映像を見ながら会話を楽しむことができる。

 もちろん、このような映像と音声を使ったコミュニケーションは、いわゆるメッセンジャーソフトの「ビデオチャット」機能でも以前から利用可能だった。しかし、ドットフォンパーソナルがこれらのサービスと異なるのは、「050」番号を使える点だ。

 ドットフォンパーソナルに加入すると、050から始まるパーソナル番号がIP電話の「ドットフォン」とは別に割り当てられる。この番号を利用して、同じドットフォンパーソナルユーザー同士でテレビ電話を楽しむことはもちろん、通常のIP電話と同様に一般加入電話や携帯電話に電話をかけたり、電話を受けることができるわけだ。

 イメージとしては、IP電話とメッセンジャーソフトを統合したようなものと考えればいいだろう。


ドットフォンパーソナルのサービスイメージ




UPnP対応ルータが必須

 使い方はカンタンだ。ドットフォンパーソナルに加入すると、050番号やSIPで利用するID、パスワードなどが書面で送られてくる(初期費用200円、月額料金200円/番号)。インターネット上から、ドットフォンパーソナルのクライアントソフトウェアをダウンロードし、これにIDやパスワード、050番号を登録すれば設定が完了する。

 ただし、実際にテレビ電話を楽しむためにはいくつかの条件がある。ひとつはPCにUSBカメラなどが接続されていること。そして、もうひとつはインターネットに接続するためのルータがUPnPに対応していることだ。

 LAN側のPCから電話をかけたり、逆に電話を受けるには、PC側でグローバルIPアドレスを取得したり、ルータのポートを空けておかなければならない。ドットフォンパーソナルでは、これにUPnPを利用するため、UPnP対応のADSLモデム内蔵ルータなどを用意し、必ずUPnPを有効にしておく必要がある。推奨されている機器は、ドットフォンパーソナルの紹介ページから参照できるので、これを事前に確認しておくといいだろう。

 ただし、今回のテストでは、あえて推奨される機器を利用しなかった。Bフレッツなどの環境では、高性能な市販ルータとNTT東西が提供するVoIPアダプタという組み合わせで利用されるケースも少なくない。こういったケースでも問題なく利用できるかを検証するためだ。

 結論から言えば、市販のルータでも問題なく動作した。回線にBフレッツ・ニューファミリータイプを利用し、ヤマハの「RT57i」でインターネット接続の環境を構築。この状態で、VoIPアダプタに「ドットフォン」(通常のIP電話)の設定を行ない、加えて、PCに「ドットフォンパーソナル」をセットアップしてみたが、基本的に各サービスからの発信、着信、そしてドットフォンパーソナル同士のテレビ電話を問題なく利用できた。

 ただし、まれにドットフォンパーソナルの接続に失敗することがあった。前述したように、ドットフォンパーソナルではUPnPを利用するのだが、PCのネットワーク接続やマイネットワーク(XPにUPnPをインストールしている場合)にインターネット接続ゲートウェイのアイコンがきちんと表示されていないと、当然のことながら、接続に失敗してしまう。


ネットワーク接続やマイネットワークに、インターネット接続ゲートウェイのアイコンが表示されていないと接続に失敗することがある

 そもそもUPnPの動作は不安定であることが多く、アイコンがきちんと表示されない場合なども多い。たいていは、タイミングの問題でUPnPのアナウンスがうまく行なわれなかっただけであるため、PCを再起動すれば正常に接続されるのだが、こういったケースもあることは、サービスを利用する際は覚えておくといいだろう。





まさにテレビ電話

 さて、実際の使い心地だが、これはテレビ電話そのものだ。PCでドットフォンパーソナルを起動し、同じくドットフォンパーソナルを利用している相手の050番号をダイヤルすれば、相手の顔を見ながら会話を楽しむことができる(相手にUSBカメラがなければ音声のみ)。音質もIP電話とほぼ同等だ。


050番号にダイヤルすることで、テレビ電話を利用可能。音質や映像の品質も良好だ

 試しに、ドットフォンパーソナルのテレビ電話に加え、ドットフォンでの通常のIP電話も同時に行なってみたが、これによる音質の低下や映像の乱れなどもなかった。もちろん、これは利用する回線の帯域次第なのだろうが、ドットフォンパーソナルでは映像のビットレートなども自由に変更できる(フレームサイズとフレームレートによって決まる)。QVGA、30fpsの設定にした場合でも400kbps程度で済むため、ADSLなどでもテレビ電話とIP電話の組み合わせ程度であれば、問題なく同時利用できるだろう。


映像のサイズやフレームレートの変更も可能。表示されるビットレートを参考に、回線の帯域に合わせて調整できる

 また、ドットフォンパーソナルでは、利用するサウンドデバイスの設定を個別に設定できるため、前回の連載で取り上げたパイオニアのUSB電話機「TF-FS22M-Rも問題なく利用できた。ヘッドセットではなく、通常の電話機を使って会話をすると、よりテレビ電話らしさが強調される印象だ。


Windowsとは別に利用するサウンドデバイスを設定可能。通常のサウンドとドットフォンパーソナルの音声を別々のデバイスで使い分けられる

 とは言え、テレビ電話自体は、さほど感動するようなものでもない。相手を呼び出す番号が050になっただけで、テレビ電話自体はメッセンジャーソフトのビデオチャットと何ら変わりはない。そもそも、ドットフォンパーソナルには、電話をかけるだけでなく、チャットやファイル転送、ホワイドボードといった機能も備えられており、メッセンジャーソフトと機能的にも大差はない。

 むしろ、このサービスのメリットは、専用の050番号が割り当てられるという点だろう。テレビ電話をかける相手がいなかったとしても(そのユーザーの方が圧倒的に多いだろうが……)、ドットフォンパーソナルであれば、自分専用の050番号を持つことができる。これまでは、IP電話と言えども、「家族の電話」という使い方を脱却できなかったが、これにより「個人専用の電話」としての使い方が見えてきた。

 もちろん、どこまで個人専用の電話が必要かは意見が分かれるところだが、少なくとも、今のままのIP電話の形態では、電話としての魅力に欠ける部分が多い。個人専用の番号、つまり複数の電話番号を持てるようになっただけでも、極めて大きな進歩だ。





問題はPCを使わなければならない点

 以上のように、ドットフォンパーソナルは、テレビ電話を利用できる点、そして複数の050電話番号が持てるという点が特徴のサービスと言える。実際の利用方法も手軽で、サービスとしての完成度はなかなか高いと言える。

 しかし、やはり難点となるのは、PCを使わなければならない点だ。もちろん、テレビ電話を楽しむためにPCは欠かすことができない。しかし、PCが起動し、しかもドットフォンパーソナルを起動させておかなければ、テレビ電話だろうが、音声だけであろうが、電話を受けること自体ができない。せっかく、テレビ電話ができたり、自分専用の050番号を持てたとしても、つながるタイミングが限られてしまうのでは、利用頻度も下がってしまうだろう。

 ただし、工夫によっては、テレビ電話は無理でも、自分専用の050番号をいつでも使えるようにしておくことはできる。この点について、次回、さらに検証してみることにしよう。


関連情報

2004/3/23 10:42


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。