第138回:PCレスのテレビ録画環境を実現!
LAN接続型HDD「Linkstation」でテレビ録画ができる「Link de 録!!」



 バッファローから、LAN接続型HDD「LinkStation」に接続したテレビキャプチャユニットでテレビ録画が楽しめる「Link de 録!!」が正式にリリースされた。録画した映像をLAN経由で再生できる上、So-netが提供するテレビ番組情報サービス「So-net テレビ王国」を利用することでリモートからの録画予約なども可能だ。実際の使い心地をレポートしよう。





録画環境と再生環境を分離

 バッファローからリリースされた「Link de 録!!」は、テレビ録画機能搭載PC、HDD&DVDレコーダに次ぐ、第三のテレビ録画環境だと言える。

 LAN接続型HDDの「LinkStation(もしくはTeraStation)」、テレビキャプチャユニットの「PC-MV7DX/U2」、そしてPC(もしくはネットワークプレーヤー「LinkTheater」)という3つの機器から構成されるソリューションとなっており、LinkStationにUSB接続したPC-MV7DX/U2でテレビ番組を録画、それをネットワーク上のPCから再生するという構成になっている。


Linkstation HD-HG250LANとUSB接続のテレビキャプチャユニット「PC-MV7DX/U2」。USBで2台の機器を接続することにより、PCレスのテレビ録画環境を手軽に構築できる

 これまでのテレビ録画環境は、PCにしろ家電にしろ、基本的に「録る」「貯める」「見る」という3つの機能を1台の機器で完結するスタンドアローン環境が主流だが、「Link de 録!!」は「録る」と「貯める」というストレージ機能と「見る(もしくは操作する)」というコンソール機能が切り離されているのが特徴と言えるだろう。

 「Link de 録!!」のメリットは、テレビ録画にPCを使わなくて済む点にある。もちろん、録画予約の登録などにはPCが必要だが、実際の録画そのものにはPCを一切使用しない。PCでの録画環境では、スタンバイからの復帰に失敗して予約した録画がうまくできなかったり、PCでの作業中に録画が開始されパフォーマンスの低下が気になるといったことがよくあるが、こういった問題から解放される。どちらかというと、ネットワーク機能を備えたHDD&DVDレコーダに近い使い方だ。





LinkStationが各種機能を提供

 「Link de 録!!」の中核となるのは、LAN接続型HDDの「LinkStation」シリーズだ。USB接続したPC-MV7DX/U2を制御したり、PCから専用のソフトウェア「PCastLink」を利用して映像を再生する際のサーバーとなるなど、「Link de 録!!」の機能のほとんどをLinkStationが提供することになる。

 このため、実際に「Link de 録!!」を利用するには、LinkStation(HD-HGLANシリーズのみ対応)のファームウェアのアップデートが必要だ。バッファローのサイトで無償配布されているので、これをダウンロードし、あらかじめアップデートしておく必要がある。

 アップデートが完了すると、LinkStationの設定画面に「PCast」というメニューが新たに追加され、録画操作や各種設定が可能となる。と言っても、最低限必要なのはチューナーのチャンネル設定くらいなので、使い方としては手軽だ。


LinkStationのファームウェアをアップデートすると、「Link de 録!!」の利用が可能となる。LinkStationの設定画面に追加された「PCast」という項目から設定が可能だ

 設定後、PCにインストールした「PCastLink」を利用してLinkStationに接続すれば、現在放送中のテレビ番組の再生や録画された番組の再生が可能となる。放送中のテレビ番組は、一旦LinkStationにバッファされてからPCに配信されるため、リアルタイムではなく、再生開始時やチャンネル切り替え時に若干の待ち時間もあるが、有線LAN環境だけでなく、、IEEE 802.11gなどの無線環境でもスムーズに映像を再生できた。


PCにインストールしたPCastLinkを利用し、ネットワーク経由でアクセスすると、テレビ放送の再生・録画予約・録画番組の再生などが可能となる

 録画予約の操作も簡単だ。LinkStationの設定画面からの手動登録以外にiEPGも利用可能で、PCからインターネット上の番組情報サイトにアクセスし、予約したい番組をクリックすれば、その情報がLinkStationに転送されて録画予約が完了する。画質はMPEG-2で「高画質(8Mbps)」「標準画質(6Mbps)」「低画質(4Mbps)」「ストリーミング画質(2Mbps)」が選べるほか、MPEG-4も同様に「高画質(6Mbps)」「標準画質(4Mbps)」「低画質(2Mbps)」「ストリーミング画質(1Mbps)」を選択できる。

 あとはLinkStationにまかせておくだけでいい。指定した時間になると、自動的にUSB接続したPC-MV7DX/U2から映像が受信され、それがMPEG-2形式の「番組名_日付.mpg」というファイルとしてLinkStationの指定フォルダに保存される。前述したように、「PCastLink」を利用して再生することもできるし、ファイルサーバーのように共有フォルダにPCからアクセスして、MPEG-2ファイルを再生したり、PCに転送することもできる。


録画した映像は一般的なMPEG-2ファイルとして保存される。共有フォルダから直接再生したり、ネットワーク経由でPCに転送することもできる

 なお、LinkStationの場合、最大2台のPC-MV7DX/U2を接続してマルチチューナー環境で利用することもできる上、複数のPCから再生することも可能だ(チューナーが1台の場合は最初に再生を開始した人にチャンネル権が与えられる)。





So-net「テレビ王国」との連携でリモート操作も可能

 So-netが提供しているiEPG「テレビ王国」に対応しており、テレビ王国へのユーザー登録やLinkStationでiCommandの設定をすることで、外出先からリモートでLinkStationに対して録画予約を実行したり、指定したキーワードに合う番組を自動的に録画することもできるようになっている。


テレビ王国のサービスを利用するには、iCommandの設定が必要。サイト側に登録したユーザーIDやパスワード、予約情報を取得する時間などをあらかじめ指定しておく

 個人的には、自動録画は見ない番組まで次々に録画されるため、あまり好みではないのだが、リモートからの録画予約は確かに便利だ。PCからはもちろんのこと、携帯電話でもテレビ王国のサイトにアクセスして、手軽に録画予約ができる。うっかり予約を忘れたなどという場合でも、きちんと対応できるようになっているのはありがたいところだ。


PCや携帯電話を利用し、外出先からリモートで録画予約することも可能。あらかじめ指定した時間に、LinkStationがサイトにアクセスし、予約情報を取得する仕組みになっている

 ただし、リモート予約と言っても、直接、LinkStationに予約を登録するわけではなく、サイト上に予約情報を一旦保存し、それを定期的にLinkStationがアクセスして取得するという方式のため、リアルタイムに予約ができるわけではない。あらかじめLinkStationに設定されたタイミング(一定時間おきか、時間指定)でしか情報が取得できないため、設定によっては録画予約が間に合わない場合もある点には注意が必要だ。

 また、筆者がテストしたところ、LinkStationのIPアドレスが固定で割り当てられている場合は、うまくiCommandのサービスを利用することができなかった(通信エラーになってしまう)。iCommandを利用する場合は、DHCPでIPアドレスを取得する必要がある点にも注意が必要だ。





LinkStationを持っている人にはおすすめ

 このように、「Link de 録!!」は、ネットワークでのテレビ録画/再生環境を手軽に構築できる、なかなかおもしろい機能だと言える。

 実際、筆者宅でも個人的に機器を購入して利用しているが、テレビ録画のためにPCを起動しておく必要がなくなり、快適に利用できている。同社のリモートアクセス対応無線LANルータ「WZR-RS-G54HP」と組み合わせることで、外出先からリモートアクセス後、テレビを再生したり、録画した番組を見るという使い方も問題なくできている。

 PCを利用したテレビ録画環境の場合、どうしてもリモートからの予約や再生時に、PCを常時起動させておいたり、WOL(Wake On Lan)などでスタンバイから復帰させなければならないが、LinkStationの場合、常に起動しているので、このような問題がないのは大きなメリットだ。

 ただし、LinkStationは容量の最も少ない「HD-HG120LAN」でも実売で28,000円前後、PC-MV7DX/U2も実売で25,000円前後の価格となる。トータルで環境を揃えようとすると5万円以上の出費となり、この価格だと、HDD&DVDレコーダも購入可能だ。先日、東芝から発表されたHDD単体レコーダ「RD-H1」は、250GBで3万円台の価格となる見込みで、低価格ながらネットワーク機能を備えた機種も登場してきた現在では、価格的には決して安いとは言えない。

 また、機能的にもまだまだ未完成と思える部分もある。特に個人的には、録画容量の上限を設定できるようにしてほしいところだ。LinkStationをファイルサーバーとして利用することを考えると、テレビ録画によってHDD容量が圧迫され、ファイルサーバーとしての用途に支障が出てしまうことが考えられる。現状は、USB接続のハードディスクをLinkStationに接続し、そこにテレビ番組を録画するなど、運用上の工夫が必要だ。

 このほか、LinkStationのスリープ設定をしている場合は、スリープ中の録画ができないため、解除しておく必要もある。これもうまく連動してスリープから復帰させるようにしてほしいところだ。さらに欲を言えば、DLNAなどに対応し、LinkTheaterや専用ソフト以外からも映像を再生できるようになるとありがたい。

 すでにLinkStation(もしくはTeraStation)を所有しているユーザーであれば、PCでの録画環境からの積極的な移行を推奨したいところだが、これから新たにすべての環境を用意するのは費用的に厳しく、そこまでする決定的な魅力があるとも言い切れない。まだリリースされたばかりであるため、今後の改善、そして何より低価格化を期待したいところだ。


関連情報

2005/3/8 10:55


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。