第206回:PCレスで広がる050番号の可能性
050番号が発着信できる「G-LEX」をIP電話機で使う



 インターネット経由で050番号の発着信が可能なユーエフネット(船井電機の子会社)の「G-LEX」。通常はPC上で動作するソフトフォンで利用するサービスだが、専用のIP電話機でもこのサービスの利用が可能だ。早速、G-LEX対応のIP電話機を利用してみた。





050番号の未来が広がる可能性も

 スカイプの「SkypeIn」、エニーユーザーの「freep」、そして今回紹介するユーエフネットの「G-LEX」と、インターネット経由で050番号の発着信が可能な新サービスがいくつか登場し始めてきた。これまで050番号を利用したIP電話サービスは、主にISPのセット、もしくはオプションサービスとして提供されてきたことから、ユーザーにサービスの選択権がなかったが、前述したサービスは、すべてインターネット経由での利用が可能なサービスとなっており、ISPや回線環境と無関係に利用することができるのが特徴となっている。

 インターネット経由での利用ということから、いずれのサービスも厳密には「IP電話」サービスではなく、「インターネット電話」サービスとなり、本来は050番号を利用した発着信ができないが、050番号を利用するIP電話ネットワークとインターネット間での相互転送を行なうことで050番号での発着信を実現している。たとえば、ユーエフネットの「G-LEX」の場合であれば、フュージョンから050番号の割り当てを受けており、フュージョンの050番号にかかってきた電話をインターネット経由でG-LEXの番号へ転送、電話をかける場合はこの逆のプロセスとなっている。

 つまり、ユーザーからの視点で見た場合、これらの新しいサービスは、従来の050番号サービスとほぼ同じサービスに見えながら、ISPフリー、回線フリーで、しかもインターネットに接続できる場所ならどこからでも利用可能なサービスということになる。これまでの050番号IP電話と異なり、ユーザーにサービス選択権や利用形態や利用シーンの自由度が与えられたというのは画期的だろう。これらのサービスの登場によって、050番号を利用した電話サービスに新たな使い方が広がりそうだ。





ソフトフォンだけでは限界がある

G-LEXで利用可能なソフトフォン「SJphone」。インターネット経由で発着信可能な050番号サービスは、基本的にソフトフォンを利用する必要がある

 とは言え、前述したサービスは画期的でありながらも、弱点も抱えている。現状はPC上で動作するソフトフォンを利用するサービスのため、利用時にPCを起動しなければならず、会話もPCのスピーカーとマイク、もしくはヘッドセットを利用するというスタイルになっている。

 このため、ユーザーは電話をかけるためにわざわざPCを起動しなければならず、着信用にも使おうとすれば電話を受けるためにPCを起動させたままにしておかなればならない。出張先や海外など、インターネットにつながる場所ならどこでも050番号での発着信が可能というのがソフトフォンのメリットだが、筆者のようにほぼ1日中PCが起動し、日常の大半をその前で過ごすというユーザーならまだしも、大半のユーザーには使いにくいかもしれない。

 そんな中、登場したのが、今回取り上げるIP電話機「snom 220」だ。ドイツのsnom AG社製のLinuxベースのIP電話機で、現在、秋葉原などで販売されているが、流通の問題から在庫限りにて低価格(7,800円)で販売されている。インターネット上では、すでにNTTのひかり電話などで利用できることから話題になっていたが、前述したG-LEXのサービスでも利用可能となっている。また、現在秋葉原の「おっと」ではG-LEXをバンドルしてsnom 220が販売されている。

 G-LEXは初期費用1,050円、月額525円の有料サービスだ。一般加入電話やIP電話には3分8.4円、携帯電話へは1分16.8円、PHSへは1通話10.5円と1分ごと12.6円、国際電話は米国で1分8円から通話でき、決済にはクレジットカードを利用する。WebサイトからG-LEXに申し込むと、1日程度で利用に必要な設定情報がメールで送られてくる。

 この設定情報をsnom 220に設定するのだが、今回使用した製品にはA4カラーコピーの3枚ほどのG-LEX用接続マニュアル(日本語)が添付されており、説明に従って設定することでカンタンにG-LEXで利用できた。といっても、ブラウザでsnom 220にアクセスすると設定ページが表示されるので、ここで言語を日本語に変更後、SIPの設定ページでG-LEXから提供されたSIPドメイン、ユーザーID、パスワードを設定するだけなので、マニュアルがなくても設定できるだろう。


snom 220背面にLANポートを搭載

snom 220の設定画面。基本的には、G-LEX加入時に発行された「SIP ID」をアカウントに、「SIP ID PASSWORD」をパスワードに、「SIPドメイン」をレジスター欄に入力すれば設定が完了する。複数のアカウントを登録可能となっている

設定完了後、SIPサーバーへの接続が完了するとディスプレイに電話番号と電話のマークが表示される。上がG-LEXのサービスで、下がひかり電話の設定だが、筆者宅ではうまくレジストできずに「×」マークが表示されてしまった




複数の電話番号も設定可能

 ちなみに、snom 220には複数の接続を設定することが可能となっている。そこで、G-LEXに加えて、ひかり電話の設定やISPの050IP電話の設定も登録してみたが、残念ながら筆者宅の環境ではSIPサーバーにレジストすることができなかった。ひかり電話に関しては、使用するルータがRT200KIの場合であれば、インターネット上に動作の成功がレポートされているので、筆者宅で利用しているRT200NEとの組み合わせの問題だと思われる。

 肝心の音質だが、まったく問題ない印象だ。もともとG-LEXのサービスをPCのソフトフォンで利用した場合でも遅延や音質の悪さなどを感じることはなかったが、同様にsnom 220で利用した場合でもクリアな音質で電話を利用できた。インターネット経由であることを意識させられることは一切なく、一般的な050IP電話、もしくは一般加入電話と遜色のない品質と感じた。

 普通の電話として利用するための機能も一通り備えている。特に電話帳に関しては、ブラウザで設定ページにアクセスして編集できたり、CSVファイルから一気に登録することもできるようになっている。デスクの上で利用する電話機としては悪くないだろう。


Snom 220の電話帳機能。ブラウザでアクセスすることで編集できる。CSVからの一括登録なども可能

低価格モデルの「snom 105」

 実際の使い勝手も良い。ソフトフォンの場合、電話をかけるときにヘッドセットを探したり、場合によってはオーディオの設定やボリュームの調整をしなければならないが、snom 220なら、当たり前だが受話器を取ってダイヤルするだけですぐに電話が使える。かかってきた電話も、呼び出し音が聞こえたら受話器をあげるだけとカンタンだ。日常的にソフトフォンを利用しているのであれば話は別だが、やはり電話として使うのなら電話機を利用するのが自然で使いやすいだろう。

 G-LEXのサービスの場合、複数のクライアントから同時にSIPサーバーにレジストすることが可能(着信は後からレジストしたクライアントのみ)となっているので、自宅では主にsnom 220のようなIP電話機を利用し、外出先でソフトフォンを利用するといったように使い分けるのも悪くないだろう。もちろん、電源とLANケーブルさえあればsnom 220が利用できるので、国内外を問わず、出張のときなどにsnom 220を持って行ってしまうというのも1つの手だろう。

 なお、今回はsnom 220を試用したが、snom 105という低価格なモデルも発売されている(3,800円)。設定画面などを見ると機能が若干簡易な印象だが、こちらでも問題なくG-LEXを利用できる。snom 220が入手できない場合はsnom 105を利用しても問題ないだろう。





1台あると便利

 このように、今回は汎用的なIP電話機をインターネット経由で利用できる050番号サービスで利用してみたが、やはり電話は電話機で使う方が手軽で便利なのは明らかだ。G-LEXのようなサービスを本格的に利用するのであれば、snom 220の購入を検討してみるといいだろう。場合によってはほかのIP電話サービスで利用することもできるので、1台持っておくと便利かもしれない。

 今回はG-LEXのサービスで利用したが、個人的には同様のIP電話機でSkypeInで使えるものが出てくると面白いのではないかと考える。このあたりは、今後に期待したいところだ。


関連情報

2006/8/1 10:50


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。