第242回:「ホームサーバー」へと進化するNAS
アイ・オー・データ機器「LANDISK Home HDL4-G1.0」



 アイ・オー・データ機器から、家庭での利用を想定した新型NAS「LANDISK Home」が登場した。スタイリッシュなデザインと使いやすさ、リーズナブルな価格が魅力の製品だ。発売前の試作機を利用して、その実力を検証した。





テラバイト環境がリーズナブルに手に入る

LANDISK Home

 アイ・オー・データ機器のLANDISK Homeは、本体に4台のHDDを内蔵したNAS(ネットワーク接続型のストレージ機器)だ。複数台のHDDを利用することでテラバイトクラスの大容量を実現するとともに、RAIDによる高い安全性を確保している。容量の違いによって2モデルがラインナップされているが、今回、使用したのは250GBのHDDを4台内蔵した1TBモデルとなる「HDL4-G1.0」だ。

 RAIDに対応したNASは、すでに同社でも「LANDISK Tera HDL-GT/HDL-GTRシリーズ」をラインナップしているが、従来の製品が主にビジネス向けの製品だった。これに対して今回の製品は、「LANDISK Home」という名の通り、家庭での利用を想定した製品で、HDL-GT/HDL-GTRシリーズに比べていくつかの機能が省略されている。

 具体例を挙げれば、カートリッジ式のHDDによるホットスワップに非対応な点、対応するRAIDがRAID5のみでRAID1+0に対応していない点などだ。ほかにもプリントサーバー、FTPサーバー、セルフ/リモートバックアップ、Active Directory対応、NTドメインログオンなどの機能が省略されている。

 これにより小型化と低価格化が実現されており、1TBモデルの「HDL4-G1.0」の店頭実売価格は69,800円前後とかなりリーズナブルだ。HDL-GT1.0(実売9万円前後)より2万円ほど安く、場合によっては750GBクラスのNASよりも安く買えてしまうことになる。ストレージ製品の価格は期間が経過するごとに安くなる傾向にあるが、現時点でのコストパフォーマンスは相当に高いだろう。


本体正面背面にはHDD交換時のマニュアルを用意本体側面

本体下部にスイッチを兼ねたUSBポート本体のネジはコインで開けられる

HDDを固定するネジもコインで外せるHDDを外した後




NASでもっとも重要なのは「安全性」

 家庭用NASと言ってもあまり実感が湧かないかもしれないが、音楽データの増加、静止画の高画質化、ビデオカメラの映像など、家庭内にはすでにギガバイト級のデータが存在することも珍しくない。実際、筆者が自宅で利用しているNASには、写真だけで7GBほどのデータが保存されている。ハイビジョン映像の録画やハイビジョン対応のビデオカメラの映像を保存するといった使い方であれば、数百GBの容量もすぐに消費してしまうだろう。

 今回登場したLANDISK Homeは、このようなデータを効率的に、しかも安全に保存するためのソリューションだ。1TB(RAID5の場合は750GB)の大容量で、家庭内のあらゆるデータを1カ所に集約でき、RAIDによってデータの安全性を確保できる。

 この安全性というのは実は非常に重要な点だ。筆者はNASの登場当初から何台かNASを使い続けてきたが、そのうち1度だけ、HDDの故障によってデータを失なったことがある。故障の原因は筆者の使い方にもあったのだが、すべてのデータをNASに放り込むという使い方をしていたため、大切なデータが一瞬にして失われたときは茫然自失の状態に陥ってしまった。

 幸い、バックアップしたデータがあったためにすべてのデータが無くなったわけではないが、バックアップからもれた最新データのいくつかは失われてしまった。また、データの復旧に相当の費用と時間がかかってしまった。

 こうした経験があるために、筆者としてはNASを選ぶ際には何よりもまず安全性を重視している。LANDISK HomeはRAID(標準ではRAID5)によってHDDの故障にも対応できる設計になっており、ジャーナリングファイルシステム、エラーのリペア機能、温度監視などの安全性を高める機能が数多く搭載されいてる。写真やビデオといったかけがえのないデータを保存するのにも適しているだろう。





スタイリッシュで高い静粛性も実現

 実際にLANDISK Homeを利用してみたが、まず驚いたのはそのコンパクトさだ。個人的に利用している「LANDISK Tera HDL-GT1.0」と比較してみると、高さはほぼ同等だが、奥行きが2/3程度しかなく、幅も若干狭い。本当にHDDが4台も内蔵されているのかと疑いたくなるほどのコンパクトさだ。

 デザインもPC周辺機器にありがちな”野暮ったさ”がなく、非常に洗練されたイメージがあり、色合いにも清潔感が感じられる。ロゴやLEDの文字まで無くしてしまえば、インテリアとしても立派に通用しそうだ。これなら、確かにリビングに設置してもまったく気にならない。

 動作音に関しても、よく抑え込まれている。複数台のHDDを搭載したNASの場合、うねり音というか共鳴音というか、HDDが回転したときの音と振動が気になることが多い。しかし、本製品の場合、HDDが縦方向に、しかも2台ずつが向かい合わせに設置されているためか(つまり2台ずつで内部の回転方向が逆になる)、もしくは底面のパッドで振動がうまく吸収されているせいか、振動や共鳴音があまり気にならない。

 もちろん、まったく振動が無いというわけではなく、たとえば動作中に本体に触れたり、設置場所の近くの床に触れれば、若干の振動を感じる(HDDの個体差によっても異なるが…)。よって、振動が伝わりやすいような場所に設置すれば気になる可能性もあるが、コルクシートや振動吸収シートなどを介して設置すれば、おそらく振動はほとんど気にならなくなるだろう。


内部のHDDは左右2基ずつで方向が異なる。これは予想に過ぎないが、回転方向を逆にすることで、振動を相殺している可能性もある小型だが、よく振動を吸収している印象の底面のパッド。ただし、完全に振動を抑えるのは無理なので、別途、振動吸収シートやコルクシートなどを敷いて設置するのがお勧め

 一方、ファンの動作音だが、こちらもかなり押さえ込まれているものの、やはり無音というわけにはいかない。本体上部に小型のシロッコファンが2機搭載されており、これによって内部の熱を排気する仕組みになっており、ファンが回転すると風を切るような音が聞こえてくる。

 ただし、音自体のレベルはさほど大きくはなく、部屋でテレビなどのほかの音が聞こえる場合はその音にかき消されてしまうためにほとんど気にならない。リビングに設置すると考えた場合、おそらく静まりかえった夜中に若干、音が聞こえるという程度で済むだろう(実際にはスケジュール設定で夜間電源OFFにできるので夜中も気にならない)。


上部に2基のシロッコファンを搭載。小型のファンであるため、動作音は若干気になる。もう少し大型のファンの方でも良さそうだが、本体サイズの制限を考えると限界だろう

 こういった音や振動は複数台のHDDやファンを搭載する以上、避けられないのが実状だが、LANDISK Homeでは家庭での利用を想定してか、これらの音や振動がよく押さえ込まれている。特に、小型化と両立させたあたりは高く評価したいところだ。





設定の手軽さにもこだわりが

 家庭向けということで、設定のしやすさにも相当な工夫がなされている。付属のマニュアルは大きな文字と写真やイラストを多用した構成になっており、家電製品のようなわかりやすさが実現されている。DHCPやIPアドレスといった用語が登場してしまうのは仕方ないが、PC周辺機器としてはかなりわかりやすいマニュアルだ。

 実際の設定もブラウザを利用して設定画面を開くまでは従来と変わらないが、設定画面に「はじめて設定」という項目が用意されており、機器の名前やIPアドレス、省電力モードなどを流れに沿って手軽に設定できる。ほとんどの場合「次へ」を選ぶだけで設定できるだろう。

 この「はじめて設定」画面は、PCのブラウザだけでなく、Java Script/CSSに対応したブラウザ(ネットTVガイドライン1.0準拠)を搭載したテレビやDLNA対応機器からも表示できる。試しに、筆者宅のテレビ(パナソニック デジタルT D30T)、ケーブルテレビ用のSTB、Wiiからアクセスしてみたが、このうちWiiからのみ設定が可能だった。基本的に設定というほどの設定が必要ないうえ、詳細設定が必要な場合はやはりPCからとなるので実質的には利用しないかもしれないが、家電製品からも機器の設定ができるようになったことは素直に歓迎したいところだ。


通常のPC向けブラウザによる設定画面(左)に加えて、家庭用のテレビ搭載ブラウザからの設定も可能(右)

 もちろん、詳細な設定も可能で、共有フォルダを追加したり、ユーザーを登録してフォルダごとにセキュリティを設定したり、HDDのRAIDモードを変更することもできる。グループでのユーザー管理ができない点など家庭向けの機能のみに絞られている印象もあるが、基本的な使い方は一般的なNASとさほど変わりはない。

 ただし、RAIDはスパニングとRAID5にしか対応しておらず、ミラーリングなど他のモードは利用できない。データの安全性を確保するならRAID5以外に選択肢はあり得ないので、標準のRAID5のまま使うのが適切だろう。


詳細設定で共有フォルダの追加やRAIDモードの変更などが可能。ただし、RAIDはスパニングとRAID5のみの対応でミラーリングなどには非対応

 HDDの交換は、背面のネジを外してから上部のパネルを開ける必要があり、さずがにカートリッジ式ほど手軽に交換できるとわけではない。ただし、基本的にHDDが故障したときしか交換する必要はないので、若干の手間がかかるのは致し方ないところであろう。


上部のパネルを取り外し後、フロントパネルを取り外し、サイドからHDDを固定しているネジを取り外すとHDDを交換可能。背面に交換手順がイラストで解説されている




パフォーマンスも高く使いやすい

 実際の使い心地も快適だ。FTPサーバー機能が搭載されていないため、今回はFDBenchによる計測をしてみたが、手持ちのLANDISK Tera HDL-GT1.0とほぼ同等の速度を実現できている。基本的なプラットフォームは共通なので当然と言えば当然だが、値としては若干LANDISIK Homeが上回っており、実際のファイルコピーなどでもストレスを感じるようなことなく、快適に利用できた。




LANDISK Home(上)とLANDISK Tera(中)、さらにUSB接続のHDD(下)の速度をFDBenchで比較。後発のメリットか、LANDISK TeraよりもLANDISK Homeの方が若干パフォーマンスが高い結果となった

 また、USB接続の機器からのファイルコピーが手軽にできるのも便利だ。前面のUSBポートにUSBメモリやデジタルカメラを接続してボタンを押すと、保存されているデータを自動的にLANDISK Homeの共有フォルダにコピーできる。従来のLANDISKではクイックコピーと呼ばれる方式のみがサポートされており、基本的にはUSBメモリのデータを共有フォルダにコピーすることのみが可能だった。

 これに対して、LANDISK Homeでは新たにデジカメコピーというモードが用意されており、前面に接続したデジタルカメラの写真と共有フォルダのデジタルカメラの写真を比較し、新しい写真のみをコピーできる。コピーというよりも同期に近いイメージの機能だ。クイックコピーとデジカメコピーは排他の機能だが、一般的な家庭ではデジタルカメラのデータを保存することの方が多いと考えられるので、デジカメコピーに設定しておいた方が便利だろう。

 DLNA Server機能も搭載しており、標準で用意されている「dlna」フォルダに保存されたファイル、もしくは共有フォルダ作成時にDLNAでの公開を設定したフォルダのファイルを公開できる。映像に関してはmpg/mpeg/mpa/mpeg2/vob/wmv/asf/avi、写真はjpeg/jpg/png/bmp、音楽はmp3/wma/wav/pcm/lpcmの拡張子のファイルを公開することが可能だ。

 なお、音楽についてはDLNAだけでなくiTunes Server機能を利用して共有することもできる。こちらも標準で用意されている「iTunes」フォルダに音楽データを保存するか、共有フォルダの作成時にiTunes Server機能を設定すれば利用できる。音楽データを保存後、PC側でiTunesを起動すれば、自動的にLANDISKが表示されるので、音楽の再生も簡単だ。


DLNAサーバーに加えて、iTunesサーバー機能を搭載。共有フォルダに保存した音楽データをネットワーク経由で参照できる。ただし、AppleTVからの参照には非対応




データの保存先に困っている人にお勧め

 以上、アイ・オー・データ機器のLANDISK Home HDL4-G1.0を利用してみたが、単純にデザインを変えて、低価格化しただけの製品ではなく、デジカメコピーやiTuesサーバーなど、家庭でよく使われるであろう用途への対応がきちんとなされている点に感心した。

 今回は試用機であるため実際に目にすることはできなかったが、初心者層を想定して丁寧な解説をしたマニュアルが付属している点、HDDの交換手順を撮影したDVD映像を参照できるなど、使いやすさもよく工夫されている。現時点での完成度はかなり高いと言えるだろう。

 正直なところ、欠点らしい欠点が見あたらない製品なのだが、強いて今後に期待する点を挙げるとすれば、スタイルの提案が欲しいところだ。すでにNASを利用している人にとっては、低価格で使いやすいことが理解できるが、家庭での利用を考えるとNASという存在を知らないユーザーにもそのメリットを訴求しなければならない。リビングにNASがあるという生活がどういうものなのかを説明できるかどうかがカギだろう。

 また、もう少し付加価値というか、演出があっても面白そうだ。せっかくリビングに設置することを考慮するなら、LEDを多用して照明として使えるようにするとか、液晶ディスプレイを搭載してフォトフレームとしても使えるとか、これはやりすぎかもしれないがマイナスイオンが発生するとか、何か面白い使い方があってもよさそうだ(それで安くと言うのもぜいたくな話だが……)。

 いずれにせよ、今後、PCや家電、周辺機器などが家庭内で相互に連携するホームネットワークが進むと考えると、情報を蓄えるストレージの存在がさらに重要になる。「ホームサーバー」と言って良いのかどうかは議論の余地はあるが、その先駆けとして、LANDISK Homeがお手本を示した点は高く評価したいところだ。


関連情報

2007/4/24 11:03


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。