第317回:GPS搭載で地図サービスとも連携
有線LANを搭載したニコンのデジタルカメラ「COOLPIX P6000」



 旅行や散歩のお供に持ち歩くなら、ニコンの「COOLPIX P6000」はかなり面白い存在だ。内蔵GPSで写真に自動的に位置情報を付加でき、有線LANでオンラインに写真をアップロードできる。そんな同製品を実際に試用した。





ネットワーク対応を続けるニコン

COOLPIX P6000

 従来から進められているデジタルカメラの無線LAN対応といい、先日発表されたヘッドフォン型ディスプレイ「UP(ユー・ピー)」といい、最近のニコンにはユニークな製品が多い。

 そんな中、新たに同社のデジタルカメラのラインナップに加わったのが、今回紹介する「COOLPIX P6000」だ。COOLPIX Pシリーズのフラッグシップモデルとして位置付けられている製品で、有効画素数は1350万画素の1/1.7型CCD、広角28mm相当、光学4倍ズーム対応のレンズ、2.7型TFT液晶を備えたコンパクトデジタルカメラだ。

 最大の特徴は、GPSおよび有線LANの搭載だ。同社のデジタルカメラは以前から無線LANを内蔵した機種が存在したが、今回の製品では、このネットワーク機能が100BASE-TXとなり、さらにGPSが搭載されている。


本体正面本体背面本体上部の操作部

左側面にGPS右側面本体下部にSDカードとLANポート

 映像、音楽配信、ストレージ、さらには各種アプリケーションと、オンラインのサービスが本格的な普及を迎える中、さまざまなハードウェアメーカーがオンラインサービスとの連携に挑戦しつつも苦戦を強いられているが、そんな中、継続的にデジタルカメラへのネットワーク対応を図っているばかりでなく、UPのようなさらに挑戦的な製品をリリースしてきたニコンのネットワーク対応、オンラインサービス連携にかける意気込みを感じさせる製品だ。





GPSで記録、有線LANで転送、オンラインで参照

 では、実際に製品を見ていこう。デジタルカメラとしての実力に関しては、僚紙デジカメWatchの記事を参照していただくとして、ここではGPSとネットワーク機能を中心に見ていくことにしよう。

 本製品の使い方を簡単に紹介するとすれば、「GPSで記録」「有線LANで転送」「オンラインで参照」と表現できる。

 まずは「GPSで記録」だ。これまで単体のGPSロガーとデジタルカメラとの組み合わせや、GPS搭載携帯電話で写真撮影後にGPS情報を付加することなどは可能だったが、今回のCOOLPIX P6000では、本体にGPS機能を内蔵し、写真への位置情報の記録も完全に自動化されている。

 と言っても、購入時の初期状態では位置情報記録機能は「OFF」に設定されているので、まずはこれを「ON」にする。モードダイヤルを「GPS」にセットし、セットアップメニューで「ON」に変更後、同じくメニューから位置情報更新を実行し、現在位置で衛星を捕捉し、位置情報を設定する。

 さすがに屋内ではGPSを捕捉できないが、空が開けた外などで実行すれば、数分程度で位置情報を取得可能だ。もちろん、位置情報は定期的に自動更新されるようになっており、取扱説明書によると、その間隔は約5秒とされている。

 「記録有効時間」の設定で、建物の中に入った場合など、GPSを捕捉できなくなってからでも直前の位置情報を記録し続ける時間を設定できる(標準は1分)、電源オフの状態でも90分ごとに位置測定が実行されるため、長時間の旅行などでも正確な位置情報の記録ができるだろう。


位置情報記録機能を有効にし、記録有効時間も用途によって変更しておく
GPSをきちんと捕捉できると衛星の数や緯度経度が表示される

 このように、GPSで測定された位置情報はGeotagとして画像データに付加される。試しに、撮影した写真をPCに取り込んでプロパティの「詳細」タブを確認してみると、GPSという項目に「緯度」「経度」「高度」の情報が付加されている。この情報で位置を判断できるというわけだ。


位置情報記録機能をオンにした状態で撮影した写真のプロパティ。GPS情報として緯度経度などのGeotagが付加される




有線LANでmy Picturetownに転送

 このように撮影した写真は、メモリカード(SD)やUSB経由でPCに取り込むことも可能だが、有線LANで直接オンラインにも転送できるようになっている。

 カメラ本体の底面、グリップの真下あたりのカバーを開けると、100BASE-TX対応の有線LAN端子が姿を現す。ここに一般的なLANケーブルを接続すれば、ネットワークにカメラを直接接続できるというわけだ。

 ニコン製のカメラでは、これまでネットワークへの接続に無線LANが利用されていたが、本製品の場合は有線LANのためネットワーク関連の設定は一切不要だ。IPアドレスを手動で設定することは可能だが、標準でDHCPから取得するようになっているため、LANケーブルさえつなげばネットワークに参加させることができる。

 底面にLANケーブルをつなぐ必要があるため、そのままではカメラをテーブルなどに置くことができなくなってしまうのが難点だが、転送作業で背面の液晶を見ながらボタン操作する必要があるので、接続中は手に持っているか、小型の三脚などを使って固定すると良さそうだ。


底面にLANケーブルを接続。手で持って操作するか、小型の三脚を使うと便利

有線LANのためネットワークの設定は基本的に不要

 では、有線LANを接続すると何ができるのかというと、同社が提供しているオンラインアルバムサービス「my Picturetown」にカメラから直接写真を転送できるようになる。

 カメラのモードダイヤルを「ピクチャーバンクモード」に切り替えると、撮影済みの写真が表示される。この中から転送したい写真を選んで転送すれば、インターネット経由でmy Picuturetownに保管されるというわけだ。

 この機能の利用には、あらかじめmy Picturetownにユーザー登録しておく必要があり、初回転送時にカメラとのペアリング(カメラ側に設定されている4桁のキーをmy Picturetownに登録する)作業が必要になるが、一旦設定してしまえば次回以降は写真を選んで転送するだけと簡単だ。


サービスを利用するにはあらかじめユーザーIDを登録し、それをカメラ側に設定。さらに、カメラに設定されているキー情報をmy Picturetownに登録する

 1350万画素、ファイルサイズにして3MB弱の写真ともなると、10枚で30MB、30~40枚で100MBオーバーとかなりの大容量となり、やはり無線LANでは若干荷が重い。とは言え、100Mbpsの有線LANでも、転送にはそれなりに時間がかかり、写真1枚あたりで12~13秒、サーバーへの接続や認証などの最初のプロセスを含めると、10枚の転送で2分半程度の時間がかかる。

 有線LANというと、高速な転送ができそうなイメージがあるが、そこはやはりオンラインサービスへの転送だけあって、枚数が多いとそれなりに時間がかかる。100枚単位での転送であれば、しばらく放っておくのが賢明だ。


撮影した写真の一覧から転送したいものを選択
転送を開始すると自動的にオンラインに保管される。時間は1枚あたり12~13秒程度




オンラインのマップビューで写真を参照

 このように有線LANを使って転送されたGeotag付きの写真は、my Picturetownの新機能となるマップビューで参照することができる。

 my Picturetownをマップビューに切り替えるとGoogle マップが表示され、地図上のピンと写真が関連づけられて表示される。たとえば、川沿いなどを散歩しながら写真を撮ると、その道筋に転々と写真が並ぶわけだ。

 初期設定さえ済ませておけば、GPSやLAN、オンラインサービスなどと面倒なことは考えず、撮って転送して見るだけで、地図と写真を連携させて楽しむことができる。これは実に手軽で楽しい。

 これなら、カメラ片手にいろいろなところを散歩してみたいと思うし、旅行にも欠かさず持って行きたいと思えるだろう。


my Picturetownのマップビューで表示すると写真の撮影地点がGoogle マップ上に表示される

 場合によっては、ビジネスへの活用もできそうだ。不動産の下見、店舗開発の調査、工事現場のチェックなどなど、写真だけでなく、そこに位置情報とマップ表示がプラスされれば、調査結果の管理やレポート作成などが飛躍的に効率化できる。

 防水、防塵、耐衝撃性など、いわゆる現場向けの本体に搭載し、セキュアなソリューションと組み合わせて提供すれば、法人需要が結構あるのではないだろうか。

 なお、撮影した写真はmy Picturetownだけでなく、同社製の写真管理ソフト「ViewNX(地図対応の最新版はダウンロードの必要あり)」でも地図情報と関連付けして表示することができる、さらにはグーグルの「Picasa 2」と「Google Earth」という組み合わせでも利用可能だ。


最新版のViewNXをダウンロードすることでローカルでも地図情報と写真の関連づけが可能

Picasa 2とGoogle Earthでも利用可能

 以上、ニコンのGPS/有線LAN搭載デジタルカメラ「COOLPIX P6000」を実際に利用してみたが、単なるオンラインアルバムサービスとの連携だけでなく、GPSによる地図情報との連携が加わったことにより、かなり応用の幅が広がった製品になった印象だ。旅行に使うのが面白そうだが、法人向けでの採用も真剣に検討したくなる製品と言えそうだ。


関連情報

2008/11/4 11:12


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。