第345回:アイ・オーのLANDISK Home「HDLP-Gシリーズ」

小型・ファンレス・USB接続対応と三拍子揃ったLAN接続型HDD


 アイ・オー・データ機器から2.5型HDDを搭載したLAN接続型HDD「LANDISK Home HDLP-Gシリーズ」が発売された。厚さ26mmというコンパクトな製品ながら、DLNAサーバーやリモートアクセス機能などを備え、USB接続による設定や利用も可能となっている。

厚さ26mmのコンパクトさ

LANDISK Home HDLP-Gシリーズ。写真は500GBモデル「HDLP-G500」で、250GB/320GBモデルも用意する

 最大容量では3.5型HDDに劣るものの、価格はほぼ互角、それでいて本体サイズと静音性は圧倒的に有利。このような特徴を考えると、これからのLAN接続型HDDの主流、特に家庭向けの製品の主流は、2.5型HDDを採用した製品へと徐々にシフトしていくことであろう。

 アイ・オー・データ機器から発売された「LANDISK Home HDLP-Gシリーズ」を実際に使ってみると、改めてそう感じさせられる。

 HDLP-Gシリーズは、非常にコンパクトなサイズが特徴のLAN接続型HDDだ。曲線をうまく使ってやわらかさが表現されたボディ、ホワイトを基調にランプも兼ねる底面部にクリアパネルをあしらった清潔感のあるデザインが印象的で、本体サイズは約126×130×26mm(幅×奥行×厚)、重量は約350gしかない。

 特に厚さは26mmしかなく、横置きで利用することから、一見するとまるで置物やぬいぐるみなどを上に置くための台座であるような印象さえ受ける製品だ。


本体正面背面厚さは26mm。3.5型HDDと厚さはさほど変わらない

 このコンパクトさが実現されているのは、冒頭でも触れたように2.5型のHDDが採用されている点が大きい。同様に2.5型HDDを採用した製品は、バッファローの「LinkStation Mini」などがあるが、本製品はより薄さとデザイン性が重視されている。

 設置時にLANケーブルの配線をうまく処理すれば、テレビの横やリビングの棚などに設置されていてもまったく違和感を感じない製品だろう。

動作音はほぼ無音

 2.5型HDDの採用は、静音性にも大きく貢献している。一般的なLAN接続型HDDの場合、製品によってはアクセス音や冷却用ファンの音が気になることがあるが、本製品は非常に静音性が高く、ほぼ無音と言っても良いほど静かだ。

 電源をオンにした直後の起動時やPCからアクセスしている最中は、「カリカリ」という軽い感じのアクセス音が発生するが、近くにいる場合に若干聞こえる程度。1~2m前後も離れてしまえば生活音にかき消されて、まったく気づかないレベルとなる。

 もちろん、ファンレス設計となっているため、ファンの音なども一切しない。とにかく静かなストレージが欲しいという人には最適な製品だろう。


とにかく静かでコンパクトなため、REGZAとの組み合わせに最適。LANでもUSBでも接続できる

 ちなみに、筆者は東芝の液晶テレビ「REGZA」に1TBのUSB接続型HDDを繋いで番組の録画に利用しているのだが、現在利用しているHDDのアクセス音は比較的大きく、録画番組を視聴している際には、静かで緊迫したシーンになるほどHDDの音が気になってしまうことがある。

 PCからの利用であれば、アクセス音もあまり気にならないのだが、テレビなどの録画に使う場合はやはり静かなHDDが欲しい。そういった使い方に非常に適した製品と言えるだろう。

USBを利用した手軽な初期設定

 このようにハードウェアの完成度が非常に高いHDLP-Gシリーズだが、使いやすさという面でもかなり高く評価できる。

 中でも便利なのが、USBを利用した初期設定が可能な点だ。HDLP-Gシリーズの背面には、2つのUSBポートが搭載されているが、このうちのmini USBコネクタを利用してPCと接続すると、自動再生の画面が表示。ここから「Easy Setup」と呼ばれるユーティリティを起動すると、HDLP-Gシリーズの初期設定を実行できる。


背面のUSBポートを利用してPCと接続可能。初期設定を手軽に済ませられる。バスパワー動作も可能USBでPCに接続すると自動再生で「Easy Setup」画面が表示IPアドレスの設定などに加えて、デスクトップのショートカットも作成する

 PCのIPアドレスやワークグループなどの情報をもとに、本体のネットワーク設定が自動的に行われる上、共有フォルダや設定画面にアクセスするためのショートカットもデスクトップに自動作成される。

 LAN接続型HDDの場合、このような初期設定は付属のCD-ROMを利用するか、ネットワーク経由で直接設定画面にアクセスして設定することが多い。しかし、HDLP-Gシリーズではこのような手間が必要ないことになる。

 一般的なユーザーの中には、USB接続型のHDDは使ったことがあるが、LAN接続型HDDは初めてという人も少なくないはずだ。そうしたユーザーの場合でも、USB接続型HDDと同様の感覚でLAN接続型HDDを設定できるので、設定に迷わずに済むだろう。

 なお、USB接続は設定のためだけの機能ではない。自動再生画面が表示される点からわかるとおり、HDLP-GシリーズをUSBケーブルを使ってPCに接続した場合、USB接続型のHDDとして動作できる。しかも、バスパワーによる動作も可能だ。

 このため、極端な例だが、普段はLAN接続型HDDとして利用し、外出の際などにさっと持ち出して、USB接続で使うといった使用方法も不可能ではないだろう。もちろん、どちらの接続方法でも同じデータにアクセスできる。

 ちなみに、LAN接続(1000BASE-T)とUSB接続の速度比較だが、USB接続の場合が若干高速なものの、LAN接続もさほど悪い数値ではない。500GBモデル「HDLP-G500」と、同じくアイ・オー製の「HDL-GS500(3.5型HDD採用)」と速度を比較してみたが、ほぼ同じか、HDLP-G500の方が若干良好な結果を得られた。従って、LAN接続型HDDとしては一般的なパフォーマンスを持っていると考えて差し支えないだろう。


HDLP-G500のLAN接続時のベンチマーク結果HDLP-G500のUSB接続時のベンチマーク結果3.5型HDDを搭載する「HDL-GS500」の結果。ほぼ同等の性能と考えて差し支えない

DLNAやリモートアクセスもサポート

 機能面の不足もない。WindowsやMacなどでファイル共有ができるのは当然として、DLNAサーバー機能やiTunesサーバー機能、さらにはリモートアクセス機能などもサポートしている。

 リモートアクセス機能については、本コラムで以前に紹介した「HDL-GSシリーズ」と同等だ。アイ・オーの「iobb.net」を利用したダイナミックDNS、そして専用Webページ(URL)からの専用Javaアプリを利用した共有フォルダへのアクセス、簡易Webサーバー機能が利用可能となっている。

 一方、DLNAサーバー機能に関しても、HDL-GS500などの従来機とほぼ同等だ。また、従来機で2009年1月にファームウェアで対応したフォーマット(MP4/MTS/M2TS/DivX/M4A)に関しても、本製品では製品出荷時から対応している。

 実際に、パナソニックのAVCHD対応ビデオカメラ「HDC-SD9」で撮影した映像を本製品に保存して、テレビに接続したプレイステーション 3から視聴を試したところ、問題なく再生することができた。本製品はAVCHDの保管先としての利用にも適していると言えそうだ。


設定画面からiobb.netを有効にすると、リモートアクセス機能などが利用可能になるリモートアクセスの様子。Webブラウザから専用Javaアプリを利用して外出先から自宅のファイルにアクセスできるPS3からも再生できた

 以上のように、HDLP-Gシリーズは機能的には3.5型HDDを採用したモデルと何ら遜色ないということになる。それでいて、価格はほぼ同等(500GBモデルのみ1000円ほど高い)で、ファンレスで静かになり、USB接続までがサポートされるのだから、お買い得感は高いと言えそうだ。

 唯一、気になる点を挙げるとすれば発熱だろう。ファンレスとなるため、ケース全体を使って放熱されることから、電源を入れてからしばらくすると、本体上部がかなり暖かくなる。と言っても、手で触って暖かいと感じる程度なので、冬場はむしろキーボードの横にでも置いて手を温めるのにちょうど良いくらいとなる。

 あまり心配する必要はないが、本体の上に物を置いたり、日の当たる場所や換気の悪い場所への設置は避けるべきだろう。


関連情報

2009/6/9 11:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。