第406回:300Mbps対応で省電力になった小型無線LANルーター プラネックス 無線LANマルチポケットルーター「MZK-MF300N」


 プラネックスから、スイッチひとつでルーター/アクセスポイント/コンバーターと動作を切り替えられる手のひらサイズの無線LANルーター「MZK-MF300N」が発売された。300Mbps対応となった新モデルの実力を検証してみよう。

300Mbps対応に進化

 プラネックスから登場した「MZK-MF300N」は、通常の無線LAN構築はもちろんのこと、ゲーム機の接続によし、家電の無線化によし、無線の中継によし、持ち運んでよし、と、実にいろいろな用途に使える非常に多機能な無線LANルーターだ。

プラネックスの無線LANマルチポケットルーター「MZK-MF300N」。手のひらサイズながら、ルーター/アクセスポイント/コンバーターとして使える多機能な製品

 従来製品となる「MZK-MF150」を以前に本コラムで取り上げたが、コンパクトで軽量なサイズでありながら、スイッチひとつでルーター、アクセスポイント、コンバーターの動作を切り替えられるという従来製品の特長を踏襲しつつ、さらなる性能の向上を果たした製品となってい。る

 具体的にどのような点が進化したのかというと、まずは無線LANだ。利用する周波数帯は同じく2.4GHz帯のIEEE802.11n/b/gだが、40MHz幅を利用するデュアルチャネル対応によって、最大速度が150Mbpsから300Mbpsに引き上げられている。

 2.4GHz帯を利用するため、実際のパフォーマンスは周囲の混雑状況次第とも言えるが、この300Mbps対応によって、より高速な通信が可能となったことになる。

 続いてはサイズだ。従来のMZK-MF150Nのサイズは約75×60×23mm(幅×奥行×高)で、重量が約69gとなっていたが、今回のMZK-MF300Nは約75×54×19mm(幅×奥行×高)で、重量が約50gと、一回り小さくなった。

 バッテリーを内蔵したモバイルルーターよりも小さく、軽い仕様となっており、ACアダプタを加えたとしても、持ち運びにまったく苦にならないサイズとなっている。

正面側面
上部背面

 本製品の場合、家庭での据え置き型の用途はもちろんのこと、出張時のホテルや外部でのミーティングなどでの複数ユーザーでのインターネット接続用としての用途が想定されるが、こういった用途を考えると、このサイズはありがたい。

 3Gなどのモバイルルーターと違って、WAN側に高速な有線LANを利用することができるため、インターネット環境が整っている会場でのイベントなどでの利用には、本製品の方が向いているだろう。

持ち運びに便利な手のひらサイズiPhone 4と比べてもかなり小さい

カシコイ省電力機能でよりエコに

 さらに、もう1点、従来製品から大きく進化した点がある。省電力機能だ。最近の無線LANルーターは省電力機能が標準的に搭載されるようになってきたが、本製品には「アクティブエコ」と呼ばれる特徴的な省電力機能が搭載されている。

 このアクティブエコは、利用状況に合わせて自動的に消費電力を調整する機能だ。本製品の仕様上の消費電力は最大2.3Wとなっているが、これは無線で通信している際のピーク時の消費電力となる。

 この状態から、PCやゲーム機など、接続中の端末が通信を停止し、接続しているだけの状態になると、自動的に消費電力を0.9Wまで低下させ、さらに端末の電源をオフにするなど接続が切れ、何もつながっていない状態になると0.5Wまで消費電力を落とすことができる。

 通信しなくなれば消費電力が落ちるのは当たり前と言えば当たり前なのだが、これを文字通り「アクティブ」に制御することで、より幅の広い電力調整を実現しているわけだ。

 実際、どれくらい消費電力が変化するのかを実際に比較してみたのが以下のグラフだ。比較対象として、バッファローのWZR-HP-AG300Hを利用し、通信時、通常時、ECOモード時のそれぞれの消費電力をワットチェッカーで計測してみた。

【消費電力比較】
※WZR-HP-AG300HのECOモード:スリープ設定(LED消灯、無線LAN無効、有線LAN無効)
※MZK-MF300NのECOモード:無線無効(ワットチェッカーにて計測不能なためメーカー公表値)

 手元のワットチェッカーが1ワット以下の表示ができなかったため、端数は切り捨て、さらにMZK-MF300NのECOモード時は推定の0.5Wとしているが、グラフの通り、かなり消費電力が低く押さえ込まれている。

 24時間、365日、動作させっぱなしで利用する通信機器だけに、このわずかな差も長い目で見ると大きな差になるだろう。

 なお、スケジュール機能で、無線LANを有効にする時間と曜日を指定することも可能だが、時間は各曜日で共通となるため、曜日ごとに異なる時間を設定することはできない。ただし、前述したように、アクティブエコの機能がかなり優秀なので、スケジュール設定は完全に停止させたい時間を選びたいときだけ有効にすれば十分だろう。

スケジュール設定も可能だが、何も設定しなくてもアクティブエコのおかげでかなり省電力

標準では無効になっている設定を活かそう

 実際の使い勝手もなかなか良い。ルーターやアクセスポイントとして使うなら、そのまま既存のLAN環境に接続して電源を入れれば良い。

 前述したように、本製品は本体底面のスイッチで動作モードを切り替えられるようになっているが、標準では「Auto」になっているため、ルーターとアクセスポイントのどちらで動作するかは自動的に判断される。

背面のスイッチでモードを切り替え可能

 この状態で、PCやゲーム機、スマートフォンなどから、「ap-pc-xxxxx」か「ap-game-xxxxx」のSSIDに接続すれば、無線でインターネットに接続することが可能となる。

 無線LANのセキュリティについては、「ap-pc-xxxxx」は標準でWPA2の暗号化が設定されているが、「ap-game-xxxxx」は暗号化が設定されていない。また、WPA2の暗号化が設定されている「ap-pc-xxxxx」も暗号キーは全製品で共通のものが設定されているため、購入後は速やかに暗号キー設定、変更しておくことをおすすめする。

 特に「ap-game-xxxxx」側は、暗号化なしで接続可能なうえ、通信制限もかけられていないため他のPCへの通信も許可されてしまう。「ap-game-xxxxx」は、仮想APとして設定されており、設定画面から接続先をWAN側のみに制限することもできるようになっているので、暗号化と合わせて接続先も制限しておくと良いだろう。

暗号化設定はなされているが暗号キーは全製品で共通。変更しておくことをおすすめするゲーム機用のSSIDは仮想APとして設定されている。こちらも暗号化を設定し、さらに接続先をLANに限定しとくことを推奨する

 なお、WPSによるボタン設定もサポートしている。コンバーターモードで家電製品などを接続する際は、WPSを利用した方が簡単だろう。

【お詫びと訂正 2010/09/09 20:00】
 掲載当初、コンバーターモードにて他社製アクセスポイントへの接続時のWPSによる設定がうまく動作しないとの記載がありましたが、再度検証した結果、問題なく接続できることを確認しました(バッファローWZR-HP-AG300H、コレガCG-WLR300NNHにて検証済み)。お詫びして訂正いたします。

 ちなみに、本製品では、通常のAP、仮想AP、有線のそれぞれをVLANとして構成することも可能となっている。仮想APは最大で4つまで作成可能となっているため、相互通信できない独立した5つのSSIDを設定したり、特定の仮想AP同士しか通信できないように構成するなどといった複雑な構成もできる。小型の無線LANルーターながら、なかなか手の込んだ設定ができる製品と言えるだろう。

VLANとして通常のAPや仮想AP、有線LANをグループ化して管理できる

コンバーターとしての利用もおすすめ

 パフォーマンスについては、用途次第といったところだ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階に本体を設置し、各階で速度を計測した結果だ。

 比較対象として、バッファローのWZR-HP-AG300Hを利用した場合、さらにMZK-MF300Nをコンバーターモードとして利用し、WZR-HP-AG300Hと組み合わせて利用した場合の値も計測してみた。

 

親機子機1F2F3F
下り上り下り上り下り上り
WZR-HP-AG300HIntel WiFi Link
5300AGN
105.6135.185.96113.936.1845.36
MZK-MF300NIntel WiFi Link
5300AGN
32.1992.7628.164.786.830.442
WZR-HP-AG300HMZK-
MF300N
90.3493.2843.1972.0933.632.27

 

【通信速度】
※クライアントにはThinkPad X200(Core2Duo P8600/RAM4GB/OCZ Vertex 120G/Windows7 Ultimate 64bit)

 少々グラフが見にくいかもしれないが、まずルーターやアクセスポイントなどの親機としてMZK-MF300Nを利用した場合、上りに比べて下りの落ち込み方が大きく、さらに3階のような長距離の結果があまり良くなかった。

 本製品は、どちらかというと持ち運びを想定した製品となっているため、長距離の伝送が必要な据え置き用途にはあまり向いていないと言えそうだ。

 一方、有線LANを無線化するコンバーターとしての利用はなかなか素性が良い。WZR-HP-AG300Hを親機として利用し、MZK-MF300Nを子機として利用した際の値は3階でも30Mbpsを超えており、なかなか優秀だ。

 もちろん、2.4GHz帯を利用するため、実際の速度は周辺の状況と選択したチャネルによって異なるが、これならネットワークテレビの無線化などにも対応可能だろう(映像配信サービスを利用する場合は5GHz帯が利用可能な製品を推奨するが……)。

 持ち運び用としての用途だけを考えると投資を躊躇してしまう人もいるかもしれないが、コンバーターとして普段使えるのであれば、一台、持っておいても損はなさそうだ。

WDSで中継器としても使える

 さらに、最近、再び注目されてきたWDSによる無線LANの中継機能にも、本製品は対応している。

 中継機能を利用するためには、基本的に本製品が2台必要となるため、残念ながら今回実際に試すことはできなかったが、設定方法についてはオンラインの製品マニュアル(http://www.planex.co.jp/support/download/router/mzk-mf300n.shtml)に詳しく記載されているので、中継器として利用したい場合はここを参考に設定するといいだろう。

 ただし、WDSによる中継機能は速度が半分程度になるため、むしろ使わない方が速度が出る場合もある。このあたりは、環境次第と言えるので、実際に試してみないと良し悪しは判断できないところだ。

WDSもサポート。本機を複数台利用することで中継器としても利用可能

 以上、プラネックスのMZK-MF300Nを実際に試してみたが、単なる小型無線LANルーターというだけではなく、なかなか「いじり甲斐」のある製品と言えそうだ。そもそも持ち運びを前提として購入しても損のない製品だが、コンバーターや中継器としての利用を目的に選んでもなかなか面白い存在だ。

 標準のセキュリティ設定が若干甘いので、ここに気をつけて使う必要はあるが、実売価格も3千円台となかなかリーズナブルなので、十分におすすめできる製品と言えそうだ。


関連情報


2010/9/7 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。