ISPプランで使うEMOBILEの高速LTEモバイル通信「@nifty EMOBILE LTE」


 3月15日からイー・モバイルのLTEサービスが開始されたことを受け、各ISPからも同サービスを利用したプランの提供が開始された。今回は、その中から@niftyが提供する「@nifty EMOBILE LTE」を実際に使ってみた。

イー・モバイルのLTEサービス用のモバイルルーター「GL01P」。複数のサービスが登場してきたうえ、長時間駆動が可能なモバイルルーターの登場で、LTE導入の敷居が下がってきた


そろそろLTEの検討しどき

 モバイル通信用にそろそろ次世代のLTE環境を……。そう考えているとしたら、今は悪くないタイミングだ。

 NTTドコモのXi、若干方式は異なるがソフトバンクのSoftBank 4G、そしてイー・モバイルの「EMOBILE LTE」とサービスが出そろってきたことで、比較しながらサービスを選べるようになってきたうえ、国内大手ISPを中心にこれらのサービスを利用したプランが登場し、コスト的なメリットを享受できたり、手厚いサポートなどでサービスに加入しやすくなった。

 懸案だったエリアも各サービスともに充実しつつあり、現状、都市部であれば実効で10Mbpsを超える高速な通信を体験できる機会が増えてきている。

 しかも、今回取り上げるEMOBILE LTE用のモバイルルーター(GL01PやGL02P)がまさにそうだが、長時間駆動が可能なモバイルルーターが登場したことで、外出先での使い勝手がかなり良くなった。

 LTEは、これまでどちらかというと限られた地域向けのマニアックな通信環境というイメージが強かったが、実際には、もはや3Gのデータ通信サービスと同等、もしくはそれ以上の使いやすいサービスになりつつあると考えてよさそうだ。


「@nifty EMOBILE LTE」に見る、ISPプランを選ぶメリット

 では、実際にどのようにLTEのサービスを選べばいいのだろうか? 前述したようにLTEのサービスは複数の通信事業者によって提供されているが、今、最も注目されているのは3月に新たにサービスを開始したイー・モバイルの「EMOBILE LTE」だ。

 LTEは、これまでの携帯電話で利用されていた3Gのデータ通信サービスを高速化した次世代の通信サービスだが、EMOBILE LTEでは、この技術を採用することで、受信時最大37.5Mbps/送信時最大12.5Mbps、一部エリアで倍となる受信時最大75Mbps/送信時最大25Mbpsという高速な通信を実現している。

 「サービス開始直後で対応エリアが狭いのでは?」と心配になるかもしれないが、2012年6月の予定で東名阪主要都市99%がカバーされる。また、人口カバー率93%のEMOBILE G4エリア(速度は受信時最大42Mbps/送信時最大5.8Mbps)も併用できるようになっている。これにより、仕事などで都市部で利用する際はLTEの高速な通信環境を利用でき、LTEがまだ利用できない地方に出かけた時はEMOBILE G4での通信が可能となっている。


都市部での利用エリアが広がりつつあるイー・モバイルのLTEサービス。EMOBILE G4のエリアでも使えるので、利用可能な場所はかなり広い

 このように、比較的、新しいサービスとしてはサービス内容が充実しているEMOBILE LTEだが、最大の注目となるのは、そのコストだ。中でもISP経由で提供されているEMOBILE LTEでは、開通月の月額料金が無料になるなどの特典が用意されており、コスト的な負担を抑えながらLTEサービスを利用することが可能となっている。

 たとえば、@niftyが提供している「@nifty EMOBILE LTE 定額にねんプラン」の場合を見てみよう。


@nifty EMOBILE LTE定額にねんプラン
速度下り75.0Mbps
上り25.0Mbps
登録料3150円
月額料金3878.7円
※@nifty EMOBILE LTEサービスのみ利用する場合には、お手軽1コース料金(262.5円/月)が別途かかる
利用期間初回:開通月+24カ月  以降24カ月単位で自動更新
解除手数料有無あり
解除方法ウェブ・電話で受付(解約月は日割り計算はせず、月額料金を請求)
@nifty同時退会不可(@nifty EMOBILE LTE解除後も@niftyIDが残るため、不要の場合は別途ID退会処理を行う必要あり)
解除手数料開通月3万8400円
1カ月め~24カ月め3万8400円~1万800円(1200円ごとの階段設定)
更新月(25カ月め)0円
26カ月め以降~9975円(24カ月ごとの更新月は0円)
帯域制御(1)24時間で300万パケット(366MB)以上の通信で、当日21時~翌2時まで通信速度制限
(2)1カ月間に10GB以上の通信で当月末まで通信速度制限(2014年5月から実施)
  該当FAQ:http://faq.emobile.jp/faq/view/102243


 加入時に登録手数料3150円がかかるものの、このサービスの月額料金は3878.7円となっており、月々のコストとしては、WiMAXと同等、他事業者のLTEサービスと比べて数百円安い計算になる(参考:NTTドコモXiデータプラン にねんはキャンペーン適用で月額4410円)。

 なお、現状、@niftyの接続サービスを利用していない場合、この月額通信料に加えて、@niftyの基本料金262.5円が月々必要になるが、2012年5月31日までに加入した場合は機器到着月から24カ月間、262.5円が無料になるうえ、3878.7円の通信料も機器到着月は無料となる。また、通信機器として利用するモバイルルーター「GL01P(通常価格3万9800円)」も1円で提供され、その送料(945円)も無料となる。このキャンペーン期間をうまく活用して、費用を節約するといいだろう。

 ただし、このプランは2年契約が前提となる点に注意したい。契約期間中に異なる契約種別へ変更したり、解約した場合は、その経過期間に応じた解除手数料がかかる。具体的には、開通月の解除手数料が3万8400円となっており、1カ月が経過するごとに1200円引かれていく仕組みだ。基本的に2年間使うことを前提に契約するといいだろう(2年ごとの更新となるため、26カ月目以降は9975円の解除手数料がかかる)。

@nifty EMOBILE LTEのウェブページ。手厚いサポートが特長となるため、電話などでも気軽に相談することができる

 このように、少しでも費用を節約したい人に適したプランとなる「@nifty EMOBILE LTE」だが、これに加えて手厚い@niftyのサポートサービスも受けられる点も大きな魅力となる。パソコン通信の時代から通信サービスを手がけてきた老舗だけあって、ユーザーサポートは充実しており、不明な点の問い合わせや加入時の疑問などを気軽に相談することができる。

 コスト的なメリットはもちろんだが、なにより安心してサービスを利用できる点が@niftyのLTEサービスを選ぶ最大のメリットだろう。


都内なら広いエリアで10Mbpsオーバーを実現

 では、実際に、@nifty EMOBILE LTEを利用した場合、どこでどれくらいの速度が出るのだろうか?

 @niftyで提供されるGL01PとノートPC(VAIO VPCZ23AJ)の組み合わせで、東京都内のいくつかの地点で速度を計測してみたところ、以下のように屋内外を問わず、多くの地点で実効で10Mbpsオーバーの速度で通信することができた。

【江東区マクドナルド店内】江東区(南大島駅)のマクドナルド店内(2F)での計測結果【港区プリンス宴会場】港区のプリンス東京タワー宴会場(B2)での計測結果


【新宿区南口】新宿区の南口(屋外)での計測結果【品川区駅構内】品川区の品川駅構内での計測結果

 プリンス東京タワーの宴会場のみ上り5.977Mbps/下り334.3kbpsとなったが、それ以外の地点では下りで12~16Mbps、上りで6~9Mbpsと、非常に優秀な結果が得られた。下りの速度が10Mbpsを超えたことも大きな意味があるが、個人的には上りで5Mbps以上の速度が安定的に実現できている点を高く評価したい。

 仕事で利用する場合、数MB単位の文書や資料を外出先からアップロード、送信しなければならないケースが少なくない。こういったシーンでも、@nifty EMOBILEであれば、ストレスなくデータを送信できる。ライブ配信など映像配信用のインフラとして活用するのも悪くなさそうだ。

 なお、電車での移動中にも利用してみたが、LTEから3Gに切り替わるタイミングなど、若干、通信が途切れる場合もあったが、基本的に移動しながらでも安定して利用することができた。東京では、都営新宿線など一部の地下鉄でも通信環境が整いつつあるため、スマートフォンやタブレットなどを移動中に利用したい場合のニーズにも十分対応できるだろう。


3000mAhのバッテリーで最大9時間動作

 実際に使っていて、もっとも感心したのは、今回利用したモバイルルーター「GL01P」の完成度の高さだ。

 一見すると、一般的なモバイルルーターに比べて一回り大きいサイズ(幅約62×高さ113×奥行き13.5mm/140g)に圧倒されるが、大きなサイズを活かして内蔵された3000mAhという大容量のバッテリーによって、公称で連続9時間(LTE/3Gとも)という長時間駆動を実現している。

正面側面

 これにより、一日中、電源を入れた状態のままで持ち歩いても、ほとんどバッテリー切れを気にする必要がない。

 実際、PCから一定時間おきにpingとHTTP GETを実行するバッチファイルをLTE環境で実行させ続けてみたところ、8:49から17:25まで、合計8時間36分の連続通信を確認することができた。文字通り、朝の出勤時から退社まで通信し続けられるというわけだ。

 もちろん、端末からの通信が途切れて10分間(5/10/20で設定可能)経過すれば、自動的に無線LAN機能をオフにする機能が搭載されているため、断続的に利用するようなケースでは10時間以上、家を出てから帰るまでの間、無充電でも十分に利用可能だ。

 バッテリーが内蔵となるため、取り外しができないのが唯一の欠点と言えるが、内蔵のみでもこれだけの時間動作するのであれば、予備バッテリーを入れ替えながら使うような必要はない。バッテリーが劣化した場合などで修理に若干手間と時間がかかるのが気になるくらいだろう。

 現状、LTE対応のモバイルルーターは、Xi対応のL-09Cの連続通信時間が6時間(LTE時)、同じくXi対応のBF-01Dが4時間(LTE時)となっているので、これらの製品と比べると、連続で8.5時間の動作が可能なGL01Pは非常に優秀だ。

 起動もなかなかスピーディだ。完全な電源オフの状態からの場合、起動してクライアントからの接続が完了するまでに約40秒ほどかかるが、無線LANとWAN側の電波がオフの状態からであれば、十数秒ほどで接続可能になる。ディスプレイも搭載されており、電波状況や電池残量などの状態が把握しやすく使いやすい。

 なお、ハードウェア的には、microSDカードスロットが搭載されているのが特長となるが、無線LAN経由でアクセスできるNAS機能は搭載されておらず、USB接続時にPCなどからデータを参照できるのみとなる。この用途に使いたい人にとっては、若干、残念だ。

ディスプレイを搭載しており、電波状況やバッテリー残量などを確認しやすいmicroSDカードスロットを搭載。USB接続時にデータ保存用として活用可能


気にせず使える高速通信環境

 以上、@nifty EMOBILE LTEを例にイー・モバイルのLTEサービス、およびモバイルルーターのGL01Pを実際に使ってみたが、かなり実用的だという印象だ。

 多くの人がそうであるように、当初はエリアと速度が発展途上なのではないかという心配があったが、実際には、都市部であればかなり広いエリアでLTEで通信できるうえ、10Mbpsという速度を当たり前のように体験できる。しかも、バッテリーの心配をほとんどしなくて済むGL01Pのおかげで、ほぼ一日中、どこでも高速な通信が可能となっている。

 もちろん、ファイル交換やVPNなどの一部の通信が制限されていたり、24時間ごとのデータ通信量が300万パケット(366MB)を超えた場合、当日21時から翌2時までの通信速度が制限されるといった制限はあるので、特定の用途や大容量の通信を連続的に行なう場合は注意が必要だが、モバイル時の通信環境としては、リーズナブルで、かなり使いやすいサービスと言える(2014年5月以降は、当月の利用データ通信量が10GBを超えた場合、 当月末までの通信速度が制限される)。

 3Gの通信サービスから乗り換えを積極的に検討したいところだが、はじめてモバイル通信環境を導入する場合でも、@niftyの手厚いサポートが受けられるのも安心だ。この機会にLTEでモバイル環境を整えてみてはいかがだろうか。



関連情報

2012/5/8 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。