清水理史の「イニシャルB」
子どもの「LINE使いたい!」要求に応えられる親になる
どこまで知ってる? LINEのしくみとリスク
(2013/2/26 06:00)
「ダメ」と言うのは簡単。でも、それで済まないのが、子どもからの「LINE使いたい」要求だ。もはや、彼ら、彼女らの生活に当たり前の存在であり、使っていない方が少数派となる「LINE」について、親として真剣に向き合ってみた。
周囲から押し寄せるLINEプレッシャー
「パパさぁ、中学行ったらLINEやっていい?」
「うーん。LINEかぁ……」
LINEである。さて、困った。正直、これまで避けてきたモノである。
どんなサービスで何ができるのかは、わかっているつもりである。サービスに関して、「あいたたた」と思えるニュースもいくつか目にしてきた。ネット上で少なからぬ人たちが展開している「使わない理由」も知っている。
個人的には、LINEに限らず、SNS全般について単に面倒だからと、避けてきた面もあるのだが、まさか身内、それも娘から、その許可と、使い方を聞かれるとは思わなかった。
周囲の状況をいろいろ探ってみると、どうやらLINEに関しては、同じように周りからのプレッシャーが強くなってきているらしい。
奥さんから使えと言われた。取引先から利用の有無を聞かれる。僕のように子供からねだられる。
面白いのは、筆者の周りに限って言えば、ほとんどの人が「サービス開始当初にインストールしてみたものの、今はそれぞれの理由で使うのをやめていたのに……」と口を揃えて言うことだ。自分で使うのをやめたサービスを、自分の意志を越えたところからのプレッシャーによって、再び始めるというのは、今までのネットの世界にはなかった面白い現象かもしれない。
これが、もし、妻からの要求であれば、「どうぞお好きに、ボクは使わないけど」と一蹴することだろう。大人なら、そのしくみやリスクを自分自身で判断して使うことができる。
でも、子どもが関わるとなれば、知らぬではすまされない。本当に安全か、危険を避けるにはどうすればいいか。そのしくみやリスクを自分自身がしっかりと理解しなければ、OKを出すことはできない。そういった思いでいる親は筆者に限らず多くおられるのではないかと思う。
そんなわけで、今回は、NHN Japan 株式会社 Webサービス本部 事業戦略室 マーケティングコミュニケーションチームの金子 智美氏にご協力いただき、子どもにLINEを使わせるときの具体的なリスクやそれを回避するための設定について紹介する。
それにしても、今後は、もはや自分の好みとは別に、ネット上のサービスを使うかどうかを判断しなければならないシーンが増えてきそうだ。
自分のスタンスを明らかにする
子どもにLINEを使わせる前に、まずは、現状の自分のスタンスを分析し、LINEに関して、どのようなスタンスを取っていくべきなのかを考えてみよう。
LINEに限らず、ネット上のサービス全般について、子どもが新しい世界に踏み込むことに対して、その可否を判断する場合、自分のスキルレベルと寛容度が大きく影響する。これを簡単に図式化したものが以下だ。
サービス内容やそのしくみ、リスクなどについて知っているかどうかをスキルとして縦軸に取り、新しい世界全般に対して接点を持つことに対して寛容かどうかを横軸に取る。
こうして整理してみると、サービスについてよく知らなくても利用を許可する「野放し型」(左下)、よくわからないから許可しない「無条件禁止型」(右下)、サービス内容やリスクを理解した上で利用を許可するだけでなく、子どもにメリットやノウハウを与えることができる「活用指南型」(左上)、逆にメリットもデメリットも理解したうえで利用を禁止する「利用規制型」(右上)に分類できる。
これは、ネットサービスだけでなく、たとえば「バイクに乗りたい」と子どもが言ってきたときなど、あらゆるシーンで活用できるが、まずは自分がどのスタンスなのかを自ら知る必要があるだろう。
現状、LINEが子どもにとって不可欠のインフラになりつつあることを考えると、利用を規制することは現実的ではないうえ、禁止した結果、親の目の届かないところで勝手に利用することになっては意味がないため、基本的には上半分の許可する方向で考えるのが現実的だ。
そう考えると、一見、左上の活用指南型が理想的なようにも見えるが、子どもの年齢が低いうちは、あまりサービスへの依存度を高くするわけにもいかないため、基本的には中間となる「条件許可型」が理想となる。つまり、サービスのメリット、デメリットを理解しつつ、リスクになりそうな部分を避けながら利用を許可するわけだ。
となると、「スキル」が重要になることがよくわかる。親がサービスに対してのスキル、より具体的には利用に関するリスク、に関する知識を持っていなければ、前掲の図の上の象限に至ることはできないわけだ。もちろん、LINEが何なのか? というそもそもの知識も必要だが、ここではそれは理解していることを前提にリスクのみに絞って話を進めていく。
LINEのリスクと解決策を考える~(1)機能的なリスク
では、具体的にLINEを子どもに使わせるうえで、どのようなリスクを想定しなければならないのだろうか? 以下は、主なリスクを機能的なもの、友だち関係のもの、社会的なものの3つに分類したものだ。
これらのリスクの原因とその解決方法を明らかにできれば、保護者としてLINEに対して必要なスキルを一通り身に付けることができ、どのレベルまで利用を許可してかまわないのかという判断ができることになる。それでは、個別のリスクについて考えていこう。
無断で使うんじゃないか?
LINEに限らず、親として、子どもが利用しているサービスやアプリの状況を把握できない状況は絶対に避けるべきだ。何を使っているのかをしらなければ、そこにどのようなリスクがあるのかすら判断できない。
よって、まずはアプリそのものを勝手にインストールできないように制限する必要がある。iOSであれば、機能制限を利用するのがもっとも簡単だ。親がApple IDを管理した上で、機能制限を有効にし、「パスワードを要求」を「即時」に設定し、AppStoreからのアプリのインストールで毎回パスワードを要求するようにすればいい。
Androidの場合、対策は若干面倒だ。Playストアも有料アプリに関してはPINコードの入力を要求するように設定できるが、無料のLINEには無効となる。このため、NTTドコモの「あんしんモード」、auの「安心アクセス for Android」など、通信事業者が用意しているセキュリティアプリを利用するのが手っ取り早い。
ただし、一部、レビュー欄で回避方法が紹介されていたり、インストールそのものを制限するのではなく、インストール後のアプリの起動を制限するものなど、いくつかの注意点があるので、実際にインストールしてみて、どこまで制限できるかを確認してから使うといいだろう。
もちろん、LINEをダウンロードしても、アカウントを取得できなければ利用を制限できるが、電話番号やFacebookでの認証があるものの、子どもが自分でアカウントを登録することも防ぐことはできない。
ただし、冒頭でも触れたように、LINEに関しては、無理に制限するよりは、使う方向で子どもと話し合う方が建設的だ。利用そのものを禁止したいのであれば、そもそもスマートフォンを渡さないというのが、もっとも有効な手段となりそうだ。
勝手に友だちを登録するんじゃないか?
LINEに誰が登録されているか? 果たして、そこまで親が把握するかどうかは、子どもの年齢やプライバシーの考え方によるが、とりあえず無差別に友だちを登録できる状況にしておくことは避けるべきだ。
友だちの追加は、LINEの機能によって、一部制限することができるが、基本的には制限は難しいことを頭にいれておこう。
LINEでは、友だちの登録方法として、電話帳からの自動登録、ID検索、QRコード、ふるふるの4つが用意されている。
まず、電話帳からの自動登録だが、これは文字通り、スマートフォンの電話帳から自動的にLINEのユーザーを検索して友だちとして追加する機能だ。便利な機能だが、これを有効にすると、意図しない友だちが登録される可能性がある。子どもが使うことを考えた場合、この機能は使わず、手動で友だちを登録するようにした方がいいだろう。
LINEの初期設定時、「友だち自動追加」は標準で「オン」になっているので「オフ」に変更しておこう。設定そのものは、LINEの「その他」-「設定」-「友だち管理」-「アドレス帳」からも変更できるが、初期設定で自動登録した友だちは削除できない(LINEではそもそも友だちを削除できず、ブロックのみが可能)ため、注意が必要だ。
なお、LINE全般に言える話だが、初期設定では、基本的にすべての設定をオフ、メールアドレスなど登録が任意の設定に関してもスキップした方が安全だ。このあたりは、子どもに設定をまかせずに、必ず親が、その理由も説明しながら一緒に設定すべきだろう。
続いて、ID検索だが、子どもが使う上では、この方法に対しての注意がもっとも重要だ。なぜなら、ID検索が有効の場合、掲示板などの情報からIDを検索して、第三者を友だちとして登録してしまう可能性が高くなるからだ。
この設定については、システムとしての取り組みは始まったものの、まだ完全とは言えない。
具体的には、au向けのAndroid版クライアントでは、未成年向けの制限機能が搭載されるようになった。初期設定時の電話番号による年齢確認が行なわれないか、年齢確認の結果使用者が未成年だった場合(auの契約で使用者として子どもの名前や年齢の登録が必要)、ID検索で第三者を検索することができなくなるうえ、自分のIDの検索も許可することができない。
しかしながら、他の通信事業者およびiOSでは、現状は、この制限が利用できないため、事実上、第三者を登録することは制限できないことになる。詳しくは後述するが、子どものIDが相手に勝手に登録されないように制限することはできるが、子どもが能動的に第三者のIDを検索して登録することを避けるのも難しい状況だ。
この点について、NHN Japan 株式会社 Webサービス本部 事業戦略室 マーケティングコミュニケーションチームの金子氏によると、「現在、他のOSや他の通信事業者への対応を進めている最中です。」とのことなので、auのAndroid端末を子どもに持たせるか、対応を待ってから子どもに使わせるというのも1つの手だ。
残りのQRコードとふるふる(GPSを利用)に関しては、基本的に対面での登録となる。これについては、制限してしまうと、子どもの交友範囲を狭めてしまうことになるため、制限しない方向で考えたいところだが、QRコードについては注意が必要だ。
QRコードの画面をキャプチャし、それをメールや掲示板でやり取りすれば、ID検索ができなくても友だちを追加することが可能になる。こういった抜け穴が存在することは、親として頭にいれておくべきだろう。
このほか、グループからの登録についても気を配る必要がある。LINEでは、複数のユーザーをグループとして構成することができる。すでに構成されているグループに、子どもが新たに参加した場合、そのグループに所属している既存のユーザーとトークすることが可能となる。
以前のバージョンでは、グループに参加した際に、他のメンバーが「知り合いかも」に表示されたが、金子氏によると、この機能は現在改善されており、自動的に「知り合いかも」に表示されることはなくなったとのことだ。ただし、子どもが、グループに表示されたメンバーを友だちとして追加することは可能なため、子どもがどのようなグループに参加しているのかは、親としてある程度把握しておく必要はありそうだ。
知らない人に友だちして登録されてしまうんじゃないか?
今度は逆のパターンで、子どもが第三者の友だちとして勝手に登録されてしまうリスクとなる。これは、ある程度、システマチックに制限することが可能なものの、やはり注意しなければならない点がある。
まず、スマートフォンの電話帳からの自動登録に対してだが、初期設定時に「友だち自動追加」とセットで表示される「友だちへの追加を許可」をオフにしておく(前述したオフ・オフで使う)ことが大切だ。
LINEでは、以下の図のようなプロセスで、電話帳のデータと登録時に指定した電話番号を照会し、友だちかどうかを判断するしくみになっている。要するに、この照会のプロセスに対して、データを提供せず(電話帳をアップロードしない、電話番号を登録しない)、しかも照会での登録を拒否すれば安全というわけだ。
電話帳を利用したLINEの友だち登録のプロセス。上はユーザーAが新規に登録する場合。オン・オンで登録すると、電話帳から電話番号のみがアップロードされ、既存ユーザーBの番号番号と照合され、Bが友だちとして追加される。下は、Aの登録後にCが新規登録した場合。Cはオフ・オフで登録するため、電話帳のデータはアップロードされない。電話番号で認証されるものの、自動追加を許可していないので、Aに登録されることもない
いろいろなパターンが考えられるので、以下にいくつか例を示す。電話帳に登録されている場合、そうでない場合、どうすると友だちとして登録され、知り合いかもと表示されるのかをある程度覚えておくといいだろう。
よくありそうな5つのパターンの登録例。(1)両者ともオンオンなので相互に登録される。(2)Aが友だちへの追加を許可していない(オフ)となるため、B側にAが追加されない。いわゆる片思いになるためBにはAが「知り合いかも」と表示される。(3)Bはオンオンだが、Aは自動追加オフなのでAは追加されない。また追加許可もオフなのでB側にも追加されない。(4)Bの電話帳にAが登録されていないケース。相互にオンオンでもB側にAが自動追加されないため片思いになり、知り合いかもと表示される。(5)同じくBの電話帳にAが登録されていないパターン。今度はBが追加許可していないため、A側にBが追加されず、片思いにもならない。
知らない人への友だち登録を避けるために、もう1つ大切なのはIDの扱いだ。前述したように、ラインではIDを検索して友だちを追加することができるが、このIDの登録は任意だ。よって、IDを登録しなければ、オンラインで検索しても、子どものIDが表示されないため、対面以外の方法で友だちを追加することが基本的にできなくなる。
もしも、IDを登録してしまったという場合、このIDを削除することはできないため、「設定」の「プロフィール」にある「ID検索の許可」をオフにしておく。これで、IDは登録されていても、検索されることはなくなるわけだ。
ただし、これらの設定はあくまでもIDを利用する場合にしか機能しない。前述したQRコードの送受信を使えば、オンラインでの友だち登録は可能だ。QRコードは、ネット上に誤って公開してしまった場合などに備えて、後から更新することができるようになっているが、特定の相手とメールなどでやり取りされれば、友だち登録は成立してしまう。
どのような設定の場合でも抜け道はあることを頭にいれておこう。
勝手に設定を変更してしまうんじゃないか?
このように、LINEを子どもに安全に使わせるための設定はいくつか存在するが、そもそもの問題として覚えておきたいのが、これらの設定は、子ども自身がいくらでも変更できてしまう点だ。
LINEの設定は、LINEを起動して「その他」の「設定」をタップすれば自由に変更することができる。このため、ここまで親がいくら一生懸命設定したとしても、子ども自身が、電話帳から自動登録を実行したり、IDを登録して検索を許可することなど、いくらでもできてしまうわけだ。
これを避けるには、iOSの機能制限などのように、設定画面にアクセスするためにパスワードを設定するといった機能が必要だが、残念ながら、それはできない。LINEにはパスワードを設定することはできるものの、これはLINEの内容を第三者に見られないようにするための機能となるため、むしろ子どもに設定されてしまうと、親として利用状況を把握することすらできなくなってしまう。
理想はLINEがペアレンタルロック機能を搭載してくれることだが、現状は予定はないようなので、ここまでの設定を子どもと一緒に行ないながら、その理由をきちんと説明し、設定変更しないことをLINE利用の条件として約束させるしかないだろう。
LINEに限らず、こういったツールを子どもに使わせる場合、機能的な制限よりも、むしろ親子でじっくりと対話し、子どもが自ら納得した状態で使わせることの方が大切と言える。システムとして制限できない以上、この対話を怠ると、時を待たずに野放し状態になりかねないので、十分注意すべきだろう。
LINEのリスクと解決策を考える~(2)友だち関係のリスク
使いすぎてしまうんじゃないか?
使いすぎも、親にとって大きな心配の1つだ。友だちと長時間にわたってトークをしたり、早朝深夜時間を問わずLINEを眺めていたりすれば、生活にも大きな影響を与えかねないだろう。
しかしながら、この問題をシステム的に回避するのは難しい。LINEには、曜日や時間を指定したり、一定時間を越えたらアプリの利用を制限する機能は搭載されていないからだ。個人的には、時間帯を指定して「ひとこと」を自動的に書き換えたり、トークできないことをアイコンで示してくれれば、大人でもありがたいなぁと思うだが、残念ながら不可能だ。
このため、もしも制限するとすれば、スマートフォンやアプリそのものの利用を制限するペアレンタルコントロールアプリを使うしかない。残念ながらiOS用で適切な製品を見つけることはできなかったのだが、たとえば、Android用の「まもるゾウ(http://www.axseed.co.jp/?page_id=1988")」などを使うと、時間を指定して利用を制限したり、特定のアプリの起動を禁止したりできる。
レビュー欄での評価が低いが、最新版では動作は安定しており、アンインストールもきちんと設定から管理機能を外せば可能で、なかなか面白いアプリなので、これはこれであらためてきちんとレビューしたところだ。
金子氏によると、「設定」から「通知」-「一時停止」を選ぶことで、翌朝8時まで通知を停止することもできるので、これを活用するのも手だろう。夜、一定の時間になったら、スマートフォンそのものを親が預かる、通知を停止して呼び出しに答えないようにするといった運用で、使いすぎを回避するしかないだろう。
友人関係に問題が発生するんじゃないか?
この問題は、正直、ここで答えを出すことはできない。ネット上のツールならではのミスコミュニケーションや特定のメンバーによる閉鎖的なコミュニティの形成は、LINEに限らず、インターネット上のどのSNSを利用した場合でも発生し得る。
理想はネット上のコミュニケーションについて徐々に慣れさせていくことだろう。まずは家族みんなで連絡や雑談などのツールとしてLINEを使い始め、親も知っている子どもの友人を友だちとして追加し、場合によっては会話の内容を親も把握しながら、徐々に輪を広げていけば、失敗やマナー違反について学ばせることもできるはずだ。
場合によっては、親子の間で、意図的に勘違いするような会話をしてみることで、擬似的に友だちとのトラブルに発展しそうなケースを体験させてみるのも1つの手だ。
また、学校によっては、クラス内の問題として、ネット上の友人トラブルが実際に発生したというケースもあるはずだ。高学年になれば、保護者会などで話題として取り上げられる機会も必ずある。そういった機会に、親子で真剣に話し合ってみるというのも、正しいマナーを学ばせる貴重な機会になることだろう。
LINEのリスクと解決策を考える~(3)社会的なリスク
・犯罪に巻き込まれるんじゃないか?
おそらく、LINEの利用で、保護者がもっとも気になっているのは、この点ではないだろうか? 残念ながら出会い系のツールとして使われる例もあったり、先日のニュースにあったように「サクラサイト商法」などへの悪用もあり、子どもに利用させることに対して抵抗がある人も多いはずだ。
このリスクを避けるには、まず、IDを設定せず、検索も許可しないことを徹底し、オンラインでの友だち登録の危険性を子どもに教えておくことが大切だ。悪意を持った第三者は、ID検索を利用して、ターゲットを探すため、そもそも検索対象のIDがなかったり、検索が禁止されていれば、このリスクを回避することが可能となる。
その上で、非公式アプリや非公式サービスの存在を子どもに教えておくことが大切となる。LINE公式ブログでは、2012年5月23日付けで、「LINE非公認のサービスにご注意ください(http://lineblog.naver.jp/archives/7351266.html)」というエントリを公開している。
そもそも、LINEでは、出会いや交際を目的とする利用方法を利用規約で禁止しているが、残念ながらインターネット上にはLINEでの出会いを目的とした掲示板が存在するうえ、アプリやサービスを検索すると、非公認のサービス用のアプリが多数リストアップされる状況にある。
もちろん、中には健全な目的のサービスもあるうえ、大人が使うには何の問題もないサービスも存在する。しかし、子どもの場合、その違いがわからないため、間違ってサービスを利用することが、犯罪に巻き込まれる可能性もある、非公式なサービスはどのようなもので、そこで何が行なわれているのかをきちんと子どもに説明しておくべきだろう。単に使わせないというのではなく、きちんとリスクを説明することが大切だ。
なお、公式サービスでも、LINE Play(アバターを利用したチャットが可能)などを覗いてみると、「10代の部屋」などが多数存在し、22:00を越える時間帯になっても、活発な参加者がいて驚かされるが、こと「出会い」に関しては厳しく監視されている。
金子氏によると、「LINE Playの会話の内容はシステムと人の目によって24時間監視しています。もしも、やり取りの中で、個人情報の交換、もしくはそれに繋がるようなやり取りがあれば、すぐにアカウントを停止するなどの対処をしています。」とのことだ。
同社は、もともとオンライゲームの運営を長く手がけており、こういったユーザー間のやり取りの監視にノウハウを持っている。もちろん、だからといって全面的に安心していいわけではないうえ、個人的には夜間は年齢制限すべきだと考えているが、現状、システム的な制限がない以上、子どもと、そのリスクについて話し合って使わせる必要がありそうだ。
個人情報が漏洩してしまうんじゃないか?
個人情報については、主に大人の利用者の方が心配する声が多いのだが、システム的な対策はきちんと取られているため、信頼するしかないだろう。
金子氏によると、初期設定で電話帳からの自動登録の際に収集されるデータは、電話番号のみ(フィーチャーフォンはメールアドレスのみ)で、氏名などは収集されないとのことだ。これは利用規約のプライバシーポリシーにも明記されている。そして、これらの情報はサーバー上で暗号化されて管理されているとのことだ。
電話帳そのものは自分のデータだが、番号そのものは所有者の情報であるため、所有者の許可なくアップロードすることはできない。という考え方もあるが、そのために初期設定で「電話帳からの自動登録」の可否を選択できるようにしているため、情報をアップロードしたくなければ自動登録をオフすればいいだろう。
ただし、しくみをよく理解しない初期設定の段階となるため、標準で「オン」ではなく、「オフ」にしておくべきではないかという意見には大賛成で、とくに未成年の利用者が多い状況では、多少なりともリスクが想定できる設定は、「ID検索許可」、「友だちへの追加の許可」など、すべて標準で「オフ」にしてほしいところだ。
「文化」としてLINEを育てていく姿勢を期待
以上、かなりの長文になってしまったが、LINEを子どもに使わせるうえで、親が意識しなければならないリスクやその対策について紹介した。
結論としては、システム的に利用を制限することも一部はできるが、LINEそのものの設定を子どもが自ら変更できてしまううえ、友だち関係や社会的なリスクなどマナーや子ども自身の意識の持ち方が重要な問題も多いため、LINEのリスクについて子どもに学ばせ、自ら利用をコントロールできるようにするしかないだろう。
金子氏によると、ちょうど子どもが利用する上でのガイドとなるようなコンテンツも制作中で、3月末には、今回紹介した設定も含め、具体的なLINEの使い方や制限方法についての情報を公開する予定としている。
また、出会いなどの社会的なリスクに対応するため、「しつこく年齢を聞いてきたり、外見についていろいろ質問してくる場合は要注意」などといったように、子どもが自ら危険を判断するための具体的な基準などもコンテンツとして用意する予定とのことだ。こういった教育的なコンテンツの提供は大いに期待したいところだ。
よくよく考えてみれば、自分が大人になる過程で、繁華街での遊び方やバイクの乗り方を教えてくれたのは、よき友人やよき先輩であった。こういったサービスを子どもに利用する場合、親がリードできるのは、最初の入り口くらいで、その先は子ども自らが、同様に友人や先輩から学んでいくしかない。
LINEは、利用者が全世界で1億人を突破し、国内でもすでに4000万人が利用しているサービスとなる。このサービスを利用しないという選択肢は、次第に考えにくいものになりつつあるのだから、今後は、サービスを提供するNHN Japan自らが、利用者のよき友人や先輩としてふるまったり、他のユーザーのお手本となるようなユーザーを育てていく努力も必要と言えそうだ。
設定画面のロックやLINE Playの利用時間制限など、システム的にやっていただきたいことも山ほどあるが、それと同時に、収益重視の「プラットフォーム」としてだけでなく、SNSの手本となるような「文化」としてLINEをしっかりと育てていく姿勢を同社には期待したいところだ。