テレワークグッズ・ミニレビュー

第2回

子供が騒ぐ家でも集中できるよう、ソニーのノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM4」を購入

 新型コロナの影響で、テレワークを余儀なくされている読者も多いだろう。かく言うINTERNET Watch編集部でもそれは同じ。それぞれの住環境の中で、テレワーク環境をより改善すべく日々工夫を凝らしている。そこでこの連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介していく。


 テレワークにおいて「音」の悩みを持つ人は少なくないと思う。家族や隣人の生活音、付近の道路や商業施設の音など、もともと仕事用の環境としては考えていなかった場所で仕事をしていれば、想定外の音が集中を妨げることもあるだろう。

 そこで、今回はソニーのノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM4」を紹介したい。業界最高クラスのノイズキャンセリングヘッドホンだとうたわれる、2020年9月に発売になった同社のフラッグシップモデルだ。

WH-1000XM4と付属品。専用のキャリングケースに、ヘッドフォンケーブル、充電用USB Type-Cケーブル、航空機用のプラグアダプターが同梱されている

わが子の「おしゃべり」がヤバい

 ところで、子供ができると産婦人科でエコー(超音波)検査を行うことがある。お腹の中の赤ちゃんの姿を映し、男の子ですね女の子ですねーなどと話すのだが、この際に「この子はおしゃべりになりますね」と言われた経験をお持ちの方はいるだろうか?

 私がドクターからこう聞いたときには、場を和ませるトークと思って軽く流していた。しかし10年ほどして、実は正確な診断(予言?)だったのだと知ることになる。狭い集合住宅の一室に子供といると、うるさくて仕事にならない。

 特に、中学生になりDiscordで友達と話しながらゲームをする、というスタイルを覚えてしまってからは……細かく描写するのも苦痛なので一言で述べると、ヤバい。さすがに「外で遊びなさい」的なことも言えないし。

 このような場合にどうするかの考え方は家庭によりさまざまだろうが、筆者は「度を越した大声を出さない」「暴言を吐かない」「深夜は黙れ」といった注意をするのと並行して、ノイズキャンセリングヘッドホンを買ってみることにした。

 中途半端な製品を買ってノイズキャンセリングの性能が低いと立ち直れないおそれがあるので、最高級のものを選ぶ。2020年末に筆者がWH-1000XM4を購入した時点での価格は、出始めだったこともあり税込みで4万円ちょっと。これまで買ったヘッドホンのうち、もっとも高価だった製品の2倍ぐらいする。しかし、これで心乱されずに仕事をこなせるならば、十分に意義がある買い物だろう。

期待を上回る遮音性に満足

 オーディオ機器としての本製品のレビューはすでに多く出回っているので、ここでは遮音性を求めて買ったオーディオ素人の使用感をお伝えしたい。

 まず、起動音が気持ちいい。電源を入れると空間の広がりを感じさせるエコーがかかった起動音に、女性の落ち着いた声で「電源が入りました」というアナウンス。よく買っている3000円前後の製品とは違う。ノイズキャンセラーが動作し始めると周囲の雑音がフッと消え、ここで気持ちは別の空間に瞬間移動する。耳に入る音が変わるだけで、意外なほどに頭が切り替わる。

 本製品はBluetooth接続のワイヤレスヘッドホンだが、付属のケーブル(ステレオミニジャック)を使うことで、Bluetooth非対応の機器にも簡単に接続できる。なおBluetoothは2台のデバイスを同時に接続可能だ。筆者は作業用のiPadとBGM再生用のiPadをデスク周りに置いており、この2台とペアリングしている。PCはBluetooth非搭載のデスクトップ機なので、PCで使う場合はケーブルを利用する。

設定などはソニーの専用アプリ「Headphones Connect」から行う。本製品はマイクも搭載しており、発声することでノイズキャンセリングを解除し周囲と会話可能にする「スピーク・トゥ・チャット」や音声操作などの機能も持つが、現状では使っていない(オンにしていると、たまにクシャミなどに反応してしまう)。

 ノイズキャンセリングの性能だが、エアコンの動作音や外を通る車の音などはほぼ聞こえなくなる。筆者宅から5mほどの道路を挟んだ向かいに小さな作業施設を備えた工務店があるのだが、そこでときどき何かの機械を動かす音(普段からそれほど気になる音量ではないが)がしても、まず耳に入らない。

 集中すると周囲の音も耳に入らなくなるのだが、集中に至る前にノイズに心乱されてしまうことに悩んでいた。しかし、WH-1000XM4によって、この悩みは解消された。正直なところ期待半分不安半分で買ったのだが、期待を大きく上回る感触だ。子供の声も、別室にやってドアを閉めてしまえば、まず聞こえないようにできた。

 普通の人間が普通に話す声も意外と聞こえなくなるので、家族にはノイズキャンセリングヘッドフォンを使っていると言っておいた方がいいだろう。また、小さい子供の面倒を見ながらのテレワークには、遮音性が高すぎてトラブルに気付くのが遅れかねず、不適かもしれない。

 ちなみに、緊急車両のサイレンなどは当然ながら聞こえるし、興奮した子供の発する大声なども、完全には遮断しきれない。とはいえ、これで気になるレベルの声は近所迷惑と判断して、注意するのが適当ではないかと思う。

 集合住宅の壁越しに聞こえる隣家の生活音や、道路から聞こえる音が気になるので何とかしたいという向きには、本製品は十分に役立ってくれると思う。安い買い物ではないが、音に関して満足いく環境を手に入れるための投資は、意外と高くつくものだ。たいていの場合、次に考えられる選択肢は「引っ越し」であったりする。

 本製品の難点を挙げるとすれば、密閉性が高いために「蒸れる」感じのする点が少々気になるところだ。少し室温が高めの環境では、30分も着けていると両耳がむしむしとしてくる。しかし、密閉型ヘッドホンにありがちな圧迫感は控えめで、室温をコントロールしておけば1〜2時間程度着けていても気にならない。

クラシックのCDを引っ張り出したくなるヘッドホン

 仕事に集中するための遮音性を期待して購入した本製品だが、気分転換にも大いに役立つことに気付いた。このヘッドホンを着けた静かな空間にいると、クラシック音楽が聴きたくなる。

 家で子育てに追われたり、仕事で気ぜわしくしたりしているときはクラシックになど聴く気になれず、そもそも、ノイズが多い環境では繊細な音を楽しめない。だが、このヘッドホンを着けた静かな空間では、しばし気持ちを切り替えて日常を離れられるし、「ボレロ」(ラヴェル作曲)の冒頭のような極めて小さな音も、しっかりと聴ける。

 ひと仕事終えたときなどに、適当な曲を流しながら寝っ転がるのは、室内でもなかなか悪くない気分転換となる。

久しく聴いていなかったクラシックのCDを、iPadから聴けるように取り込んだ。

※本題から逸れるが、エコー検査について補足を。「おしゃべりになりますね」と話してくださったドクターの病院で受けたのは、正確には一般的なエコーではなく「3Dエコー」で、色つきで立体的、かつ動きも見られるものだ。ドクターは、胎児のしぐさを見て「おしゃべりになりますね」とコメントされたようだった。