テレワークグッズ・ミニレビュー
第171回
PCもHDDもカメラも分解したい!! 今度は精密ドライバーと特殊ネジの沼へ足を突っ込んでみた
2026年10月23日 17:05
電動ドライバーにインパクトドライバー、そして普通の手回しドライバーについてこれまで記事を展開したが、毎回かなり多くの反響があって驚かされる。そんなわけで今回はドライバーはドライバーでも精密ドライバーについて掘り下げていきたい。
実のところクルマや自転車をいじるのが主な筆者は、精密ドライバーはそれほど使う機会もないし、これまでも安いセットを持っているだけだった。だが、なかなか気になる製品が出てきたので、これを機に精密ドライバーの沼に一歩踏み込んでみることにした。
その気になる精密ドライバーというのが、アネックスが今夏に発売した吟匠(ぎんじょう)という、なんともスゴそうな名前の製品だ。聞けば随所にこだわりを持って作り込まれた精密ドライバーとのことで、高級といっても6本セットで実売2000円前後。ならばと試してみることにした。
アネックスがとことんこだわった精密ドライバーは沼への入口
買ったのは6本セットのPRD-S1。アネックスの従来のスタンダードグレードの精密ドライバーと比べると1.5倍ぐらいの価格だが、精密ドライバーを使うようなネジだと、なめた時のリカバリーがさらに大変だ。加えて、これまでベッセルの安いプラスチックの柄の精密ドライバーを使ってきた身からすると、やっぱり良い工具のほうがモチベーションが上がる。
製品が届いてまず最初に良いと思ったのがポリプロピレン製のケースだ。精密ドライバーだと硬質のプラスチックのケースが使われることが多いが、それだと不意な衝撃で割れてしまうことがよくある。いままで使っていたものもケースが割れて、今は中身だけになったが、ケースにしかサイズが書いていないので、どれがどのサイズだかもう分からない(まぁ見た目でだいたい分かるけど)。その点、やわらかめのポリプロピレンなので、落とした衝撃で割れてしまう、といったことは防げそうだ。
加えて、本体の軸の部分にサイズが刻印されているので、もしケースをなくしてもサイズが分からなくなることはない。
驚いたのは、サイズによって本体の太さが違うことだ。大きいサイズほど大きいトルクを使うので、その分太くしているということだろう。精密ドライバーで本体の太さが違うというのは、あまり聞いたことがない。
刃先の精度も見るからに高そうだ。素材はクロームバナジウムとのことだが、根本の太さが同じなので、太めの鋼材から削り出しているのだと思われる。だが、その切削の跡もなく、表面はきめが細かく均一な梨地。ネジと合わせたときも滑りにくそうに見える。
そして手に持つと適度な重量感と、なによりそのローレット加工の手触り。まるで指の指紋一つ一つにかみ合うような、単にトゲトゲしいのではなく、手になじむローレットがとても心地良い。手に取った瞬間に良い工具買った、と所有欲を満たしてくれる質感がある。いや本当に、これはなかなかの満足度で、無駄に手に持ってクルクルと回したくなる。たぶん実際に手にしてもらえば、筆者の言っていることを理解してもらえるはずだ。
回転キャップの部分はPOMという金属に匹敵すると言われる強度と耐摩耗性をもったエンジニアリングプラスチックを採用。軸方向にはわずかな遊びがあるが、回転方向の精度はかなり高く、ひっかかりもなく気持ちよく回ってくれる。またサイズも大きめなので、指で保持しやすく、使い勝手をよく考えて作られている印象だ。
試しに一眼レフのネジを緩めてみる。サイズは+の00番のハズ。ハズ、と書いているのは、実は吟匠の0番でも緩められてしまうのだ。おそらく0番だと奥まで入りきってはいない印象なのだが、刃先が滑る感じがないので、緩められてしまう。他の精密ドライバーの0番だと、カムアウト(ドライバーが浮いて外れてしまう現象)しそうになるので、00番で間違いないと思う。では吟匠の00番を使ってみると、回転方向に対して若干の遊びがある。他のメーカーと比べると、吟匠は若干細身なのかもしれない。ただし、回転する力を加えると、ビタッと密着して、滑ることなく力が加えられる、そんな印象だ。
iPhoneやゲーム機の特殊ネジに対応したベッセルの精密ドライバーセット
そんなわけで吟匠はさわればさわるほどスゴさが感じられる作り込まれた良い工具だった。ただし吟匠には1つ足りないことがある。それがラインアップの少なさだ。
かつて精密ドライバーと言えば、カメラ、時計、メガネに使われるプラスやマイナスドライバーがあれば事足りたが、最近だとノートPCや、スマホ、携帯ゲーム機などで、かなり特殊な形状のドライバーが使われるようになった。
そこまで特殊な工具を使うのはプロだけだとは思うが、プロ向けに作られた吟匠にそうしたラインアップがないのは残念だ(きっとそのうちラインアップが増えると思うが)。
だがそういった向きには、ベッセルから特殊なネジ向けの精密ドライバーがセットが販売されている。それが精密ドライバーセットのTD56Yだ。
セット内容はプラスの00番、トルクスのT5、ペンタローブ(星形)の1IPR、マイクロスティックスというY字型の3ULR-0、3ULR-F、3ULR-Mの6種類。ペンタローブやマイクロスティックスはアップル製品(iPhoneやMacBookなど)やゲーム機などで使われるかなり特殊なもの。
というわけで見てみると、本体の中央にカラフルなゴムのパーツが付いているのが大きな特徴だ。これはクッショングリップと呼ばれるもので、ここをつまんで回すことで、大きな力がかけやすくなる。しかも位置をスライドさせることができるので、手の大きさや持ち方によって、使いやすい位置に調整することが可能だ。
これが持ってみるとかなり良い具合。同じベッセルの安いプラスチック柄のモデルを使っていたが、それとはまったくの別もので、とても使いやすい。
吟匠のローレット加工もよかったが、こちらも中央が緩やかにへこんだ形状で指になじみがよく、外径の大きさもあって大きな力が入れやすい。また、本体部分にもローレット加工が施されているので、そこに指をかけることもできる。力を入れたいときにはクッショングリップ、早回ししたいときは本体のローレット部という使い分けができて、これはこれで使い勝手がよさそうだ。
ただし、口コミによると、このクッショングリップの部分が滑ってしまって大きい力がかけられない、という声もあった。筆者が使った感じでは滑りそうな雰囲気はなかったが、長く使ったり、スライドを頻繁にしていると、摩耗したり痩せたりして滑りやすくなる可能性はありそうだ。
さて、実際に試してみたいところだが、なかなか特殊すぎてそうそう使われているところがない。筆者が見つけられたのだと、ニンテンドーの3DSに3ULR-0が使われていたほか、手持ちのiPhoneのライトニングコネクター脇に1IPRが使われていた。調べたところによると、iPhoneの内部で3ULR-Mが使われているようだ。ただ、筆者のiPhoneはすでに保証はきれているものの、まだ使うつもりなので分解はやめておいた。
3DSに使われている3ULR-0は比較的大きいネジなので心配ないが、iPhoneに使われている1IPRはとにかく小さい。見た目にもまるでシャーペンの芯のような細さで、筆者の老眼だと星形をしているのかどうかも分からないほど。
だが、実際にiPhoneにあてがってみればしっかりとはまってくれる。若干の遊びはあるが、回転方向に力をかければしっかりと引っかかっている手応えがある。ただしもはや目視では分からないようなわずかな引っかかりなので、粗悪な工具なら簡単になめてしまうだろう。まさにプロ向けの工具と言える。
なお、iPhoneなどを分解すれば保証の対象から外れるのは当然として、内部の部品を替えたりすると、技適の要件から外れる(それで通信すると違法になる)可能性があるので、特に通信する機器の修理はプロに任せるようにしてほしい。
ベッセルの36本組ビットセットで足りないサイズを補完する
そんなわけでかなり特殊なドライバーもそろったベッセルの精密ドライバーセットTD56Yなのだが、ではこれで事足りるかというと、これがなかなかそうもいかないのが難しいところ。
たとえばハードディスク、2.5インチのHDDだと六芒星のような形をしたトルクスのT6、3.5インチのHDDでは同じくトルクスのT8が必要で、トルクスはPCまわりでも比較的使われていることが多い。そうなるとベッセルの特殊精密ドライバーセットでも足りない。
そこで選んだのが、おなじくベッセルの精密差し替えドライバー36本組だ。
その名の通り36本(33種類)の差し替えビットと、そのビットが挿せるビットドライバーのセット。その入り組みの内容を見ても、iPhoneの分解で使う1IPRやY字型の0.6mmも入っているし、使用頻度が高いプラスの0と00、そしてマイナス1.5が2本ずつ入るなど、厳選されたものになっていると思う。他社の似たようなビットセットと比べると、ポジドライブなどはないが、日本だとそうそう使うことはないだろう。また、MIDとかW1.5と呼ばれる特殊なビットがない。これはiPhoneの中の基板かなにかに使われているそうで、最近のセットだと入っていることが多いのだが、まぁこれも普通は使わないだろう。
実際に手に取ると、まずコンパクトなケースに入っているのが良い。このビットの対辺は4mmで、よくある6.35mmのビットよりも小さいので、種類が多い割にコンパクトに収まる。
ケースにはビットドライバーも収納されているし、さらにケースを開けるとスタンドになる。ビットの刺さった部分が持ち上がるようになっていて、出し入れもしやすい。
ビットを刺す部分はプラスチック製で、六角形の切り欠きにビットを刺すとその奥で左右から挟まれるような構造。口コミだと硬くて抜き差ししにくいという声もあったが、当たり外れの問題なのか、筆者の手にしたものは特に硬すぎるようなことはなかった。ただ、たとえば磁力で固定するとか、もっと柔らかいゴムやスポンジのようなものなら、もっと抜き差しはしやすかっただろう。ただ、価格やコンパクトさを考えると、これはこれで良いんじゃない、というのが筆者の感想だ。
ビットを付属のビットドライバーにセットしてみると、ガタは比較的少なめ。こちらは磁力で固定されるだけなので、脱着は容易だ。
試しにプラスの00番を取り付けてカメラのネジを緩めてみたが、さすがベッセルという感じで精度は高い。ただ、ネジ自体に多少のガタはあるのと、加えてビットとドライバーの間のガタもあるので、やっぱり比べてしまうと、ビット差し込み式ではない精密ドライバーのほうが、気持ちよく作業はできる。
それと、あくまで好みの問題はあるとは思うが、このビットドライバー本体が、なんとも筆者の手にはなじまない。実はかなり前に買ったベッセルの安い精密ドライバーが似たような形状で、それがあまり手になじまなかったので買う前から予想はしていたのだが、その予想を上回るぐらい手になじまなかった。
なにしろ本体がアルミ製な上に、指のかかる凹凸もほとんどないので、指が滑ってトルクがかけにくい。さらにエンドの部分の回転するところも本体と同じ太さなのも好みではない。筆者の場合このエンドのところを中指と手の平で保持しながら、人差し指と親指で回転させるという使い方をするので、この形だと使いにくく感じてしまう。せめて本体にローレット加工でもされていればもう少しよかったと思うのだが。
だったらビットドライバーをWeraにしてしまおう!
しかし筆者と同じ事を考える人はいるようだ。Amazonの販売ページを見ると、よく一緒に買われている物として、Weraの1014 Kraftform Micro ビットホルダーが表示されていた。
一応他にも探してみたのだが、対辺4mmのビットをダイレクトに保持できるビットドライバーは他には見当たらないようだ。まぁWeraと言ってもこれ単品ならそんなに高くはないし、ベッセルのビットセットとこれの組み合わせはおすすめできると思う。
そんなわけで届いたWeraの1014にベッセルのビットセットのビットを装着。当たり前だが問題なく装着できた。そしてビット自体のガタもかなり小さい。ベッセルのそれと比較してもWeraのほうがガタは少ない印象だ。
ちなみにこのWeraのビットホルダーと、WeraのビットがセットになったTool-Check Modular Micro 1というホルダーケース付きのセットが記事執筆現在Amazonでセール中なので、いっそビットもWeraでそろえたいという人はそちらを選ぶのもありだろう。ただしそちらにはペンタローブなどの特殊なビットがないのは注意しておきたい。
結局どれを買うのがオススメ?
そんなわけで精密ドライバーや特殊ネジ用のドライバーについていろいろと掘り下げてみたわけだが、実際に使ってみると、やっぱりビット交換式より、単体のドライバーのほうが圧倒的に良い。ビットとドライバーのガタはそこまで大きくないので、そんなに気にならないかと思ったが、実際にいろいろと作業してみると、ネジが小さい分そのわずかなガタが気になってくる。
それとドライバー自体の持ちやすさの差も大きい。これはあくまで好みがあると思うが、Weraのビットドライバーを使っても、やっぱり吟匠のほうが好みだ。以前のドライバー比較の記事でも書いたが、Weraは形は良いんだけど、黒い部分が硬い樹脂で滑りやすいのがもったいない。一番力をかけやすい一番太い部分が滑りやすい樹脂なので、とにかく残念でならない。
その点、吟匠のローレット加工は本当に指なじみが良くて、力もかけられるし早回しもできる。ベッセルの精密ドライバーも良かったが、吟匠のほうがエンドの回転部分が大きくて持ちやすいのと、この部分のガタが少なくて、本当に気持ちよく回る。
ベッセルのクッショングリップもよく考えられていると思う。これはWeraにも通じるが、太いところと細いところがあることで、大トルクと早回しが両方使える。ただ、他と比べてしまうと回転キャップの小ささが少し気になる。比べなければ気にならないレベルなんだけど、比べちゃうとやっぱりもう少し大きければなぁ、と感じてしまう程度で他は全く問題なし。昔筆者が買った安いプラスチック柄の精密ドライバーはちょっと残念だったが、このクッショングリップ付きの精密ドライバーはおすすめできる。
ではどれを買うのがおすすめか。結論を言うと、全部買っても8000円ぐらいだし、全部買っちゃえば、とか思ってしまうが、さすがにベッセルの特殊精密ドライバーセットは、プロだけでよさそうだ。
もちろんベッセルの精密差し替えドライバー36本組とWeraの1014の組み合わせを買えば、ほぼ困ることはないと思う。
ただ、いくらWeraのビットドライバーが精度が高いと言ってもわずかなガタはあって、とくに小さいネジだとそのガタが結構気になる。だからこそ吟匠はもっていて損はないというのが筆者の本音だ。
ローレットの指になじむ感じ、適度な重さ、そしてクルクルと気持ちよく回るところ。吟匠には良い工具はやっぱり良いと思わせてくれる質感がある。実のところ今こうして記事を書いている間も、ことあるごとに吟匠を手に取って無駄にクルクルと回している。良い工具はやっぱり良い。
そんなわけで個人的には吟匠シリーズのラインアップがはやく増えてくれることを期待したい。それと吟匠のこのきもちいいローレットのビットドライバーも出て欲しいところだ。
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