急遽テレワーク導入!の顛末記

「Web会議ツールでのデータ通信量が一番少ないのはどれだ? Zoom、Teams、Meetで比べてみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(146)

10分間のデータ通信量をツールごとに個別比較

ビデオ会議を行った際の通信量を、各サービスで比較してみた

 最近では出張などで外出する機会が増えているが、会議は引き続きZoomなどのオンラインで行われているものが多い。このため、外出先からの帰社や帰宅が間に合わないときは、持ち歩いているノートPCから会議に参加することもある。

……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて33日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回は移動中にテザリングを使ってPCからビデオ会議に参加した場合、どのぐらいのデータ通信量が発生しているかを確認してみた。

【今回のハイライト】
環境の統一にビデオキャプチャボードを使用
通信量の計測には「NetWorx」を使用
ビデオ会議の際の通信量を測定してみた

6月5日(月):Zoomで10分間のビデオ会議にかかる通信量は?

 今日は午後から取引先とビデオ会議だが、帰宅が間に合いそうにないので、外出先から参加することに。iPhoneの「インターネット共有」を有効にして、ノートPCをテザリングでネット回線に接続。Zoomのアプリを起動した。

 その後、ビデオ会議は1時間ほどで終了。データ通信量の消費が恐かったので、こちらのカメラやマイクは極力オフにしていたが、それでも会議の映像は画面に流れっぱなし。いわば、ネット動画を観続けていたのと同じ状態だったわけで、それなりのデータ量を受信していたと思われる。

 そこで、自宅に戻った後で2台のPCを使って検証をしてみた。

 1台のPCは【配信側】として、プレゼンなどこちらから一方的に発信するシチュエーションを想定し、マイクとカメラをオンの状態に。ただし普通にやると、話者の動きの多さやしゃべる量、声量などによってデータ量がばらつきそうなので、録画したビデオ会議の音と映像を流す形にした。もう1台のPCは、プレゼンや発表会などの【聞き手側】を想定して、カメラ、マイクともにオフの状態にして、【配信側】の音と映像を聞く形にしてみた。この条件でZoomで配信してみたところ、10分あたりの送受信にかかったデータ量は以下のようになった。

Zoomで10分あたりのビデオ会議で使用するデータ通信量を計測
Zoom 10分間のデータ量
  • 【配信側】 上り199MB/下り0.8MB
  • 【聞き手側】 上り0.5MB/下り205MB

※テストでは【配信側】と【聞き手側】での1対1でのビデオ会議を実施
※【配信側】は、ビデオキャプチャボードから入力した動画を配信
※【聞き手側】はマイク・カメラをオフに設定

 【配信側】の上りと【聞き手側】の下りで多少違いはあるものの、Zoomで10分間ビデオ会議を行った場合には、およそ200MB程度のデータが送受信されていたことがわかった。今日の会議は約1時間行われたので、1GB以上のデータを送受信したことになる。どうやら、今月はスマホのデータ通信量を控える必要がありそうだ。

 なお、今回のテストでは、テストの条件をできるだけ均一にするために、Webカメラの代わりに少人数のビデオ会議の録画映像と音声を配信したが、形としては1対1で、一方的にしゃべり続けている状況なので、特殊な条件ではある。一般的なWeb会議のように、多人数が参加して、次々に発言(=カメラ切り替え)するようなシチュエーションでは、より多くのデータが送受信されることになるかもしれない。

6月6日(火):TeamsだとZoomより通信量を節約できた!

 昨日はZoomを使った場合の10分あたりの通信量を測定したが、打合せ相手によっては、ほかのサービスを使ってビデオ会議に参加することもある。そこで、Microsoft Teamsを使った場合についても、音声や映像の送受信にかかる通信量を計測してみた。

Microsoft Teamsで10分あたりのビデオ会議で使用するデータ通信量を計測
Microsoft Teams 10分間のデータ量
  • 【配信側】 上り155MB/下り1.4MB
  • 【聞き手側】 上り1.3MB/下り151MB

※テスト環境は前回と同様

 こちらも【配信側】の上りと【聞き手側】の下りで多少違いはあったが、概ね150MBを超える程度のデータが送受信されているらしい。Zoomが200MBほどだったのと比べると、25%程度データ通信量を節約できたことになる。それでいて画質の面でも明確な違いは感じられなかった。

 なお、Teamsの場合、通信の帯域幅によって映像の解像度などを自動調整しているらしい。今回は平日の日中に自宅のネット回線を使って行ったが、あくまで一例と考えたほうがよさそうだ。ネットワーク環境の混み具合によっては、画質の調整などによってデータ通信量が抑えられる可能性もある。

 また、映像などの条件はZoomの時と同じく1対1で、Webカメラの代わりに映像を流す形で行なったが、Microsoft Teamsの場合、参加者全員のカメラ映像を画面上に並べる「ギャラリー」表示がデフォルトとなっているため、その表示のまま複数人が次々に発言すると画面表示の変化が大きくなり、データ通信量が増えるケースもあるのかもしれない。

6月7日(水):Google Meetは映像のデータ通信量が圧倒的に少ない!?

 うちの会社の取引先には、ビデオ会議にGoogle Meetを使っている所もある。せっかくなので、こちらも10分あたりの通信量を測定してみた。

Google Meetで10分あたりのビデオ会議で使用するデータ通信量を計測
Google Meet 10分間のデータ量
  • 【配信側】 上り41MB/下り2.3MB
  • 【聞き手側】 上り1.6MB/下り41MB

※テスト環境は前回と同様

 なんとも驚きの結果だが、容量はわずか41MBに抑えられている。Zoomだとおよそ200MB程度、Teamsでは150MBを超す程度だったことを考えると圧倒的な少なさだ。

 このペースなら1時間あたりのデータ送受信量が260MBを切るので、やむを得ずにテザリングでのビデオ会議をするときにも、ギガ消費が少なくて済みそうだ。

6月8日(木):Google Meetは画質設定でさらにデータ通信量を少なくできる

 ここまでのテストで、Google Meetを使うと、映像の送受信にかかるデータ通信量を大きく抑えることができた。ただ、今から思えばGoogle Meetのカメラ映像は、ほかのサービスよりも映像がやや荒かったような気がする。

 そこで、Google Meetの設定画面を確認すると、デフォルトでは映像の解像度が「自動」に設定されていた。この設定メニューでは、送信時は「高解像度(720p)」「標準解像度(360p)」「低解像度(180p)」、受信時は「高解像度(720p)」「標準解像度(360p)」に指定することも可能だ。

Google Meetでは送受信時の映像について、解像度を指定できる

 ということは機能のテストでは低解像度になっていた可能性もある。そこで設定メニューを、送信時「低解像度(180p)」、受信時「標準解像度(360p)」に変更してテストしてみたところ、以下のような結果となった。

Google Meet(低解像度設定) 10分間のデータ量
  • 【配信側】 上り18MB/下り2.4MB
  • 【聞き手側】 上り1.9MB/下り18MB

※テスト環境は前回と同様

 なんと昨日と比べてさらに半分以下のデータ量となった。

 そこで今度は標準解像度(360p)にしたところ、40MBと昨日と同程度となったので、どうやら昨日の自動設定の際も、概ね360pの映像がやり取りされていたと予想される。

 一方、Zoomでは設定画面から映像の解像度が確認できるが、テスト時には解像度640×360の映像が送られていた。つまりGoogle Meetでは解像度が同程度であっても、映像+音声のデータ通信量は、Zoomの20%程度に抑えられていたということだ。さらに低解像度設定にすればZoomの10%以下にすることもできた。どうやら映像+音声のデータ通信量で見れば、Google Meetは、ほかのサービスよりもアドバンテージがあると言えるだろう。

Zoomでは「設定」の「統計情報」で映像の解像度を確認できる

 ということで、3つのWeb会議ツールを比べてみたが、テザリングなどでとにかく通信のためのデータ量を抑えたいならばGoogle Meetがもっとも優れているという結果になった。さらに設定で解像度を落とせば、テザリングにおけるデータ通信量を圧縮するだけでなく、Wi-Fi回線が混雑しているときにネットワークの負担を抑えることもできるだろう。ビデオ会議にGoogle Meetを使う場合には、状況に応じて画質を上手くコントロールしたい。

とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。

飛田九十九