柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」

第12回

今こそテレワークに「G Suite」活用を! 「社員が使っているのはGmailとカレンダーだけ」を解決するレクチャー動画サイト「Master Program」

7割が「Gmailとカレンダーしか使っていない」という現実

 Googleが提供しているグループウェアサービス「G Suite」は、「Gmail」「カレンダー」「ドライブ」などのサービスをまとめて利用できるのが特徴だ。日本でも多くの企業がビジネスに活用しているが、それら導入企業において全従業員が活用できているのか――というと、そうでもないという。

株式会社ストリートスマートの窪田篤氏

 「数年前、弊社で調査した結果なのですが、『G Suiteを導入するにあたり、十分な周知と教育が必要であることは分かっているが、対応リソースが追いつかない』との回答が84%に上りました。その結果、73%の企業において『Gmailとカレンダーしか使っていない』という現状が明らかになったのです。メールとカレンダーだけであれば、G Suite以外の他社製品も選択肢として挙げることができます。せっかくG Suiteを導入したのであれば、データ共有・同時編集やオンライン会議といったさまざまなコラボレーション機能を活用しないと、その利用コストや社員の業務時間がもったいないと言えるでしょう。」

 今回は、動画セミナー型のG Suite社内教育サービス「Master Program」を提供している株式会社ストリートスマートの窪田篤氏(Enterprise事業部)にお話を伺った。

株式会社ストリートスマートが2016~2017年に「G Suiteセミナー」参加企業1032社に対して行ったアンケート調査の集計結果

G Suiteが「難しいから使えない」……のではなく「利用するメリットを知らない」

 ストリートスマートは、G Suiteの活用法に関する企業や学校向けのトレーニング(研修)を提供している企業だ。ユーザー目線の活用に詳しい講師が多く、人気を集め、大企業からの発注も増加したそうだ。そのおかげで、全国に支社・拠点を持つ企業の依頼も受け、講師は移動を重ねながらトレーニングを行うようになったが、1000人、1万人といった大規模な企業の全従業員へ対面で研修を行うことは(時間の面でもコストの面でも)あまり現実的ではない。結果として全従業員に教育を提供できず、一部の利用者のみに強化研修を行うことが多くあったという。

 そこで、2019年4月に正式リリースしたのが「Master Program」だ。G Suiteの各サービスの効率的な使い方を教える動画コンテンツを制作し、低料金で提供できるようにした。従来は、中小規模の企業だとG Suiteの教育に何十万円も出しづらいということが多かったのだが、Master Programなら気軽に導入できる。まだ、ローンチから1年経っていないのだが、すでに契約G Suiteアカウント数は5万を超えている。

「Master Program」契約ユーザー向けトップページ

 Master Programは、G Suite活用のプロ講師陣が普段セミナーで話している内容から、重要なポイントや聴講者のウケがよかったところを抜粋して撮影。その動画をセミナー形式に編集して、機能別に5分や10分といった長さで配信を行っている。ユーザーは全てG Suiteのユーザーのため、Master ProgramのコンテンツそのものもGoogleのアカウント制御で動作している。Google サイト上に、Google ドライブにアップロードした動画をGoogleのCDN(Content Delivery Network)を利用して配信しているのだ。

「Gmail」のレクチャー動画ページ

 コンテンツはマルチデバイスに対応しており、ユーザーはいつでも任意のコンテンツを再生して学習できる。G Suiteの各サービスごとに複数の動画が用意され、例えばドライブについては、全体で75分間のコンテンツがある。ドライブの概要から基本的な説明があり、データを同僚と共有したり、同時編集を行う方法などが紹介される。

 「動画の内容は、操作マニュアルよりは実際の業務に寄っています。機能だけを紹介しても利用者のモチベーションが上がらないのです。例えば、『資料作成の社内レビューの際にも、添付ファイルでファイルをやりとりすると無駄な時間が多く発生するけど、ドライブで共有すればレビューを依頼する人もレビューする人も楽になるよ』という話をします。」(窪田氏)

オススメ利用方法の例:「Gmail」のメールチェック時間を圧倒的に減らす技

オススメ利用方法の例:「Google カレンダー」で会議調整の手間を削る技

オススメ利用方法の例:「Google ドライブ」で議事録を会議中に完成させる技

オススメ利用方法の例:「Hangouts Meet」で会議の移動時間をゼロにする

 そもそも、G Suiteを使いこなせていない人の中には、G Suiteの各サービスで「できることを知らない」ため、課題感を持っていない人も多いという。「難しいから使えない」のではなく、そもそも、導入済みのG Suiteプラン内で実はすでに使えるさまざまな機能を「利用するメリット自体を知らない」ため、ごく一般的なメール/カレンダー利用にとどまってしまうのだ。その上、こういったクラウドサービスに付いているヘルプ情報は外資系サービスにありがちな、シンプルで直訳風の内容になっていることが多い。デジタルリテラシーがある人でも使いにくいのだから、G Suite初心者がヘルプを見て自分で学習するのは無理だろう。

 そのため、Master Programがターゲットにしているのは、「G Suite(Basic/Business/Enterprise)」を契約している企業において、レベル的には、本当に基礎的なところから、中級に入るくらいまで。難しいテクニックなどは扱っていない。

 「Master Programは、会社全体のG Suite活用度を底上げするツールとして提供しています。活用度が80点とか100点の一部の詳しい人を目指すのではなく、残念ながらあまり使いこなせていない多数の人たちをまずは60点目指して引き上げましょう、ということです」と窪田氏。

Google フォームで作られた「G Suite活用方法理解度テスト」もある
レクチャー動画のラインアップ(2020年3月15日現在)

情シス/IT担当者の負担を軽減、マニュアル制作&アップデートや社員の質問対応から解放

 Master Programの強みは、G Suiteの新機能を常にチェックしているスタッフを確保していること。ストリートスマートでは、G Suiteのマニュアルを制作し、企業に販売するサービスも提供している。そのため、英語のG Suite公式ブログなどでひたすら情報収集して、新機能が出たり機能が変更されたら、すぐに社内で共有される仕組みが構築されている。ここから、ユーザーに影響の大きい部分を抜粋し、Master Programのコンテンツをアップデートしているのだ。社内のリソースを活用しているので、コストを抑えつつ、迅速な対応が可能になっている。

 G Suiteの導入企業の情シス部門などが「ある時点」のマニュアルを社内で制作することは可能だが、Googleのサービスは頻繁にUIや機能が変更されるので、アップデートが必須になる。そこを任せられるのもMaster Programの大きなメリットとなる。

印刷本による「スタートガイド」もオプションで用意している

 Master Program採用企業における利用シーンで多いのが、新入社員への教育だという。例えば、入社した人に、1つの機能の基本的なところを約20分ずつ、1時間半ほどを見てもらうという。社内にIT担当者がいたとしても、最低限の知識が無ければ、GmailとG Suiteの違いから説明をしなければならず、時間が無駄になってしまうためだ。

 複数の拠点を持つ企業の事例では、以前は東京に従業員を集めて研修をしていたそうだが、Master Programを導入することでリモートで研修が行えるようになり、大幅なコストダウンを実現した。他の事例では、今でも研修を行っているそうだが、講師を呼ばずに、社内担当者によるMaster Programの動画を使ったミニセミナーを行うといった使い方をしているという。

 日本の企業らしく、G Suiteの導入とともに自社でマニュアルを作成したところもある。しかし、Googleのサービスは日々進化しており、UIや機能が大きく変化することがある。さすがにマニュアルのためだけにIT部門が全てのアップデートを追いかけるのは現実的ではない。そこで最新のG Suiteに対応するMaster Programをマニュアル代わりに使っているケースもあるという。

 G Suiteの契約アカウント数が1万を超える大企業の顧客もいるが、そこでは社内SNSやメルマガで発信するネタが足りず、担当者が困っていたそう。そこで、Master Programのレクチャー動画を1本ずつ掲載することで、担当者の手間は省けるし、従業員はすぐに使える便利な情報を得られるようになった。

 ドライブの開き方やHangouts Meetの使い方といった質問が寄せられる情シスが、基本的な内容の問い合わせを減らすためにMaster Programを導入する企業もあるそうだ。

ツールだけでは、テレワークはうまくいかない?

「G Suiteは、“個人”ではなく、“チーム”の生産性を高めることに特化したクラウドツール」だと表現する窪田氏。直近では、新型コロナウイルスの影響もあってテレワークを導入する企業が増える一方で、急なテレワークの導入によって、思っていたように仕事を進めることができていないとの声も少なからず聞いているという。

こうした状況について窪田氏は、「ネットワークやツールといったハード面だけを整備しても、どのように使えばよいか、やり取りすればよいかがチームの中で整備されていないと、特に遠隔で連携した働き方は難しい。必要なのは、『基本的なツールの使い方を全員が理解できていること』に加えて、『どのようにコミュニケーションするのかといったマナーや社内文化とも言えるソフト面』を整えること」と指摘する。

「G Suiteを使いこなすということは、単純にクラウドツールの利用方法が理解できるというだけではなく、『チームとして協働』するという働き方を学び、実践できることにつながっています。」

社員1人あたり初期費用360円+年額360円、新入社員の教育コストも劇的に抑えられる

 Master Programの料金体系はシンプルだ。基本パッケージとしては、初期導入費が360円×契約G Suiteアカウント数と、年間利用料の360円×契約G Suiteアカウント数となる。例えば10人の企業なら、初年度は(360円+360円)×10アカウントで、7200円となる。翌年からは、360円×10アカウントの3600円でいい。さらには、初期導入費・年額利用料それぞれ50万円が上限となる。すなわち、1389アカウント以上の場合は、たとえ2000人でも1万人でも、初年度のマックスは100万円、翌年からも50万円で済むというわけだ(価格は全て税別)。

 「G Suite Business」は、1人あたりの月額料金は1360円(税別)。それを考えると、Master Programの料金は激安と言っていいコストだろう。新入社員やデジタルリテラシーの低い社員が主に利用すると考えても、教育コストとしては格安だ。

 今後も、G Suiteのサービス/機能のアップデートがあればコンテンツが更新されていくし、3月末には「Google フォーム」についてのレクチャー動画も追加される予定。もし、G Suiteを導入しているのに活用し切れていないと悩んでいたり、ファイルサーバーのリプレースでG Suiteを検討しているが使いこなせるか不安というのであれば、Master Programの導入を検討してみてはいかがだろうか。

(協力:株式会社ストリートスマート)

柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは22年目で、デジタルガジェットからウェブサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。都内で飲食業「原価BAR」やウイスキー販売会社「トゥールビヨン」も経営しており、デジタル好きと経営者の両方の目線で製品やサービスを紹介するのが得意。