柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」

第11回

新しい「一太郎2020」と「ATOK」の“ビジネスに効く”新機能をチェック!

ビジネス文書を効率よく&ハイクオリティに作成

 「一太郎2020」が2月7日に発売された。株式会社ジャストシステムが開発・提供する日本語ワープロソフト「一太郎」の歴史は古く、なんと今年で35周年とのこと。ほぼ毎年新バージョンが登場し、35年で36バージョンの一太郎が登場した。筆者は、30年前から一太郎と、同じくジャストシステムが開発・提供する日本語入力しシステム「ATOK」を使っており、ほとんどのバージョンを使ってきている。今回は“ビジネスに効く”という切り口で、一太郎2020とATOKの便利そうな機能をチェックしてみよう。

「一太郎」35周年というタイミングで、「一太郎2020」がお目見えした(写真はパッケージ版)

スマホアプリ「一太郎Pad」で看板や手紙を手軽に文字起こしする

 「一太郎2020」で新たに提供される目玉機能の1つが「一太郎Pad」。iOS/iPadOS/Androidに対応したスマホ/タブレットアプリで、写真を撮るとOCR処理で日本語化し、テキストメモを取れる。そして、そのデータを手軽に一太郎と同期できるのがウリ。

 例えば、施設を見学する際、説明の看板があってもメモなどする時間もないので撮影することだろう。しかし、帰社してしまうと、その写真を開いて熟読したり、テキストに起こすことを忘れてしまいがち。そんなとき、一太郎Padなら、撮影すれば瞬時にテキスト化されるので便利だ。

 カンファレンスで張り出されているポスターや、講演で配布された紙の資料だってOK。試しに、取材時に撮影した写真を取り込んだところ、短めの文とは言え、誤判別なしに正確にテキスト化してくれた。

 撮影せずに、普通のメモアプリとしても利用できる。ビジネスのアイデアや抜けていたタスク、使えそうなフレーズなどが思い浮かんだら、即、メモすればいい。帰社してからPCに取り込めば、今まで無駄に消えていたリソースを活用できるようになる。音声入力にも対応しているので、展示会などでガンガン情報収集する際にも役立つ。

 一太郎2020の[ファイル]メニューから一太郎Padの機能を起動できる。まずは、セットアップを行おう。

Windows PC側の「一太郎2020」を起動し、[ファイル]メニューから[一太郎Pad]をクリックする
[次へ]をクリックする
スマホでQRコードを読み込み、アプリをインストールする
スマホでの操作が指示されるので従う
PCの名前を入力し、[次へ]をクリックする
「一太郎Pad」のメイン画面から接続アイコンをタップし、[Wi-Fiで接続]をタップする
「一太郎2020」に表示されるQRコードを撮影すると接続できる

 準備ができたらカメラアイコンをタップし、撮影するか撮影済みの写真を利用するか選ぶ。撮影もしくは写真を選択したら、トリミングを行う。画像を拡大し、取り込みたい文章の部分だけを枠線に入るように調整しよう。テキスト認識はあっという間。写真は暗かったし、難しい文章だと思ったのだが、誤認識はゼロ。

カメラアイコンをタップし、画像の取り込み方法を選択する
今回は、資料として撮影したこの写真を利用する。筆者が以前、ウイスキー蒸留所を取材したときのものだ
画像を回転させたり、取り込みたい部分を指定する
指定できたら「完了」をタップする
瞬時にOCR処理され、テキストが表示される。誤認識はゼロだ

 一太郎2020とはWi-Fiで同期できる。[ファイル]メニューから[一太郎Pad]を開き、QRコードを撮影して接続すると、同期画面が開く。そこから[挿入]をクリックすると、一太郎文書にテキストがコピーされる。再利用の手間もかからず、使い勝手がいい。

再度「一太郎2020」の[一太郎Pad]を開き、QRコードを読み込むと自動的にメモが同期される
ダイアログで[挿入]をクリックすると、一太郎文書にテキストが挿入される

文章のチェック機能が充実、文字コード選択やふりがな機能も便利

 一太郎2020としてもいくつか新機能を搭載したり、既存機能の強化を行っている。

文字コード選択

 まずは、文字コード選択。他の人からもらったテキストファイルを読み込むと盛大に文字化けしていることはないだろうか。これは文字コードが異なっているのが原因。とはいえ、先方に連絡して、文字コードを変えてもらったり、PDFで送り直してもらうのは面倒だ。

 一太郎2020ならテキストを開く際に、「文字コードを選択して開く」ダイアログが出るので、プレビューを見ながら文字コードを選択できる。自動判別で問題ないと思われるコードが選ばれるので、普段は[OK]をクリックするだけでOKだ。

テキストファイルを読み込む際、文字コードを指定できるようになった

文字数表示機能

 地味なアップデートだが、筆者が歓迎したのが文字数表示機能。ステータスバーに文書の文字数が表示されるようになったのだ。ライターであれば、執筆しなければならない原稿の文字数が決まっているので、常に意識しなければならない。計測ツールを利用したり、情報パレットを開くことなく、画面の下に常に表示されているのはありがたい。

ステータスバーに、文書の文字数が常時表示されるようになった(画面左下の赤枠部分)

ふりがな機能

 ふりがなを振る機能は以前からあったが、一太郎2020では、誤読したり、読みづらい言葉だけにふりがなを一括入力できるようになった。プレゼンで読み上げる資料にふりがなを振りたいが、上司に渡す目的だと、小学生でも読める漢字に付けるのも失礼。そんなときに活用できそうな機能だ。

難読語だけにまとめてふりがなを振れるようになった

公文書に対応した住所表記ルール/略語の統一

 住所表記ルールのチェックや略語の校正など、ビジネスパーソンにありがたいチェック機能を搭載したのもうれしいところ。例えば、公文書や法律文書では「神奈川県横浜市」や「徳島県徳島市」という表記はNG。政令指定都市や県庁所在地の都道府県名は省略するというルールがあるのだ。

 ほかには、表記の統一で法人の略語もチェックできるようになった。「株式会社」と「(株)」、「有限会社」と「(有)」が混在していては、ビジネス文書のレベルが低く感じられてしまうので注意しよう。

公文書に対応した住所表記ルールのチェックができるようになった
法人の略語をチェックし、表記揺れを防げるようになった

やっぱり賢く、入力しやすい日本語入力システム「ATOK」

 筆者は、昔から日本語入力システムはATOKを利用している。変換が賢いので、文章入力に集中でき、効率が上がるためだ。ライターにとってはダイレクトに収益につながるので、見逃せないところだ。

 すでにATOKは最高峰の日本語変換機能を備えているのだが、それでも最新バージョンでは新機能を搭載してきた。せっかくなので、早速チェックしてみる。

※「一太郎2020」には「ATOK for Windows 一太郎2020 Limited」がバンドルされている。

決まったフレーズを学習、辞書登録なしで推測候補に表示

 メールなどでは、決まったフレーズを使うことが多い。例えば、「お世話になっております。(株)トゥールビヨンの柳谷です」という書き出しをよく使うなら、これまでは辞書登録して候補に出るようにしていた。しかし、ATOKでは、同じ文章を数回入力することで学習し、推測候補に表示してくれるようになった。

 取引先が変わって文面が微妙に変わっても、辞書登録することなく、ATOKが学習してくれるのは手間が省ける。

句読点が入った文章も学習して候補に出るようになった

その単語のほかの言い方を提示する「新連想変換」

 ビジネスパーソンにお勧めしたいのが「新連想変換」機能。この単語のほかの言い方ないかな、と思ったときにCtrl+Tabキーを押すと、候補を表示してくれるというもの。従来より、2倍の候補を出してくれるようになったので、勉強なしに文章に幅を持たせられる。

「連想変換」で表示される言葉の言い換え候補の数が増えた

ダークモード対応

 Windows 10はOSの設定で、ウィンドウなどの配色を白と黒から選べるようになった。ダークモードにしている場合、ATOKもダークモードデザインに変わるようになった。

「ATOK」の候補ウィンドウがダークモードデザインに対応した

 以上が、一太郎2020の新機能を中心としたレビューとなる。一太郎2020は、Windows 10/8.1に対応。ダウンロード版の価格(税別)は、通常版が1万6000円、以前の一太郎を持っているユーザーが対象のバージョンアップ版が6000円、ジャストシステム製品やMS Office、Wordを持っているユーザーが対象の特別優待版が7400円(このほかに各パッケージ版もあり)。今回紹介できなかったが、限定特典として、写真を使った文字を作成できる「フォトモジ」と「昭和・平成・令和 時をかけるイラスト70」もバンドルされている。

 ビジネス文書をもっと効率よく、ハイクオリティに作成したいなら、一太郎&ATOKの実力を試してみることをお勧めする。

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柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは22年目で、デジタルガジェットからウェブサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。都内で飲食業「原価BAR」やウイスキー販売会社「トゥールビヨン」も経営しており、デジタル好きと経営者の両方の目線で製品やサービスを紹介するのが得意。