柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」
第10回
海外旅行に+8980円で手軽な音声翻訳を! 8時間動くハンディ翻訳機「TL01」を使ってみた
2019年6月20日 07:00
15カ国語に対応する音声翻訳デバイス「TL01」を株式会社マウスコンピューターが今年3月に発売した。約63gと小型軽量で、話し掛けた音声を簡単な操作で翻訳してくれるのだ。しかも、日本語を外国語にするだけでなく、相手が話した言葉も日本語にしてくれる。早速、海外旅行に持参したり、英語ネイティブの人にチェックしてもらったりしてみたので、その結果を紹介する。
インターネット接続が必要だが、双方向の音声翻訳が可能
マウスコンピューターの「TL01」は、日本語と外国語を音声認識し、翻訳した上でその言語で再生してくれるデバイスだ。ドラえもんの秘密道具みたいだが、これさえあれば英語を勉強しなくて済むのだろうか? 半信半疑かつ超期待しながらレビューしてみた。
本体サイズは38.6×11×100mm、重量は約63gとコンパクト。バッテリーを内蔵しており、Micro USBケーブルで接続して充電する。バッテリー充電時間は約2時間で、動作時間は約8時間となっている。マイクとスピーカーを内蔵するほか、ヘッドホン出力用のミニジャックも用意している。
ボタン類もシンプル。上部に電源ボタンがあり、正面に操作ボタンが配置されているサークルがある。左右が音量調節で、手前の「Me」が自分用、上のマイクボタンが相手用とシンプル。迷わず使えそうだ。
翻訳はTL01本体で行うのではなく、インターネットに接続し、「Microsoft Azure Cognitive Services」のオンライン翻訳エンジンを利用している。そのためIEEE.802 11n/g/b対応のWi-Fiも搭載する。
まずは専用スマホアプリをインストールして、Wi-Fiの接続設定
利用するには、まずはスマホアプリをインストールする。「MoYu」(Android/iOS)という中国製のアプリだが、きちんと日本語化されているので安心。アプリを起動したら、TL01本体の電源ボタンと音量大ボタンを同時押しにしてネットワーク設定モードに切り替える。続いて、Wi-Fiにつなぐかスマホのテザリングを利用するか選択する。屋外で使うのであれば、スマホのテザリングを利用することになるだろう。
Wi-FiのSSIDや暗号化キー(パスワード)などをスマホに入力するのだが、iOSの場合、SSIDは手打ちとなる。一覧も表示されないため、自分が利用しているWi-Fiルーターの情報を確認しておこう。テザリングの場合は、iPhone名は入力されているので、暗号化キーだけ入力すればいい。このとき、スマホのアクセスポイント名に全角やスペースは利用できない。iPhoneの場合、初期設定で「柳谷智宣のiPhone XS Max」といった形式になっているので、英語の文字列に変更しておこう。
続いて、音声を利用して本体の接続設定を行う。スマホからピポピポという電子音が鳴り、それをTL01が聞いてネットに接続するのだ。
ストレスを感じない変換速度、ただし固有名詞はちょっと苦手?
ネットに接続したら、試しに「Me」ボタンを押して「こんにちは」と話してみる。すると、ワンテンポ遅れて「Hello」と女性の声で再生された。思いのほか流ちょうだ。「オススメの食べ物のメニューは何ですか?」と普通に話しても、「What is the recommended food menu?」と問題なし。特にゆっくり話したり、大きな声で話す必要もなく、普通に認識してくれるのがありがたい。変換速度も、即というわけではないが、ネットを介しているとは思えないほど短時間なのでストレスは感じない。期待以上だ。
認識したあと、「Me」を押すと自分が話した言葉を認識したものが再生される。マイクボタンを押すと、翻訳した言葉が再度再生される。相手に伝わらなかった場合でも、ワンボタンで繰り返せるのはありがたい。
これはすごいといろいろな文章を吹き込んだところ、固有名詞がちょっと苦手なことが分かった。例えば、「オススメはラムのスープです」とか「JAL100便の搭乗口はどこですか」といった文章は正確に翻訳されなかった。しかし、「ラム」「JAL100便」が変換されないだけで、文章の骨子は変換できているので、聞き返されてもその部分だけ直接言えばコミュニケーションは取れる。
騒がしい場所では、スマホ画面による“翻訳筆談”が便利
TL01の音量は最大にすると、なかなかのもの。例えば店の中のざわめきがうるさい場合、通常の音量だと聞き取れないことがある。とはいえ、音量を上げすぎても周りに迷惑だ。そんなときは、スマホアプリに表示される履歴を利用しよう。認識した言葉とその翻訳が履歴として表示できるのだ。お互いが、TL01を口元に持って言ってしゃべるだけで、スマホに翻訳が表示されていくのはユニークだ。
中央のボタンを押すと、日本語から翻訳する言語を切り替えられる。押すごとに日本語から英語→中国語→フランス語→韓国語→英語と切り替えられる。ほかには、タイ語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語、ロシア語、オランダ語、イタリア語、フィンランド語、デンマーク語、スウェーデン語に変換することも可能。これらは、スマホアプリで接続し、「言語」画面から設定する。ちなみに、英語・中国語・フランス語・韓国語以外に設定しても、特に翻訳速度が遅くなるといったことはない。
スマホの翻訳アプリでは得られない“ありがたさ”とは
8時間のバッテリー駆動が可能なので、1日使っても問題なし。利用していないときは、30分で電源が切れるので手間もかからない。Micro USBで充電できるので、万一の場合もモバイルバッテリーさえあればなんとかなる。
テザリングやWi-Fiの接続がおかしくなったら、再起動すれば自動的に接続してくれる。万一の際は再設定するしかないが、屋外だと作業が難しいことは覚えておこう。前述の通り、スマホのスピーカーからピポピポと音を出して接続設定を本体に転送するので、うるさいと認識しないのだ。さらに、大きな音を出せば、何事かと目立ってしまうためだ。その代わり、10カ所までのアクセスポイントを登録しておけるので、一度設定すれば、場所を移動しても音を出して再接続する必要はない。
TL01は、自然な感じで話し言葉を翻訳できるすごいガジェットだ。スマホとは別の端末なので、スマホで行きたい店の情報や地図アプリ、メモアプリなどを操作しながら、会話できるのがありがたい。
見知らぬ人にスマホを突きつけるのには気が引けるし、相手も驚くかも知れないが、コンパクトな翻訳機なら違和感なく受け入れてもらえそう。うるさい場所で利用する際、再生している端末を相手に渡して耳に近づけてもらうことがあるかもしれない。そんなときもスマホを渡さずに済むのはありがたい。
インバウンド見据え、国内の飲食店などで強力な武器に!?
モンゴルやラスベガスに持参して試してみたが、意外と活用した回数は少なかった。英語が苦手とは言え、ある程度の単語は分かるので、体当たりした方が早いケースが多いのだ。そして、インタビューや講演など、ばりばりの長文を扱う場合は、誤認識が気になり、通訳に頼ってしまうことに。とは言え、その中間くらいでは、びたっとニーズにはまった。英語があまり通じないモンゴルこそ使いたかったが、モンゴル語に対応してないのが残念。
実は、帰国して、筆者が経営する「原価BAR」に持って行ったところ、大活躍しそうな雰囲気がある。現在、カナダ生まれで英語ネイティブ、日本語が第二外国語という男性スタッフがいるのだが、彼に使ってみてもらったところ、外国人としても問題なくコミュニケーションできるので役立ちそうとのことだった。
英語が苦手なスタッフも多いのだが、現時点でも外国人の客が増えている。英語が話せなかったり、英語のメニューがないと、その時点で店を出て行ってしまうケースが多いのだが、TL01があればある程度の対応が行える。これからオリンピックを迎え、インバウンド需要が跳ね上がる中、いい武器を見つけられた。まずは、1店舗に1台の導入を検討しようと思う。モンゴル語に対応してくれれば、原価BARのモンゴル店でも導入できるほか、視察も楽になるので期待したいところ。
TL01は、ネットを介してMicrosoft AIの翻訳エンジンを利用すると割り切り、ハードウェアもシンプル操作にすることで1万円を切る低価格を実現。100%の翻訳は無理だが、意思の疎通は十分実現できるお役立ちガジェットであることは間違いない。微妙に誤認識もあるし、ネットワーク接続が途切れてしまうことも何度かあったが、全体的に使い勝手は良好。
観光しているときは片言の外国語でしのぐとしても、空港で荷物をロストしたり税関でひっかかったり、観光地で警察や病院のお世話になるときには大活躍してくれること請け合い。海外旅行時に持っておいて損はないデバイスと言える。
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