柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」
第3回
もうメールは時代遅れ! ビジネスを加速するコミュニケーションツールはコレだ!
ビジネスITフル武装<ビジネスチャット編>
2018年4月26日 06:05
社内でのやりとりにメールを使うのはもう時代遅れだ。迷惑メールの中で重要なメールを見落としたり、操作ミスで情報漏えいしたり、話のつながりが把握できず時間を浪費したりするのはもうやめにしてはどうだろう。今回は、ビジネスを加速するコミュニケーションツールを紹介しよう。
ビジネスではITを活用しないと生き残れません。とはいえ、世の中にはデジタル製品もITサービスも溢れかえり、百花繚乱です。コストだけを見ると銭失いになりかねませんし、何も考えずに選ぶと予算オーバーになることも。そこで、本連載『柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」』では、副業で個人事業主となろうかと考えている人から、10人くらいまでの小規模企業を経営している人向けに、ビジネスのためのITという切り口で製品やサービスを取り上げようと思います。
筆者も、国内外に展開する飲食企業を含め複数の会社を経営しているので、デジタルリテラシーの低い社員や予算がないといったよくある悩みを抱えています。そんな現場のリアルから、業務効率改善や働き方改革に効く情報を紹介します。
メールとグループウェアのいいとこ取りした“ビジネスチャット”
ビジネスで多数の取引先と多数の連絡をやりとりするツールとして考えると、「電子メール」は弱点だらけだ。まず、大量のメールに埋もれて重要な要件を見逃してしまうことがある。フォルダーやタグによる整理をすることも可能だが面倒だ。話の流れを追うのに手間がかかるし、件名がきちんと付けられていないと追えないこともある。意図しない全員返信やアドレス帳の選択ミスなどで、社外秘の情報を誤送信してしまうこともある。そして、一度送信したメールはキャンセルできない。
社内の情報共有に利用されるグループウェアにはメッセージ機能が搭載されており、メールの代わりに利用する企業もある。クローズドな環境でセキュリティがしっかりしているし、迷惑メールも来ない。しかし、あまり高機能でなく、多数の案件を処理するのには向いていないこともある。
そんなメールとグループウェアのメリットをいいとこ取りしたのが、ビジネスチャットサービスだ。チャットそのものは昔からある機能だが、10年ほど前からビジネスに特化したサービスが登場し始めた。そして、ここ数年、急激に市場が成長している注目カテゴリーの1つとなっている。
ビジネスチャットは安全な環境でメッセージをやりとりでき、ビジネスに適した機能を多数用意しているのが特徴。1対1で会話してもいいし、複数ユーザーを指定してグループチャットを作ることもできる。基本的な使い方は、LINEやFacebookメッセージと同じなので迷うこともないだろう。また、やりとりは端末ではなくクラウドに保存されているため、いつでもどこでも利用できる。機種変更でデータを失うこともない。
とはいえ、いくら便利でもビジネスで利用するツールを増やすのは、効率が悪いことには変わりない。だったら、LINEやFacebookメッセージでもいいのでは?という意見もある。しかし、プライベートで使っているSNSをビジネスで使うのは避けるべき。個人情報を関係者全員にばらまくのはリスクがあるし、SNSに投稿する内容を全員に見られるのもトラブルの種になる可能性がある。さらに、一般的なメッセージサービスだと情報がきちんと保存されていなかったり、検索機能が貧弱だったりとビジネスで活用しきれない。やはり、ビジネスに特化したチャットサービスが欲しいところだ。
今回は、日本語に対応する有名ビジネスチャットサービス3つを紹介する。
会話の流れからタスクを割り振れる「チャットワーク」
国産ビジネスチャットの定番と言えば「チャットワーク」。2011年にサービスをスタートし、現在はグローバルに展開。世界205の国・地域で使われており、9万社以上が導入している。
複数ユーザーが参加するグループチャットで会議でき、メッセージの返信や引用、編集などの機能が手軽に利用できる。絵文字も利用でき、もちろん投稿済みのメッセージを削除することもできる。ただし、既読は付かない。メールと違って既読を表示できるというメリットを打ち出すチャットサービスもあるが、チャットワークではあえて既読機能を搭載していない。既読機能によって、ビジネスコミュニケーションが阻害されかねない、という考えなのだ。
3種類のチャットが用意されており、1対1で会話するのが「ダイレクトチャット」、複数ユーザーで会話するのが「グループチャット」となる。それとは別に、自分だけが閲覧できる「マイチャット」も用意されている。こちらは、備忘録や下書きなどに利用できる。
チャットだけでなくファイルを共有することも可能。画像やオフィス文書などさまざまなファイルをメンバーで共有できるのだ。メールと違って散逸しなくて済むし、いつでも最新のファイルをダウンロードできるのは安心だ。利用できるストレージの容量はプランによって異なるが、無料のフリープランでも5GB、パーソナルプランでは10GBと十分だ。
ライターである筆者は多数の企業と仕事をしているのだが、メールであいさつしたあと、「今後のやりとりはチャットワークで」と言われることが増えてきた。フリープランだとグループチャットは最大14個までなので、いろいろなところとやりとりするフリーランスは有料プランの契約が必要になってくることだろう。
お互いの時間を拘束しないのがチャットの強みではあるが、やはり顔を見ながら会話する際の情報量は多く、込み入った案件のときは積極的に活用したい。もちろん、チャットワークでも音声通話やビデオ通話、画面共有といった機能が利用できる。音声通話は、プランにかかわらず最大100人まで同時に話せる。ビデオ通話はフリープランは1対1のみ、有料プランだと最大14人まで参加できる。また、自分が見ている画面を通話中のメンバーと共有する機能もある。プレゼン資料を見せながら話したりできるのは便利だ。
チャットワークはタスク管理機能を備えているのも大きな特徴だ。ユーザーを指定してメッセージをタスクとして登録できる。期限を追加することもでき、タスクを振られたユーザーの画面に表示されるようになる。タスクが処理したら、「完了」にすれば終了だ。
自分がやるべきタスクを登録できるだけでなく、相手に振ることもできるので、グループチャットで会議した内容を余すところなく実行に移せる。
フリープランと月額400円のパーソナルプランに加え、ビジネスプランとエンタープライズプランも用意されている。ビジネスプランは月額500円で、パーソナルプランのすべての機能に加えて、ユーザー管理機能とモバイル版アプリの音声通話機能が利用できるようになる。さらに、社外ユーザー制限や外部SNS制限と言ったセキュリティ機能を利用するなら、月額800円のエンタープライズプランがある。(※月額料金は、1ユーザーあたりの税別価格)
エンジニアに大人気! 外部サービスと連携できる「Slack」
グローバルで人気の「Slack」は、「flickr」の創業者が2013年に立ち上げたサービスだ。米国のサービスだが、軽快に動作するうえ、他サービスとの連携が充実しているので世界中で使われている。IT業界を中心にファンが激増し、月間アクティブユーザー数は1000万人を超えている。2017年にはソフトバンクが投資をしたが、その際の評価額は51億ドル。企業価値が10億ドルを超えるベンチャーをユニコーン企業と呼ぶが、すでにその5倍のレベルに到達しているのだ。
そんな中、2017年11月、日本語版がリリースされた。それまでの英語の状態でも、Slackにとってはアジアでは1位、世界でも3位の市場を獲得していたのだが、いよいよ本腰を入れてきたというわけだ。
エンジニアが好んで使うツールだけあり、デザインが洗練されており、気持ちよく利用できる。例えば、画面を読み込んでいる間に、アイコンとともに「三人寄らば文殊の知恵」のようなメッセージを表示してくれたりするのだ。
Slackでは、ワークスペースを作成し、そこに招待したユーザー同士でチャットをやりとりできる。例えば、自社のワークスペースを作り、その中にスタッフ全員を登録したりするのだ。もちろん、プロジェクトごとにワークスペースを作り、外部スタッフも招待したりするのもアリだ。
続けて、ワークスペースの中にチャンネルを作成する。チャンネルはグループチャットのようなもので、閲覧できるユーザーを指定することもできる。例えば、自社のワークスペース内で、経営陣だけが見られるチャンネルを作成できるのだ。1対1でチャットするダイレクトメッセージもでき、ファイルを投稿することも可能だ。
筆者は、国内外に5店舗の飲食店を経営しているのだが、社内コミュニケーションツールとして導入しているのがSlackだ。いくつかのツールをスタッフに使ってもらったところ、評判がよかったためだ。ITリテラシーが高いとは言えない人たちだが、スマホアプリのデザインやレスポンスが気に入ったようだ。
ストレージ容量はプランによって異なる。フリープランの場合は、チーム全員で合計5GBを共有する。スタンダードプランだと、チームメンバー1人につき10GBのストレージを利用できる。また、通話は「Slackコール」から行える。フリープランの場合はダイレクトメッセージから1対1の通話が可能で、有料プランだと最大15人のメンバーと通話できる。
Slackの大きな特徴の1つが、外部サービスと連携できる機能。「Appディレクトリ」からアプリをインストールして、Slackをどんどんカスタマイズできるのだ。
Slackもフリープランが用意されている。制限としては、検索できるメッセージは最大1万件で、ビデオ通話は1対1のみ。アプリとインテグレーションの数は最大10個までとなる。月額960円(年払いだと月額850円)のスタンダードプランでは、検索数やアプリ数の制限がなくなり、グループ通話では画面共有もできるようになっている。ゲストアクセスやGoogle OAuthログイン認証、2段階認証をサポートする。月額1800円(年払いだと月額1600円)のプラスプランでは、さらにサービス品質保証契約やメッセージのデータエクスポートといった機能が用意されている。(※月額料金は1ユーザーあたりの価格)
ちなみに、有料プランにする場合は、ワークスペースのメンバー全員が同等以上のプランになっている必要がある。同じワークスペース内で経営陣だけ有料プランで、他はフリープランということはできないのだ。
なじみのチャットサービスのビジネス版「LINE WORKS」
日本でも若い世代を中心に広く使われている「LINE」はメッセージをやりとりするのは楽だし、多くの人になじみのあるアプリだ。しかし、機能が貧弱すぎてビジネスユースには適していない。そこで登場したのが、ビジネスで使える「LINE WORKS」。NAVERの子会社で、LINEの兄弟会社でもあるワークスモバイルジャパン株式会社が開発・運営しているサービスだ。テレビCMが頻繁に流れていたので目にした人も多いだろう。
LINEのUIでビジネスチャットが使えるので、特に若いユーザー層に受け入れられやすい。最初から、活用してくれる下地があり、操作などの教育コストも不要というメリットがある。LINEと同様に無料通話が可能で、個人のLINEとつながることもできる。もちろん、スタンプも利用でき、距離感の近いコミュニケーションが可能となる。PCを一切使わず、スマホアプリだけで利用するユーザーが多いのも特徴だ。
チャットワークやSlackと異なり、「既読」が付くのも特徴。相手に伝わった、と把握できるメリットはあるが、未読スルーがトラブルを引き起こす可能性もあり、一長一短と言える。
また、LINE WORKSはビジネスチャット機能に加えて、「カレンダー」や「アンケート」という機能も備えている。カレンダーでは、自分だけでなく、メンバーの予定も確認できるのが特徴。会議に参加して欲しいメンバーの空き時間を検索して、招待したり、会議室を予約するなど、グループウェアのようなこともできる。「アンケート」では、食事会の日程調整やイベントの出欠確認、災害時の安否確認といったテンプレートを利用し、手軽に社内アンケートを採ることも可能だ。
LINE WORKSでは、アプリをインストールしなくても、ウェブブラウザーでメッセージをやりとりできる。ビジネスチャットでは必須の機能なので、ありがたいところ。さらに、LINEと同様、音声やビデオでの通話も可能。最大200人まで参加できるのは、LINE WORKSならでは。PC版アプリでは、画面の共有も可能で、プレゼン資料を見ながら電話会議ができる。
さらに「トーク Bot API」を利用すれば、自社に適した機能を開発することもできる。LINE WORKSのBotに話しかけるだけで、勤怠管理をしたり、マニュアルを引き出したり、案件を登録したりできるのだ。別途開発が必要になるが、1つのサービスだけでいろいろと処理できるのは助かるところだ。
プランは月額360円(年払いだと月額300円)のライト、月額600円(年払いだと月額500円)のベーシック、月額1200円(年払いだと月額1000円)のプレミアムの3種類が用意されている。チャットや通話、カレンダー、アンケート、管理・セキュリティ機能などはすべて利用できる。(※月額料金は、1ユーザーあたりの税別価格)
ベーシックプランだと、ライトプランの機能に加えて、メール機能やクラウドストレージ機能が利用できる。プレミアムプランだと、それぞれの容量が増えるうえ、最大10年分のデータを保管するアーカイブ機能が利用できるようになる。
ちなみに、データを保存するにはプレミアムプランが必要、というわけではない。ここは分かりにくいポイントなので、細かく説明する。まず、どのプランでもユーザーの投稿やファイルは最大3年間、クラウドに保存され端末を変えても閲覧、検索できる。この期間は管理者が設定する。とはいえ、管理者が監査ログからモニタリングできるのは、最大180日間。トークだけでなく、すべての情報をCSVでダウンロードできるが、写真などはファイル名しか残らない。アーカイブは、トークとメールだけを10年間保存してくれる。監査機能と異なるのは、期間だけでなく、写真なども保存できる点だ。
以上が、日本語に対応する有名ビジネスチャットサービス3つの紹介となる。どれも実績のある人気サービスだが、機能も運用スタイルも異なるので、利用スタイルに合わせて選ぼう。チャットワークとSlackはフリープランがあるし、LINE WORKSも無料トライアルを用意している。ビジネスチャットに興味があるなら、まずは気になるサービスを利用する予定のメンバーで試してみることをお勧めする。
柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」連載記事一覧
- 第17回:フリープランが大幅機能UP!「Chatwork」の始め方を解説
- 第16回:IoTシステムを自分で構築できる「Gravio」で、飲食店のいろいろなデータを見える化してみた
- 第15回:“店舗のIoT”導入は意外とお手軽かも! 温度やCO2濃度などをデータ化&活用できる「Gravio」を試してみた
- 第14回:「Notion」の基本的な使い方 ~ビジネスの“あらゆる情報を一元管理”できるオールインワンサービス
- 第13回:電話でオンライン営業できる「ベルフェイス」を使ってみた~コロナ禍でニーズ爆発!
- 第12回:今こそテレワークに「G Suite」活用を! 「社員が使っているのはGmailとカレンダーだけ」を解決するレクチャー動画サイト「Master Program」
- 第11回:新しい「一太郎2020」と「ATOK」の“ビジネスに効く”新機能をチェック!
- 第10回:海外旅行に+8980円で手軽な音声翻訳を! 8時間動くハンディ翻訳機「TL01」を使ってみた
- 第9回:ビジネスITフル武装<ドキュメントスキャナー編>
- 第8回:個人事業主・SOHOで普通に使うためのインクジェットプリンター選び
- 第7回:ビジネスITフル武装<ドキュメントスキャナー編>
- 第6回:ビジネスITフル武装<クラウドストレージ編>
- 第5回:ビジネスITフル武装<メール共有ツール編>
- 第4回:ビジネスITフル武装<グループウェア&社内SNS編>
- 第3回:ビジネスITフル武装<ビジネスチャット編>
- 第2回:青色申告はメリットばかり、確定申告で「お得」をゲットしてみよう!
- 第1回:ビジネスで使うノートPCを予算と目的で切り分けて選んでみる