柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」
第4回
企業の生産性を高めるグループウェアで働き方改革を推進せよ!
ビジネスITフル武装<グループウェア&社内SNS編>
2018年5月17日 06:00
ビジネスの現場では、社内でも膨大な情報がやりとりされている。それをアナログで管理するのはもはや不可能。電子メールで何とかなるのも、数人まで。そこで、利用されているのがグループウェアだ。チームで運用することを前提とした情報共有ツールで、現在ではさまざまなサービスが提供されている。今回は、ビジネススタイルに合わせたグループウェアの選び方を紹介しよう。
ビジネスではITを活用しないと生き残れません。とはいえ、世の中にはデジタル製品もITサービスも溢れかえり、百花繚乱です。コストだけを見ると銭失いになりかねませんし、何も考えずに選ぶと予算オーバーになることも。そこで、本連載『柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」』では、副業で個人事業主となろうかと考えている人から、10人くらいまでの小規模企業を経営している人向けに、ビジネスのためのITという切り口で製品やサービスを取り上げようと思います。
筆者も、国内外に展開する飲食企業を含め複数の会社を経営しているので、デジタルリテラシーの低い社員や予算がないといったよくある悩みを抱えています。そんな現場のリアルから、業務効率改善や働き方改革に効く情報を紹介します。
ビジネスで使う多数の機能をまとめた生産性向上ツール
グループウェアでは、会社で利用するさまざまな情報をできる限り一元管理したいところ。ほぼ必須なのが、予定を管理するスケジュールと情報共有のための掲示板、ファイルを共有するためのストレージ、会議室など共用設備の予約管理、メール機能、アドレス帳といった機能だ。
その他、海外のサービスだとウェブ会議機能やドキュメントの作成・編集機能などを備え、外国語にも対応するのでグローバルに展開している企業で導入しやすい。国産のサービスだと、海外サービスが苦手な社内回覧や承認といったワークフロー機能などを備えていることが多い。もちろん、どちらもスマートフォン対応はキホンだ。
以前は、社内にサーバーを置くオンプレミス型の製品が多かったのだが、現在はクラウド型の製品が主流となっている。導入コストも格段に安くなり、中小企業にも広く普及した。
世の中には多数のグループウェアがあるうえ、価格帯もバラバラ。無料の製品まで存在する。できることはある程度似ているのだが、どの製品も独自のコンセプトを持っており、使い勝手が全く異なる。グループウェアは社内で活用してもらえなければいけないので、導入時には機能はもちろん使い勝手までチェックしたい。その際、経営陣やIT部署だけで検討するのではなく、現場のスタッフの意見も聞くことが重要。グループウェアを活用すれば働き方改革を推進できるし、その活用度は企業の業績を確実に左右するためだ。
今回は、Microsoft、Google、Facebook、サイボウズ、ネオジャパンの5製品を紹介する。すべて、中小企業から1万人以上の大企業までの導入実績が多数ある超定番グループウェアを手がけている。
WordやExcelも使えてコスパも高い「Microsoft Office 365」
Microsoftがグループウェアとして打ち出しているのが「Microsoft Office 365」。Windowsユーザーにはなじみのある製品群で構築されており、幅広い業務に対応できる。例えば、メールやスケジュール管理は「Exchange Online」と「Outlook」、オンラインストレージは「OneDrive for Business」、ビデオ会議やチャットは「Skype for Business」、社内コラボには「Yammer/SharePoint Online」が用意されている。当然、ドキュメント編集にはど定番の「Office」シリーズを利用できる。
一般法人向けとしては、2プランが用意されている。月額540円/ユーザーの「Office 365 Business Essentials」は、メール、Skype for Business、SharePoint Onlineが含まれ、Officeアプリは含まれない。Officeアプリも含んだ月額1360円/ユーザーとお手頃な「Office 365 Business Premium」のコストパフォーマンスが高い。この上に、大企業向けとして、コンプライアンスツールなどを含む「Office 365 Enterprise E3」(月額2180円/ユーザー)や、BIツールを含む「Office 365 Enterprise E5」(月額3810円/ユーザー)なども用意されている(価格はいずれも、年間契約における1カ月あたりの税別価格)。
Office 365 Business Premiumだと、1ライセンスで1人あたり5台のスマホ、PC、タブレットにインストールでき、ストレージは1人あたり1TBと大きい。Outlookはオフラインでも利用可能。普通にOfficeアプリを利用すると考えただけでもペイしてしまいそうだ。最大250人まで参加できるビデオ会議機能やグループチャットができる「Microsoft Teams」、コミュニケーションを活性化する社内SNSには「Yammer」、タスク管理には「Microsoft Planner」など、一通りの機能を備えている。もちろん、スマホからも利用できる。
出退勤管理やワークフロー、プロジェクト管理といった日本でよく使われる機能がなかったりオプションになったりしているが、Microsoft製品なのでグローバル展開する企業でもスムーズに導入できるというメリットもある。
Googleのウェブ特化グループウェア「G Suite」
Googleが完全にクラウドサービスとして開発したのが、「G Suite」(旧:Google Apps for Work)だ。メールはもちろん最強のウェブメーラーである「Gmail」。当然「@gmail.com」ではなく、独自ドメインでの運用が可能だ。スケジュールは「Google カレンダー」、オンラインストレージは「Google ドライブ」、チャットやビデオ通話には「Google ハングアウト」などを利用する。
ドキュメント作成と編集には、「ドキュメント」「スプレッドシート」「プレゼンテーション」を利用。オンラインでの共同編集が得意な、Microsoft Officeと双璧をなすサービスだ。もちろん、完全にスマホでの閲覧・編集に対応している。ただし、共有施設の管理はGoogle カレンダーを使う必要があったり、使いやすい掲示板機能がないというネックもある。これらが必要なら、サードパーティー製品と連携させることになるだろう。
料金プランは3種類。月額600円/ユーザーの「Basic」はメール、コミュニケーション、スケジュール、ドキュメント作成が可能。ストレージは30GBとなる。「Business」プランは月額1200円/ユーザーで、「Cloud Search」による検索機能や訴訟に備えてメールやチャットをアーカイブしておく機能などを搭載している。さらに、ストレージ容量は5ユーザー未満の場合は1人あたり1TB、5ユーザー以上ならなんと無制限となる。「Enterprise」プランは月額3000円/ユーザーで、Businessプランの内容に加えて、データの損失防止やGmailの管理・分析機能が追加されている(価格はいずれも税別)。
Office 365と同様、出退勤管理やワークフロー、プロジェクト管理機能などがない。とはいえ、もちろん知名度はダントツで、グローバル企業で導入しやすいグループウェアとなっている。
国内グループウェアのシェアNo.1サービス「サイボウズ Office 10」
国内のグループウェア導入社数でトップとなるのが、サイボウズ株式会社の「サイボウズ Office」。2位は「Microsoft Office 365」となるが、なんと3位にも「サイボウズ Garoon(ガルーン)」が入っている。
サイボウズは1997年に設立し、同年に「サイボウズ Office」のバージョンが発売された。昨年、20周年を迎え、「サイボウズ Office」のバージョンは「10」になっている。こちらは中小企業向けのグループウェアで、クラウド版の価格は月額500円/ユーザーの「スタンダードコース」と、月額800円/ユーザーの「プレミアムコース」の2プラン。このほか、オンプレミス版も用意されており、10ユーザー版で6万3800円からと導入しやすい価格になっている(価格はいずれも税別)。
スケジュールや共用施設の予約、メッセージ、掲示板、オンラインストレージ、メールなどに加え、経費や稟議書の申請をペーパーレスで進められる「ワークフロー」をはじめ、報告書やプロジェクト管理、タイムカードといった日本企業に求められる機能を網羅しているのがウリ。
プレミアムコースでは、業務に合わせたアプリを自分たちで作成できる「カスタムアプリ」を利用できる。現在Excelで運用している管理データをクラウド上に移せるのだ。契約書やレンタル機器、トラブルシューティングなどの管理もグループウェア内でできるようになる。
サイボウズ Office 10は数人から300人程度の組織向けで、300人以上から数万人規模の大企業向けにはサイボウズ Garoonが用意されている。こちらも、4600社に導入されており、価格は月額800円/ユーザー(301~1000ユーザーの場合)となっている。
日本のビジネスにマッチした国産グループウェア「desknet's NEO」
株式会社ネオジャパンの「desknet's NEO」も人気の国産グループウェアだ。スケジュールやメール、設備予約、文書管理から、プロジェクト管理、ワークフロー、回覧、タイムカードなど、25個のアプリを搭載。購買予約や仮払精算ができるアプリまで用意されている。さらに、業務アプリを作成できる「AppSuite」も用意。Excelで運用しているデータを手軽にウェブアプリとして追加できるのが特徴だ。
価格は、desknet's NEOが月額400円/ユーザー、AppSuiteが月額320円/ユーザーとなる。契約しているdesknet's NEOユーザーのうち、AppSuiteを契約するユーザー数を自分で決められるのはありがたいところ。AppSuiteを利用する際、強制的に全員分がプラスされずに済む。オンプレミス版も用意されており、初年度ライセンスは5ユーザーで3万9800円/台から(価格はいずれも税別)。
日本企業で求められる機能を豊富に用意したうえ、AppSuiteを契約すればオリジナルアプリも作成できる。使いやすいシンプルなUIになっており、ITリテラシーの低い人でも使えるので、教育コストを低く抑えられる。
Facebookが提供するビジネス用の社内SNS「Workplace by Facebook」
社内SNSは、FacebookやTwitter、LINEといったサービスのビジネス版。広義としては、前回紹介した「Slack」や「チャットワーク」などもこれに含まれることもある。今回は、がっつりとFacebookのフル機能を社内で利用できる「Workplace」を紹介する。
Facebookがビジネス向けに提供しているのが「Workplace by Facebook」。2016年にスタートした後発のサービスとなる。見た目はほとんどFacebookと同じで、そのままビジネス向けに展開したイメージだ。とはいえ、あくまで社内用なので、友達としてつながるのではなく、同僚とはつながり済み。友達申請のような手間はなく、すぐに使い始められる。
Facebookと同様、タイムラインに投稿できる。画像や動画を入れたり、マークダウンでの入力も可能。参加ユーザーを制限したディスカッションを行うなら、グループを作成すればいい。投稿には、「いいね!」を付けたり、コメントできるのも同じだ。メッセンジャーのような「Work Chat」が用意されており、チャットやビデオ通話が可能。ただし、密度の高いコミュニケーションが行える反面、グループウェアとしての機能は少なめで、カスタマイズ性も低い。
価格は、スタンダードプランが無料で、プレミアムプランが月額3ドル/ユーザー。スタンダードでも写真や動画を無制限に保存できるのがありがたい。プレミアムでは、ファイルストレージプロバイダーと統合したり、さまざまな管理ツールが利用できるようになる。それでも月3ドルは格安なので、割り切った使い方ができるなら有力な選択肢になるだろう。ベースがFacebookなので、利用のための教育コストが不要なのもうれしいところだ。
以上が、有名グループウェア・社内SNSの紹介となる。もちろん、このほかにも数え切れないくらいのソリューションがある。グループウェア選びは、機能が多ければいいというものでもない。きちんと活用して、働き方改革を実現しなければならない。どのサービスも無料試用プランが用意されているので、まずは社内で使ってみて、ディスカッションすることをお勧めする。
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