柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」
第5回
問い合わせメールの見逃しや二重対応を防止せよ!
ビジネスITフル武装<メール共有ツール編>
2018年6月7日 06:00
EC店舗はもちろん一般的な企業もウェブサイトのフォームや代表メールアドレスなどから、日々さまざまな問い合わせが来る。そのメールを複数の担当者が、なんとなくさばこうとしても対応漏れや二重対応などが続発してしまうこと間違いなし。顧客とのコミュニケーションをスムーズに行い、スマートな対応するために必要なのが、メール共有ツールだ。今回は、定番のメール共有ツール3つを紹介しよう。
ビジネスではITを活用しないと生き残れません。とはいえ、世の中にはデジタル製品もITサービスも溢れかえり、百花繚乱です。コストだけを見ると銭失いになりかねませんし、何も考えずに選ぶと予算オーバーになることも。そこで、本連載『柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」』では、副業で個人事業主となろうかと考えている人から、10人くらいまでの小規模企業を経営している人向けに、ビジネスのためのITという切り口で製品やサービスを取り上げようと思います。
筆者も、国内外に展開する飲食企業を含め複数の会社を経営しているので、デジタルリテラシーの低い社員や予算がないといったよくある悩みを抱えています。そんな現場のリアルから、業務効率改善や働き方改革に効く情報を紹介します。
顧客からのメールに誰がどのように対処するのかを可視化する
企業の問い合わせや代表として公開しているメールアドレスには、日々大量のメールが届く。中小企業であれば、誰かが業務の間にチェックして対応したり、担当者に振ったりできる。しかし、規模が大きくなると、とても対処しきれない。返信が遅れたり、メールを見逃してしまったりする。ほかにも、部門でメールアドレスを共有しているケースもあるだろう。例えば、メディア対応のために広報アドレスを用意したり、業者間と取引するためのアドレス、社内ヘルプデスクの窓口といった具合だ。
全員が自分のメールアドレスにアカウントを登録すれば、メールを受信することはできる。しかし、その運用方法では、誰が何をするのか、未対応か対応済みかといったステータスが把握できない。結局、返信の遅延や見逃し、二重対応といったトラブルが起きてしまう。担当者が変わると、過去の対応履歴が分からないために、イチから聞き直すのも顧客の負担が大きい。
問い合わせ窓口の対応如何では、ファンが離れてしまったり、クレームをしてきた人はさらに怒ってしまったりする可能性もある。企業間のやりとりなら、取引がなくなることも考えられるだろう。メール管理は、地味だがブランディングに影響を与える業務でもあるのだ。
そこで、利用されているのがメール共有サービスだ。メールを部門全体で共有し、担当者や対応の進ちょくをリアルタイムに管理できるのが特徴。メールの送受信機能を備え、その対応のステータスを管理できるようになる。テンプレート機能で、やりとりする手間も削減。さらに、電話やメッセンジャー、訪問履歴なども一緒に記録できる製品もあり、顧客管理や案件管理ツールとしての機能も備える。メールを送信する際、上司などに承認を取るワークフローも活用したいところだ。
メール管理ツールはいくつか販売されているが、どれも独自の思想で設計されており、機能や価格が大幅に異なるので、自社のニーズに合わせて選びたいところ。今回は、「メールワイズ」「Re:lation」「メールディーラー」の3製品を紹介する。すべて日本製で、多数の会社に導入されている実績を持つ注目製品。
月額500円/ユーザーから導入できる手軽さが魅力「メールワイズ」
サイボウズ株式会社の「メールワイズ」は2003年にリリース。EC店舗だけでなく、幅広い業務に対応でき、メールに加えて、電話や訪問の履歴も記録できる。一番のウリは導入のしやすさ。初期費用がかからないうえ、月額500円/ユーザーと格安なのだ。契約は、1カ月からでよく、2名から利用できる。年払いにすると、さらに割安になる。1ユーザーあたり5GBのストレージを利用でき、10GBあたり月額1000円で増設することも可能。このコストパフォーマンスと手軽さは、中小企業にとってはうれしいところ。そのため、導入社数は6500社を突破し、星野リゾートやJTB、BOOK-OFF Onlineといった企業で使われている(価格はすべて税別)。
問い合わせと代表メール、業者との取引アドレスなど、中小企業であれば管理するメールアドレスは数個といったところだろう。しかし、規模が大きいと部門ごとに共有メールアドレスを用意していることもある。そんなときは、プレミアムコースが用意されている。スタンダードコースはメールやアドレス帳といったアプリが1つずつ利用でき、メールアカウントは10個まで登録できる。プレミアムコースだとこのセットを5個まで利用でき、アプリ数も増えるなど、大きなサポート部門のニーズに対応できるようになる。価格は月額1500円/ユーザーで、ストレージ容量はスタンダードと同じだ。
ちなみに、オンプレミス版もあり、こちらは5ユーザー29万8000円から。
IPアドレス制限やBASIC認証機能は搭載しているが、外出先や自宅からモバイルアクセスする際にセキュリティが気になるなら、クライアント証明書を利用する「セキュアアクセスオプション」も用意されている。これは、月額250円/ユーザーとなる。リモートワークも促進でき、働き方改革を進めつつ、顧客へは迅速な対応が可能になる。
クラウド版なら、同社のビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone」と連携できるのもウリ。メールワイズの履歴をkintoneの顧客管理アプリに表示させるといった使い方ができる。
LINEやTwitter、携帯メールなどにも対応する「Re:lation」
「Re:lation」は、2014年に創業した株式会社インゲージが提供しているメール管理ツール。Gmailのようにメールをフォルダーではなくラベルで仕訳するのが特徴。複数のラベルを付けられるので、「商品A」と「重要」といった両方の情報からアクセスできる。誰かが対応しているとそのメールはロックされ、ほかのメンバーが編集できなくなるので、二重対応を防いでくれる。対処が遅れているものは赤く表示されるなど、支援機能も充実している。
添付ファイルは暗号化ZIPファイルに圧縮され、解凍用のパスワードは自動的に別メールで送信される。暗号化したり、パスワードを生成・送信する手間がかからないのがありがたい。「添付します」と記載しているのに添付ファイルがないと警告してくれる機能もある。メールの予約送信ができるのもユニークだ。また、KDDIとパートナー契約をしているため、顧客がPCからのメールを着信拒否していても、携帯メールアドレスの送信が可能なのが頼もしいところ。また、楽天市場から送られてくるマスクアドレスの「楽天あんしんメルアド」にも対応している。
さらに、メールだけでなく、電話やLINE、Twitterといった複数のチャンネルを「チケット」として管理するのもポイント。1人の顧客がメールをしたあと電話してくる、といったこともよくあるので、それをまとめて管理できるようになる。
料金プランは4つあり、フリープランもある。フリープランで登録できるのは3ユーザーまでで、送信できるのは1カウント、ストレージは100MBで、受信できるのは1万通まで。ライトプランは、初期費用が1万5000円、3ユーザーで月額1万2800円で、全員が送信可能。受信箱は2つ設定でき、ストレージは3GB、受信可能メール数は30万通まで。POP3や外部SMTPサーバーを使えるなど、一気に機能が増え、オプションも利用できるようになる。Twitterアカウントは月額1000円で追加可能だ(価格はすべて税別)。
オプションの外部連携では、「Salesforce」といったCRM/SFA、「たまごリピート」などの受注管理システム、「BIZTEL」などのCTIと連携し、顧客情報を簡単に呼び出すことが可能になる。
売上金額No.1のメール管理ツール「メールディーラー」
「メールディーラー」は、株式会社ラクスが2001年から提供しているメール管理ツール。BerlitzやABC-MART、kakaku.comをはじめ4000社以上が導入しており、売上金額ベースではシェアNo.1のサービスだ。
多彩なステータスでメールを管理でき、メールアドレスごとに過去のやりとりを参照できる。社内Q&Aを登録し、顧客とのやりとりなどで発生するナレッジを蓄積・共有していけるのも便利だ。テンプレートを利用でき手軽にメールを送信できるうえ、添付ファイルもテンプレートに含められる。資料請求をしてきた顧客に、添付ファイルなしのメールを送ってしまうようなトラブルを防止できるのだ。
社内のコミュニケーション機能も充実。メールに対して社内での申し送り用のコメントを付けたり、グループチャットで気軽に相談できる。もちろん、承認フローもサポート。オプションとなるが、スマホ対応やお客様アンケートといった機能も用意されている。
EC店舗に人気で、「GoQSystem」「CROSS MALL」「Robot-in」といった受注・解雇管理システムと連携できるのも強み。「楽天あんしんメルアド」にも対応している。
価格は要問い合わせ。プレスリリースによると、ASP(共用サーバー)だと初期費用5万2500円/月額利用料金2万1000円~、ASP(専用サーバー)だと初期費用10万5000円/月額利用料金8万4000円~。パッケージ版も用意されており、ソフトウェアライセンス料金は165万9000円となっている(価格はいずれも、2010年2月24日発表のバージョン9.0提供開始のときの税込価格)。
以上が、メール管理ツールの紹介となる。メールを複数人で管理する、という切り口だけならどの製品も完璧にこなせる。問い合わせ管理に必要な外部の連携サービスに対応しているかどうかや、UIや操作性、コストなどをチェックしよう。どれも無料試用版が用意されているので、気になる場合は複数の製品を気軽に試せる。導入の際は機能やコストだけで比較せず、画面のUIはどれも異なるので、現場の担当者に使ってもらい、意見を聞くことをお勧めする。
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