柳谷智宣の「働き方改革に効く!デジタル士魂商才」

個人事業主・SOHOで普通に使うためのインクジェットプリンター選び

年末の節税対策に! 消耗品費で経費一括できる、10万円未満の機種をチェック

 いよいよ年末。PayPayの100億円バラマキキャンペーンや、それに釣られるようにあちこちで始まった年末セール。師走で忙しく、買い物どころではなかったビジネスパーソンも、ちょっと気になるアイテムがあるのではないだろうか。

 今年も頑張って利益を出したなら、確定申告前に経費をチェック。最近、仕事で使っているプリンターの印字がかすれてきたとか、インクがなくなって購入したらやっぱり高かったという人、この機会にプリンターを買い替えてはいかがだろうか。そこで今回は、個人事業主とSOHO向けのプリンター選びをお届けする。

個人事業主・SOHOは、コスパのいいプリンターを選ぼう

 プリンターは消耗品として経費計上したいもの。一括処理できる金額は10万円未満となる。青色申告者が少額減価償却資産の特例を適用すれば30万円未満までとなるが、処理を忘れたりしたら面倒なので、今回は10万円未満で買える機種をチェック。印刷が主目的でない限り、一般的な事務作業であれば十分な性能を備えている。さらには、最新機種はコストパフォーマンスや使い勝手でも競争しており、数年前の激安インクジェットプリンターをだましだまし使っているような人は要チェックだ。

ビジネスで普通に使うための3つの条件とは

・FAX
 まず、個人事業主・SOHOでは複合機が必須。コピー機能が欲しいというよりは、FAXが手放せない。自分ではクラウドサービスを多用して働き方改革を進めていたとしても、クライアントである大企業はまだまだアナログのところが多いからだ。FAXの送受信ができなければ貴重なビジネスチャンスを逃してしまうことが今でもある。そのうち本格的に根絶されることだろうが、今はまだ無理に外さない方がいいだろう。

・フラットベッドスキャナー
 もちろん、フラットベッドスキャナーも外せない。オフィスのペーパーレス化には、別途ドキュメントスキャナーを導入しているところが多いと思うが、銀行通帳やパスポート、書籍などをスキャンする際はフラットベッドスキャナーが必要になるからだ。コンビニにコピーに行って、通帳を忘れてきたら大惨事なので、やはりオフィス内で対応したいところ。

・大容量インク
 次に、昨今のトレンドの大容量インク。昔は、交換インクの価格が高く、プリンターは安くてもランニングコストがネックになっていた。それが、各メーカーが競うように大容量インクを採用し始め、エプソンなど、カートリッジではなく付属のボトルからインクを補充するタイプも登場してきている。ビジネスでは、そこそこの枚数を印刷するので、この点はきっちり押さえておきたい。もちろん、それでもプリンター本体が10万円未満の製品はいくつもある。

 今回は、上記の条件に合うインクジェットプリンター4機種を紹介するが、なぜレーザープリンターではないのか? それは、ランニングコスト。最近の大容量インクを搭載したインクジェットプリンターと比べると、数倍~10倍くらいの印刷コストがかかる。必要なときには躊躇なく印刷するためにも、コストは抑えておきたいところ。

 ちなみに、モノクロレーザーの印刷コストは1枚3~3.5円というところだが、大容量インクジェットであれば0.4~0.7円と格段に安く済むのだ。しかも、インクジェット方式でもブラックインクには顔料インクを搭載している機種なら、資料をきれいに印刷できる。いざというときにはカラー資料や写真だって印刷できる。

そのほかにチェックしておきたい項目は?

・ファーストプリント時間
 大量に印刷するなら、印刷スピードをチェックするのは基本。似たような価格帯の製品でも、意外と差がついていることが多いのだ。とはいえ、オフィスで使うときに重視したいのは、ファーストプリント時間ではないだろうか。ちょっと1枚だけ印刷するときに、プリンターからすぐ出てくればストレスフリーだ。最近は、このファーストプリント時間も打ち出して競ってくれているのはありがたいところ。モノクロ印刷で10秒を切っていれば上々だ。

・両面印刷
 個人事業主・SOHOは紙代も節約したい。プリンター側でできるのは、両面印刷だ。なんせ紙が半分の枚数で済む。こちらも、チェック。

・LAN
 ネットワークは基本的にIEEE 802.11n/g/bの無線LAN(Wi-Fi)に対応し、周波数帯は2.4GHz。PCやスマホからでも印刷できる利便性は悪くない。しかし、がっつりと印刷することが多いなら、有線LANで接続する方が早い。その場合は、有線LAN端子の有無も見ておこう。

・給紙枚数
 給紙枚数は多い方が楽だが、ここは人力で何とかなるので参考程度。ビジネス向けの複合機はなかなかごついボディをしているので、個人のデスクに置けるサイズではないものの、本格的な業務用の大きな複合機と比べれば十分コンパクト。Wi-Fiで接続するならケーブルの取り回しも考えずに済む。

 以上の、個人事業主・SOHOの要望に応えられる製品を、A4対応機から2機種、A3対応機から2機種、紹介しよう。

日本HP「HP OfficeJet Pro 8730」

  ウェブ直販価格:3万9800円(税別)

日本HP「HP OfficeJet Pro 8730」

 手頃な価格の複合機。50枚セット可能なADFを搭載しており、大量の紙文書も手軽にスキャンできる。ブラックインクだけでなく、他の3色も顔料タイプを採用している。印刷コストでは、A4カラーしか公表しておらず、1枚あたり6.1円。後述する「MFC-J6997CDW」(ブラザー)ではカラーが3.7円、モノクロが0.7円となっているので、それと比較するとやや高め。とはいえ、カラーレーザープリンターのカラー印刷なら、1枚12~17円くらいはするので十分安くはなっている。

 今回紹介する4機種の中では最も早く発売(2016年5月)された機種ということもあり、A4モノクロのファーストプリント時間は約12秒と普通だが、印刷速度は約24枚/分と高速だ。経費とはいっても、本体価格をなるべく抑えたいという人にお勧めだ。

HP OfficeJet Pro 8730
サイズA4
FAX
大容量インク
ブラックインク顔料インク
印刷コストA4モノクロ:表記なし(A4カラー:6.1円)
ファーストプリントA4モノクロ:約12秒
印刷速度A4モノクロ:約24枚/分
自動両面印刷
ネットワーク無線LAN(2.4GHz)、有線LAN
給紙枚数250枚(普通紙)

エプソン「EW-M670FT」

  ウェブ直販価格:5万4980円(税別)

エプソン「EW-M670FT」

 「エコタンク」を搭載し、インクボトルから補充するタイプのプリンター。コストパフォーマンスがよく、A4カラー文書にいたっては1枚の印刷コストは約0.9円と激安。タンクも大きく、1回のインク補充でモノクロなら7500枚印刷できるのも手間がかからなくていい。

 エプソンのウェブサイトには、同社のカートリッジ方式インクジェットプリンター「PX-M650F」を使った場合とのコスト比較がグラフ化されていた。A4文書を毎月500枚印刷した場合、5年で34万円も差がつくというのだ。これは、事業主としては見逃せない金額と言えるだろう。

 A4モノクロの印刷速度は約15枚/分、ファーストプリント時間も約9秒とどちらもなかなかの性能。1枚でも複数枚でも、快適に印刷できる。

EW-M670FT
サイズA4
FAX
大容量インク
ブラックインク顔料インク
印刷コストA4モノクロ:約0.4円
ファーストプリントA4モノクロ:約9秒
印刷速度A4モノクロ:約15ipm
自動両面印刷
ネットワーク無線LAN(2.4GHz)、有線LAN
給紙枚数250枚(普通紙)

ブラザー「MFC-J6997CDW」

  ウェブ直販価格:9万円(税別)

ブラザー「MFC-J6997CDW」

 インクボトルで補充するタイプではないが、大容量のインクカートリッジに対応したA3スタンダードモデル。モノクロのファーストプリント時間が約5.5秒とぶっちぎりに高速なので、ふとした印刷も気軽に行える。印刷速度も約22枚/分と速い。給紙トレイは、250枚のカセットを2段搭載し、多目的トレイにも100枚セットできる。最大600枚というのはすごいし、サイズの異なる用紙をセットできるのも便利だ。

 1回のカートリッジ交換でモノクロ6000枚の印刷が可能で、交換作業が少なくて済むのがありがたい。ただし、カートリッジ式なので、印刷コストが1枚0.7円(A4モノクロ)と最安値ではないのは仕方がない。インクジェットプリンターなのに、15万ページの高耐久性を備えているのは、ビジネスユースには頼もしいところだ。

MFC-J6997CDW
サイズA3
FAX
大容量インク
ブラックインク顔料インク(カラー3色も顔料)
ファーストプリントA4モノクロ:約5.5秒
印刷速度A4モノクロ:約22ipm
印刷コストA4モノクロ:約0.7円
自動両面印刷
ネットワーク無線LAN(2.4GHz)、有線LAN
給紙枚数600枚(普通紙)

エプソン「EW-M5071FT」

  ウェブ直販価格:10万9980円(税別)

エプソン「EW-M5071FT」

 今回紹介する中では最も高いレベルでバランスの取れたモデル。A4モノクロの印刷速度は約18枚/分、ファーストプリント時間は約8秒と最高速ではないが、十分に高速なレベル。印刷コストも1枚約0.4円と文句なし。A3ノビに対応しつつ、給紙枚数も250枚+250枚+背面の1枚で合計501枚と多い。耐久性は8万ページと、「MFC-J6997CDW」には負けるがそれでもタフな方だ。

 エプソンの直販サイトだと約11万円だが、価格比較サイトなどでチェックすると、最安値は9万7000円から見つかる。消費税を入れると10万円を超えるが、法人が税抜経理方式を適用しているなら損金経理が行える。ただし、消費税の免税事業者になっているなら、消費税込みの価格が取得価格となるので、少額減価償却資産の特例を適用することになるので注意して欲しい。

EW-M5071FT
サイズA3
FAX
大容量インク
ブラックインク顔料インク
ファーストプリントA4モノクロ:約8秒
印刷速度A4モノクロ:約18ipm
印刷コストA4モノクロ:約0.4円
自動両面印刷
ネットワーク無線LAN(2.4GHz)、有線LAN
給紙枚数501枚(普通紙)

 複合機は、「壊れてから安いのを買い換えればいい」と考えている人がいるかもしれないが、それではかえって損をしている可能性がある。最新の大容量インクを搭載したインクジェットプリンターなら、高速印刷と低コスト、そしてメンテナンスの手間の削減といろいろと快適になる。安物買いの銭失いはもったいないので、きちんと選んで節税しつつ、来年のビジネス環境を整えて働き方改革の一助とするのはいかがだろうか。

柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは20年目で、デジタルガジェットからウェブサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。国内4店舗・海外1店舗に展開する飲食業やウイスキー販売会社も経営しており、デジタル好きと経営者の両方の目線で製品やサービスを紹介するのが得意。