イベントレポート
COMPUTEX TAIPEI 2018
Synologyが初のメッシュWi-Fiルーターを実動展示、NASでは重複排除付きバックアップアプリも
2018年6月6日 17:24
PC/IT関連の見本市「COMPUTEX TAIPEI 2018」が、6月5日~6月9日(現地時間)の日程で台湾で開催されている。
NASを中心とするネットワーク関連メーカーとして有名なSynologyは、昨年に引き続きCOMPUTEX TAIPEI 2018の開催にあわせ、台北市内のデパート内に臨時ショールームを開設。今後発売を予定している新製品や新たなソフトウェアを展示した。
ここではその中から、特に注目したい展示や製品を紹介する。
同社初のメッシュWi-Fiルーター「MR2200ac」を展示「利用者別」の柔軟なアクセス機能も
まず、ハードウェアとして最も注目できるのが、Synology初のメッシュWi-Fiルーター「MR2200ac」に関する展示だ。
メッシュルーターは、複数台のルーターを網の目のように接続するメッシュネットワークの構築が可能であり、1台のルーターでは電波の死角ができてしまうような環境でも、隅々まで安定したWi-Fi環境を実現できる。要するに「家中どこでもつながるWi-Fi環境を構築できる」のがポイントだ。
MR2200acは、IEEE 802.11ac/n/a/g/b対応で、高性能かつ使いやすいことがウリだ。基本仕様としては、5GHz帯を2系統、2.4GHz帯を1系統利用できるトライバンドタイプの製品。同社の既存製品と同様、独自のルーター用OS「SRM(Synology Router Manager)」を採用しており、詳細な状況表示による現状把握力の高さや、「家庭向け」「店舗向け」といったシチュエーションを想定した機能の高さがポイントだ。
まず、“メッシュルーター”としての側面を見ると、メッシュネットワークの構築やルーターの追加が簡単なことが特徴だという。例えば、ルーターを追加する場合は、新しいMR2200acの電源を入れ、スマートフォンアプリでスキャンする、あるいは設置されているMR2200acと追加するMR2200acのWPSボタンを押す、のいずれかで追加できるとのこと。
MR2200acだけでメッシュネットワークを構築することも可能だが、同社のWi-Fiルーター「RT2600ac」を親機とし、MR2200acを子機として追加することでも、メッシュネットワークを構築できる。メッシュネットワークを構築するMR2200ac同士は、Wi-Fiでも有線LANで接続可能で、「MR2200acがどういうトポロジーで接続されているか」や、「PCなどのクライアントがどのMR2200acにつながっているか」なども確認できる。なお、1台の親機に最大9台のMR2200acを追加でき、最大10台でメッシュネットワークを構築可能だ。
また、MR2200acに搭載されるSRM 1.2では、「機器ごと」ではなく「利用者ごと」にアクセス制御できる「Safe Access」が追加される。
これは、子どもに有害なサイトをブロックしたり、インターネットへのアクセス時間を制限するペアレンタルコントロール機能を進化させたもので、「この利用者が使うデバイス一覧」をあらかじめ設定しておくことで、「その利用者が1日にネットを使える合計時間」を設定したり、「利用者別、かつ時間帯別のアクセス制限やサイトブロッキング(“この時間はWikipediaだけ”など)」を設定したりすることができる。また、「今日はもうネット禁止」「今日は特別にあと×時間使ってもいい」といった細やかな設定も行える。特に子どもの多い家庭にはありがたい機能であろう。
SRM 1.2では、ゲストWi-Fi機能も強化。ゲストSSIDに接続した際に、公衆Wi-Fiのようなポータル画面も表示もできるようになる予定だ。業務用ルーターにはよく搭載されている機能だが、家庭用ではあまりないものと言えるだろう。
MR2200acは、2018年第3四半期に発売が予定されており、競合製品と同価格帯になるとのこと。SRM 1.2は、同時期にほかのSynology製ルーター向けにも公開予定。Safe AccessやゲストWi-Fi機能の強化などが利用可能だ。
「重複排除」でデータ容量を節約できるバックアップアプリ「Active Backup for Business」
NAS用OS「DSM(DiskStation Manager)」は2018年で10周年となり、最新版となる「DSM 6.2」の正式版がリリースされた。
DSMのバージョンアップにより、さまざまな新機能が使えるようになるのが同社製NASのポイントだが、ショールームでは、そうした機能の1つとして、より進化したバックアップ用アプリである「Active Backup for Business」が紹介されていた。
Active Backup for Businesは、サーバー向けのバックアップ用アプリとして提供されていた「Active Backup for Server」を改良したもので、ファイル単位のバックアップだけでなく、PC全体のイメージや仮想マシン、クラウドストレージの各種バックアップにも対応している。
特筆すべきは、いわゆる「差分バックアップ」だけでなく、バックアップに必要なストレージ容量を削減できる重複排除機能を備えていることだ。バックアップ速度についても、「CBT(Changed Block Tracking)」により高速な処理が可能で、バックアップしたイメージファイルの中身を覗いて、必要なデータのみ復元することもできる。
アプリの正式公開は2018年第2四半期または第3四半期の予定で、1台分のクライアントPC用バックアップライセンスが無料で付属するが、それ以上についてはライセンスの追加購入が必要になる。なお、この「Active Backup for Business」だが、「DSM 6.2が推奨だが、DSM 6.1でも動作する」(同社)とのこと。
また、Office 365のバックアップに対応した「Active Backup for Office 365」、G-Suiteのバックアップに対応した「Active Backup for G-Suite」といったアプリパッケージも用意される。
iSCSI Managerも強化ファイルシステムを活かしてスナップショットが高速に
また、DSM 6.2での改良点として紹介されていたのが「iSCSI Manager」だ。
ユーザーインターフェースが最適化されているほか、書き込み性能を約46%向上、LUNスナップショットの作成や復元が高速化されている。スナップショットの作成や復元については、Synology NASで利用しているBtrfsファイルシステムの特性を活かした設計になっており、作成も復元も一瞬だ。
ブースでは、スナップショットを作成した後ドライブをまるごと削除、にもかかわらず一瞬でデータが復旧できるといった内容をデモしていた。
NAS上で仮想マシンを動かせる「Virtual Machine Manager Pro」
そして、「DSM 6.2向け」として紹介されていたのが「Virtual Machine Manager Pro」。従来から提供されてきた「Virtual Machine Maneger」の上位にあたるパッケージだ。
Virtual Machine Managerは、同社のNAS上で仮想マシンを作成し、WindowsやLinuxなどを動かすことができるもの。Pro版ではリモートからのストレージのレプリケーションの開始をサポートしているほか、対応CPUのコア数や、スナップショットの作成数などが異なる。
NASのCPUは年々高速化が進んでおり、また、業務向けでは「特にCPUパワーを重視したモデル」(同社)もラインナップされるようになっている。このアプリは、そうした高いCPUパワーを活用した例と言えるだろう。
もともとのVirtual Machine Managerには、仮想マシンのスナップショットをNAS上に作成したり、わずか数秒で仮想マシンの完全なクローン作成/復元が行えるといった特徴があったが、今回のデモでは、Windows 10が動作する仮想マシン10台をわずか十数秒でクローンできることが示されていた。
Virtual Machine Manager Proは、2018年第2四半期または第3四半期に公開予定で、利用には有償のライセンスが必要となる。
データセンター向けの高可用性技術を低価格なモデルでも~NASが1台壊れてもそのまま利用可能~
やはりDSM 6.2向けの「Synology High Availability 2.0」は、NASを冗長化して可用性を高める技術だ。これは、ダウンタイムが生じては困るデータセンターなどの用途向けだが、「Synologyではビジネス向けの比較的低価格なモデルでも利用できるようにした」(同社)のがウリ。
技術としては、2台のNASのうち片方をアクティブ、片方をパッシブとし、アクティブなNASにトラブルが生じたら、自動的にパッシブをアクティブに切り替えることで、可用性を高めるというもの。いわばNAS自体をRAID化するような技術である。バージョン2.0では、UIが改良されて分かりやすくなったほか、設定もウィザード形式で簡単に行え、システムアップデートの際もアクティブとパッシブを切り替えながら順番に行うことで、再起動時のダウンタイムなどを短縮できる。
現在ベータ版が公開中であり、こちらも正式版は2018年第2四半期または第3四半期に公開される予定だ。