イベントレポート
Slack Frontiers
Slackが自社イベント「Frontiers」をサンフランシスコで開催 ~開幕講演でCEO バターフィールド氏が理念を語る
ヤフー株式会社の社員1万1,000人が導入、との発表も
2018年9月6日 21:18
コミュニケーションツールのSlackを提供するSlack Technologiesは、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市のPier 48において、現地時間9月5日~6日の2日間に渡り、今回で2回目となるプライベートイベント「Frontiers」を開催している。成長著しいSlackが、戦略やテクノロジーを顧客などへ向けて説明するイベントとして行なわれている。
9月5日の16時(現地時間)には、Slack創業者でCEOのスチュワート・バターフィールド氏が登壇する基調講演が行なわれた。この中でバターフィールドCEOは「成功する組織にはより高品質なコミュニケーションツールが必要だ」と述べ、Slackの導入や活用を詰めかけた聴衆に訴えた。
また、Slackの日本法人Slack Japanからは、ヤフー株式会社でSlackが全社導入され、社員約1万1000名がSlackを利用する環境が整ったことが明らかにされた。
社員の福利厚生が充実しているSlackの新オフィス、今年4月に移転して稼働中
Slackは最終的にYahoo!に買収された写真サービス「Flicker」の創設者でもあるスチュワート・バターフィールド氏により創業された企業で、2014年から社名と同じSlackと呼ばれるコミュニケーションツールを提供し、この4年間で急成長を遂げている。既に全世界で800万ユーザー、うち300万人の有料ユーザーを獲得しており、その数は現在も日々増え続けている。
そのSlackは、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市のダウンタウンに本社ビルを構えている。今年の4月に移転したばかりの新オフィスは、10階建てのオフィスビル全体をSlackが使っており、そのうちのいくつかのフロアを使ってオフィスとしている。いくつかのとしたのは、10階全部を使っている訳ではなく、いくつかのフロアは改装工事を行なっており、そのフロアは現在使われていないからだ。
今後、改装工事の進展に伴い、改装工事が終わった階への引っ越しが行なわれた後、既存のフロアも改装工事に入ることになるという。Slackにはグローバルにおよそ1200人の社員がいるが、本社で働いているのはそのうち約500人で、そのほかには、カナダのバンクーバーやトロント、米国のデンバーなどにもオフィスがあり、世界各地の拠点で社員が働いている。
Slack社内には、フリースペースのオフィスが用意されているほか、カフェテリアが充実しているのが特徴。カフェテリアには無料のスナックやドリンク(ビールまである!)が用意されており、社員が自由に飲んだり食べたりできるようになっているほか、月曜日の昼には無料の昼食、金曜日の朝には無料の朝食も振る舞われるという。
そこまでするなら、毎日の朝食、昼食も提供したらどうかと思ったのだが、広報担当者によれば、そうすると近隣の飲食店に社員が行かなくなり、そうなってしまうのもどうかということで曜日を限定したかたちになっているとのこと。
カフェテリアにはステージも用意されており、そこで社員総会が行なわれたり、カラオケ大会が行なわれたりという活用もされているという。他にも、写真撮影はできなかったが、昼寝室、図書館、ゲーム・音楽ルームなどが用意されており、とにかく社員の福利厚生が充実しているオフィスだなという印象を受けた。
組織内のコミュニケーションを変えるためには、高品質なコミュニケーションツールが必要に
Slackのオフィスが、そうした社員の福利厚生が充実しているのには、もちろん理由がある。それはSlackが提供しているツールであるSlackの目指すところが、社員と社員のコミュニケーションをより良くすることで、会社全体の生産性を向上させていくものだからだ。
Frontiers開幕基調講演でバターフィールド氏は「コンピューティングの形は姿を変えている。古くはアプリケーション(応用例)ベースのコンピューティングから始まり、その後ドキュメント(文書)ベースに、そして現在はリレーションシップ(人間関係)ベースへと移行している」と述べ、ITの使われ方が文書をやりとりする時代から、人間関係をより深める時代へと転換を遂げていると指摘した。
バターフィールド氏は、1946年にIBMが発売したENIAC以降、しばらくはアプリケーション(応用例)を決めてコンピューターを使う時代が続いており、次いで60年代からドキュメント(例えばMicrosoft Wordのdocファイルなど)をやりとりするかたちでのコンピューターの使い方が一般的になったと説明。さらに90年代のインターネットの普及により、人間と人間の関係を重視するリレーションシップ(人間関係)ベースのコンピューターの使い方が一般的になっていったと説明した。
そして、そうした中での従来型のコミュニケーションのツールとして電子メールを例に挙げ「電子メールはどれが重要かの意味づけができないし、受信したメールは個々人に配信され、他者とコラボレーションできるようになっていない。組織やチームが複雑に入り乱れている場合には効率的ではない」と述べ、そうした電子メールなどの従来型のコミニケーションツールから、新しい形のコミュニケーションツールへ移行する時期が来ていると述べた。
さらにバターフィールド氏は「今日の組織にとって最大のチャレンジは、組織の中でどうコミュニケーションを取ってそれを成功につなげていくかだ。そのためには高い品質のコミュニケーションが必要になる。我々のミッションはそうした優れたコミュニケーションツールを提供していくことだ」と述べ、企業が生産性を上げていくためには、Slackのような新しい形のコミュニケーションツールが必要だと強調した。
社風を変えることで社員のやる気を向上させて、組織の生産性を上げることができる
バターフィールド氏の後を受けて登壇したのは、会社の文化をどのように変えればいいのかについて著した『Primed to Perform』(邦題:マッキンゼー流 最高の社風のつくり方)の共著者リンゼイ・マクレガー氏。マクレガー氏は、同書の中でも触れられている“tomo指数”(トータルモチベーション指数)という独自の指標を利用し、企業の社員のやる気を数値化することで、社風を変えていくことができると述べた。
マクレガー氏は、1805年にスペインのトラファルガー沖で行なわれたナポレオン1世時代のフランス帝国とイギリス王国海軍の戦闘である「トラファルガー海戦」を例に、リソースが少ない場合にも、組織がきちんと目的を共有していれば戦いにも勝てるとした。
トラファルガー海戦では、フランス軍の方が船や戦闘員の数では勝っていたにもかかわらず、イギリス海軍は戦士1人1人までに目的がきちんと共有され、旗艦からの指示もしっかり伝わったことで、旗艦に乗船していたネルソン提督が戦死したにもかかわらず、イギリス海軍が大勝利を収めている。
マクレガー氏は社員のモチベーションの合計であるtomo指数が高ければ高いほど生産性が上がるという具体例を挙げ、航空業界、小売業界、銀行業界などの企業をtomo指数で評価した結果、顧客満足度が高い企業ほどtomo指数が高いことなどを示した。そして、経営陣と社員、あるいは社員同士のコミュニケーションを深めることで、tomo指数を上げることができると説明した。
日本のヤフーへSlackが全社導入
Slackによれば、本イベントであるFrontiersの参加人数は約800名。世界中から同社の顧客などが集合しているという。Slackにとっては2番目にユーザー数が多い市場である日本からの参加者も目立っており、今回のFrontiersに合わせるように、Slack Japan株式会社からは、1万1000人のコミュニケーションツールとして、Yahoo! Japanを運営するヤフー株式会社にSlackが採用されたことが明らかにされた。既にヤフー社内で社員が利用できる環境が整っており、今後の運営に関してはSlack Japanも支援していくことになるという。