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日本のSlackユーザー数は50万人強で世界2位、「コミュニケーション効率化で日本の労働生産性を変える」

 ビジネスコラボレーションツール「Slack」の日本語版がリリースされてから約半年が経ったが、すでに日本は世界で2番目のユーザー規模に成長している。現在の日間アクティブユーザー数は50万人以上、有料ユーザー数は15万人以上に上る。

 6月27日に行われた報道関係者向けのイベントで、Slack Japan株式会社カントリーマネージャーの佐々木氏は、「先見性のある日本企業のユーザーの口コミによって、Slack本社の幹部メンバーも驚くほどのスピードで普及した」と喜びをあらわにした。

Slack Japan株式会社カントリーマネージャーの佐々木氏

 Slackは世界100カ国以上で使用されており、日間アクティブユーザー数は800万人以上、有料ユーザー数は300万人以上。また、50万以上の組織において導入されており、その過半数が非IT、非テックカンパニー企業だという。

 米Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏は、「業界にかかわらず全ての企業はテクノロジー企業にならざるを得ない状況になっている。本業ではなかったとしても、テクノロジーがなければ仕事ができない」と指摘する。そのため、テクノロジーの変化に俊敏に対応するために、コミュニケーション、コラボレーションの効率化が求められるとしている。

Slackを導入する国内企業

必要な情報はAIが探してくれる便利な未来を

 日本の企業では、働き方改革、イノベーション、生産性向上などが優先課題として取り組まれているものの、G7諸国の中でも労働生産性は最下位なのが現状だという。

 現在の日本の職場におけるコミュニケーションツールは、メールのみならず、SNS、メッセンジャーなど多岐にわたり、個人で使用するツールで会社の情報をやり取りすることもある。この結果、適切な情報の共有や流通が行われず、業務効率が損なわれる問題があるという。

 これらの課題を解決するために、「Slackがビジネスコラボレーションハブとして日本のユーザーの役に立ちたい」と佐々木氏は意気込む。

 さらに、日本のユーザーに長期にわたって利用してもらうため、1)Slack Japanの従業員を年内に30人以上に増員、2)100種類以上の国内サービスとの連携、3)Slackの有効な使い方や成功事例を共有できるコミュニティの支援――を行っていくとしている。

 スチュワート氏は、AIがユーザーにとって必要な情報を提示するような機能を将来的に提供することを今後のビジョンとして挙げた。Slack上の過去のやり取りからAIが情報の優先順位を自動的に付けていき、ユーザーの意思決定に必要な情報を提供することで、より効率的なコミュニケーションを実現できるとしている。

 同氏は、「コンピューターが得意とすることを生かし、人間はさらに高度な作業に時間を費やすべき」と主張する。

米Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏


DeNAやメルカリもSlackを導入していた

 同日行われたイベントでは、Slackを社内の連絡手段として導入済みの株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の成田敏博氏(経営企画本部IT戦略部部長)と株式会社メルカリの唐澤俊輔氏(執行役員VP of People & Culture兼社長室長)、Slackの導入作業中だという株式会社電通デジタルのアオ・ペドロ氏(コーポレート部門情報システム部部長)によるパネルディスカッションが行われた。

 DeNAでは、4年前から各現場の担当者が使い始めており、昨年10月に全社展開を開始。現在、社内のユーザー数は3300人で、150ワークスペース、4000のパブリックチャンネルが設けられており、横浜ベイスターズのラミレス監督も使用する状態だという。また、メルカリは、さまざまなツールを使い分けていたが、Slackの使い勝手の良さを気に入ったことから本格的に導入することになったそうだ。

 電通デジタルでは、社内の連絡手段として現在もメールを利用しているが、コミュニケーションツール導入の必要に迫られ、機能の豊富さからSlackを選ぶことになったそうだ。

 「メールボックスを開くと未読のメールで溢れており、必要なものを把握できなかった。Slackならグループごとに会話や内容を検索できる。」(アオ・ペドロ氏)

(左から)株式会社ディー・エヌ・エーの成田敏博氏(経営企画本部IT戦略部部長)、株式会社電通デジタルのアオ・ペドロ氏(コーポレート部門情報システム部部長)、株式会社メルカリの唐澤俊輔氏(執行役員VP of People & Culture兼社長室長)

導入後は部署間の連絡が楽に、社内ヘルプデスクもチャットボットで

 Slackの導入により、DeNAでは異なる部署間でのコミュニケーションが活発になり、成田氏も今まで面識のなかったメンバーからの連絡が届くようになったという。また、連絡手段以外の活用方法として、社内の問い合わせのヘルプデスクをSlackで自動で返すチャットボットや、トイレの混雑状況が見られるチャットボット、財務会計システムと連携する機能を追加した。各システムごとにログインする手間が省けることで、業務効率も上がったという。

 メルカリでは、従業員が好きなことをつぶやけるチャンネルなど、さまざまな種類のものを設けており、唐澤氏はその中の197チャンネルに登録しているという。気軽にチャンネルから離れるための「リーブデイ」も定期的に設けており、多くのチャンネルに登録することで情報に埋もれるのを防ぐ施策も行っているそうだ。

 「メルカリの企業規模が大きくなるにつれて、経営者と従業員の距離が遠くなる問題も出てきた。メールは転送しないと情報を共有できないが、Slackならオープンなチャンネルでオープンなコミュニケーションができる。」(唐澤氏)

 メルカリとDeNAではSlackでオープンなコミュニケーションを維持するため、ダイレクトメッセージでのやり取りの頻度も定期的に確認しているそうだ。

Slackで何ができるのか、企業のビジョンやミッションを明確に

 今後導入を検討する企業へのアドバイスとして、成田氏はSlack導入済みの企業の導入事例や活用方法を周りに積極的に伝えることが重要だと述べる。

 また、唐澤氏は「新しいツールを入れるときは抵抗が生まれたり、効率やリターンを求めがちだが、企業のビジョンやミッションを明確にすることが重要だ」という。

 「メルカリでは、オープンなコミュニケーションを行う場所を求めていたため、それを実現できるSlackの導入を決めた。将来的には社外とのコミュニケーションもSlack上で完結できるようにしたい。」(唐澤氏)