イベントレポート

Internet Week 2020

利便性の追求で、DNSのリソースレコードの種類が増える ほか

~今年の「DNS DAY」の話題から

 完全オンラインで行われた「Internet Week 2020」において11月26日、DNSに関する話題を集めたプログラム「DNS DAY」が開催された。その盛り沢山の話題の中から、恒例となっているセッション「DNS Update」のほか、DoH/DoTとDNS関連のプロトコルに関する興味深い話題を取り上げる。

コロナ禍においてドメイン名の登録数は増加傾向に

 DNS Update最初の報告は、WIDEプロジェクト/慶應義塾の加藤朗氏による「Root DNS Servers」である。ルートDNSサーバーのサイト数は1330を超えクラウドとの提携も増えてきたこと、8月にAPNICとMルートサーバーの展開をサポートするためのMoU(Memorandum of Understanding:覚書)を締結したことなどが報告された(図1)。MoUにはサービスが十分でない地域やIXP(インターネット相互接続点)などを優先的な設置対象とする旨が記載されており[*1]、ルートDNSサーバーのサイト数はさらに増えそうである。

図1 APNICとのMoU締結

 続いて、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の池田和樹氏によるJP DNSの報告が行われた。JPドメイン名の登録数は増加傾向が続いており、JP DNSへのクエリ数も増加している(図2、図3)。IPv6の普及状況を見る指標の1つとなるIPv6でトランスポートされたクエリの比率も、大幅に伸び始めているようだ(図4)。

図2 JPドメイン名登録数の推移
図3 JP DNSへのクエリ数の推移
図4 IPv6の状況

 一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の小山祐司氏による逆引きDNSの報告では、逆引きDNSでのlame delegation改善の取り組みを中心に説明が行われた。その中で、その他の話題として「IANAの.arpa担当者から、TLDの1つである.arpaをルートサーバーから分離しようという提案が行われている」旨が報告された(図5)。「今後、何か動向があれば報告します」ということである。

図5 「.arpa」をルートサーバーから分離しようという提案

 gTLDを含むドメイン名全般に関する話題の報告は、JPRSの高松百合氏により行われた。全TLDでのドメイン名登録数は昨年から1500万以上増加したが、「一昨年から昨年にかけても1500万件程度の増加であったため、大きな変化は無かったと考えている」とのことであった(図6)。また、登録数の多いTLDトップ10に.icuが新たにランクインしたことについては(図7)、.icuのレジストリであるShortDot SAが中国での販売許可を獲得したことが大きかったのではないかということであった(図8)。

図6 全TLDでの登録ドメイン名数
図7 登録数の多いTLD
図8 .icuの登録数推移

 全体として見た場合、.comが圧倒的に強く、.netや.orgといったメジャーなgTLDが続くという構造に大きな変化はない(図9)。新gTLD[*2]の登録数については、TLDごとに急な増加や急な減少があったものの、トータルで見れば大幅な増加は観測されていないようだ(図10)。今回のデータを、前回の「Internet Week 2019」のドメイン名全般の記事[*3]と見比べてみると面白いかもしれない。

図9 代表的なgTLD登録数の推移
図10 新gTLD登録数の推移

 次回のgTLD募集については、2020年第一四半期(2020 Q1)にワーキンググループからGNSOに出すことになっていた報告書が遅れており、全体としてもスケジュールがスライドしていくことになりそうだとのことである(図11)。今後の動きについてはJPNICの「ICANN報告会」で随時報告していくので、興味のある方は参加してほしいとのことであった。

図11 次回のgTLD募集に向けた動き

 そのほか、トピックスの「コロナ禍における登録数の動向」では、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がる中で、ドメイン名登録数が増加傾向になっていることが示された(図12)。この要因として、ビジネスをオンラインでせざるを得なくなった人々が増えたのではないかという点が指摘された。

図12 コロナ禍における登録数の動向

[*1]…… https://www.wide.ad.jp/News/2020/20200831.html

[*2]…… 2012年に行われた募集以降に登録されたgTLDを対象としているとのこと。

[*3]…… https://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/1224758-3.html