イベントレポート
CEATEC 2024
ソニーはイメージング/センシング技術を集中展示、AI融合、ToFトラッキング、歪みのない撮影、見えないもの、車載向けなど
2024年10月18日 09:43
CEATEC 2024のソニーブースでは、「Hello, Sensing World!」をテーマに出展し、ソニーグループのイメージング/センシングテクノロジーにフォーカスした展示を行った。
CEATEC 2024の25周年特別テーマである「Innovation for All」の観点から、イノベーションに直結するソニーのイメージング/センシングテクノロジーに着目するとともに、同社のPurpose(存在意義)である「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」とい方向性の一端を披露してみせた。
ブース内では、「正確さ」、「みえない光」、「ひと」、「ひとの動き」、「空間」の5つのコンセプトから、多様な産業との共創や、感動体験の提供、安心して暮らせる社会の実現に貢献するイメージングテクノロジーおよびセンシングテクノロジーの現在と未来を、産業利用だけでなく、身近な活用事例を通して紹介していた。
イメージング/センシング技術を集中展示
CEATEC 2024のソニーブースは、イメージング/センシングテクノロジーにフォーカスした展示となったことからもわかるように、今回は、ソニーセミコンダクタソリューションズの技術や製品、ソリューションで構成する内容となった。
ソニーブースを入ると、「電子の眼」と言われるイメージセンサーを一堂に展示したコーナーを用意。モバイル機器やカメラ、車載用や産業用など、様々な分野で利用されていることを紹介した。
「全画素露光」で歪みのない撮影を
「正確さ」というコンセプトでは、グローバルシャッター技術について説明。高速で回転する円盤をグローバルシャッター技術で撮影することで、正確に捉えることができる様子をデモストレーションした。
高速で動く被写体を撮影すると、イメージセンサーの撮影特性によって、歪んで撮影されてしまうことがあるが、グローバルシャッター技術では、全画素を同時に露光し、読み出すことができるため、この歪みを解消した高速撮影を実現できる。また、人間の眼では認識できない多様な現象をとらえることができ、様々な波長の光を検知できる。
産業用マシンビジョンに搭載されていることを紹介しながら、製造ラインでの検査、半導体製造装置、物流倉庫でのバーコードの認識などで活用していることを示した。ミラーレスカメラの「α9 III」にも、グローバルシャッター技術が搭載されている。
「見えないもの」を判別するSenSWIR技術
SenSWIR(センスワイヤ)技術搭載のイメージセンサーでは、非可視光によって、肉眼では同じように見える物体の状況を特定するといった利用が可能になる。
たとえば、水は1450nm付近の波長の光を吸収する性質があるため、この波長を使って撮影すると黒く映る。この性質を利用して物質に含まれている水分を検出することができる。目視では識別が難しい検査をサポートすることができ、半導体の透過観察への利用、食品検査、異物検査、特定物質の選別などに利用し、生産性を向上させているという。
展示会場では、小瓶に入った液体や、プラスチックトランプ、タブレットケースなどを使用したデモストレーションを行い、SenSWIR技術搭載イメージセンサーによって、中身を判別できるようにしている。黒い液体が入った2つの小瓶も、醤油が入った小瓶は透過されて白く見え、墨汁が入った小瓶は黒いままとなる。また、黒豆のなかに数珠が入っていても識別できる。
AIと融合したイメージセンサーで、ネットワーク負荷や消費電力を低減
「ひと」という観点では、インテリジェントビジョンセンサーを展示した。
センサーのロジックレイヤー内にAI処理機能を搭載しており、イメージセンサーとAIが融合しているのが特徴だ。イメージセンサーが撮影した画像を、センサー内に搭載したAIがリアルタイムで解析および処理を行い、把握したい必要情報のみを表示する。これによる少ないデータの出力および送信が可能になり、ネットワーク負荷や消費電力を抑え、プライバシーにも配慮した安全で持続可能なデータ活用に貢献することができる。セブン‐イレブン・ジャパンでは、500店舗への導入を開始し、店内のデジタルサイネージの視認検知に利用するという。
ToFイメージセンサーで正確なトラッキングをアバター操作デモも
「ひとが動く」というテーマでは、バーチャル空間でのエンタテインメントへの応用を紹介した。
手の動きをセンシングして、画面上に手のマークを表示。それによってゲームができる様子をデモストレーションしたほか、ToFイメージセンサーを活用し、物体との距離を3次元方向で測るとともに、骨格を認識。人の指や関節、上半身、全身などの繊細な動きを正確にトラッキングして、バーチャル空間上の3Dアバターに再現するという体験ができた。
前者のケースは、ソニーフィナンシャルグループが、高齢者施設において、リハビリゲームとして試験的に運用。手を認識することから、専用コントローラなどを利用せずに、手や体を動かして、楽しくリハビリにつなげることができるという。また、後者では、バーチャル空間におけるコミュニケーションの際に、アバターをリアルタイムで動かしたり、ジェスチャーコントロールで操作したりといった応用が可能だ。ソニーセミコンダクタソリューションズでは、SDKを提供し、様々な用途での応用を促すという。
安全性を高めるモビリティ向けセンシング技術
ブース内には、モビリティの安全性を高め、感動空間の拡張に貢献するセンシングテクノロジーの展示も行った。「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」と呼ぶもので、これが5つめの「空間」のコンセプト展示になる。
ソニーの多様なセンシング技術を用いて、自動車の周囲360度を検知し、早期に危険回避行動を支援。クルマの安全性を高めるセーフティ領域のコンセプトモデルとなっている。
前方を検知する車載用イメージセンサーは、業界最多となる1742万画素により、道路状況や車両、歩行者などの対象物の認識範囲を遠距離まで広げることが可能だ。また、車載LiDAR用SPAD ToF方式距離センサーは、周囲の車両や歩行者などの位置や形状を高精度に検知、認識して、クルマの事故防止につなげることができる。さらに、車内ではToF方式距離画像センサーが、顔の向きや姿勢を認識するとともに、ドライバーの顔や手足の動きなどを細かくトラッキングし、状況によっては警告音を鳴らして、居眠り運転の防止などを支援する。
水中ドローンで海洋環境を3D可視化
センシングテクノロジーの活用事例では、水中3次元センシングを展示した。
ソニーのイメージセンサーと3次元空間センシング技術を搭載した水中ドローンにより、サンゴや藻場の生息分布を把握したり、センシングデータを活用した3Dモデルの生成を行ったりといった実験を進めており、高度なセンシング技術を、地上だけではなく海にも展開し、海洋環境を可視化することで、海洋環境を解き明かすことを目指す。ダイバーによる潜水調査の負担を減らし、効率性や安全性の課題を解決できるというメリットもある。ソニーと北海道大学、FullDepthとの共同研究によって進めている事例だ。
展示会場では、水中ドローンのセンシングデータを活用した3Dモデルを、空間再現ディスプレイで体験することができた。