イベントレポート
CEATEC 2024
「手話をテキストに翻訳」「盛り上がりを振動で!」東京都がユニバーサルコミュニケーション技術を多数展示
来年開催の「世界陸上」「デフリンピック」を見据え、アスリートも来場
2024年10月18日 10:19
2025年、2つの国際大会が東京で「東京2025 世界陸上」「東京2025デフリンピック」
CEATEC 2024に出展した東京都生活文化スポーツ局では、ユニバーサルコミュニケーション技術を体験できる展示を行った。
2025年には、「東京2025 世界陸上」と、日本では初開催となるデフ(きこえない、きこえにくい)アスリートによる「東京2025デフリンピック」の2つの国際大会が、東京で開催される予定であり、それらの会場を想定し、受付や会場案内、観客席などにおいて、ユニバーサルコミュニケーション技術を利用することで、より多くの人が安心して、楽しめる場の創出につなげる取り組みの一端を披露した。
東京都では、2つの国際大会の開催を契機に、デジタル技術を活用したユニバーサルコミュニケーションを促進し、いつでも、どこでも、誰とでもつながる「インクルーシブな街・東京」の実現を目指しており、今回の展示内容はその一環と位置づけている。また、東京都の「推しスポーツProject 」の取り組みでもあり、2つの国際大会の開催を機に、都民が様々なスポーツに親しむ機会を創出し、スポーツの魅力に触れることで、推しスポーツを発見してもらえるように支援するという。
ブース内には、スポーツ会場を想定した受付および会場内案内コーナーを用意した。
ここでは、透明ディスプレイを利用し、対話の内容を、テキストでディスプレイに表示。ディスプレイ越しに相手の顔を見ながら、やりとりができるというメリットがある。
また、多言語翻訳タブレットを、きこえない・きこえにくいスタッフが携帯して、手書きアプリや、翻訳アプリなどを活用し、来場者を案内するといったシーンを想定したデモストレーションも行われた。
大型サイネージには知事アバターが登場し、来場者を迎える様子も再現した。
盛り上がりを振動で体感
観客席では、振動デバイスを首から下げて、競技の内容を観客に伝える体験ができた。首にかけたストラップが振動し、その強弱によって競技の盛り上がりを知ることができる。バスケットボールの試合では、応援するチームがシュートを決めたときには、振動が大きく、長くなり、相手チームが得点を入れたときに、少なめに振動することで、聞こえない人にも、会場の盛り上がりの様子が理解できる。
また、アナウンスの内容をテキスト表示する技術を紹介したほか、万が一、会場内で火災などの緊急事態が発生した際に、きこえない ・きこえにくい人に、緊急事態であることをフラッシュライトで知らせる光警報装置も展示した。
「手話をテキストに翻訳」「電車が接近したら、文字で“ガタンゴトン”」
さらに、手話をテキストに変換することができるソフトバンクの「sure talk」や、駅などに設置して、電車の接近音をオノマトペで表記する富士通の「エキマトペ」、AIを活用して翻訳し、外国人との対話を行うことができるドーナッツロボティクスのコミュニケーションロボット「cinnamon」も展示していた。
「きこえない・ きこえにくい世界」をVRで体験
「きこえない・ きこえにくい世界」を、VRで疑似体験できる「Deaf VR」のコーナーでは、ゴーグルとヘッドフォンを装着し、スポーツをしているときや、カフェ、道路、教室などにおいて、360度のVR映像とともに、3つの聞こえ方の違いを体験できた。サッカーでは、選手同士の発声が聞こえないという体験ができ、スポーツにおけるコミュニケーションの難しさを知ることができた。
女子走り高跳びの髙橋渚選手、デフ柔道の佐藤正樹選手が体験
開会初日には、両大会への出場が期待されている女子走り高跳びの髙橋渚選手と、デフ柔道の佐藤正樹選手が来場。ユニバーサルコミュニケーション技術を体験した。
髙橋選手は、Deaf VRを体験して、「きこえない・きこえにくいということが、想像をはるかに超えて大変なことだと実感した。私自身も困っている方がいたら、何か支援ができればと感じた」とコメント。また、「展示された技術が発展することで、誰もが怖さを感じることなく、暮らしたりコミュニケーションを図ったりできるようになる。自分にできることからサポートしていきたい」と語った。世界陸上に向けては、「走り高跳びは、日本人選手が、長く世界大会に出られていない。自分が出場することを目標に取り組んでいる。デフリンピックにも興味があったが、様々なユニバーサルコミュニケーションの機器を体験して、私自身も会場で見てみたいと思った。多くの人にも見てもらいたい」と抱負を述べた。
また、佐藤選手は、「アナウンスなどが聞こえないときに、孤独感を感じることがある。そうしたときにサポートしていただけるとありがたい」と、自らの立場からコメント。「いまは、まだ不便を感じる場面もあるが、こうした技術を使うことで、もっと住みやすい社会になるという期待感が高まった」とした。デフリンピックに向けては、「メダルを獲ることを目標に取り組んでいる。また、ロールモデルになりたいと考えている。誇りを持って頑張っていきたい」と力強く語った。