6分でプレゼンする「Launch Pad」、優勝は音声認識の「もじもじTV」


 「Infinity Ventures Summit 2009 Fall」2日目の冒頭は、各社が6分の中で自社サービスや製品を紹介する「Launch Pad」。企業、個人含めた12のプレゼンターが、持ち時間の中で自らの製品・サービスを発表した。

 トップバッターとなったミログは、サイト機械監視システム「m-police」を紹介。東京大学および東京工業大学の協力を受け、人間の感情を「喜怒哀楽」に加えて「愛」「憎」の6つに分類。さらに「憎」を16の基準に細分化し、サイトのNGワードを高精度で自動処理できるという。また、Amazon Web Service(AWS)自動的に増設・解約する自動分散システムも開発し、瞬間的に300台のAWSを並列処理することで、資金力の弱い企業でも大規模な演算を可能だという。

喜怒哀楽に「愛」「憎」を加え、さらに憎を16分割してテキストを解析機械のため24時間のフルタイム稼働が可能

 KLabは、ホワイトリスト型のウイルス対策ソフト「イージスガード」を紹介。ウイルス数が年々増加しており、従来のブラックリスト型ではパターンファイルの処理が間に合わないと指摘した上で、リストに登録したプログラムのみを許可するホワイトリスト式にすることで、悪意あるプログラムからの脅威を防げるとした。

ブラックリスト型では急増するウイルスに対抗できないホワイトリストで登録したファイルのみアクセスを許可する

 ハートレイルズは、OpenSocial アプリを開発できるプラットフォーム「OpenSocial Host」を紹介。mixiアプリを無料で作成・運用できる仕組みで、すでにこの仕組みを使った「お絵描き日記」アプリも公開済み。10万ユーザーまでの中規模アプリまでは広告付き無料とし、大規模もしくは広告非表示の場合は有料となる。また、アプリが流行した場合のインフラ面もハートレイルズが担当するため、開発者はアプリの開発のみに集中できるという。

mixiアプリを無料で開発・運営可能開発者はアプリ開発のみに集中できる

 オーマは、人物検索「SPYSEE」を紹介。特定の人物に関するWeb上の情報を自動的に集約するサービス。同姓同名を切り分ける機能に加えて、実際の人物に対して寄付で支援できる「あのひと応援チアスパ!」という取り組みも導入。多言語対応も進めており、すでに英語版では50万人の人物データを登録。中国版も開発中なほか、中国版のデータベースを日本語で表示し、中国の情報を日本で確認できる機能も用意されている。

特定の人物を寄付で応援できる「あのひと応援チアスパ!」開発中という中国版のSPYSEE。日本語翻訳も対応

 カタログは、同社の音声認識技術を利用したサービスを2種類紹介。1つは音声認識により、実際の声によるつぶやきをテキストとしてTwitterに投稿できるiPhoneアプリ「しゃべったー」で、こちらはApp Storeで無料公開されている。また、動画内の音声を検索できる「もじもじTV」では、動画内の音声をテキスト検索でき、会場では動画内の発言を検索するデモンストレーションが行われた。

声を解析してTwitterに投稿できる「しゃべったー」動画の音声を解析する「もじもじTV」

 クウジットは、無線LANを利用した位置情報システム「PlaceEngine」を利用し、ユーザーの行動履歴を把握する「Location Amplifer」(ロケーションアンプ)を披露。行動情報を把握するサーバー、PlaceEngine、クライアント端末側のアプリケーションを組み合わせることで、美術館の位置によって作品情報や地図を適宜配信するといったサービスが可能。AR技術を用い、ショッピングモールの特定位置でカメラを向けるとスタンプラリーができるという取り組みも紹介された。

ユーザーの空間行動履歴を把握できる「Location Amplifer」(ロケーションアンプ)ユーザーの居場所に合わせて最適なガイドを表示

 ユビキタスエンターテインメントは、IVSでも話題だったソーシャルゲームを「ブラウザ上のゲームは80%が2つのパターンに分類できる」と指摘し、大事なのはグラフィックとシナリオであり、開発よりも運営が課題であるとして、同社のCMS「ZEKE CMS」でソーシャルゲームを開発できる「ソーシャルゲームキット」を発表した。また、経済産業省の協力を受け、AR技術を用いて渋谷で宝探しをするというプロジェクトも紹介された。

ZEKE CMSにソーシャルゲームを開発できる機能を追加ARを利用して渋谷で宝探しや鬼ごっこを楽しむプロジェクト

 アイティアは、ARを用いたモーション検出エンジン「Symphonic Motion」をプレゼン。カメラの前での動作を認識し、リアルタイムにCGを合成する仕組みで、単純に動作にエフェクトをかけるだけでなく、顔認識によって人の顔を分類し、タイプごとにオーラを表示するという占いシステムも可能。すでに六本木ヒルズの広告などで実際に導入されているという。

カメラの動きに合わせてCGを合成する「Symphonic Motion」顔認識と組み合わせて、その人のオーラを診断するサービス

 GClueは、Android向けのARウィジェットエンジン「Droidget AR」を発表。Androidのカメラ上にJavaScriptベースのウィジェットを表示でき、ウィジェットはGPSを利用して位置情報ごと表示を変えることが可能。インストール不要な点が特徴で、レストランで自動的にレシピを表示する、といったサービスが可能になるとした。

JavaScriptベースでインストール不要のAndroidウィジェット「Droidget AR」。GPSと組み合わせてその位置ごとのウィジェットを表示できるドラッグで操作したいウィジェットを選択。会場ではヘリコプターのラジコンをAndroidから操作するデモが行われた

 KDDI研究所は、「実空間透視ケータイ」というAR技術を紹介。6軸センサーで端末の姿勢を算出し、携帯電話を向けた方向と、その方向の位置情報が登録された写真を組み合わせることで壁を通り抜けてその位置の写真が表示されるように見える仕組みや、端末の加速度やマイク、GPSを利用し、携帯電話所持者の移動状態を把握できる仕組みなどが披露された。移動状態は停止状態のほかに歩行中、走行中、バス、自動車など7種類を80%以上の確率で特定できるという。

KDDI研究所の「実空間透視ケータイ」。ユーザーの動きを把握して相手に通知できる6軸センサーや加速度センサー、マイク、GPSなどを駆使

 ORSOは、すでにいくつもの携帯電話向けFlashゲームやアバター、ポータルを開発している実績をベースに、Flashベースのサイトを作成できるCMS「Odette Solution」を発表。用意されたテンプレートをベースとして、簡単にFlashサイトを作成できる。CMS自体は鋭意開発中だという。

Flashベースのサイトを制作できるCMSテンプレートを選択してデザインを作成できる

 唯一の個人参加である吉崎航氏は、ロボットをリアルタイムに操縦できる演技指導ソフト「V-Sido」を発表。ロボットを自由に操作することは難しく、ホビーロボットのほとんどは覚えた動作を再生しているにすぎないと前置きし、「やはりロボットはリアルタイムに操作したい」との思いから開発したという。惜しくも時間切れとなったものの、審査得点の対象外という条件の元に、PCからリアルタイムにロボットを操作するデモも披露された。

ロボットをリアルタイムで操作する「V-Sido」パネル4隅に動きを登録しておき、パネルをなぞると指の動きに近い操作を自動で行う
ロボットの操作デモ操作画面はコックピット風

 優勝は、「もじもじTV」「しゃべったー」を発表したカタログで、ロボット演技指導ソフト「V-Sido」の吉崎氏は1点差で2位となった。3位は人物検索「SPYSEE」、4位はミログのサイト監視システム「m-police」と続き、5位はアイティア、KLabの同時受賞となった。

優勝は「もじもじTV」のカタログ「Launch Pad」入賞者

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(甲斐 祐樹)

2009/11/13 19:01