IPv4アドレスの闇市場を排除、日本でも事業者間の譲渡“公認”へ


 秋葉原コンベンションホールで開催された「Internet Week 2009」に合わせ、「第17回JPNICオープンポリシーミーティング」(主催:オープンポリシーフォーラム)が26日に行われた。

 「JPNICオープンポリシーミーティング」は、その名称の通り、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)で施行している、IPアドレスなどの分配・管理ポリシーについて提案を行う場として設けられているもので、誰でも参加できる。ポリシーの改善案など、ここで“JPコミュニティ”としてコンセンサスを得られたものが、実際にJPNICに対して提案されることになる。

IPv4アドレス移転ポリシーの導入を提案した、慶應義塾大学SFC研究所の白畑真氏

 今回のミーティングで注目された提案の1つに、IPv4アドレス移転ポリシーの導入がある。IANAにある未割り振りIPv4アドレスの在庫が2011年中に枯渇すると予測されていることを受け、すでに事業者や組織などに割り振り済みのIPv4アドレスについて、未使用ブロックを事業者や組織間で移転することを認めようというものだ。

 ミーティングでは、提案者である慶應義塾大学SFC研究所の白畑真氏から、背景や目的の説明があった。

 白畑氏によると、アジア太平洋地域のRIR(地域インターネットレジストリ)であるAPNICではすでに移転ポリシーについてコンセンサスが得られており、2010年第1四半期までに施行予定だという。これにより、APNICの管理下にあるアドレスの移転が公認されることになる。

 ただし、JPNICなどのNIR(国別インターネットレジストリ)が同様のポリシーを採用するかどうかは、各NIRに判断が委ねられている。JPNICの管理下にあるアドレスは、APNICの管理下にあるアドレスの一部だが、JPNICの管理下にあるアドレスについても同様に移転を認めるには、同様の移転ポリシーをJPNICでも施行する必要がある。

 白畑氏が導入を提案するポリシーは、APNICの移転ポリシー(Prop-050)を日本語に訳したもの。「APNIC」と表記されている部分を「APNICおよびJPNIC」にするなど最小限の変更はしているが、内容は同一のものだ。ポイントとしては、1)IPアドレス指定事業者などのJPNICアカウント保有者間、およびJPNICアカウント保有者とAPNICアカウント保有者間のIPv4アドレス移転をJPNICが認めること、2)移転したことをJPNICとAPNICのアドレスレジストリに記録すること――の2点。さらに条件として、移転するアドレスブロックの最小単位を「/24」(含まれるアドレスは256個)とすることなどが規定されている。

 説明後の議論では、移転という手段で今後もIPv4アドレスを入手する公な手段が生まれることで、IPv6への移行促進に影響が出ることを懸念する声も上がった。企業の経営者などにおいて、多大なコストをかけてIPv6化を進めるよりも、IPv4アドレスの譲渡を受ける方がよいとの風潮が生まれる可能性があるため、あくまでも移転を認めるのはIPv4の延命策のためであり、譲渡を受ける事業者に対してIPv6化を前提とするなどの条件を付けることが必要ではないかといった意見だ。

 こうした指摘はこれまでの議論でも繰り返されてきたものだというが、白畑氏は、移転ポリシーの最たる目的は、すでにアンダーグラウンドでIPv4アドレスの取り引きが行われている問題へ早期に対応することであり、移転を公認することで、レジストリがきちんと管理できるようにすることが重要と説明した。そのため、他のRIRでも、できるだけ条件は低くして移転を認知しようという方針だとし、日本もこれと一貫性をとる必要性があることも指摘された。

 このほか、必ずしも欲しい時に欲しいだけのIPv4アドレスブロックを譲り受けられるわけではないことから、大規模事業ではIPv6移行が主流となり、移転手続きが使われる例はそれほど多くはのではないかとする意見もあった。

 この提案については約1時間にわたって議論されたが、ミーティング参加者65名のうち賛成45名・反対1名という採決結果となり、コンセンサスが成立した。


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(永沢 茂)

2009/11/27 16:52