「Facebookは国際線の飛行機」~“ファンページ”運営企業が活用意図を語る
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社(AMN)の主催で15日に開催された「ソーシャルメディアサミット2011」では、企業のソーシャルメディア担当者が登場し、Facebookなどの活用事例が語られた。
●Facebookの企業活用事例を紹介
「Facebookは今後日本でどうなるのか」と題したパネルディスカッションでは、実際にFacebookを事業に生かしている企業からパネリストが登壇し、自社での事例を語った。
株式会社良品計画の風間公太氏 |
無印良品では、ウェブサイトのほかTwitterやFacebookに積極的に取り組み、フォロワーやファンを集めている。株式会社良品計画の風間公太氏によると、もともとウェブサイトに多くのコメントや意見をもらっていたのを、よりスピーディーに対応できるよう、コミュニケーションの可視化としてFacebookを取り入れたという。その結果、サイトへのコメントは減らず、それに加えてFacebookのコメントが付く形になっているとの説明だった。
Twitterでも活発に活動しているが、その使い分けについて「1対1のコミュニケーションは、むしろTwitterが強い。Facebookは、お客さん同氏のコミュニケーションが盛ん」と発言。徳力氏を「一見逆のようで、面白い」と驚かせた。
株式会社エスワンオーの佐藤俊介氏 |
アパレルブランド「satisfaction guaranteed」を展開する株式会社エスワンオーは、もともとインターネット広告代理店だ。エスワンオーの佐藤俊介氏は「アパレルの下地はないので、ITを使ってどうブランディングしていくかを考えた」という。そこで、アジアの市場に出るために「Facebookは国際線の飛行機。アジア行きの国際線のチケットを買った」と語る。
佐々木氏は、「われわれは元からファンを持っていたわけではなく、みんながブランドを作った」と、新しいソーシャルブランディングの革命だと説明。成功した理由として、広告戦略がうまくいったと話し、「可能性は未知数で、そこにうまく穴を掘った」と説いた。
失敗例も語られた。Facebookでファンが増えたときにECを始め「これは売れるだろう」と思っていたが、思ったほど商品が動かなかったという。アジアの人たちの、オンラインショッピングに対する抵抗感や、クレジットカード事情、電気事情などが原因だろうと分析し、ファンの数と売り上げが必ずしも連動しない、オンラインだけでは完結しないと学んだという。
ANAの高柳直明氏 |
ANAは、もともと海外での認知を上げるため英語版のFacebookページ(旧“ファンページ”)を展開しており、日本語版のFacebookページを1月11日に開始した。ANAの高柳直明氏によると、日本でファンとのコミュニケーションがほとんどなかったため、接点を持つために始めたのだという。
Facebookを選んだ理由としては、写真を使ったコミュニケーションに便利でANAと親和性が高いこと、ANAで会員サイトを運営しており実名でのハンドリングに慣れていたことなどが挙げられた。また、背景として、羽田の新国際線ターミナルがオープンしてグローバル化が進むことが語られ、徳力氏も「国際線に乗る人はFacebook利用率が高いのではないか」とコメントした。
企業でユーザーとコミュニケーションをとる場合には、ネガティブな反応が懸念される。この点について徳力氏が質問すると、ANAの高柳氏と無印良品の風間氏は、ポジティブな反応が多いという経験を述べた。また、エスワンオーの佐藤氏は、海外のサービスで日本人がコメントするのはハードルが高いが、人が増えるとどんどんアクティブになっていくと話した。
徳力氏からは、ソーシャルメディアの効果についても質問がなされた。エスワンオーの佐藤氏は、企業へのコンサルティングの立場として、費用対効果が目に見えづらいことを指摘し、コストのかけ方が問題になってくるだろうと語った。
無印良品の風間氏は、自社の場合について、オンラインへの導線で完結するだけではなくオフラインの店舗に人を誘導するのも大切だと説明。事例として、有楽町店の10周年記念で、Twitterでメッセージするとクーポンをプレゼントするというキャンペーンを行なったところ、2000件強のメッセージが集まり、実際に店舗でクーポンを使った人が900人いたことを紹介。「CMやメルマガでは計れなかった指標」と語った。さらに、ほかの人のツイートを見て無印良品の店舗に行く人が増え、反応がある商品ではツイートの前日と比べて平均1.5倍に売り上げが増えているというデータを紹介した。
最後に、これからFacebookの活用を考えている企業に対してのメッセージとして、3社から、企業のFacebookページ同氏の連携を盛り上げていこうと語られた。
●企業とソーシャルメディアの事例
続く「企業のソーシャルメディア活用の可能性について」と題したパネルディスカッションでは、ソーシャルメディアを使ったキャンペーンについて企業からのパネリストが自社の事例を語った。
ネスレ日本株式会社の揖斐理佳子氏 |
ネスレ日本株式会社の揖斐理佳子氏は、自社のソーシャルメディア活用事例として、キットカットのリニューアルキャンペーンを紹介した。mixiのタイアップページを作って無料クーポンを配り、セブン-イレブンや「ポチッとギフト」へ誘導するというもの。クーポンが配られる発表会前に22万人が並び、開始後1時間で87万人が集まったという。「ただし、これはソーシャルメディアではなくペイドメディア」と揖斐氏が話すと、徳力氏は「いずれにしても、バイラルが機能した例」とフォローを入れた。
ソーシャルメディアのメリットについて揖斐氏は、コストがかからないことと、企業のきれいな写真よりユーザーが撮った写真のほうが100倍ぐらい説得力があることを挙げた。また、Facebookはチュニジアの革命を支えるなど、ソーシャルメディアの中でも別格であると論じた。さらに、Facebookがメールに変わってコミュニケーションのスタンダードになり、「今まで集めてきたメールアドレスが価値がなくなるかもしれないとも考えている」と語った。
ユニット・ワンの勝部健太郎氏 |
企業のソーシャルメディア利用をディレクションするユニット・ワンの勝部健太郎氏は、日本コカ・コーラのキャンペーンのためのmixiアプリとFacebookアプリ「スゴイ自販機」を紹介した。アプリ上の自販機でドリンクを選ぶと、抽選券か仮想フィギュアが当たるというものだ。
勝部氏は、企業に説明するときに、きわめて端的な言葉を見つけて説明するアプローチをとると言い、そのために「抽選で1名に100万円が当たる自販機」ではなく「スゴイ自販機」だったと解説。こうした中心のメッセージを見つけることは、ユーザーに伝えわることでもあると説明した。
さらに、「最近ではみんな忙しくなって、動画でも5秒でピンとこないと止めてしまうぐらいのスピード感にある。コミュニケーションを設計する側としては、ユーザーの時間の使い方をユーザー目線でどう設計するかが重要」と語り、ソーシャルメディアはユーザーの生活導線の上にあると論じた。
株式会社ローソンの白井明子氏 |
株式会社ローソンの白井明子氏は、自社の取り組みのテーマを「新しい技術+エンタメ+ソーシャルメディアの組み合わせ」と説明した。まず、AR(拡張現実)+エヴァンゲリオン+Twitterの組み合わせで箱根町でキャンペーンを実施したところ、人が集まりすぎて中止となり、クチコミの威力が身にしみたという。
続くARG(代替現実ゲーム)+ワンピース+Twitterのキャンペーンでは、位置情報を使って、店舗を巡るとスタンプがたまるスタンプラリーを実施。店舗の売り上げにもつなげたという。位置情報を使うため店舗側では何もしなくてもいいところに、箱根での教訓が生かされた。
白井氏はソーシャルメディアのメリットについて、1年キャンペーンを実施してもテレビCMの1本分の予算に満たない低コストで済むことや、企業サイトを訪れるユーザーが減っている中でTwitterなどに出店(でみせ)を作る効果を語った。
サントリーホールディングス株式会社の坂井康文氏 |
サントリーホールディングス株式会社の坂井康文氏は、インターネットが媒介となったハイボール人気の事例を紹介した。もともと、ウイスキーをアピールするためにブロガーイベントを開催したときに、最後にハイボールの上手な作り方を紹介したところ好評で、そこからハイボールのイベントなどにつながったという。このことから坂井氏は、一方的に情報を発信するだけではなく、「ブロガーと会話して反応を見ながら次につなげていくことを学んだ」と語る。
坂井氏は、宣伝ではなく広報部の所属だが、ソーシャルメディアではテレビCMより低い予算で効果が高いと語る。ただし、良くも悪くも「ブロガーと長いおつきあいを始めてしまった。覚悟が必要だなとは思った」という。この点についてユニット・ワンの勝部氏は、広報とマーケティングの中間のような位置は日本の今までの組織体制では拾えていない場所だが、「そこがスイートスポットではないか、スピーディーにどんどん手掛けたほうがおいしいのではないか」とコメントした。
そのほか、それぞれの企業内での説明や説得について、企業の社風や、データや実例を辛抱強く提供して説得していること、リスク管理など、各社の事情などが話された。
●ソーシャルメディア活用企業調査の結果を紹介
イベントでは、AMNが同日発表した「ソーシャルメディア活用企業調査」の結果も紹介された。Twitter、mixi、GREE、モバゲータウン、Facebook、ブログ、YouTube、ニコニコ動画を対象に、各サービスでの公式アカウントや公式アプリの活用状況などについて独自調査し、積極的に活用している50社をリストアップしたものだ。また、トップ50企業の利用しているソーシャルメディアの割合も出された。徳力氏は、「ランキング自体に意味があるとは思わないが、傾向を知りたかった」とコメントした。
ソーシャルメディア活用企業トップ10 | トップ50企業のソーシャルメディア利用率 |
関連情報
(高橋 正和)
2011/2/16 12:25
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