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ニュースキュレーション

いま知っておくべき5つのニュース[2019/4/6~2019/4/12]

1. アップルの新サービス発表とサブスクリプションサービスへの期待と懸念

 当該の一週間に「サブスクリプションサービス」という単語が頻出した印象がある。もちろん、そのまえの週にアップル社がApple News+というニュースメディアやサブスクリプションサービスなどのコンテンツサービスを発表したことがきっかけとなっていると思われる。日本でのサービス開始時期は未定で、なおかつサブスクリプションサービスそのものは決して目新しいサービスではないにもかかわらずだ。スマートフォンやタブレットなどで大きなシェアを持つアップル社のサービスだけに影響があったということか。

 そのようななか、矢野経済研究所は2018年度のサブスクリプションサービスの国内市場規模が5,627億3,600万円であったという推計を発表している。さらに、2023年度には8,623億5,000万円にまで拡大するという予測値も出している。なお、ここでいうサブスクリプションサービスとは、(1)ファッション系定期宅配、(2)ファッションサービス、(3)食品系定期宅配、(4)飲食サービス、(5)生活関連、(6)シェアハウスやマンスリー系賃貸住宅を除く住居、(7)通信教育を除く教育、(8)娯楽(月額定額で利用できる音楽と映像サービス)という8市場の合計である。

 さらに、マイボイスコム社では、定額制サービス(サブスクリプション)に関するアンケート調査の結果を発表している。それによれば、直近1年間における定額制サービスの利用者は全体の2割ほどで、利用しているサービスは動画、音楽、電子書籍・雑誌、ソフトウェアなどでの率が高いとしている。

 なお、両調査会社のサブスクリプションサービスの定義や調査パネルは異なるので、留意が必要である。

 しかし、サブスクリプションサービスが単なる課金方式の違いだけと思っている人も多いのではないだろうか。2019年3月の開催された「MarkeZine Day 2019 Spring」に関する記事では、「サブスクリプションモデル大解剖 企業とユーザーをつなぐのは“体験”だ」とするセッションの内容が報じられている。サブスクリプションサービスは単なる課金方式(ユーザーからするなら支払方法)のバリエーションのひとつではないということが指摘されている。それまで同じサービスを単に課金方法だけ変えてもうまくはいかないというわけだ。今後さまざまなサブスクリプションのプラットフォームが登場したとしても、どう新たな価値を生み出すかがコンテンツやサービスの提供者にとっての本質的な課題といえそうだ。

ニュースソース

  • 気づいたら高額な購読契約の詐欺アプリだった……に対策。アップル、Touch ID認証後に確認ポップアップを追加[Engadget日本版
  • アップル版dマガジン「News+」実現に540億円? Texture買収で[Engadget日本版
  • 米国のApple Music有料会員数、Spotifyを上回る。毎月2.6%~3%の増加[Engadget日本版
  • YouTube TVがチャンネル追加とともに大幅値上げ[TechCrunch日本版
  • 2018年度のサブスクリプション(定額)サービス国内市場規模は5,627 億3,600 万円(8市場計)[矢野経済研究所
  • 定額制サービス(サブスクリプション)に関するアンケート調査[マイボイスコム
  • サブスクリプションに欠かせない4つの要素とは?/NewsPicksらが語ったデジタル時代の体験価値[Markezine
  • サブスクリプションビジネスという「新常識」を解明[ZUU online
  • Amazon 、Fire TV向け「ニュースアプリ」を計画中?:複数のパブリッシャーと交渉中との報道[DIGIDAY日本版
  • アップルの新サービスは、消費者にiPhoneを買わせるには不十分 —— HSBCが指摘[BUSINESS INSIDER

2. 高速化からリッチ化へ向かうウェブブラウザー

 ウェブブラウザーに求められることといえば、HTMLなどで記述されたページソースを標準仕様にのっとって、できるだけ意図どおりに、かつ高速にレンダリングできるかということだった。もちろん、安全性に対する配慮はもちろんのこと、プラグインのようなサードパーティーへ窓を開くことも重要な要素ではあるが、あくまでプラットフォームとしての要素が強かった。そのようななか、FirefoxOperaではさらに一歩踏み込んだ機能が実装されつつある。高速化には一定のメドがついたことから、今後のブラウザー間での差別化戦略へと向かいつつあるともいうべきか。

 一方、ChromiumベースのウェブブラウザーであるEdgeの公式プレビュー版がリリースされている。オープンソースとはいえ、グーグルの支配下にあるとされるレンダリングエンジンのChromiumをマイクロソフトが採用したことへの賛否両論はあるようだが、ウェブプラットフォームの変化の兆しと捉えることもできそう。

ニュースソース

  • 「Firefox」、仮想通貨採掘とフィンガープリンティングのブロック機能を追加へ[CNET Japan
  • 「Opera 60」公開、仮想通貨ウォレットを統合[CNET Japan
  • ChromiumベースのEdgeブラウザーが公式プレビュー[TechCrunch日本版

3. 完全キャッシュレスの夢と現実

 米国アマゾン・ドット・コムが展開する「レジなし店舗」であるAmazon GOについては、昨年、日本でも大きく報じられたことから、ご存じの方も多いに違いない。店舗内にカメラが設置されていて、商品についているコードを読み取ることで、誰が何を手にとったかを認識し、あとからアマゾンのアカウントに課金するという仕組みである。しかし、ここのところ「完全キャッシュレス」という支払い方法が差別につながるのではないかという懸念がいくつかの州で議論されている。つまり、銀行を持たない層(あるいは、持てない層)に対する差別につながるのではないかということだ。こうした議論に応えるかたちで、アマゾン社は現金払いへの対応も検討しはじめたという。

 日本でも、消費税増税やインバウンド需要に合わせた行政的・産業的にはキャッシュレス化の動きが活発になりつつあるようで、昨年には一部の店舗では実験的に完全キャッシュレスを試しているとも報じられてきているところだ。日本において、そうした配慮が必要とされるのかどうかの検討はこれからだろうが、一つの課題要素としては認識しておくべきだろう。

ニュースソース

  • 「Amazon Go」、店舗での現金の取り扱いを計画中[CNET Japan

4. W3CがTechnology&Engineering Emmy Awardを受賞

 W3CがThe National Academy of Television Arts & Sciences(米国立テレビ芸術科学アカデミー:NATAS)からTechnology&Engineering Emmy Award を受賞し、贈賞式が行われた。Emmy Awardは米国放送業界のテレビ部門における最高栄誉の賞とされていて、一般には放送タレントへ与えられる賞としても知られているが、今回の受賞は技術工学部門としてである。受賞理由は、W3Cが開発し、標準化を行ったHTML5が映像配信のプラットフォームとしての多大な貢献があったということである。W3Cの発表資料によれば、「いつでもどこでも、どんなデバイスでも、どんな解像度でも、そして誰にでも利用できる、プロフェッショナルコンテンツとユーザーコンテンツをミックスする、これまでにないメディアプラットフォームに変えた」としている。なお、贈賞式には慶應義塾大学教授で、W3Cの運営委員である村井純も登壇した。

ニュースソース

  • W3C honored with a second Technology & Engineering Emmy Award[W3C
  • ウェブの父バーナーズ・リー氏が思い描くオンラインのユートピア[CNET Japan

5. 次週以降の注目点

 総務省は「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会(第1回)」を2019年4月19日(金)に開催をすると発表した。昨年、内閣府において「インターネット状の海賊版対策に関する検討会議」がサイトブロッキング法制化に懸念する声が強くあり、中間とりまとめの報告書が採択されなかったことは記憶に新しいが、今回の検討会ではそのときにも代案として提出されていたアクセス抑制方式の検討が中心になると見込まれる。今後の議論の内容には引き続き注目をしておきたい。

 また、日本では皇室行事にともなう10連休となるなか、米国フェイスブック社はデベロッパーコンファレンスを4月30日~5月1日まで、米国サンノゼ市で開催する。ここでの発表内容も要チェックである。さらに、米国アップル社は6月3日~7日まで、デベロッパーコンファレンスを開催することが発表となっている。

ニュースソース

  • インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会(第1回)[総務省
  • Facebook Developer Conference―F8(April 30 – May 01、San Jose, CA)[Facebook
  • Apple、6月3~7日にサンノゼにてWorldwide Developers Conferenceを開催[ニュースリリース

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