インタビュー
台風19号の被災に無償支援、PCやiPhoneのデータ復元サービスを米社が受付中
2019年10月31日 06:00
台風19号の被害を受けたPCやiPhoneのデータを無償で復元する支援をドライブセイバーズが行っている。
申し込み期限は2019年11月15日までで、無償サービスの上限は最大1億円、概ね1000台ほどが対象になるという。具体的な対象機材はデスクトップPCとノートPC(SSDモデル含む)、外付けHDD、そしてiPhone、iPadとのこと。
同社はカリフォルニアに本社があり、データ復元で30年以上の実績があるという。同社がなぜ、そうしたサービスを行っているのか?、そして実際の支援はどういったものなのか、詳しい内容を日本代表のネイソン・ブライアン氏に聞いた。
なお、申し込み受付は同社の日本オフィスが窓口で、ウェブサイトにある問い合わせフォームかメール、もしくは無料ダイヤルで可能。
東日本大震災の際も復元支援、「泥まみれのPCでも」
ドライブセイバーズは、水害や火災、落下による損傷やドライブの不具合など、さまざまな損傷を受けた、あらゆるタイプのストレージデバイスからデータを復元するサービスを30年以上提供している。
日本でも以前からサービスを行っていて、昔からのMacユーザーにはよく知られているが、日本に拠点が無いこともあって認知度は低い状況にある。
「東日本大震災の際にもデータ復元支援を行っていましたが、日本語のウェブサイトが無かったため、残念ながら十分な支援につながらなかった。そうした経緯や以前から日本に拠点を作ろうという話があり、今年1月に神戸で拠点を立ち上げました」と語るブライアン氏は、20年以上前から日本でIT関連の仕事を手掛け、Appleコミュニティともつながりを持つ人物。
1995年の阪神淡路大震災ではインターネットを利用した情報ボランティア活動にも参加しており、ドライブセイバーズの支援活動にも協力してきた。
「一見して大きなダメージを受けたPCでもデータだけなら復元できる可能性があります。ドライブセイバーズはそのためのノウハウを持っていて、過去には泥まみれになったり、折れ曲がったPCからデータを取り出したケースがあります。
ただし、時間が経つと回路が腐食するなどデータ復元が難しくなる。また、PCが動くかどうか確認するため電源を入れるとそのせいでデータが破損する場合もあるので、できるだけそのまま何もせずに私たちに依頼してください」
依頼から2週間で復元、作業はカリフォルニアの専用施設で
復元作業は全てカリフォルニアの本社にある専用施設で認定を受けた専門の技術者が行う。また、ISOクラス5のクリーンルームをはじめとする独自設備は、独立した第三者機関による監査や調査を毎年受けているとのこと。
こうした取り組みによって、同社では高い復元率を実現すると同時に信頼性を担保することができると説明する。
「支援するサービスは通常と同じ内容で、依頼からおよそ2週間で復元したデータを手元にお届けします。復元するストレージは神戸から本社へ送りますので、まずは拠点に届けていただくよう宅配便などをこちらで手配しますが、その際に復元方法や所要時間などを説明します。
本社で復元されたデータは、別のストレージに移すかもしくはクラウドからダウンロードできるようにします。いずれも暗号化などのセキュリティ対策で安全にデータを扱えるようにしていますので、プライバシーに関わる個人情報が記録されたストレージの復元でも安心して依頼してください」
今回の支援では対象外だが、ドライブセイバーズではRAIDやNASをはじめ、デジタルカメラ、USBメモリ、SDカード、さらに古いMOからもデータを復元できる。
同社の説明によると、「Appleなどの大手メーカーからドライブを開ける認可を受けている」とのことで、復元サービスを利用した後も保証が受けられるという。また、依頼を受け付けた後も復元に成功するまでは費用支払いが発生せず、最終的に支払う金額も最初の見積もり以上にはならないシステムになっているとのこと。
デジタル版の「復旧ボランティア活動」として
こうした無償サポートを行う理由について、ブライアン氏はこう説明する。
「被災地で見つかったアルバムから写真を修復するボランティア活動がありますが、私たちが行っているのはいわばそのデジタル版です。どうしても復元したい大事なデータがあれば相談してください。できるだけ私たちがサポートします」
ブライアン氏は年々増える災害に対し、「大事なデータは日頃からバックアップするよう心がけてください。できればクラウドサービスを利用して二重化したほうがいい」とアドバイスする。
「どんな保存方法も絶対に安心とは言い切れませんが、デバイスが壊れてもデータは取り出せる可能性があるので、被害にあったらできるだけ早く行動してください。そして、データを救う方法があることをできるだけ多くの人に教えてあげてください」