インタビュー

中小企業の技術の発信を公的にサポート、スタートアップも視野に入れる「東京ビジネスフロンティア」とは

バリアフリー、環境、安心・安全、スポーツの分野で「目を引く、集客力のある製品を」

「東京ビジネスフロンティア」の成果とこれからの話を伺った
東京ビジネスフロンティアのブースの様子
個々のブースの様子 CEATEC 2019ブースレポートの記事はこちら

 10月15日~18日に幕張メッセで開催された「CEATEC 2019」で、20社の中小企業の展示を集約しているブース「東京ビジネスフロンティア」。弊誌では、すでにそのいくつかをピックアップしてレポートしているが、どの企業も先進的でユニークな、クオリティの高い製品・技術を扱っている。

 この取り組みは中小企業世界発信プロジェクト推進協議会が進めているもので、2017年、2018年のCEATECから引き続いてのブース展開となる。

 このCEATECというイベントで中小企業にどんな成果が出たのか、2019年のCEATECではどういった内容の展示になっているのか、同推進協議会を構成するメンバーの1つである東京都中小企業振興公社の中島氏に話を伺った。

どこの中小企業も参加可能、ビジネスフロンティアで技術力アピールを

東京都中小企業振興公社 事業戦略部 中小企業世界発信プロジェクト事務局 事務局次長 中島裕貴氏

――改めて「東京ビジネスフロンティア」という取り組みについて教えていただけますか。

[中島氏] 私たちは来年2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、その経済効果を都内や日本全国に波及させていくべく「中小企業世界発信プロジェクト」を推進しています。

 東京都と、私ども中小企業振興公社、都内の中小企業支援団体様4団体様、この計6団体で推進協議会を構成しており、その推進協議会が進めているプロジェクトということになります。

 この中小企業世界発信プロジェクトで大きな柱としている2本のうちの1本が、今回のビジネスフロンティアという取り組みです。中小企業様の技術力アピールを目的として、CEATECをはじめさまざまな展示会への出展支援を行なっているもので、CEATECへの出展はこれで3回目になります。もう1つの柱は「ビジネスチャンス・ナビ」という企業の受発注取引のマッチングサイトです。

――東京ビジネスフロンティアに参加できる企業の条件はどういったものですか。

[中島氏] 大きく分けて2つありまして、1つはビジネスチャンス・ナビに登録していること。もう1つは中小企業様であること。これ以外の条件は特にありません。東京都内に本社がなければならない、というような制約もありませんから、日本全国どこの中小企業の方でも対象になります。

新たに「創業枠」の設置や出展の費用援助も「人を呼び込み多くの商談につなげたい」

――今回の「東京ビジネスフロンティア」では20社が出展しています。どのように選定されたのでしょうか。

[中島氏] 出展企業を公募して、それに応募していただいた60社以上を対象に、CEATECの主旨に見合う企業を審査会で20社選定しました。昨年はブース内の20コマが全て同じ間取りだったんですが、今年は「創業枠」を新たに設けて、創業間もない企業様でも出展しやすい環境をご用意しています。

 たとえば創業時期は出展したい製品がまだ試作品段階のケースもありますが、そういった試作品でも出展いただけるような基準を設けたり、ですね。

 もともと支援企業様には出展にかかる費用の半分を補助させていただいていますが、展示スペースが若干小さくなる分、出展料も少し抑えられるようなメニューも用意しています。

 また、今回のCEATECは「共創」が1つのテーマとなっていることもあり、共創の促進という観点で、出展企業様個別の製品の魅力を最大限にアピールできるステージプログラムも設けました。

――2018年のCEATEC JAPANで東京ビジネスフロンティアに参加された企業の成果はいかがだったでしょうか。

[中島氏] こういった展示会への出展は、商談を主目的としている部分もあります。そういう意味では、2018年にご参加いただいた企業様のかなり多くが、展示会において多くの商談ができたという成果が上がっています。

 昨年東京ビジネスフロンティアで出展していただいた企業様の何社かは、効果を実感して今年は独自にCEATECに出展していたりしますね。我々の枠組みから出て、そこから羽ばたいていく企業様を見ると非常にうれしいですし、そういった企業様がどんどん増えていくのが我々の一番の理想ではあります。

――今回の手ごたえはいかがでしたか?

[中島氏] 多くの人がパビリオンにお立ち寄りいただいて、各企業様の前で話し込まれて名刺交換をされている姿がよく見受けられました。

 もっと多くの方に見ていただくためにも、「いかに人を呼び込むか」という点に注力したいと思います。

「中小企業の皆さんに積極的に活用していただきビジネスチャンスに繋げてほしい」

――今年の出展内容のテーマは何が多かったですか。

[中島氏] もともと支援企業は、バリアフリー、環境、安心・安全、スポーツという4分野で分けていますが、環境分野が8社で一番多く、次いで安心・安全分野で、スポーツとバリアフリーは今回は少なくなっています。

 バランス良く選ぶのを主眼としてはいますが、申し込まれる企業様の分野にも偏りがありますし、見せるだけでは意味がなくて、人を呼び込める内容か、というところも重要になってきます。ですので、「目を引く、集客力のある製品」という観点でも選定させていただいています。

――このCEATECが終わった後、中小企業世界発信プロジェクトとしてはどういった展開を考えてらっしゃいますか。

[中島氏] CEATECの後、11月13~15日に「産業交流展2019」という東京都主催のイベントと、2020年2月5日に開幕する「第89回東京インターナショナルギフト・ショー」にも出展を計画しています。もう1つの柱であるビジネスチャンス・ナビの登録件数の拡大、そこでの良質な発注案件の掲載にも力を入れていきます。

 展示会出展支援のビジネスフロンティアと、ビジネスチャンス・ナビの両方とも、来年2020年に向けてさらに活性化をさせていきたいですね。中小企業の皆さんにたくさん集まって欲しいのはもちろんですが、ビジネスチャンス・ナビは、企業様のビジネスチャンスに繋がるいい案件が紹介されていますので、マッチングサイトとして皆さんに積極的に活用していただければと。

 2020年のCEATECも出展を検討しています。ビジネスフロンティア自体も2020年までで一区切りとさせていただきますので、そういう意味でも来年は集大成になりそうですね。

 来年のテーマはまだ決めかねていますが、東京オリンピック・パラリンピックが終わった直後のCEATECということで、経済としては一番活性化しているような状態でしょうから、中小企業様がその経済効果の恩恵を得られるかという観点で、出展の方法などを考えることになると思います。