インタビュー

「無いものは作ってしまえ!」自力で「自作ホームオートメーション」を作ったクリティカ川畑氏が、13日に解説イベント

~照明やドアを自動で制御可能~ 「Slackとの連動」などの最新事情も解説予定

「オープンなHA」を目指す「鹿児島のクリティカ」が東京のイベントに出展無料招待券も配布中

「CL-SYSTEM」の概念図
「CL-SYSTEM」を構成する部品群
Slackとの連携も可能になった

 最近、“Internet of Things(IoT)”や“スマートホーム”といった言葉を耳にすることが多くなってきた。

 照明や家電、錠、センサーなどをネットワーク経由で連携させ、住む人にとってより便利で快適な暮らしを実現する“スマートホーム”は、AIスピーカーの普及ですっかり身近な存在となった。読者のなかにも、「Amazon Echo」シリーズや「Google Home」による照明や家電のコントロールをすでに取り入れている人もいるのではないだろうか。

 そして、弊誌で何回か取り上げているクリティカの「CL-SYSTEM」は、この“スマートホーム”をさらに発展させた“ホームオートメーション(HA)”を実現する「オープン」なシステムだ。

 これまでの記事の反響から、興味深く感じている読者も多いと思われる一方、「鹿児島発の会社」ということで、関東エリアでは、直接話を聞いたり、デモを見たりすることが難しかったが、同社は12月に東京ビッグサイトで開催される「スマートビルディングEXPO」にブース出展、動作デモに加えて、詳細な解説セミナーも行うという(イベントの無料招待券も同社サイトで11日18時まで受付中[サイトでは8日までになっているが受付可能とのこと])。

 そこで今回、スマートビルディングEXPOへの出展内容やCL-SYSTEMの近況などを同社取締役の川畑善之⽒と、営業開発営業部長の秋田 和樹氏に聞いてみた。

 スマートビルディングEXPO出展に際して注力する「認知の向上」や「コミュニティへの足場づくり」や、新機能としてのSlackへの連動など、様々なことをお伺いで来たので、気になる方は是非参考にしてほしい。

Google カレンダー、Slackとも連携――「CL-SYSTEM」の強化が進む

クリティカ取締役の川畑善之氏

――お久しぶりです。前回のインタビューから少し経ちましたが、その後の「CL-SYSTEM」はいかがでしょうか。

[川畑氏]はい、医療関連の学会で発表しました(注:川畑氏は眼科医で、自らの医院をホームオートメーション化している)。医者は割りと新しモノ好きな人も多いので、アピールもかねて反応を見たいと思いまして。大きな学会では毎回ブースを出して、「CL-SYSTEM」を展示しています。

クリティカ営業開発営業部長の秋田 和樹氏

[秋田氏]医師よりもむしろ、医療機器を卸す業者さんからよい反応が得られましたね。

――新機能の実装なども進んでいるのでしょうか。「Slack」との連携ができるようになったと聞きましたが?

[川畑氏]そうですね。最近では、コントローラーのWeb UIを拡張して、それぞれのチャンネルを個別に操作するための画面を実装しました。コントローラーのボタンを押してもチャンネルの操作(機器のON/OFFやLEDの調光)は可能なのですが、癖のある機器をパラメーター調整するときは、Web UIのボタンやスライダーで値を変更できた方が断然楽ですので。

コントローラーのWeb UIを拡張して、それぞれのチャンネルを個別に操作するための画面を実装

RFIDキーで入退室を行うたびに「Slack」へ通知

 それと、RFIDキーで入退室を行うたびに、その情報を「Slack」へ出力する連携機能を追加しました。

 “誰かがカギを開けようとした”といったイベントを「Slack」へ通知するといった感じで利用できます。「Slack」は利用が伸びている注目のサービスなので、是非対応したいと思っていました。

川畑眼科医院のSlack。「業務連絡」などの項目に交じって入退室管理のチャンネルも用意されている

「TankState」で熱帯魚の水槽の水温や流量などをモニター

 この機能はもともと、「TankState」とという自社機器のために開発されました。これは水槽の水温や流量などをモニターをするための機器です。ポンプが壊れて水温上昇や流量低下といった異常が発生したときに通知を行うのですが、今ならメールよりも「Slack」で通知を受け取りたいですよね。

川畑眼科医院には「水槽管理」というチャンネルもある

実装はWebhookを利用、LINEなどとも連携できる?

Slack連携部分のコード。Webhookを使用することでコンパクトなコードになっているという

[川畑氏]けれど、この通知機能は「Slack」だけでしか利用できないというわけではありません。

 内部的には“Webhook”(Webアプリでイベントが発生した際、外部サービスへHTTPSで通知する仕組み)を使っています。メインの用途は「Slack」通知を想定しているのですが、“Webhook”にさえ対応していれば、他のサービスと組み合わせられます。「Slack」ではなく「LINE」と連携させたいといったニーズにも応えられるのではないでしょうか。

――“Webhook”は「TankState」やRFIDキー以外でも使えるのですか?

[川畑氏]コントローラーにも“Webhook”を実装することも検討したのですが、「openHAB2」側でもできることなので実装は見合わせました。

 ハードウェアリソースの制限もありますし、実際、医院では「openHAB2」から「Slack」へ通知するように運用していて、問題なく稼働することが実証できています。

 RFIDキーはMQTTを使って「openHAB2」と対話させず、独立して利用するケースも少なくないので、“Webhook”の実装が必要でした。

 “Webhook”のような既存のWeb標準技術を活用すれば実装の手間が省けますし、他のWebサービスとの連携も容易になります。たとえば、“Google カレンダー”で休日を管理して「openHAB2」のスケジュール機能と連携し、施錠や照明をオートメーションするといったことも可能です(参考:Google カレンダー と openHAB2 との連携)。

Googleカレンダーとの連携も可能

「まずは知ってほしい」からイベント出展実機の動作確認、説明も

――そろそろ機能が充実したところで、普及の手ごたえなどは感じられますか?

[川畑氏]そうですね。最近ではWebサイトへのアクセスもコンスタントに増えてきて、その点では手ごたえを感じています。タイトルページと製品ページへのアクセスが多いので、新たに導入を考えている人が増えているのではないかと思います。

 その一方で、課題も見えてきました。弊社の製品は既存の製品とは少し毛色の異なる製品になっています。たとえば、既存の製品は1つのパッケージとして作られていて、それを導入しさえすれば問題を解決したり、課題を達成できます。しかし、弊社の「CL-SYSTEM」はどちらかというと、ハードウェアとアプリケーションの橋渡しを行うという形をとっています。パッケージとしてなにかできるできるわけではなく、ユーザーに使いこなしていただかなければならない。

 実際、概念的には今まであまりないもので、よくわからないという声を多くいただきました。

スマートビルディング EXPO」はゼロエネルギーやIoTの活用など、次世代のビル設計・工事・管理に必要なあらゆる技術が一堂に会する展示会。直近で開催されるのは、12月11日(水)から13日(金)で、会場は東京ビッグサイトの青海展示棟。入場料は一人5,000円だが、招待券のある方は無料。招待券は無料で請求できる。[クリティカでも招待券の無料申し込みを受付中]

――それが今回の“スマートビルディングEXPO”への出展に繋がっているのですね。

[川畑氏]馴染みのないシステムであれば、それがどのようなものであるかをアピールする必要があります。そのアピールのために出展を考えました。

――なぜ“スマートビルディングEXPO”だったのでしょうか。

[秋田氏]こうした展示会への出展はやってみたいと思い、CEATEC(10月開催)などもリサーチしていたのですが、年内は時期尚早かとも考えていました。しかし、9月に大阪で開催された“スマートビルディングEXPO”へ足を運んだ際、12月の東京開催であれば間に合うので出展してみてはいかがかと誘われまして――開発もようやく一段落がつき、機能が充実してきたところでしたので、来年に持ち越すよりは早く皆さんの反応を見たいと考えました。

“スマートビルディングEXPO”は4回目を数え、開催のたびに規模が拡大しています。そうした伸びしろにも期待が持てます。

[川畑氏]“スマートビルディングEXPO”は会社の事務所やマンションなど、一般家庭よりは少し大きな物件をターゲットにしていますが、そうした物件こそ「CL-SYSTEM」がピッタリといえます。

 「CL-SYSTEM」は戸建ての家庭でも役立つのですが、よりポテンシャルを引き出せるのは事業所や医院などでしょう。「CL-SYSTEM」はオープンな技術の組み合わせですので、業態にあったカスタマイズや事業規模の拡大に合わせたスケーリングが容易です。パッケージ化された製品のように突然販売やサポートが終了してしまうこともなく、運用を自分で行えるならばコストも割安で済むのも魅力といえます。

可搬機材を使い、実際の動作を確認できる

――ブースでは何が展示されていて、どんなことが試せますか?

[秋田氏]弊社の製品を実際に配電盤に組み込んで、照明のON/OFFや調光を試せます。小さなドアもあるので、RFIDキーで入退室し、“〇〇さんが入室しました”といった合成音声で案内するデモも体験できますよ。いわばホームオートメーション化された小さな事務所を再現しているので、実際に「CL-SYSTEM」に触れていただきたいですね

 あとは、弊社の製品をより深く知っていただくためのビデオやパンフレットをご用意しています。

 導入のご相談にものりますので、是非お声がけください。実現までに弊社がお手伝いできること、お客様にやっていただくことをわかりやすくご説明いたします。規模を教えていただければ、どの機材がどれぐらい必要かという見積もりも致します。その場では買えませんが――

13日にはセミナーも開催。川畑氏がビジョンやコンセプト、技術などを説明する予定だ

[川畑氏]あ、すぐに機材を手に入れたい方は、Amazonで購入できますよ(一同笑)

 なお、12月11日(水)から13日(金)まで3日間の会期中、ブースには秋田が常駐し、皆様の対応をいたします。私は3日目しかいられませんが、技術的に掘り下げて聞きたいことがあればお声がけください。

13日(金)の15:00から16:00までは「CL-SYSTEM」に関するセミナーも開きますので、是非ご参加ください。質疑応答の時間もご用意していますので、ご不明な点がございましたらお気軽に。

「囲い込みは考えていない」求む!「協力していく仲間」「活用を考える人」

――ブースやセミナーにはどのような方が来てほしいですか?

[川畑氏]まず第一には、“こういう製品があるんだ”ということを皆様に知っていただきたいね。

IoT関連やスマートホームを扱っている販売店や代理店の方、ビルの建築などでシステム構築に関わっていらっしゃる方などに、こうしたソリューションがあるということを見ていただきたい。

 なかでも一番アピールしたいのは、施主と施工会社の間でプランニングを行う立場の人ですね。

 そうした立場の人に「CL-SYSTEM」という選択肢があることを知って、興味を持ち、使っていただきたいですね。そして、できればプランニングだけでなく、施工後の運用やメンテナンス、増設・改修のコンサルティングといったサポート業務などにもビジネスを広げていっていただきたい。そうした流れへのきっかけを得るのが、今度の“スマートビルディングEXPO”に一番期待することですね。

「CL-SYSTEM」のコンセプトとビジョンを語る川畑氏、「スマートビルディングEXPO」3日目はブースで説明を行うとのこと。また、15時~16時は会場内のセミナーブースでセミナーも実施する。スマートビルディングEXPOの無料招待券申し込みはこちらから

――前回のインタビューでも、ホームオートメーションは“作って終わり”ではなく、そこから始まるのが面白いと電気工事士さんがおっしゃっていましたね。プランニングからサポートまでを包括的に行える、ITエンジニア的なバックグラウンドを持つ人材を集めるのも、これからの「CL-SYSTEM」に不可欠だと思います。

[川畑氏]一人の人間が考えたシステムというのは、その人にこだわりがあったり、思い込みから抜けきれなくて、社会におけるベストな選択とは言い切れないところが絶対出てきます。それは弊社の製品とて例外ではありません。

 なので、いろんな意見を取り入れて、よりよいシステムを作り上げていく必要があります。そして、世の中をより便利にしていきたい。

世の中を便利にしていきたいというのは、ある意味“ナマケモノがより楽をできるシステム”を作り上げたいということで、ITエンジニアの得意とするところです(笑)。一緒に知恵を絞って、協力していただける方を集めたいですね。

 「CL-SYSTEM」という製品に囲い込むことも考えてはいません。類似製品を開発している会社でも構いません。競合するのではなく、同じホームオートメーションという分野を盛り上げていく仲間として協力したいと考えています。そのためのコンソーシアムを立ち上げることも考えているので、ホームオートメーションに興味があって、活用を考えている人にも来ていただきたいですね(注:イベント入場は有料、無料招待券の申し込みはこちら[11日18時まで/サイトでは8日までになっているが受付可能とのこと])。

(協力:クリティカ)