ニュース

IoTビジネス推進のための法人向けセキュリティ対策を強化、製品出荷後も安全性を担保するSOC支援など トレンドマイクロの2019年事業戦略

トレンドマイクロ株式会社代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏

 トレンドマイクロ株式会社は27日に実施した事業戦略発表会にて、2019年は「事業プロセスに沿った組織横断型セキュリティソリューションの提供」「規模・業種に最適なSOC(Security Operation Center)支援」「IoT関連ビジネスの推進強化」に注力することを発表した。

サーバーや業種特有環境に向けたセキュリティソリューションなどを提供

 同社取締役副社長の大三川彰彦氏によれば、法人組織は商品企画からサポートまで一連の事業プロセスにおいて、IoTを活用することで効果的にビジネスを推進できるとした。その一方、製造や医療などの業種では、特有の環境におけるセキュリティインシデント発生率が3割以上に上るという。

 そこで、トレンドマイクロは商品企画やサービス提供の際に法人組織が利用するサーバーやプラットフォーム向けのセキュリティソリューションや、工場など業種特有の環境を保護するOT(Operational Technology)向けのセキュリティソリューション、セキュリティリスクを可視化して対策案を提示するリスクアセスメントなどを提供する。

 ユーザーは、クラウド型セキュリティ技術基盤「Trend Micro Smart Protection Network」や脆弱性発見コミュニティ「Zero Day Initiative(ZDI)」などを活用することで、より効果的なセキュリティ対策ができるとしている。

 また、SOC支援については、サイバー攻撃の事前予防(EPP:Endpoint Protection Platform)と事後対処(EDR:Endpoint Detection and Response)を統合した法人向けの総合エンドポイントセキュリティ製品「Trend Micro Apex One」や、「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」を、マネージドセキュリティサービスパートナー(MSSP)を対象に提供する。製品出荷後も安全性を担保するためのSOC支援も行う。

トレンドマイクロ株式会社取締役副社長の大三川彰彦氏

スマートホーム、スマートカー、スマートファクトリーへのセキュリティ対策にも注力

 IoT関連のビジネス展開に関しては、スマートホームや、スマートカー、スマートファクトリー領域に注力したセキュリティソリューションを提供する。

 IoT機器の普及に伴い、サイバー攻撃に悪用される事例も多く確認されるようになり、これらの機器に対するセキュリティ対策も重要視されるようになってきた。そこで、家庭内にあるPCやスマートフォン、ルーターやスマート家電などのデバイスの脆弱性を悪用した攻撃を防ぐための機能「Trend Micro Consumer Connect」を通信事業者向けに提供する。通信事業者にはセキュリティ状況を把握するためのセキュリティダッシュボードを提供することで、顧客ごとのセキュリティ課題を把握し、それぞれに適したサポートを提供できるようになるという。

 スマートカーの分野では、自動運転やコネクテッドカーに対するサイバー攻撃を検出・防御するセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」を提供する。また、自動車産業におけるノウハウや知見を持ったパートナーとの連携を強化し、アクセルやブレーキなど自動車の走行を制御する車載ネットワーク向けのセキュリティソリューションの開発も行う。

 スマートファクトリーの分野では、産業ネットワークのソリューションなどを手掛ける台湾Moxaとの合弁会社「TXOne Networks」の設立に合意し、産業制御システム用のソリューションを提供する。具体的には、産業用ファイアウォールや産業用IPS、産業用ネットワークの統合管理ツールなど、修正プログラムを適用することが困難な機器を保護するセキュリティソリューションの提供を行う。

27日に行われた発表会では、産業制御システム「SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)」やPLC(Programmable Logic Controller)に対して行われるサイバー攻撃を、仮想パッチとホワイトリスティング機能を備えたトレンドマイクロのサービスで可視化・防御するデモが披露された

IoT時代でインターネットに繋がるデバイス増加、対応するためのセキュリティ人材の不足

 同社代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、IoT時代であらゆるものがつながる“コネクテッドワールド”においては、「サイロ化せず意義のある可視性を提供する包括的なセキュリティ対策が重要」だと述べる。また、「俯瞰的な視点である“One Vision”がサイバーセキュリティの極意(The Art Of Cybersecurity)になる」と述べた。

 同氏によれば、インターネットに接続されるデバイスの増加により、サイバーセキュリティの脅威も高まっているが、それらの問題に対応するためのサイバーセキュリティ専門の人材が不足しているという。トレンドマイクロでは、こうした問題に対して、法人向けのセキュリティソリューションを強化することでIoTビジネスの推進をサポートするとしている。

 なお、チェン氏は同社における人材の確保・育成についても言及。「サイバーセキュリティの専門家はいかに儲けるかということだけではなく、コミットメントが必要。エンジニアとして能力が優れているだけでなく、より優れた人間にもなって欲しい。弊社ではセキュリティ知識・技術を競うイベント“Capture the flag”を開催したり、CSR活動を通じて自分にとって良いことを理解させようとするための取り組みを行っている」と述べた。