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Synology次期NAS用OS「DSM 7.0」、ゼロから再設計で高速化を実現、新写真管理アプリ「Synology Photos」も
2019年10月17日 12:00
Synologyは、NAS用OSの次期バージョン「DSM(DiskStation Manager) 7.0」と関連ソフトウェア、エンタープライズ向けハードウェアなどを披露するプライベートイベント「Synology 2020 Tokyo」の開催にあわせ、プレス向けに新製品&ソリューション発表会を開催した。
Synology Japan株式会社代表取締役社長のJones Tsai(蔡明宏)氏は、創業後20年のSynologyの歩みについて、DSMによってアプリケーションサーバーとしてのNASの機能を拡張し、プライベートクラウドソリューションとしても発展させてきたものと位置付けた。
そして今後について、DSMとアプリケーション、クラウドサービスがシームレスに統合するというビジョンを語った。
「DSM 7.0」でログインが高速化、QuickConnectの設定も容易に
β版が年内、正式版が2020年第1四半期にリリース予定となっているDSM 7.0の変更点について、Synologyのテクニカルサポート部の内山裕子氏は「ユーザーエクスペリエンス(UX)」「キャッシュテクノロジー」「リソースモニタリング」の3つの側面から紹介した。
ここでのユーザーエクスペリエンスは、主に“スムーズさ”を意味しており、具体例として、DSM 6.2で14秒かかっていたログインが、DSM 7.0では3.67秒へと高速化されるデモを披露。DSMはゼロから再設計されており、低画質なものの後に高画質な背景画像を表示する工夫も盛り込まれている。
また、アプリパッケージの起動も同様に高速化されている。マウスポインターをパッケージに持っていったときにバックグラウンドで読み込み処理を開始するという。
インターネット越しにNASへ接続するためQuickConnectの設定も簡単になる。従来は、最初にブラウザーからアクセスした際に、SSL証明書のエラーが表示されてしまっていたが、DSM 7.0では、QuickConnectの登録と同時にDDNSの登録やLet's EncryptのSSL証明書申請までがまとめて一発で設定されるという。
そのほか、Synologyアカウントでログインしていれば、NASの設定を自動でクラウドバックアップ可能になった。NASのコントロールパネルから瞬時にリストアできるとのことだ。
SSDキャッシュを最適化、無停止での追加も可能に
DSM 7.0の2つ目の変更点は「キャッシュテクノロジー」、つまり、NASユーザーの2割が使っているという、SSDキャッシュの最適化だ。
DSM 6.2は、ファイル単位でSSDへキャッシュを行っていたが、DSM 7.0では64KBのブロック単位でキャッシュを扱うようになる。これにより、例えば動画などの巨大なファイルの一部分だけが頻繁にアクセスされるような場合などに、キャッシュの効率が改善される。
また、キャッシュする対象も、直近のアクセス情報だけでなく、複数の材料から判断するようになる。キャッシュ容量についても、複数のパラメーターから、より高精度の提案を行うという。
SSDキャッシュのマウント/アンマウントも、サービスを停止せずにできるようになる。内山氏は、稼働中にNASの設定画面から、数ステップの手順でSSDキャッシュを追加してマウントするまでを実際にデモしていた。
さらに、ファイルを管理するメタデータをSSDキャッシュ上に配置することで、コールドデータへのアクセスを高速化。これにより、SSDキャッシュなしの環境で15分51秒、SSDキャッシュありでも4分57秒かかっていたデータアクセスが、1分11秒へと短縮されるという。
そのほか、インラインデータの圧縮アルゴリズムをLZOからZSTDへ変更したことで、圧縮の効きにくい画像データなどを除き、高い圧縮率を実現するという。
リソースモニターの表示が直観的に
3つ目の変更点となる「リソースモニタリング」については、「リソースモニターが、1つの画面で、直感的にさまざまな原因を調査できる」(内山氏)ようになるという。
ネットワーク使用率のグラフは、表示している時間の範囲を変更して、トラブルが発生した時間帯を拡大できるほか、カーソルを合わせるだけでその時点の数値を確認できる。
表示を切り替えてその時間のログを確認すれば、例えばそのときだけファイルの使用率が跳ね上がっていることなどが確認できるわけだ。
新しい写真管理アプリ「Synology Photos」
DSM 7.0では、写真管理・共有機能が大幅に変更される。これまでの「Photo Station」と「Moments」の2つが、「Synology Photos」に統合されるのだ。OSをDSM 7.0へアップグレードした時点で自動的にPhoto StationやMomentsからマイグレーションされるという。
これは従来、写真をフォルダーベースで管理するPhoto Stationに対し、Momentsはタイムラインで管理するようになっていることに対するユーザーからのフィードバックに基づくものだ。
Synology Photosでは、画像をタイムラインでもフォルダーでも一覧表示可能になったほか、NASへ写真を追加した後のインデックス作成時間も短縮。SMB経由で1000枚のJPEG画像をアップロードした場合、従来の3時間から1時間になるという。また、3MBの画像のサムネール作成時間も、478msからおよそ3分の1となる160msへ短縮されるという。
さらに、写真も簡単に共有可能になった。作成したアルバムにNASに登録されたユーザーを招待するだけで共有できることに加え、ユーザーを問わずに共有できる「オープンシェア」の機能も追加される。共有設定では、「パブリック」を選べば公開される。パスワードや有効期限も設定した保護も行える。
さらに、フィルタリングについても、日付や位置情報に加え、カメラの機種や露出時間、レンズ口径といった項目でも画像を絞り込めるようになる。
Synology Driveのクライアントが「オンデマンド同期2.0」に、macOSにも対応
プライベートなクラウドストレージ機能の最新版「Synology Drive 3.0」については、セールススペシャリストの阿部光太郎氏が紹介した。
刷新された管理者コンソールでは、情報漏えいなどの問題を事前に防ぐため、外部共有の管理でユーザーが共有リンクを作成する際のルール(ポリシー)を強制できるようになった。
Synology Driveのクライアントも「オンデマンド同期2.0」へとアップデート。ユーザーに権限のあるファイルやフォルダーを選んでおかなくても、PCに自動で同期されるようになったほか、Windowsに加えてmacOSにも新たに対応した。
Synology NASとSynology C2によるハイブリッドクラウド「Synology Hybrid Share」
Synology NASのクラウドバックアップ先として提供されている「Synology C2 Public Cloud」についても、単にバックアップ先としてだけでなく、新たにデータの管理や共有のための場としても用途が広げられた。
このSynology NASとSynology C2をつなぐハイブリッドクラウドの新ソリューションが「Synology Hybrid Share」だ。Synology C2上に共有フォルダーを作成して、同一LAN内にあるSynlogy NASのドライブのように利用できるという。
Synology Hybrid Shareを単一拠点で使う場合には、NASの容量が不足するようなケースで、Synology C2の領域をNASの領域の一部として使えるという。なお、頻繁に使用するホットデータはローカルにキャッシュされる。
Synology NASのコントロールパネルで、共有フォルダーを作成するときに「HybridShare」を選ぶと、Synology C2にも共有フォルダーを作成するため、ほかのSynology NASからも共有できるほか、LAN内のPCからはSMB/AFP/NFSなどで高速にアクセスできる。
従来であれば、本社と複数の支社などの多拠点でNASを共有した際に、本社の回線がボトルネックとなってしまっていた。Synology Hybrid Shareでは、C2クラウドにデータが置かれ、これが各拠点へ同期される仕組みのため、回線がボトルネックとなるのを避けられるわけだ。
エンタープライズ向けなどのハードウェアも紹介
Synologyのハードウェアについては、エンタープライズ向けのモデルなどが発表された。
オールフラッシュのFSシリーズでは、既発売のエントリーモデル「FS3400」とハイエンドモデル「FS6400」の中間にあたる「FS3600」が今後登場するほか、SAS対応のSAシリーズでは「SA3400」に続くハイエンドモデル「SA3600」が2020年初頭に発売予定とのことだ。
また、デュアルコントローラーのiSCSIモデル「UC3200」は、2019年末にリリース予定。2020年初頭には、同じくデュアルコントローラーを搭載するアクティブパッシブ構成モデル「SA3200D」もリリース予定とのことだ。
また、4Uサイズの筐体に60台のHDDを搭載可能で、最大960TBをサポートする「HD6400」も発表された。今後はファイバチャネルを採用したFC SANストレージを手掛けることも表明された。