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Synology、次期NAS用OS「DSM 7.0」の新機能を明らかに、ベータ版を2019年上半期に提供

Synology NASの新製品が展示された

 Synologyは18日、プライベートイベント「Synology 2019 Tokyo」をベルサール秋葉原(東京都千代田区)で開催。前日にはプレス向け説明会を開催し、2019年上半期にベータ版の提供を開始予定の次期NAS用OS「DSM 7.0」で実装予定の新機能を解説した。

次期NAS用OS「DSM 7.0」などの新機能

 同社のNAS用OSであるDSMは、これまで2~3年に1回のメジャーアップデートを無償で提供している。かなり古い製品を含む80以上の製品で、最新のDSMを利用できる点もユーザーフレンドリーだろう。

 Synologyは従来から、OSを含むソフトウェア開発に多くの人的リソースを費やしているが、最新OSであるDSM 7.0の開発では「操作性の向上、UI設計を重視している」(Synology Japan株式会社セールスマネージャーの田野久敏氏)という。このほか、今回、以下のような新機能が明らかにされた。

  1. UIデザインの刷新で操作性を向上
  2. データの安全性や運用管理も向上
  3. Cloud Station SuiteからSynology Driveへ
  4. Active Backupの重複削除、次期DSMでは1万台のNASを一括管理可能に
Synology Japan株式会社セールスマネージャーの田野久敏氏

UIデザインの刷新で操作性を向上

 新機能となる「ガイド付きデザイン」では、より快適な操作を実現している。また、DSM 6.2では、サービスが異なってもログイン画面は同じものだったが、DSM 7.0では、サービスごとに異なるログインページを採用する。

DSM 6.2のログイン画面
DSM 7.0のログイン画面の一例

 また、OSの発行するエラーコードは、対策や実行すべき内容を探すのは非常に手間がかかるものだった。このため、DSM 7.0では、数千ものガイド情報を作成。何がどこで起きてどう対応するのかを直感的に示す。こうしたUIデザインの変更で、「運用リスクを結果的に減らせる」とした。

 なお、こうしたDSM 7.0のUIデザインは今後、モバイルアプリやルーター用OS「SRM」にも採用していくという。

 そのモバイルアプリ「DS Finder」では、DSM 7.0から初期セットアップが可能になる。NASにはQRコードでログインして設定でき、導入の敷居がより低くなる。

データの安全性や運用管理も向上

 RAID 1や5のリビルドに要する時間を削減する特許申請中の「RAIDクイックリビルド」では、約4割程度の領域を使用している環境で、RAID 5のリビルドを従来の8時間から3時間へ短縮するという。

 さらに、「S.M.A.R.T.などの数字の羅列ではなく、これまで使われた300万台のステータスをもとにした機械学習による」(田野氏)HDD予測検知の機能も提供する。Seagateの提供する「IHM」などと組み合わせることで、より高精度な予測検知も行えるという。

 また、HDD交換・即時データコピーの新機能では、不具合のある可能性のあるHDDのデータを新しいHDDにコピーし、終わると自動的に切り離す機能により、安定した運用を継続できるとした。

 DSM 7.0では、より現場に近いユーザーに管理業務を委任して最適化できる権限委任も可能になる。また、新パッケージアプリ「Directory Server For Windows Domain」により、Active Directory環境からSynology NASへのマイグレーション機能も今後提供される予定だ。

 Windows ServerのCAL(クライアントアクセスライセンス)を購入せずにADを運用できるため、Windows Server 2012 R2/2016のCALを購入せずに、AD環境の構築が可能になる。これにより、サポートの終了が迫っているWindows Serverからの移行などのニーズにも対応できるとした。

 ドメインコントローラーの冗長化も今後提供予定だ。これにより「多拠点運用時に、近くにある読み取り専用のコントローラーでAD認証を完結できるニーズに応えられる」としたほか、ユーザーの登録や変更は現場近くのサブ管理者がオンデマンドで対応でき、管理コストやクライアントライセンスコストの最適化が実現するとした。

Cloud Station SuiteからSynology Driveへ

 NASとして最も利用されるファイルサーバーの機能は、安定していて高速でもあり、SMBなどで利用されることが多い。しかし、テレワークの普及などにより、VPN接続しないと社内LANに接続できなかったり、Windows以外にAndroidやiOSの端末で資料を閲覧・編集することも多かったりする。また、利用端末の増加により、どのデータが最新のものかが分からなくなってしまうこともある。

 Synology Driveは、すでに提供されているパッケージアプリで、ウェブポータルにより自社管理のクラウドストレージとして、リモートからNASのファイルにアクセスでき、共有リンクの作成なども容易に行える。ファイルにタグ付けをしたり、バージョンの履歴を管理することも可能だ。

 また、開発中の機能として、「Synology Drive」でファイルストリーミング機能も提供予定だ。これは、Microsoftの「Windows Cloud Filter」を利用し、OneDriveにおける「ファイルオンデマンド」の機能をNASで利用可能にしたもの。

 例えば、PCからNASへバックアップしたデータについて実態はなくともディレクトリ構造だけを表示し、必要なときに必要なデータだけダウンロードする仕組みとなる。

 これにより、SSDの普及などで容量が不足気味のPC上で、ストレージ領域の消費を抑えられる。さらに、ファイルの増分のみ同期する仕組みで、例えば100MBのファイルを編集しても、変更のあった一部だけをNASとやり取りする。そのため、従量制ネットワークを使用している環境でも、安心して利用できる上、同期もより高速になるとした。

 なお、現在は別途提供しているバックアップ機能がSynology Driveに統合され、スケジュールバックアップもサポートするほか、PC電源のシャットダウンも可能になるという。これにより、Cloud Stationが提供しているバックアップ周りの機能をすべてSynology Driveに統合されることになる。

Active Backupの重複削除、次期DSMでは1万台のNASを一括管理可能に

 ビジネス向けのバックアップ機能である「Active Backup Suite」の正式提供が、6月より開始されている。VMやサーバーに加え、Office 365やGsuiteのバックアップにも対応している。

 このベータ版が、台湾の資生堂で半年間導入された事例では、NASにPC10台、サーバー3台、VM2台を一括でバックアップした環境で、重複排除機能により、それまで消費していた66TBの容量を、およそ4分の1となる17TBにまで削減できたという。

 ほかの事例では、十数台のVMを数クリックでスムーズにバックアップ/リストアできたという。こうしたリストアの作業は権限があればユーザー自身が行えるため、管理者の負担を抑えられるほか、ライセンス費用が掛からない点もメリットになるとした。

 また、フランスのグループ企業であるKRYS GROUPでは、フランス各地の拠点に1350台のDS215を配備し、地区ごとにグループ分けして一括管理しているという。

 DSM 7.0では、こうしたCMS管理も重要視しており、CMSのプログラムをソースコードから改善。今後は、1万台ものNASを1台のNASで管理可能になる予定とのことだ。

世界で20%、国内では40%の成長率を記録「今後も定期的アップデートで多くの価値を提供」

 本社である台湾Synology CEOのDerren Lu氏は、SynologyのNASは全世界で累計600万台以上が販売されていることに触れ、「製品の成熟度がユーザーに認められている」と述べた。

 昨年度には、グローバルで20%、うち、ラックマウント型は30%の成長率を記録。これは、「より多くの企業への導入が進んでいることを示している」としたほか、国内に限れば成長率は40%に達しており、今年4月には日本法人であるSynology Japan株式会社を設立している。

台湾Synology CEOのDerren Lu氏

 Lu氏は、「安定性」「安全性」「サービス」を重視しているとし、「ソフトウェアの改善と機能追加の取り組みは止まらない」と述べたほか、日本を含む世界で150人のテクニカルサポートチームを展開していることも紹介。

 DSM 6.2へのアップデートでは数十万のコードを修正・追加したほか、数多くの自動テストや本番環境でのテストに加え、7万1000台のNASが参加したDSM 6.2のベータテストなどを通じて、高い信頼性も実現していることに触れ、「今後も定期的アップデートで多くの価値を提供していく」とした。