ニュース

100を超えるグループ会社や顧客組織とのコミュニケーションも円滑にできる「Slackコネクト」最新事例を紹介

新機能「クリップ」と「ハドルミーティング」も解説

 セールスフォース・ジャパン傘下のSlackは7月27日、Slackの新機能や、社外メンバーとの連携に使われる機能「Slackコネクト」に関する説明を行った。

 なお、会見の冒頭では、セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏が、7月26日深夜に発生した不具合について陳謝。「一部のユーザーに対して、スレッドの読み込み、メッセージの送信ができない事象が発生した。2時間弱の短い時間ではあったが、不便をかけたことをお詫びする。現在は復旧している。引き続き、Slackを利用してほしい」と述べた。

外部組織とも円滑なコミュニケーションを可能にする「Slackコネクト」

 Slackコネクトは、社外に広がるコミュニケーションに適したサービスであり、パートナー企業やグループ企業などへとコラボレーションの枠が広がる職場環境において、外部組織も一体となって、プロジェクトを推進し、業務効率の向上できる機能であると説明。Slackコネクトが利用できるSlackの有償ライセンス数は、2022年5月実績で、国内においては、前年同月比21%増になっているという。

 セールスフォース・ジャパン Slack マーケティング本部プロダクトマーケティングディレクターの伊藤哲志氏は、「Slackコネクトによって、社内の情報共有を社内で安全に取り扱ったり、スピーディな共同作業を行ったり、より緊密なコミュニケーションを行うというSlackが持つメリットを、社内だけでなく、社外のパートナーや顧客とも利用できるようになる」とした。

セールスフォース・ジャパン Slack マーケティング本部プロダクトマーケティングディレクターの伊藤哲志氏

 社外のパートナーや顧客と連携する手段としては、従来からゲストとして招く機能が用意されていた。これは、個人ユーザーやまだSlackを使っていないユーザーを特定のチャンネルに招待し、そこにだけ出入りができるゲストアカウントを提供する仕組みとなっていた。

 これに対して、Slackコネクトでは、双方の企業でSlackを利用している場合、特定のチャンネルをつなげることで、お互いのSlack環境に留まりながら、他社とのコラボレーションが行える。前身となるShared Channelsでは1対1での接続であったが、それを20組織まで連携ができるように拡張。現在では、最大で250組織との連携が可能になっている。

 「ゲストで招待する手法は、個人が対象だったり、組織としてつながる前段階であったり、特定のチャンネルのみにアクセスしてもらう場合にはよかった。シングルチャンネルゲストでは、ひとつの有償アカウントで5個までを無償利用できる。だが、ゲスト招待でマルチチャンネルゲストとした場合には、ゲストにも有償アカウントと同様のコストがかかる。組織同士がコラボレーションするという段階に入っているのであれば、Slackコネクトが適している。追加費用なしで利用できる」などと述べた。

 また、Slackコネクトには、組織同士のチャンネルがつながる前に、担当者同士が調整などを行うためのSlackコネクトDMを用意しており、「コミュニケーションを行いたい相手に、すばやくメッセージを送信でき、調整後にしっかりとつなげるといった段階的な運用ができる」とした。

Slackコネクトで外部組織のワークスペースと連携し、特定のチャンネルをつなげて利用できる
特定のチャンネルをつなげる「Slackコネクトチャンネル」のほか、特定の個人でDMによるコミュニケーションができる「SlackコネクトDM」も提供

 さらに、Slackコネクトでは、アプリケーションやシステムとの連携が可能であり、チャンネル上に用意したワークフローを全員が利用できるようにしたり、ワークスペースにアプリがインストールされていれば、連携アプリが利用可能になったりする。

コミュニケーションを助ける新機能「クリップ」と「ハドルミーティング」

 Slsckに新たに追加された機能の1つが「クリップ」である。音声やビデオなどの短いコンテンツをSlack上で録画し、チャンネルに投稿できるもので、この機能はSlackコネクトでも利用が可能になっている。「テキストのコミュニケーションに加えて、短い動画による情報共有が可能になる」という。非同期型であるため、時差がある相手とのコミュニケーションにも適しており、43%のユーザーが、時差がある相手とのコミュニケーションに利用しているという。

「クリップ」は、音声、ビデオなどの共有が容易になる機能

 2つめは「ハドルミーティング」である。Slack上にいる相手と音声でコミュニケーションできる機能で、突発的なブレインストーミングの場を再現することを目的としているという。気軽にやりとりができるオーディオファーストの同期型コミュニケーションツールと位置づけられている。

 「Slack上に相手がいることを確認できれば、音声でコミュニケーションを開始できる。これは、オフィスで、相手の席に行って『ちょっといい?』といった会話ができるような環境をデジタル環境上で実現したもの。Slackコネクトでも利用できる機能であり、パートナーや顧客とも同様の会話ができる。相手先に訪問しなくてはいけないようなやりとりも、スピーディに行える」という。

「ハドルミーティング」はオフィスで話しかけるような感覚で簡単に音声通話ができる

 Slackでは、2022年6月に開催した年次イベント「Frontiers 2022」において、ハドルミーティングの機能をさらに進化させることを発表しており、ビデオ機能の追加のほか、複数人での画面共有や描画、カーソル操作、絵文字やリアクション、ステッカーの利用も可能になる。

 「Slackコネクトと新機能を利用することで、コミュニケーションのメインにSlackを置いて、ビジネスを進めることができる。Slackを使っていれば、ビジネスが前に進むという環境が実現できる」と述べた。

 一方、Slackの佐々木カントリーマネージャーは、「Slackはオンラインゲームを開発していた2人の創業者が、2014年に立ち上げた企業である。Slackを愛して使っているユーザーの声を中心に強化を図り、サービスを充実してきた。2017年には日本語版の提供を開始し、2018年には日本のオフィスを開設した。それ以来、日本語の検索精度を高め、ローカルに向けた開発強化を進めてきた。2021年にはセールスフォースによる買収が完了した。コロナ禍においては、数々の機能を追加している段階にある」と述べた。

セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏

「誰もが成果を出せるデジタル上の職場環境」であることがSkackの価値

 また、Slackでは、「Digital HQ(会社を動かすデジタル中枢)」を提唱していることを示し、「従業員同士がしっかりとつながること、顧客やパートナーとつがること、システムをつなげ、業務を推進するための支援に取り組んでいる」と述べた。

 Digital HQは、「HQ」が示す本社という意味ではなく、「場所や時間を問わずに、誰もが成果を出せるデジタル上の職場環境」を示しているという。

 Slackの伊藤氏は、「Digital HQを支える鍵になる機能がチャンネルである」と、Slackのチャンネルおよび、それを拡張するSlackコネクトの位置づけを説明した。「仕事を進める際のトピックスやプロジェクトごとにチャンネルを用意でき、まるでドアを開けっぱなしにした、ガラス張りの会議室のような環境を作ることができる。誰もが会議室で話している様子を見ることができ、興味があれば参加できる。だが、機微情報に関しては強固なセキュリティで保護し、メンバーだけが入れるプライぺートチャンネルも用意できる。これを使い分けることでオープンとクローズのコミュニケーションを両立できる。Slackコネクトでは、このチャンネルの仕組みを社外のパートナーに広げることができるものである」。

100を超えるグループ会社をつなぐ、GMOインターネットの活用事例

 Slackコネクトを中心とした、最新の活用事例も紹介された。

 GMOインターネットは、2015年から社内コミュニケーションの標準を、メールからチャットへと移行。2021年8月からSlackを導入しているという。

 GMOインターネットグループSV・シナジー推進室室長の佐藤崇氏は、「既存のチャットツールの機能には不満はなく、ITスキルが低い社員でも使いやすかった。だが、その一方で、社内では、数多くのツールが利用されており、ブラウザー上には多くのタブが並び、業務が煩雑になっていた。Slackで、こうした課題が解決できる。Slackに注目したのは、チャットツールとしての機能ではなく、アプリやツールなどを一気通貫につなぐメッセージングプラットフォームとしての役割を評価した点にあった」とする。

GMOインターネットグループSV・シナジー推進室室長の佐藤崇氏

 また、同社グループ全体としてのSlackの導入についても触れた。GMOインターネットグループでは、「梁山泊経営」と呼ぶグループ経営の手法を導入。グループ各社の主体性を尊重した経営を推進している。これはITツールも、それぞれの事業にあわせて最適なものを選定することにつながっていた。

 GMOインターネットグループは、上場会社10社をはじめとした107社で構成されており、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせて、2020年1月27日から、いち早く在宅勤務を実施した経緯がある。それにあわせて、グループ共通のコミュニケーションツールの導入を決定したという。グループ全体では、Slack導入率は10%に留まっていたが、現在では約80%のグループ企業がSlackをメインに採用。全ての企業がSlackを利用できる環境にあるという。

 「グループ各社でSlackを導入したものの、契約プランや運用ポリシーは、各社ごとに異なり、Slackの視点から見れば、ワークスペースは他社扱いと同等であった。そこでSlackコネクトの機能を活用。各社のSlack管理者がチャンネルをつくり、Slackコネクト接続時の標準手順も策定した。Slack コネクトの機能拡張により、250社まで接続できるようになり、グループ会社の連携が強化される。グループ横断でSlackコネクトのチャンネルを数多く作り、グループ内のコミュニケーションの強化を図っている」と述べた。

Slackコネクトの上限が250まで拡大したことで、100を超えるグループ企業間での接続が可能になった
現在、グループ企業の約80%のがSlackをメインに採用。また、全ての企業がSlackを利用できる環境にある

200以上の顧客とSlackでつながる、クラウドネイティブの活用事例

 クラウドネイティブでは、2017年5月の創業時からフルリモート環境で事業をスタート。それに最適なツールとして、Slackを創業とともに導入している。

 クラウドネイティブ マーケティングディレクターの神前翔三氏は、「Slackを中心にしてUX(ユーザー体験)とEX(顧客体験)を高めている。Slackに依存することで会社の価値を高めることができる。Slackコネクトによって、外部とのコミュニケーションを強化でき、顧客への対応を『全員野球』で行える。すぐにプロジェクトを開始できる環境を作ることができるとともに、エンジニアそれぞれの専門知識が活用でき、スピードと知見の深さを提供することができる」とする。

クラウドネイティブ マーケティングディレクターの神前翔三氏

 情報システム部門へのコンサルティング事業を行っているクラウドネイティブでは、全てのエンジニアがSlackのチャンネルを通じて顧客とコミュニケーションを行っており、現在、450以上のチャンネル、200以上の顧客とつながっているという。

 「Slackを通じて顧客から質問があったら、そこからタスク管理SaaSであるasanaと連携し、タスク起票、メンバーアサイン、タスクの完了までを管理できる。起票指示を絵文字で行ったり、転記がなくなり、タスク漏れも極小化でき、顧客とのコミュニケーションにかかる1人あたりの削減時間は週1.8時間に達している」という。

 また、社内でのSlack利用については、97%をパブリック、3%がDMであり、プライベートはほぼ0%だという。社内では3万366個のカスタム絵文字を用意。ラーメンチャンネルなどの仕事以外のコミュニケーションにも活用しており、社員1人あたりの1日のメッセージ数は75通に達している。

 また、「time(分報)」という日報や週報に代わる仕掛けを用意し、これをもとにお互いが支援しあえる環境を作るとともに、出退勤アプリとの連携により、業務内容を管理することもできる。「ハドルミーティングの利用も増加しており、Zoomを使うほどでもない対話や、録画されない会話ができるといった用途で利用されている。社員同士が対話できる仮想オフィスを用意したが、ハドルミーティング以降、それが利用されなくなった」という。

 さらに、「Slackさえ見ていれば業務が進むという環境を作った。入金状況の確認などのバックオフィスの情報、社内における各種申請や通知、基幹データからの顧客情報の呼び出しなども可能になっている。情報を人が集まるSlackに集約し、Slackで完結するシングルUIを実現している。日常の業務から雑務までSlackで完結できる。1週間で1人あたり9.6時間の削減が可能になったと試算している」と述べた。

200以上の顧客とSlack上でコミュニケーションしている
「time(分報)」や出退勤アプリとの連携で、社内メンバーの状態が常に分かる