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「AI白書 2023」発売、生成AIの利用事例など最新動向を掲載

 株式会社角川アスキー総合研究所は5月10日、人工知能の最新動向を解説する「AI白書2023」(AI白書編集委員会 編)を発売した。紙書籍版の定価は5500円(A4判 416ページ)で、電子版も発売中。

 2017年以来、人工知能の技術、企業の利用事例、海外事情、関連する制度政策などを網羅的に紹介しているシリーズ。2023年版では、「ChatoGPT」などの生成AIの現状とこれから、関連の技術や制度などを多角的に解説した内容となっている。

 生成AI企業トップへのインタビューや、大規模言語モデル(LLM)の技術、AIをめぐる著作権や契約、G7でも話題となるAI原則に関わる議論の紹介、といったテーマや、アンケート調査や企業へのヒアリングをもとにしたAIの企業実装事例、さらにはメタバースやスマートシティにおけるAIの動向なども掲載している。詳細な内容は以下。

第1章「生成AI、AI原則と利用」

 ChatGPTなどのトピックス、Stability AI、アドビ株式会社のインタビューを掲載。GPAIに関する座談会では、AI規制・法制化の動き、AI原則の方向性を議論。

  • 国内のAIベンダー企業 AI開発実態調査サマリー
  • 対談:宇井吉美(株式会社aba代表取締役CEO)、中島秀之(AI白書編集委員長、札幌市立大学学長)
  • GPAI(Global Partnership on AI)座談会:市川類(一橋大学イノベーション研究センター教授)、実積寿也(中央大学総合政策学部教授)、羽深宏樹(京都大学大学院法学研究科特任教授)、原山優子(東北大学名誉教授)、江間有沙(東京大学未来ビジョン研究センター准教授)
  • 生成AIと大規模言語モデルの革命
  • インタビュー:Stability AI Japan、アドビ株式会社
  • OpenAIのCEOが語る 「DALL-E 2」から学んだこと、これからのこと
  • GPT-4へ試行錯誤続くOpenAI 「ChatGPT」でも残る課題
  • 「予想外のヒットに驚いた」 ChatGPT開発者が語る「革命」の舞台裏

第2章「技術動向」

 AIの歴史、開発・運用の基盤、MLOps、大規模言語モデルと画像モデル、倫理・品質など、AI技術の概要と最新動向をまとめている。

  • AIの基本技術(AIの歴史、深層学習の代表的な応用分野、統計的機械学習、ニューラルネットワーク/深層学習、近年の深層学習)
  • 開発・運用の基盤、手順、MLOps
  • 大規模言語モデルと画像モデル(Transformerの登場によるネットワークの発展、大規模言語モデルの登場、大規模モデルの画像への応用、言語モデルと画像モデルの組み合わせ、さまざまなマルチモーダルな応用)
  • 倫理、品質、標準化

第3章「利用動向」

 デジタルツイン、責任あるAI、インフラ、防災、防犯、ものづくりなど、国内企業の取り組みを紹介。また、国内のAIベンダー企業に、AI開発の実態調査を実施。中国企業における開発・利用動向、メタバースゲームThe Sandboxへのインタビューも掲載している。

  • 国内企業における開発・利用動向(デジタルツイン、責任あるAI、健康・医療・介護、農業・漁業、インフラ・防災・防犯、交通インフラ・物流、ものづくり、材料科学等、文化産業等)
  • 中国企業における開発・利用動向
  • インタビュー:The Sandbox
  • 国内のAIベンダー企業 AI開発実態調査
  • 参考資料:国内のAIベンダー企業一覧

第4章「制度政策動向」

 AIに関する原則・ガイドライン、制度改革、国内・海外の政策動向を解説。画像生成AIをめぐる著作権、海外のAI知的財産関連動向にも言及する。

  • AIに関する原則・ガイドライン等
  • 制度改革(モビリティ、データの管理・流通、知的財産:画像生成AIをめぐる著作権問題、海外のAI知的財産関連動向)
  • 国内の政策動向(統合イノベーション戦略、同推進会議による政府横断の取り組みとAI戦略、基盤省庁・出口省庁の方針と動向)
  • 海外の政策動向(米国、EU、英国、ドイツ、フランス、中国)

第5章「人材育成、AI開発と契約」

 デジタルスキル標準などAI人材育成施策・事業を紹介し、AI開発における契約の諸問題とアジャイル・ガバナンスを取り上げる。

  • 人材育成(デジタルスキル標準、AI人材育成施策・事業等)
  • AI開発と契約(品質:性能保証、検収、契約不適合、知的財産権、責任)
  • 法とアジャイル・ガバナンス(「テスラ死亡事故裁判」から考える、AI社会の法制度のゆくえ、「人間中心」とは何か:「人間」概念を再考するロボットの法と倫理)

コラム

 編集委員によるロボットとAIの課題と最新技術、メタバース、スマートシティ、DXに関するコラムを掲載。

  • ロボットにTransformerを用いた新しい試み:Robotics Transformer(RT-1)(浅田稔)
  • ロボットとAIの現在の課題と最新技術(石井信)
  • 空間知能、メタバース、スマートシティによる新しい社会の仕組み(三宅陽一郎)
  • 人とAIの協調がビジネスをトランスフォームさせる(岡田陽介)
  • 生成AIの衝撃(松尾豊)

 AI白書編集委員会は、次のメンバーで構成される。

委員長

中島秀之氏:札幌市立大学 学長

委員長代理

浅田稔氏:大阪国際工科専門職大学 副学長、大阪大学 特任教授・名誉教授

委員

石井信氏:京都大学大学院情報学研究科 教授、ATR脳情報解析研究所 所長
江間有沙氏:東京大学未来ビジョン研究センター 准教授、一般社団法人日本ディープラーニング協会 理事
岡田陽介氏:株式会社ABEJA 代表取締役CEO兼創業者、一般社団法人日本ディープラーニング協会 理事
松尾豊氏:東京大学大学院工学系研究科 、人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授
三宅陽一郎氏:東京大学生産技術研究所 特任教授