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正社員のテレワーク実施率が22.2%に低下、2020年4月以降で最低水準~パーソル総合研究所調べ

 株式会社パーソル総合研究所は8月15日、「第八回・テレワークに関する調査/就業時マスク調査」の結果を発表した。テレワーク実施状況のほか、「つながっている時間」(勤務時間だけではなく、勤務時間外でも業務連絡に応対可能な時間)についての集計も行っている。

 この調査は、7月13日~18日にインターネットを用いて実施。勤務先の従業員が10人以上の全国の20~59歳の就業者が対象。雇用形態別では、正規雇用が2万4644人、非正規雇用が5968人、公務員・団体職員が302人。

 テレワーク実施率(正社員ベース)の推移を見ると、2020年3月に行われた第一回調査では13.2%だったものが、4月の第二回調査で27.9%に上昇。その後、11月の第四回調査で24.7%まで下がったが、2022年2月の第六回調査で再び28.5%にまで上昇していた。今回の調査では22.2%に下がり、2020年4月以降で最低水準となった。

従業員のテレワーク実施率推移(正社員ベース)

 雇用形態別のテレワーク実施率は、正社員(n=2万4644)が22.2%、契約・嘱託社員(n=3368)が12.4%、派遣社員(n=2365)が16.4%、パート・アルバイト(n=235)が9.8%、公務員・団体職員(n=302)が12.9%となっている。

雇用形態別のテレワーク実施率

新型コロナ感染症「5類」移行前後でテレワーク状況に変化は?

 新型コロナウイルス感染症は5月8日から、感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行した。今回の調査結果には、5類移行前・移行後の比較もある。

 正社員(n=2万4644)における5類移行前のテレワーク頻度は、「実施していない」が70.8%、「1週間に1日未満」が6.7%、「1週間に1日程度」が4.9%、「1週間に2~3日程度」が8.6%、「1週間に4日程度」が3.5%、「毎日(出社無し)」が5.4%。また、「平均テレワーク日数(週)」は0.71回だった。

 一方、5類移行後は、「実施していない」が75.1%、「1週間に1日未満」が5.6%、「1週間に1日程度」が4.7%、「1週間に2~3日程度」が6.9%、「1週間に4日程度」が2.7%、「毎日(出社なし)」が5.0%。また、「平均テレワーク日数(週)」は0.61回だとしている。

 5類移行後の出社者数は、「かなり増えた」が9.4%、「少し増えた」が15.2%、「変わらない」が68.6%、「少し減った」が3.2%、「かなり減った」が3.6%。

5類移行前後でのテレワーク状況の比較

 テレワーク非実施者(n=1万9167)におけるテレワーク非実施理由(複数回答可)は、「テレワークで行える業務ではない」が40.4%、「テレワーク制度が整備されていない」が33.7%、「会社がテレワークに消極的で、実施しにくい」が10.8%、「テレワークのためのICT環境が整備されていない」が9.3%、「テレワークする必要性を感じていない」が8.4%――と続いている。

テレワーク非実施理由

大企業でもテレワーク実施率が低下、2022年2月がピーク

 2023年7月現在の企業規模別テレワーク実施率(正社員ベース)は、従業員10~100人未満で12.5%、100~1000人未満で20.4%、1000人~1万人未満で31.3%、1万人以上で35.4%だ。従業員規模の大きい企業ほどテレワークの実施率が高いが、2022年2月をピークに低下してきている。

企業規模別テレワーク実施率推移

 地域別テレワーク実施率(正社員ベース)は、北海道・東北(n=2206)が13.2%、関東(n=1万693)が31.9%、東海・北陸・甲信越(n=4200)が13.8%、近畿(n=4160)が19.4%、中国・四国・九州(n=3386)が11.6%。

 都市圏別では、東京都/神奈川県/埼玉県/千葉県の東京圏(n=9588)が33.7%、愛知県/岐阜県/三重県の名古屋圏(n=2333)が16.2%、大阪府/兵庫県/京都府/奈良県の大阪圏(n=3769)が20.0%だった。

業種別・地域別テレワーク実施率

テレワークを実施する正社員の8割以上が「継続希望意向」

 テレワークに関する企業方針(正社員、n=2万4644)は、「特に会社からの指示無し」が63.1%、「原則出社の指示」が21.5%、「テレワーク割合の目標値設定」が10.7%、「原則テレワーク」が4.7%。

テレワークに関する企業方針

 正社員のテレワーク実施者におけるテレワーク継続希望意向は、「続けたい」が62.1%、「やや続けたい」が19.8%、「どちらとも言えない」が13.9%、「あまり続けたくない」が2.5%、「続けたくない」が1.8%という結果になった。

 このテレワーク実施者の継続希望意向(「続けたい」と「やや続けたい」と答えた人)は、調査を重ねるごとに増えている。2020年4月の調査では53.2%だったが、11月には78.6%まで上がり、微増しながら、今回の2023年7月の調査では81.9%に達した。

テレワーク実施者のテレワーク継続希望意向

業務連絡に応答可能な「つながっている時間」は月間232.3時間、起きている時間の半分近く

 「つながっている時間」に関する調査も行われた。つながっている時間とは、この調査では「仕事の連絡に応答した『最も早い』時間から『最も遅い』時間」と定義している。

 テレワークを実施している3000人の正社員を対象にしたつながっている時間の調査では、勤務日の場合、1日あたり所定労働時間を8時間と想定。残業時間(所定時間外)は平均42.9分、業務時間外の応答時間帯は平均38.7分としている。また、休日は1日当たり175.8分だ。

 1カ月を31日、勤務日を22日、休日を9日として、1カ月あたりの応答時問帯を算出した「1カ月間の『つながっている時間の推計』」は、所定労働時間176.0時間、残業時間15.7時間、業務時間外応答時間40.6時間で、合計232.3時間となった。

 また、平均睡眠時間を7.54時間(令和3年社会生活基本調査より)とすると、応答可能時間は、平均活動時間(起きている時間)の約45.5%だとしている。

「つながっている時間」の推計と、月間の「つながっている時間」の推計

 職業別の「つながっている時間(月間)」は、営業(n=298)が270.1時間、情報処理・通信技術職(n=241)が270.0時間、販売・サービス・接客(n=236)が248.5時間、商品開発(n=123)が245.5時間、専門・技術職(n=303)が242.8時間――と続いている。

職種別の「つながっている時間」と連絡回数

 また、「過去1カ月、業務時間外の連絡に対して、すぐに対応を要求されたことがあったか」との質問(業務外連絡がある正社員、n=1295)では、「毎回ある」が3.2%、「しばしばある」が8.6%、「たまにある」が46.6%、「ない」が41.6%だった。

過去1カ月、業務時間外の連絡に対して、すぐに対応を要求されたことがあったか

 「勤務時間外の連絡に関する社内規則」(正社員、n=3000)は、「規則あり」が31.0%、「無し」が69.0%となっている。

勤務時間外の連絡に関する社内規則

 なお、これまでの調査データと比較するため、主に正規雇用の従業員の数値を用いて分析している。そのため、年代と性別は国勢調査の結果を、職種は第4回/第5回/第6回/第7回の調査に合わせるためウェイトバック処理を行っている。