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「あらゆる場所にAIを」と掲げるインテル、日本のAI状況は? ~インテル AI Summit Japanレポート

 インテル株式会社は6月6日、業界関係者を対象にしたイベント「インテル AI Summit Japan」を都内で開催した。ハードウェアやソフトウェア開発者との連携を強化して、AI領域における強固なエコシステムを確立することを目的としたものだ。

 テーマは「Bringing AI Everywhere」。インテルが最近掲げている戦略「AI Everywhere(あらゆる場所にAIを)」のもと、インテルやパートナーのセッションが開催された。

 基調講演としては、インテルコーポレーションのクリストフ・シェル氏(主席副社長 兼 セールス・マーケティング・コミュニケーション統括本部長)と、インテル株式会社の鈴木国正氏(代表取締役会長)の2本が行われた。

「インテル AI Summit Japan」

あらゆる生活にAIが入り込み、半導体市場は2030年までに1兆ドル規模に

 シェル氏は、まずインターネットが生活に浸透したように、AIもあらゆる生活に入り込み、電話やPC、冷蔵庫、車などの身の回りの機器にAIが入ってくると主張した。

 それにより、あらゆる企業がAI企業になるだろうとシェル氏は言う。そして、AIによって半導体市場は2030年までに1兆ドル規模になるだろうと語った。

 また、大企業の生成AIへの支出は、2024年の400億ドルから2027年には1430億ドルと、4倍近くになるだろうという予測も紹介した。

インテルコーポレーションのクリストフ・シェル氏(主席副社長 兼 セールス・マーケティング・コミュニケーション統括本部長)
あらゆる企業がAI企業になり、半導体市場は2030年までに1兆ドル規模に
大企業の生成AIへの支出は、2027年には2024年の4倍近くに

AI PC、エッジ、AIデーセンターにまたがる「AI Everywhere」

 ただし、現在多くの企業は、生成AIの課題に直面している。それは、どこでトレーニングするか(クラウドかオンプレミスかなど)、データの管理、AIのコストが高額なことなどだ。

 この課題に対するインテルの回答が、「AI Everywhere」だ。エンドユーザーの近くにあるAI PCから、エンタープライズ&エッジ、AIデータセンターまでの3領域にわたってAIに対応する。

 AI PCでは、12月にCore Ultraチップをリリースし、現在800万台以上出荷。さらに次世代のLunar Lake(コードネーム)を今年後半にローンチする。

 エッジでのAIのユースケースについては、コストがかかるので全部クラウドにはしたくないといった「経済的法則」、ロボット制御での通信レイテンシー問題といった「物理的法則」、データを国内に置くといった「地理的法則」があるという。インテルでこれに対応するものとして、COMPUTEXで発表された第6世代Xeonや、エッジ向けAIデベロッパークラウドTiberをシェル氏は紹介した。

 これら2つに比べて、AIデータセンターでのAI学習では膨大なパワーが必要になる。この分野についてシェル氏は、発表されたばかりのIntel Gudi 3アクセラレーターを紹介した。

AI Everywhere
AI PCのCore Ultraプロセッサー
次期Core UltraプロセッサーのLunar Lake(コードネーム)
エッジでのAI
第6世代Xeon
Tiberプラットフォーム
Gaudi 3アクセラレーター

 そのほか、インテルのファウンドリー(半導体製造)事業についてもシェル氏は触れた。インテルではパット・ゲルシンガー氏がCEOに就いてからファブレス企業にファウンドリーサービスを提供するようになった。

 シェル氏は「今回来日して、日本で自動車など産業各社の人と話をしている」という。そこで製造自動化のためのAIに対応するSoCのカスタマイズと、そのためのファウンドリー提供について語った。

AI対応ファウンドリー

 シェル氏は最後に、現在はAIにより非常にエキサイティングな時代だと語り、怖い面もあるが、テクノロジーは中立であってポジティブな面もネガティブな面も見ていかなくてはいけないと述べた.

 そして、あらためて、これからの企業はAI企業になっていくため、AIの企業戦略を考える必要があると語った。

日本HP、さくらインターネット、Preferred Networksがゲストで登壇

 なお、シェル氏の講演では、語られたそれぞれの分野でのゲストも登壇した。AI PCについては、株式会社日本HPの岡戸伸樹氏(代表取締役 社長執行役員)が、「PCは、パーソナルコンピュータから、横に寄り添って仕事をサポートするパーソナルコンパニオンに移行していくのではないか」と語った。

 エッジとXeonについては、さくらインターネット株式会社の須藤武文氏(クラウド事業本部 AI基盤事業 事業統括)がビデオメッセージで登場。高火力コンピューティングでAIの学習をするときに、学習だけでなく膨大なデータセットの前処理にも大きなパワーが必要になるところを、Xeonで迅速に処理していることを紹介した。

 ファウンドリーについては、株式会社Preferred Networksの土井裕介氏(計算基盤担当VP)が登場。同社が開発したAIチップのMN-Coreや以後のプロジェクトにおいてインテルとパートナーシップを組んでおり、AI時代のチップの作り方の技術をインテルがどう作っていくか注目していると語った。

株式会社日本HPの岡戸伸樹氏(代表取締役 社長執行役員)
さくらインターネット株式会社の須藤武文氏(クラウド事業本部 AI基盤事業 事業統括/動画メッセージ)
株式会社Preferred Networksの土井裕介氏(計算基盤担当VP)

日本のAIとインテルの取り組み

 インテル株式会社の鈴木国正氏は、まず「AI Everywhere」について「AIのローカルシフトが起きる」と語った。

 氏はAIの課題として、複雑化、コスト、電力など実用化への問題、データセキュリティとプライバシー、人間への影響(倫理的なAI)を挙げ、「AI Everywhereは、言い方をかえると、全ての人が安心して開発できるAI」と語った。

インテル株式会社の鈴木国正氏(代表取締役会長)
AI Everywhereの意義

日本のAI利用はこれから伸びる

 鈴木氏はさらに「AI Everywhere for Japan」として、日本のAIの状況について語った。

 まず、日米での生成AIの利用・理解の違いを見ると、日本では利用でも理解でも贈れているという調査結果を鈴木氏は紹介した。ただし、経済同友会などで企業経営者と話していると、AIに対するマインドセットが急速に変わっているということも氏は挙げて、「ここでいいたいのは、日本は機会があり、これから伸びると考えている」と語った。

 たとえば、OpenAIやsakana.aiなど有力AI企業が日本に拠点を開設している動きがある。背景には、法整備が進んでいることや、(先方から見れば)為替レートの都合で人材を低コストで獲得しやすいことなどがあるという。

 日本からも新しいスタートアップが生まれており、大学発ベンチャーも増えている。日本政府も2023年からの5カ年計画で投資する計画を策定した。

 国内企業によるLLMも、それぞれ特徴を持ちながら進んできている。さらに、計算機資源への国内投資も、各社や政府などにより活発だ。

 「このように、環境が整ってきている」と鈴木氏は述べた。

生成Aiの利用・理解の日米差
有力AI企業が日本に拠点
活性化する国内スタートアップ企業

AI人材不足に対するインテルの施策

 その中でのインテルの活動として、人材不足の問題に対する教育や人材育成を鈴木氏は紹介した。

 たとえば、小中高校向けにはIntel SKills for Innovationを提供、高等教育機関のクリエイターには制作環境やグローバルコミュニティを提供、企業のAI LabsにはAIプログラムを提供、自治体にはDigital Readiness for Leadersを提供しているという。

 またAI Labsとして提供する教材として、AIの基礎知識や倫理を学ぶ「AI for Citiezens」と、課題解決型の「AI for Future Workforce」を鈴木氏は紹介。「パートナー企業とともに、いかにスケールしていくか考えていく」と語った。

 ほかの活動としては、「2024年 AIニッポン活性化戦略会議」への参加を鈴木氏は紹介した。氏を含む経営者や有識者が経済同友会の傘の中で集まって議論するもので、「AIと人、AIと企業、人材育成というテーマで議論して、企業や一般の人に向けて提言していきたい」と氏は語った。

インテルのAIに関する教育や人材育成
AI Labsとして提供する教材
2024年 AIニッポン活性化戦略会議

「インテルAI PC Future Tech Ideathon」を開催

 そのほかの国内での活動として、「インテルAI PC Future Tech Ideathon」を開催したことも鈴木氏は紹介した。全5チーム25名が参加してPCアプリケーションのアイデアを競いあうもので、審査員はベンチャーキャピタルの3名とインテルの3名が務めた。

 最優秀賞を受賞したのは、慶應義塾大学のチームによる「教師不足・教育の質を改善する課題解決支援AIソフトウェア」だった。壇上では受賞チームによる「能動的に授業支援するAIを考えた」というメッセージの動画が流された。

 また、審査員を勤めたベンチャーキャピタルの3名も登壇し、最年少は10代、遠いところではロンドンから集まって、さまざまなアイデアが生まれたことを紹介。継続的にやりたいと語られた。

「インテルAI PC Future Tech Ideathon」を開催
最優秀賞受賞チームの動画メッセージ
ベンチャーキャピタルからの審査員。左から、サイバーエージェント・キャピタル株式会社の速水陸生氏(執行役員)、株式会社ディープコアの三宅俊毅氏(シニア・ディレクター)、スクラムベンチャーズ合同会社のマイケル松村氏(パートナー)