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ウェアラブル端末でこころの病気を早期発見できる可能性、IEEEが提言

 IEEEは6月28日、フィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスと、こころの健康の関係性についての提言を発表した。世界中のうつに苦しむ2億8000万人のうち、診断や治療を受けていない人が半数以上にのぼる中で、ウェアラブルデバイスは不安障害やうつ病などの把握に役立つか、という疑問について考察した内容になっている。

フィットネストラッカーが心の病気の早期発見につながる可能性

 IEEEフェローのチェンヤン・ルー(Chenyang Lu)氏は、フィットネストラッカーは手軽に導入できるため心拍数などのデータが簡単にチェックでき、こころの病気の早期発見につながる可能性があるとした。

 一方で、この分野の研究の多くは大学生のみを調査対象とするものなど、サンプルサイズが少ないため、結果を一般化できない可能性もあるとしている。

 そこで、ルー氏らはアメリカ国立衛生研究所(NIH)のデータセット「All of Us」に登録されている8900人以上の情報を収集し、ディープラーニングモデルWearNetを開発した。活動データや心拍数データとメンタルヘルスには関連性があるが、うつ病や不安障害に関係する基礎的なデータパターンは複雑だ。同氏は、WearNetにより、この複雑な関連性を学習し、予測できると説明している。

うつ病や不安障害を検出するための重要なパラメーターは「総歩数」

 WearNetでは、うつ病や不安障害を検出する際、最も重要なパラメーターを1日当たりの総歩数としており、このことは、これまでの医学文献の結果とも一貫しているという。ほかにも、安静時や活動時の消費カロリーや、座っている時間などもある程度重要な変数だと、ルー氏は語っている。

 今後の研究の展開について、ルー氏は、次のように3段階での見通しを述べている。

 第1に、WearNetやウェアラブルデバイスからのデータストリームを活用し、うつ病や不安障害を検出するエンドツーエンドのインフラを構築する必要がある。第2に、WearNetがうつ病や不安障害を検出できるかを、前向き臨床研究で調べる必要がある。

 そして最後に、メンタルヘルスの改善に向けて、必要な時に必要な患者に治療を提供できるよう、ウェアラブルデバイスを活用したチェックに基づき、遅滞なく介入を行える機能を開発し、テストを行いたい、としている。

プライバシーが保証されたインフラの整備も必要

 なお、こうした研究におけるプライバシーの問題について、ルー氏は、プライバシーは最重要事項であり、プライバシーが保証されたインフラの整備が必要であると述べている。あわせて、モデルがトレーニングデータから拾い上げてしまう可能性のある偏りについても注視する必要があるとしている。