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電通、広告コピーの生成AIツール「AICO2」開発。コピーライターの“思考プロセス”を学習、心に響くコピーが生成可能に

心に響くコピーを作るコツは、コピーライターの“思考プロセス”を学習させることだったという

 株式会社電通は8月5日、電通のコピーライターが長年培ってきた思考プロセスをAIに学習させた広告コピー生成ツール「AICO2(AI Copy Writer 2)」を株式会社電通デジタルと開発したと発表した。

 キャッチコピーとして「伝えたいこと」、「商品名」「解決したい課題」などを入力すると、「伝えるべきこと」「表現方法」を理由とともに表示。「認知・共感を目的としたブランディング領域のキャッチコピーを高い品質で瞬時に生成できるだけではなく、より心を動かすコピーの生成が可能になる」としている。独自技術として特許を出願中。

 国内電通グループでは、広告制作における生成AIの活用について2015年から研究開発を続けてきたとしており、2017年にはAIによる広告コピー生成システムとして「AICO(β版)」を発表。この初代AICOでは、電通のコピーライターが考案したコピー約1万作品を学習しており、「人間のコピーライターに多くの発想をもたらしてくれる一方で、利用を繰り返すと過去のコピーと類似したものを出力したり、テーマとかけ離れたコピーを生み出したりする傾向があるなど、表現力に限界があった」という。

 これに対してAICO2では、コピーライターが考えたコピーだけではなく、コピーライターの意図や思考プロセスも学習。「電通のコピーライターが培ってきた、心の琴線に触れるコピーを生み出すための思考プロセスや推論能力を高めるべく」ファインチューニングしたというGPT-3.5 Turboモデルを実装している。

 電通では「コピーライターの知見を集約したAIと、人間のコピーライターが良きパートナーとなることで、属人的ではない多様な表現が可能となり、広告コピーの品質向上につなげる」としている。

「AICO2」が実際に生成したコピーの例

 国内電通グループが東京大学次世代知能科学研究センターと共同で、プロのコピーライターが生成ツールを使用してコピーを作成する際の性能評価実験を行ったところ、「コピーライターの思考をAIに教え込むことでコピーの評価が左右される可能性が示された」という。条件付きではあるが、GPT-4モデルを使った場合は、コピーライターのみでコピーを作成するよりもコピーの品質が低下した一方で、コピーライターの思考でファインチューニングしたGPT-3.5 Turboモデルを使うと品質が向上する傾向が見られたとしている。

「AICO2」の性能評価に関する実験結果

 なお、電通では8月5日、国内電通グループのAI戦略を示す新ビジョン「AI For Growth」も発表している。

国内電通グループのAI戦略の新ビジョン「AI For Growth」