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IOWN APNを用いた支援ロボットによる遠隔手術、NTTらが青森県内の病院間で実証
2025年3月4日 07:00
日本電信電話株式会社(NTT)、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、弘前大学医学部附属病院、株式会社メディカロイド、鹿島建設株式会社の5者は2月28日、2病院間に設置した手術支援ロボットをIOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)で接続する遠隔手術支援の実証に成功したことを発表した。
近年、特に地方においては外科医師数が不足しているなど、地域医療格差が広がる課題がある。その解決の1つとして遠隔で操作可能な手術支援ロボットの実証実験が進められており、日本外科学会が中心となって実装に向けた遠隔手術ガイドラインが策定されている。
今回は、青森県内にある2つの病院、弘前大学医学部附属病院とつがる西北五広域連合つがる総合病院の間をIOWN APNで接続し、実際の医師による人工臓器モデルを使用した遠隔手術を実施した。
両施設に接続したメディカロイドの手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」のほか、患者に手術を行う現地施設には4Kリモートカメラとバイノーラルマイク、遠隔施設にはモニターと鹿島建設の立体音響スピーカー「OPSODIS 1」も接続した。ロボットが高精度かつ安定して遠隔操作を実現できるか、現地・遠隔の術者同士が臨場感のある円滑なコミュニケーション環境が構築できたのかを実証した。
APNの通信品質の評価については、片道の伝送遅延は0.28msec(ミリ秒)、遅延ゆらぎは平均0.00μsec(マイクロ秒)、最大0.02μsecという結果となった。これは、従来のギャランティ型回線(帯域保証が付いた従来の回線)と比較して約4倍の伝送遅延性能、120倍以上の最大遅延ゆらぎ性能であり、今回の実証では病院間約30kmの距離において評価したが、APNは距離に伴う遅延やゆらぎの影響を僅少化できるため、さらに長距離となった場合の効果が期待できるとしている。また、遠隔でのコミュニケーションの評価について術者にアンケートをとったところ、高評価だったとした。
今回の実証により地域医療格差の課題解決のほか、若手外科医が遠隔地でも手術指導を受けられるなど教育・育成による医療レベルの向上(医療サービスの平等化)に寄与することが期待される。今後、5者は将来の遠隔手術支援社会実装に向けたフィールド実証を共同で進めていく。