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ロボットとの交流が、幼児の利他的行動を促進することを発見、NTT

 日本電信電話株式会社(NTT)は5月13日、5歳児がロボットとの交流を経験することで、利他的行動が促進されることを発見したと発表した。今後の幼児教育を支える学習コンパニオンロボットの実現や、AIを活用できることを期待できるとしている。

 近年、AIやロボットを教育支援として活用することが注目されている中、幼児教育への応用に向けて子どもがロボットをどう認識し受け入れていくのかを明らかにすることが求められている。子どもは成長過程の間で、他者への共感から段階的な社会性を身につけていくことが知られており、ロボットがどのような影響を与えるのかを実験心理学的手法により、今回の実験を実施した。

 実験では、特に誰かに見られていることに敏感になり、観察されているときには自分をよく見せようとするなど「戦略的な社会性」が発達する年頃であるとされる5歳児112人を対象に行った。インタラクション(反応)および自律性(発話・身振り)をもつ「社会的ロボット」、自律性をもつ(発話や動作を定期的に再生するのみ)「非社会性ロボット」、いずれも持たない「静止ロボット」、「ロボットなし」の4つの条件を設定した。

 まず、条件ごとに4グループ各28人に分かれ、子どもにロボットが対面する場面を設けたのち、子どもの利他的行動を測定するために「シール分配課題」を実施。子どもに10枚のシールを渡し、ロボットの前で自分と他者(人間)で分けるよう求めた。

分配課題の結果では、社会的ロボットの前では、相手に多くのシールを分配する傾向が見られた。

 結果、社会的ロボットの前では、他者に与えるシールの枚数が増えるという利他的行動が確認された。一方、非社会的ロボットや静止ロボットの前、およびロボットなしのグループでは、観察者がいない場合と行動は変わらず、他者にはあまりシールを分けない傾向が確認された。これは、ロボットとの社会的インタラクションの経験が、5歳児の利他的行動を促進することを示唆しているという。

 続けて、前述の社会的ロボット、非社会的ロボット、静止ロボットの3グループに子どもを分け、各ロボットに接した後で「ロボットは物を見ることができるか(知覚)」「ロボットは賢いか(有能性)」「ロボットは幸せや悲しみを感じるか(心)」と3つの質問をし、「とてもそう思う」から「全くそう思わない」までの7段階で評価させた。

子どもがロボットの機能に応じて感じる印象の比較。子どもは社会的ロボットに対して、非社会的ロボットや静止ロボットよりも心を強く感じていることが分かった

 その結果、子どもは知覚と有能性については、社会的ロボットと非社会的ロボットに対して高い評価をしたものの、両者の間に有意な差がみられなかった。一方、心に関しては、社会的ロボットに対して、ほかのロボットよりも心を強く感じていることが分かった。これは、ロボットとのインタラクションを経験することで、子どもがロボットを幸せや悲しみを感じる「心ある存在」と捉えるようになる可能性を示唆するとしている。

 同社では今後、子どもとロボットの関わりの検証を通し、子どもの学習メカニズムへの理解を深めながら、子どもが学びやすい支援方法を考案していく。