ネットの利用時間やトラブル遭遇、保護者と子どもの意識に違い


携帯電話・パソコンの利用時間に対する認識

 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科とデジタルアーツは26日、慶應義塾高等学校の第1学年全生徒の保護者を対象に実施した「青少年のインターネット・携帯電話利用に関するアンケート」と、生徒向けアンケートを合わせた集計結果を公表した。

 この調査は、高校生のインターネット利用実態や生徒と保護者の意識の把握などを目的にしたもの。保護者の回答数は458人で、郵送調査によるインターネットの安全利用に関する情報提供を実施した直後のアンケート期間が2009年6月26日から7月20日まで、パソコン向けフィルタリングソフトの配布後のアンケートが9月11日から9月28日まで。また、生徒の回答数は719人で、調査期間は2009年6月8日から12日までの5日間。

 調査結果によれば、携帯電話とパソコンの利用時間に関して、保護者は生徒(子ども)の利用時間を過小評価している傾向があるという。携帯電話の利用時間を見ると、生徒が「1時間~3時間未満」が31.4%、「30分~1時間未満」が28.2%、「30分未満」が23.5%だったのに対し、保護者では「30分未満」が33.6%、「30分~1時間未満」が29.5%、「1時間~3時間未満」が21.6%という順だった。

 インターネット上でのトラブル遭遇経験に関しては、生徒の22.7%が経験があると回答。一方、保護者においては生徒がトラブルに遭遇しているとの認識は10.0%にとどまった。なお、生徒が遭遇したトラブルとしては、「ワンクリック詐欺やフィッシング詐欺」が50.3%、「思いがけないグロテクス画像を見た」が48.5%、「薬物や犯罪などの情報に出会った」が16.0%と続いている。


インターネット上のトラブルの遭遇について

 インターネットを安全に利用するためには、生徒はインターネットの安全利用に関する授業を受ける前で61.3%、授業後で75.2%が保護者と話し合いをする必要があると回答。保護者でも95%が同様の認識を持っていると回答した。また、インターネット上のトラブルを回避する方法として、生徒・保護者ともに「インターネットトラブルの具体例を知っておく」「フィルタリングを利用すること」が上位に上がった。

 保護者のフィルタリングに対する認識は、76.0%が「知っている」と回答。「聞いたことがある」までを含めると94.8%がフィルタリングについて認知している。有用性に関しては74.8%が「役に立つ」と回答したが、フィルタリング利用率は32.8%と、実際の利用状況に結びついていない状況が伺える。

 保護者の生徒に対するインターネット利用状況の把握に関しては、パソコンの場合は利用時間にかかわらず約4分の3が把握していると回答した。携帯電話では、「30分未満」が84.4%、「30分~1時間未満」が83.0%、「1時間~3時間未満」が72.7%、「3時間以上」が45.8%と、利用時間が長くなるにつれて利用状況を把握していない結果になった。


インターネットの利用状況の把握と利用時間について

 パソコン向けフィルタリングソフト配布後に実施したアンケートでは、フィルタリング未利用だった保護者の約半数が生徒のためにフィルタリングを利用する結果になったという。また、フィルタリングの有用性認識に関しては、フィルタリングを利用した保護者の84.7%が「役に立つ」と回答した。

 このほか、インターネットの安全な利用に関する教育の担い手として、「家庭の大人」が46.8%、「学校の先生」が32.8%で上位。なお、青少年インターネット利用環境整備法を「よく知っていた」割合は5.8%、「なんとなく知っていた」は49.0%だった。

 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科とデジタルアーツでは、今回の調査結果を踏まえて、社会全体の取り組みとして、学校などでは「生徒への実例等情報教育」や「保護者への積極的な情報提供」、家庭では「生徒(子ども)の利用状況把握」や「インターネット利用におけるルール設定、フィルタリング導入」が求められると説明。また、政府では「青少年インターネット利用環境整備法の認知向上に向けた取り組み」、民間事業者では「初心者(保護者)への直接説明機会の確保」などが求められるとした。


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(村松 健至)

2010/1/26 19:30