「WISH2010」、大賞はペパボの電子出版サービス「パブー」


 8月28日、アジャイルメディア・ネットワークが主催する「WISH2010」が開催され、大賞にはpaperboy&co.の電子書籍サービス「パブー」が選ばれた。

無料で簡単な電子書籍の作成・販売プラットフォーム「パブー」が大賞に

グリーの田中社長(左)とpaperboy&co.の吉田健吾氏

 WISH2010大賞を受賞した「パブー」は、電子書籍の作成・販売プラットフォーム。日記を書く感覚で電子書籍を作成でき、ePub、PDFでもダウンロードできる。

 paperboy&&co.の吉田健吾氏は、「双方向でコンテンツが育っていく場所をゴールと考えている。良いものが出てくるようにがんばります」とコメントした。パブーは、同社のブックレビューサイト「ブクログ」とも今後連携させていく予定だ。

 そのほか、日本経済新聞 電子版賞はCEREVO(既存の製品ではなく、動画配信向け新製品)、ashi.com賞はカーリル、毎日.jp賞は大賞と同じパブー、TechCrunch賞はコニャック、Techwave賞はTogetter、OpenNetwork賞はオリヒメ、AMN賞はガラポン、Impress Watch賞はcacooがそれぞれ受賞した。

「海外はマーケット10倍だがライバルも10倍」田中氏

 「WISH2010」は日本のウェブサービスを元気にしようというコンセプトで、アジャイルメディア・ネットワークの徳力氏が発案し、同社主催で優れたWebサービスを表彰するイベントとして2009年に第1回を開催。

 2回目となる今回はイベントのテーマをより明確にするため、「日本のウェブはいかにして世界を目指すべきか」というテーマで、グリーの田中良和社長、ミクシィの原田明典副社長、“Twitterの仕掛人”として知られるデジタルガレージグループCEO室の枝洋樹氏がパネルディスカッションを行なった。

 パネルディスカッションでは、グリーの田中社長が、「海外の方がチャンスはあるというが、マーケットも10倍ならライバルも10倍」と世界の競争の厳しさを指摘。ミクシィ原田副社長も、「まずカルチャーをいちばんわかっている国内で小さい成功でもして、コアバリューを掴んでおかないと、いきなり海外だと失敗する可能性が高い」として、まずコアバリューの把握が大事だと指摘したが、同時に「最初から海外展開を視野に入れてサービス設計することが必要だ」と述べた。

「金儲けではなく、面白いことに没頭するための資金調達を」原田氏

左から、グリーの田中社長、ミクシィ原田副社長、“Twitterの仕掛人”枝洋樹氏

 また、米国に比べて日本では、成功するかどうかまったくわからない起業のスタートアップ期において資金面で支える仕組みがない点が取り上げられた。グリーの田中社長は、楽天に勤めていた時代にクレジットカードでキャッシングしてサーバー代にあてていたと明かし、また、「ぼくが会社を作る頃はmixiに抜かれていて、周りからは『いまごろ会社なんか作ってあいつはほんとにバカな奴だ』と言われていた。うまくいくからやろうという程度だと、うまくいかなかったらやめてしまう」とコメント。起業する側の覚悟も必要だと経験をもとに語った。

 一方原田氏は、「ここまで(田中社長のように)腹をくくる人しかなれないとなると、日本では難しいということになる」とコメント。「米国ではIT起業に就職すればそこそこの年収が保証されるような人が起業できるようなシステムができている」と述べ、日本では就職よりも起業のリスクがはるかに高い点を改善すべきだと示唆。

 枝氏もこれに同意して、 枝氏が、「成功した人が投資をするという仕組みが必要ではないか」と提案すると、原田氏が「(グリーの)田中さんやうち(ミクシィ)の笠原は、お金を使わなすぎるんですね」とコメント。会場には笑いが起った。

 原田氏はまた、「日本では個人で面白いサービスをやっている人が多いんです。素朴ないいエンジニアほど、金儲けしたくてやっているんじゃないと言って起業しようとしない。でも、そういう人は、試しに1回資金調達してみるべき。これで3年は没頭できるなといううことがわかりますから。金儲けしたいからじゃなくて、やりたいことに没頭したいから資金調達をするというアプローチがあっていいと思う」とアドバイスした。


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(工藤 ひろえ)

2010/8/30 18:11